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嘘と誇大広告

 不当表示防止法

 我が国の住居という高額商品は「夢」を売るという販売戦略によって、化粧品やファッションと同じく、 「高級」のイメージを持たせるために、カタカナの欧米語が使われる。 中には原語の意味を勝手に拡大解釈したり、無神経な誤用、意図的な転用が散見される。

これらは消費者を惑わし、誠実な同業者が迷惑する。消費者に経済的損失を与えた場合には詐欺になる。 「不当景品類および不当表示防止法」では商品やサービスの提供について、このような誇大広告や嘘の表示を禁止し、公正取引委員会が監視している。

不当景品類及び不当表示防止法第4条(不当な表示の禁止)
事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、一般消費者に対し、実際のものより著しく優良であると示すことにより、 不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認められる表示や、一般消費者に誤認されるおそれがある表示をしてはならない。(第4条第1項1〜3号) 公正取引委員会は、当該表示をした事業者に対し、期間を定めて、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。(第4条第2項)、排除措置命令(第6条)

 資本主義社会の基本的な倫理原則

資本主義社会における基本的な倫理原則が正直さ(言葉にうそ偽りのないこと、 つまり「言葉を事実に一致させること」)、誠実さ、 高潔さであり、 それらを目指そうとする 自己管理、責任感、道徳的健全さ、原則への忠実さ、 堅固な目的意識を全部ひっくるめて「組織のインテグリティ」(organizational integrity)といい、 これが今日の世界の資本主義経済におけるグローバルスタンダードの哲学であり、理念になっていますが、 昔の日本人なら誰もが持っていたこんな当たり前のことを失ったのが今日の「偽」がはびこる、 ガラパゴス症候群日本の置かれた現実です。

コミュニケーションはお互いの言葉が共通の定義で首尾一貫した意味として使われることで成立します。 言葉の使い方に対して世界は不寛容の度合いを強めてきています。 世界の中で日本だけが無神経な誤用と意図的な転用で国際的に孤立を深めている現状は、次の世代にとって大きな負の遺産となります。

ジャルゴン(無意味造語 Jargon)、換語困難(目的に即した適切な語彙を使用できない、 或いは想起できない)は認知機能の低下によるもので、老年医学の対象ですが、 貧しい時代の夢を引きずった不動産業界の誤った表示は社会問題です。

言葉を曲げて嘘をいうのはいい加減やめようよ。

 マンション

 集合住宅や共同住宅を「マンション」とは言わない・・・

 日本人が外国に行って、マンションに住んでいるといったら笑われる。
 外国人に話す時はアパートメントやコンドミニアムに言い換えること。

世界で通用しない日本の「マンション」が正しい日本語に戻るのは、いつ?

欧米人はマンションと云えば中世のお城みたいな大邸宅や豪邸をイメージします。だから、ワンルームマンション(ひと部屋しかない大邸宅???)なんて、絶対に理解不能。

日本のマンションという語は最初、分譲業者が住宅商品としての豪華さを示すイメージ戦略として用いたもので、今では本来の言語の意味とかけ離れた和製英語になってしまいました。香港やマカオでもマンションという語は通用しますが、 それは例えばマフイアの親分が住んでいた本物の大邸宅のことであり、分譲アパートにつける名称ではありません。

欧米都市で、分譲アパートに固有名詞として「Mansion」がつけられた標札銘板をたまに見ることもありますが、一般名詞として使うことはありません。 コピー機で複写することを「ゼロックスする」とか「リコピーする」といって企業名や商品名をそのまま動詞化して言う年配の方がいましたが、 さすがに法律や国の公式文書ではそれらが使われることはありませんね。

でも、「マンション」に関しては、日本では堂々と法律名にも使われています。
「リフォーム」も修繕工事を意味する言葉として国の公式文書にそのまま出てきます。

法律名にカタカナ用語が使われた日

「共同住宅」を何故「マンション」に?

日本では、法務省民事局所管の「建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)」では、登記手続に重点が置かれた経緯もあって、区分所有(建物)という表現ですが、 総務省消防庁所管の「消防法」では「共同住宅」が使用されています。国交省所管の「建築基準法」も、「共同住宅」です。 財務省の「税法」でも「共同住宅」です。 このように法律では、昔から「共同住宅」が統一して使用されてきました。

ところが、2000年(平成12年)12月1日に議員立法で成立した国交省所管の「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」では、「共同住宅」ではなく、「マンション」が使われました。
法案の審査事務段階で、内閣法制局(**)がこの語の使用に反対したのは当然ですが、反対をハネのけて「マンション」を押し通した議員達の自慢気な談話が新聞にでていました。 「マンションという言葉を法律用語として初めて使った。法律名称に初めてカタカナを使った」ということが彼らの自慢。

(**) 内閣法制局の業務には、意見事務(法律問題に関し内閣並びに内閣総理大臣及び各省大臣に対し意見を述べること)と審査事務(閣議に付される法律案、政令案及び条約案を審査すること)がある。

