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世界の共同住宅

 コンドミニアムストラータコ・プロプリエテヴォーヌングコモンホールド

 共同住宅は建物全体と土地が共有され、建物内部の空間に個別の法的仮想所有権である区分所有権が設定されているという制度ですが、 建物全体と土地からみれば共同所有権であり、建物内部の空間からみれば区分所有権であるという、1枚のコインの裏表のように どちらから見るかで呼び方が変わります。 本文の各国の住宅制度の説明で両方出てきますが、共同住宅をどちらから見ているかの違いだということをご理解ください。

「コンドミニアム」“Condominium”  ほぼ世界共通に

「コンドミニアム」はラテン語から来ています。「コン」は「〜付きの」、「ドムス」は「家」、「ドミニアム」は「家主又は所有者」転じて「家の権力、所有権」のことで、 「コンドミニアム」とは、「共同所有権(付きの家)」を意味します。
(“Condominium”comes from Latin. Domus means“house”; dominum is the“lord or owner of the house”; therefore dominium signifies“power”or“ownership [of a house]”. Con means“with”.Hence condominium means“ownership [of a house] with”.)

コンドミニアムの起源が古代ローマにあるとする説は誤りで、 古代ローマ法では建物は土地に従属するという「垂直的所有権」であり、コンドミニアムの起源はローマではなく、 中世ドイツの要塞都市が生み出した「水平的所有権」にあるとする説があります。 (Robert G Natelson "Comments on historio-graph of the Condominium: The Myth of Roman Origin")  コンドミニアムの起源

ドイツでは11世紀以降、外敵からの略奪から身を守る要塞生活の圧迫された生活様式の中で、 住宅が水平に分割されて、個別の部分として作り出された階層部分や地下庫を別々の所有権として異なった人々が所有するという「階層所有権」 (独語でStockwerkseigentum シュトーク・ヴェルケ・ザイゲンツゥム)がすでに広範囲に行き渡っていました。 (1918年ルドルフ・ヒューブナー著「ドイツ私法の歴史」Rudolf Huebner,A History of Germantic Private Law(1918,Reprint.New York:Augustus M.kelley,1968))

その後各国で「共同(又は階層)所有権」法が制定されていきます。(1804年フランス、1924年ベルギー、1928年ブラジル、1931年スエーデン、1934年イタリア、1939年スペイン、1951年プエルト・リコ)
コンドミニアムの用語は1934年のイタリア法に採択されたものに由来しています。

アメリカでは1961年に入ってから連邦住宅庁(FDH :"Federal Housing Authority")がモーゲージ保険(日本でいう住宅ローンのこと)の適用対象をコンドミニアムにまで広げ、 1962年に、プエルト・リコ法に範をとったコンドミニアム法案を提案し、1968年までに米国の全州がこの法案を制定しています。

コンドミニアムは共益権益であるコモン(個人所有の広い庭の代わりに設けられた共有のスペースエリア)を有する住宅地(CID:Common Interest Developments)の他の形式とは離れて独自に発展していきます。
分譲マンション法 ( Condominium Act )、コープ住宅法 ( Cooperatives Act )、住宅所有者組合法 ( Homeowners’ Association Act )

「ストラータ」“Strata” 豪から広まった水平的所有権

1961年、オーストラリアのニューサウスウェールズ州が土地と建物の共同所有形態の概念を「ストラータ」という名称で導入したのが始まりです。 体を伸ばすことを「ストレッチ」というのと同義で、「ストラータ」は地質学で「(水平に伸びている)地層」の意味です。

ニューサウスウェールズ州の法律専門家は、土地と建物の共同所有形態=「水平的所有権」の概念を岩山に見える「ストラータ(地層)」から名づけました。 法律用語として不動産所有権を意味する「タイトル」という用語をつけて、共同所有権をストラータ・タイトル"Strata title”と呼んでいます。

1978年、カナダのブリティッシュ・コロンビア州が、従来のコンドミニアム法を見直して、 オーストラリアの「ストラータ」を参考にした改訂版”Condominium Act(1978)”を作ったのですが、 用語で混乱をきたしたので1999年、州政府は名称をストラータ財産法(SPA: Strata Property Act)に改訂しました。

当時、カナダでは一般的な表現として、英国のリースホールドフラットのような区分所有でない賃貸アパートもコンドミニアムと称していたことに対して、 「水平的所有権」の概念を明確にする意図から、賃貸を含むコンドミニアムと区別して「ストラータ」の用語を用いたのですが、皮肉なことに、 その後コンドミニアムもまた、水平的所有権=層状(“layered” (stratified) )の概念をもつようになり、コンドミニアムもストラータも同義語として扱われていきます。 (in general terms condominium is synonymous with strata.)