天下り法人の拡大をはかる国交省の官僚の駒でしかない知性も教養も気骨もない無能な政治家達が、せめて、この語を通すことで自分達の存在感を示したかったのでしょうね。

当マンションNPOも国にならってやむなくとは言え、名称中に「マンション」という語を使用していますから、大きなことは言えません。 さすがに英文名称ではJapan Condominium Management Association Support としていますが。

 リフォーム

 修繕や改修に「リフォーム」は使わない・・・

リフォーム(Reform)は社会制度を改革するという大きな意味です。
ザ・リフォメィション(the Reformation)と言えば「宗教改革」を指す。
リフォーマー(Reformer)とは社会の改革者という重い意味になる。
衣服の仕立て直しや家の改修・改築などにリフォームという語は絶対に使わない。

衣類や家を改造したり、修復するのはオールタ ( alter 名詞は alteration )
日本の建築基準法における区分を基準にすると、
模様替え]主要構造部を変更する工事、リモデリング(remodeling)は模様替え
修繕]主要構造部の原状回復的工事、リノベーション(Renovation)は修繕、
    メジャー・リノベーション(Major Renovation)は大規模修繕

 不当表示の例

○ ある住宅改修業者の広告
 一般に、中古を現状維持的に修繕、修復させることをリフォーム、 抜本的に建物を見直しむき出しの構造体に戻して造り直すことをリノベーションと呼ぶ。・・・

○ 管理人の職業訓練ビジネスをはじめた業者の広告
 マンションの管理人をマンションキーパーと呼びます。当社はマンションキーパーを養成しています。・・・

※1 この誤ったリフォームとリノベーションの定義は不当表示にあたる。
※2 正しい日本語では「本来のマンション」の管理人は「執事」という。
    「中世の執事の仕事」
昔のゲートキーパー(Gate keeper:門番)は、現在ではガーディアン(Guardian:警備員)という。
現代はポリティカル コレクトネス(Political correctness)の流れがいっそう強まっています。
いまどき、「共同住宅」の管理人をキーパー(門番)と呼ぶ国はない。時代錯誤で笑える。
    「各国の管理人」参照

※ 誤用転用誇大修飾為衒学的欺瞞、是日本的不動産業宣傳型也。
  悪徳業者ほど宣伝や広告を工夫して、一儲けを企む。
  カタカナを使った偉そうな広告は大抵インチキだ。

 ベランダとバルコニー


ベランダとバルコニーの違い
ベランダ(veranda)は建物の一階部分の周囲にある屋根付きのスペース(縁側・廊下・回廊)のことで、ポーチ(porch)とも呼ばれます。
(an open porch or portico, usually roofed, along the outside of a building)。
ベランダのあることが高級マンション(Luxury Apartments)の条件のひとつです。 だから、米国の高級マンションは、高層ではないし、ましてや超高層でもない。

バルコニー(balcony)は建物の上の階の壁から突出していて、手すりで囲まれているプラットホームのことで、 劇場の2階席もバルコニ―です。
日本の「マンション」で言われている柵付きの「ベランダ」は、正しくはバルコニ―です。

日本の建築基準では2階以上のバルコニーには床面から110cm以上の高さの手すりもしくは壁を付けること(建築基準法施行令第126条)となっています。 ちなみに階下の屋根部分を利用して作ったバルコニーを「ルーフバルコニー」、北側にあるバルコニーを「サービスバルコニー」というのは不動産業界の用語です。

裁判官も悩む?ベランダ・バルコニーの用語
「コンメンタール・マンション区分所有法」(稻本・鎌野 共著・日本評論社1997.3.20初版P33)で、
「これらの用語上の区別はなく、しばしば混同されている。 比較的広く用いられている語法では、ベランダは数戸共通に存在し間仕切りがあるもの、バルコニーは各占有部分に固有のもので、 他の占有部分への非常通路とはならないもの」
として紹介されていますが、 現在ではバルコニーは他の占有部分への避難通路と解されていることも含めて共用部であり、 この定義はまったく当てはまりません。

 ついでにバルコニーに関して裁判で争われた例をふたつ

(1)バルコニー(ルーフテラス)におけるサンルームの建築は規約違反にあたる(京都地裁判決昭和63.6.19)
(2)改築を禁止した建築協定を無視してバルコニーに設置した温室の撤去請求は認められる。 バルコニーは管理組合の管理する共用部である(最高裁判決昭和50.4.10)

 ベッドタウンは売春街

大都市周辺の住宅都市はアメリカでは、bedroom suburb community,イギリスでは、dormitory suburb といいます。単なる郊外住宅地(suburb)と区別して、行政区としては独立しているが、 経済的、文化的には大都市に依存しているという日本語のベッドタウンを意味したければ、satellite town(衛星都市)という。 bed townは売春街、bed houseは「売春宿」のこと。

 差別用語

日本の建築基準法にあった差別用語の例
2000年6月の建築基準法改正により、「ダムウェーター」の名称が、「小荷物専用昇降機」と改められました。(建築基準法施行令第129条の13 小荷物専用昇降機の構造)

1915年頃からマンハッタンのレストランなどで1階の厨房から2階の客席フロアに料理を運搬するロープを手で引っ張る手動式の小荷物用エレベータのことを、ダムウェーター(Dumbwaiter)と呼んでいました。 当時としては洒落のつもりだったかも知れませんが、ダムウェーターの(Dumb)は「唖の、無言の」 (waiter)「給仕人」を意味する、現在では不適切な用語です。

独でダムウェーターを意味するシュパイゼ・アォフ・ツーク (Speiseaufzug) は Speisesaal (シュパイザール=食堂)用 Aufzug (アォフ・ツーク=エレベーター)の意味で、英語のDumbの意味はない。
ハロルド・ピンター Harold Pinter(2005年ノーベル文学賞受賞)の一幕劇「Dumbwaiter」が 2003年に下北沢小劇場にて高平哲郎監督で初演されたときの題名は「料理昇降機」でした。

ちなみにダンベル(Dumb'bell―物言わぬ、音のしない鈴 を日本語に直訳した[唖鈴=アレイ=つまり、体操用具のアレイは日本語)も同様に不適切な用語です。

Dumbwaiterはその後、電動式になり、米国機械学会基準American Society of Mechanical Engineers (ASME) codes及び米国建築法(Building codes)でもその名称が使用された事から、日本でも建築基準法で音訳のまま「ダムウェーター」として使用され、 2000年6月にようやく適切な日本語に置き換えられました。

厨房で垂直に動くダムウェーターの後、1917年に回転式サーバーが現れ、こっちの方は、"Lazy Susan"「レイジースーザン」 Lazy つまり 「怠け者のスーザン」と呼ばれていました。 当時の米国人から見たら、日本の回転寿司のカウンターでは、怠け者のスーザンが運んでいる?

日本の建築基準法にあった差別用語の例を示しましたが、時代とともに差別用語に対して社会は不寛容(イントレランス Intolerance)の度合いを強めてきており、 米国ではPolitical correctness (政治的に差別しない表現)へという流れが1980年代後半から始まり1990年代にピークを迎えます。

例えば、性による差別表現、即ち、
@男女両性を含む「ヒト」という意味を"Man"で代表していた
A女性だけと見られていた職業でWomanを使用していたなどは、
現在、男女いずれにも偏らない通性表現への言い換えに変わってきています。

(日本でも2001年12月「改正保健婦助産婦看護婦法」成立により、看護婦から看護師へ)

(職業) (今は使われない昔の表現) → (現在の表現)
会社員   businessman  →  business person
写真家   cameraman   →  camera operator
議長     chairman    →   chair/chairperson
清掃員   cleaning woman  → cleaner/housekeeper
              (housekeeperは一般的に家政婦という意味で使っていた)
消防士    fireman   →   fire fighter
保険代理人  insurance man  →   insurance agent
警察官    poiceman   →  police officer
郵便配達人 postman    →  mail carrier
販売員    salesman    →  sales person/sales clerk
航空機の客室乗務員  stewardess   →  flight attendant
※スチュワーデスがフライトアテンダントになった理由は別にあります。

中世の執事(Steward)の仕事
1960年代までは米国でも女性の誰もが夢見る職業が航空会社のスチュワーデス(stewardess)でした。今は、フライトアテンダント(flight attendant)といいます。
もともとは客船の司厨長や客室担当の接客係を表すキャビン・スチュワード(Cabin Steward)から来ていました。 更にさかのぼれば、スチュワード(Steward)という言葉は、中世16世紀頃の英国の執事(Steward)からきています。

この執事(スチュワード Steward)は、英国のマナーハウス(manor house=館、領主の邸宅)などに仕えて、 メイド、料理人、掃除係などの使用人を監督し、問題があればその解決にあたり、更に財産の管理も行う会計係も務め、領主に対しては秘書的な役割も果たす、実に重大な職務を指した言葉です。

執事の格
執事は仕事の格によってバトラー(butler)、スチュワード(Steward)、チェンバレン(chamberlain)に分かれています。 バトラーはスチュワードより下位の職務です。 チェンバレン(chamberlain)は貴族に直接仕える執事で男性に限られます。

古代の執事(stigweard)の仕事
古代の西ヨーロッパでは、家畜が大切な財産で、封建時代にはその管理が非常に重要な責務であり、この重要な役職に最初に与えられた古代の英語がスティッグワード「stigweard」で、 stigは「囲いのある場所、転じて豚小屋」を意味し、weardは「番人」で、つまりスティッグワード=「豚小屋の番人」を意味していました。

やがて時代が変わり、スチュワード(steward) は管理人、世話係、執事などの役職を指すようになります。

 【ジャルゴン(無意味造語)の例】 「自主管理」を「自力管理」と言い換えるのはなぜ?