現在、住宅制度に「ストラータ」“Strata”の用語を採用している国はオーストラリア(ニューサウスウェールズ州)、カナダ (ブリティッシュ・コロンビア州)、シンガポール、南アフリカ、インドネシア、 マレーシア、フィジー、フィリピン、インド、アラブ首長国連邦、ニュージーランドなどに広がっています。

ストラータ法の区分所有権(ストラータ・タイトル)は法律の中ではロット(Lot)として定義されています。コンドミニアム法のユニット(Unit)は通常、区分所有の室内空間を意味するのに対し、 ロットはユニット(部屋)のみならず、駐車場、専用庭などの専用使用権を含む区分所有権の対象となるものすべてを指しています。従って区分所有者は"lot owner"といいます。

管理組合は"owners corporation"、管理会社は"strata managing agent"ですが、それぞれ strata corporation、strata agent と略記されます。

ロットオーナーが管理組合に支払う管理費 (Strata levy)と修繕積立金 (Sinking fund fee)

ストラータ・レヴィ(Strata levy)のlevyは徴収(費)、シンキング・ファウンド (Sinking fund)は会計用語で「減債基金」または「負債償却積立金」のことで、 シンキングは流し台のシンク(Sink) と同義で(価値が)下落する(のを補償するための基金)という意味です。

コ・プロプリエテ“Co-Propriete”  仏・ベルギー

フランスやベルギーで共同住宅を指しています。
コ(Co)は共同の、プロプリエテ(Propriete)は英語のプロパティ(Property)の意味で財産、つまり 共同所有権の意味。プロとプリエテの間で短く息を吐き出して、コプロホッ、プリエテとやるとフランス語らしく聞こえる。(笑)

建築家ル・コルビュジエが設計した一連の集合住宅ユニテ・ダビタシオン(Unite d'Habitation)が有名。 ユニテ(Unite)は英語のunit、ハビタシオン(Habitation)は英語のdwelling=a house, apartmentの意味で、「住居の統一体」と「住居の単位」の二重の意味を有する。

ヴォーヌング“Wohnung”  独

Wohngemeinschaft(ヴォーン・ゲマインシャフト)
住居共同体(家族関係を前提とせず共同で1つの住まいに暮らす人々の集団) (略WG)
Haus(ハォス)が建物を指すのに対し、Wohnung(ヴォーヌング)はその中の居住空間を指す。 従ってコンドミニアムなどの建物にはHausを用い、その中の各々の住まいにはWohnung(単)、Wohnungen(複)を用いる。(例) ein Haus mit zwanzig Wohnungen(20世帯のコンドミニアム)アィン ハォス ミット ツヴァンツィヒ ヴォーヌンゲン(英訳:a house with twenty apartments)

ドイツの共同分譲住宅の創設、所有権、維持・管理及び使用に関するすべての規定は住宅不動産所有法(Wohnungseigentumsgesetz) ヴォーヌング(区分所有住居)・ザィゲントゥムス(登録)・ゲゼッツ(法)略してWEG ヴェー・エー・ゲー )によります。

現在のWEGが最初に制定されたのは第二次大戦後の1951年3月15日で東西ドイツに分割されていた西ドイツでの法制度でしたが、両ドイツ統一後、2007年7月1日に改正されています。

コモンホールド“Commonhold”  英国

英国の共同住宅はその建物形状からフラット(Flat)と呼ばれています。

フラットの建物全体と土地が区分所有者全員で共有され、建物内部の空間に区分所有権が設定されているという住宅制度は 英国ではコモンホールドフラット(Commonhold Flat)といい、この制度が導入されたのが2002年5月1日にコモンホールド・リースホールド改革法 (Commonhold and Leasehold Reform Act 2002)が成立したときですから、わずか十数年前のことです。

それまでは、リースホールドフラット(Leasehold Flat)が一般的でした。 このリースホールドは土地と建物をデベロッパーが所有し、居住空間をフラットの所有者が所有するという形態です。 デベロッパーは、共用部分(common parts)の所有権(フリーホールド Free-hold)を留保する一方で、 専有部分(unit)は購入者の長期の賃借権(リースホールド long leasehold)を期間(一般的には99年)を定めて設定し、フラットを分譲します。

デベロッパーは賃貸人(landlord)、個々のフラット所有者は賃借人(tenant)ですが、 デベロッパーに賃借権の対価としての権利金(premium)を支払い、地代(ground rent)は名目的な額に留まります。

デベロッパーは、共用部分に対する管理責任を負うので、その管理責任を履行するために、個々のフラット所有者との間で、 不作為約款(restrictive covenant)と作為約款(positive covenant)とが締結されます。

不作為約款は、過度な騒音、無許可の営業目的の使用、放置駐車等のフラットの利用制限に関する約款です。 作為約款は、フラットの管理に関して当事者に積極的な義務を課す約款であり、 具体的には、賃貸人は建物に対する修繕、エレベーターや通路などの共用部分の維持、 電気・ガス・水道・空調等の供給、保険料の支払いなどを行うこと、 賃借人はそれに対する費用としてサービス・チャージ(service charge)を支払うことが規定されています。

このように、フラット所有者は、地代(Ground Rent)、維持費用(Service Chrage)をデベロッパーに払いますが、 英国の住宅統計ではリースホールドは賃貸ではなく持家に分類されます。その秘密は所有権の考え方にあります。

リースホールドは不動産賃借権ですが、英国の不動産の所有権概念は、日本の所有権概念とは本質的に異なり、 不動産を長期間保有する権利は所有権(ownership)の類型の中に含まれます。 したがって、フラットに対し長期のリースホールドを保有する者もフラット所有者(flat owner)と呼ばれています。

リースホールド・フラットの場合、賃貸人の管理責任は自由裁量が大きく、しかも維持費用は借主に転嫁できる制度なので、 サービス・チャージを受け取りながら、それに見合う維持管理をしなかったり、 過剰な修繕工事の費用を賃借人に転嫁させ、業者からリベートを受け取る、 或いは高額の費用を請求し賃借人を債務不履行に陥れ退去を迫るなどといった悪質なトラブルが続きました。

その後、デベロッパーが、共用部分の所有権(フリーホールド)を、 フラット所有者で構成されるフラット管理会社(flat management company)に任意に譲渡するケースが出てきました。

この場合、法律上はフラット管理会社が賃貸人、各フラット所有者が賃借人となり、 依然として賃貸借関係は維持されるものの、フラット管理会社は、フラット所有者から構成される株式会社または保証有限会社であるので、 株主または社員として共用部分の管理に関わることになります。 したがって、この場合には、共用部分の管理責任は、フラット管理会社を通じて、フラット所有者自らが負うことになります。

先に述べた2002年の法改革により、リースホールド・フラットは、共用部分のフリーホールドを当初の賃貸人(デベロッパー)からフラット管理会社へ移行させることにより、 あるいは、共用部分の管理責任を当初の賃貸人(デベロッパー)から管理権引受会社(right to manage company)へ移行させることにより、 それらの会社を通じての賃借人による自主管理へ移行することが可能となりました。

ただし、リースホールドでは、フラット所有者に専有部分に対する定期の利用権しか認められていないのに対して、 コモンホールドでは、フラット所有者に専有部分に対する永久の所有権が認められているという点で、 両者は本質的に異なるものです。

英国では、このようなコモンホールドを2002年に導入したものの、 実際にはほとんど利用は進まず、これまで伝統的に形成されてきたリースホールドが依然として利用されています。 その理由として、

@既存のリースホールドからコモンホールドへと転換するためには、 既存のリースホールダー(leaseholder)や譲渡抵当権者(mortgagee)などの利害関係人の全員の同意が必要とされているので、実現はほとんど不可能であること

Aコモンホールドはデベロッパーにとって特別な収入が得られないと判断されたこと(デベロッパーは、フラットのリースホールドの売却後も、フリーホールド(=地代収取権)も売却することができたこと)

B政府は、不況の影響から、コモンホールドを率先して市場に広げようとする動きをしなかったこと、などが指摘されています。

しかし、より根本的な理由としては、かつて、リースホールド・フラットは、多くの法的問題点を有していたため、 その問題点を解決するために、コモンホールドが立法化されたのですが、それよりも先に、 リースホールドの法改正が実現したために、コモンホールドのメリットが相対的に失われたことによるものといわれています。

コンドミニアムの起源

コンドミニアムの起源がローマにあるとした誤った神話が生まれたいきさつをナテルソンは、次のように説明しています。
「アメリカで1962年に、プエルト・リコ法に範をとったコンドミニアム法案をアメリカ議会に提案した際、 プエルト・リコ住民委員長と、プエルト・リコ住宅建設業組合法務理事によるローマ起源説を伝えたが、 その戦略はコンドミニアムがヨーロッパとラテンアメリカで永年にわたって十分に試された由緒ある制度であることを議会に納得させることであった。」

ナテルソンはまた、上記以外にも法律や歴史の権威に否定された論文による誤った神話が建築に関わる人々に流布されていった経緯を述べている。 そのひとつに1960年シカゴ所有権信託会社の所有権専門役員、 チャールズ・E・ラムゼイが「コンドミニアムーコーポラティブ住宅の新様式ー」と題したパンフレットの中で、 「[コンドミニアム]に関する不動産所有の概念は、文字通り丘陵、−古代ローマの丘陵−と同じくらい古く、 古代ローマの丘陵にも不動産所有の起源がある」とする論文を発表したことを挙げている。

参考文献
○「プライベートピア ー集合住宅による私的政府の誕生ー」 (PRIVATOPIA : Homeowner Associations and the Rise of Residential Private Government)エヴァン・マッケンジー(Evan McKenzie)著  竹井隆人 梶浦恒男 訳 2003年1月20日発行 世界思想社 (ISBN4-7907-0972-8C3331)

○「欧米住宅物語 − 人は住むためにいかに闘っているか −」早川和男著 1990年11月10日発行 新潮選書 (ISBN4-10-600390-2 C0036) (このHpでは本書からの引用部分はありませんが、世界の集合住宅の建築思想と歴史について書かれた名著です。願わくばぜひ、ご一読を!)