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法制改革の全体像
(RENEWING THE CONDOMINIUM ACT: THE BIG PICTURE )

目次
  ○ 共同社会の絆作り
  ○ 審議の過程
  ○ 作業部会
  ○ 専門部会
  ○ 消費者省

 

 

共同社会の絆作り  (A COMMUNITY-BUILDING APPROACH )

今、オンタリオ州の新築住宅の半数は共同住宅です。
地域内の60万戸の共同住宅に約130万人が住んでいます。

この分野は拡大しているので、良い情報、意見の相違を解決する新しい手段の開発、
そして能率的に効率よく調和のとれた共同住宅管理ができるよう支援することが必要
になっています。


共同住宅の建物の形状と規模は、小さなタウンハウスから巨大な高層住宅の時代に入ってきました。
このことは、法律と実務に適合するための多くの努力に注意を払わなければならない事を意味します。
ひとつの共同住宅での改善の試みが、他の共同住宅にとっては参考にもならず、否定的ですらあり得ます。

共同住宅法は、「共同住宅での生活を規律に従って管理すること」を法の主要な部分としています。
共同住宅法は消費者省が管轄庁となって、共同住宅を新しく創造的な方法で管理運営するための
法的な骨組みを提供しています。

しかしながら、共同住宅は法的な権利の枠組みよりも、もっと多くの問題を抱えています。

共同住宅の管理組合は、自主統治(self-governing)のコミュニティとして、
自分達の管理規約と使用細則に従い、選挙で理事会または管理者を選任しています。
一方で、このコミュニティに対しては、日々、政府から、或いは地方自治体を通して、「政府の強制力」
(“the fourth order of government”)が関与してきます。

これらの共同住宅には、表面的には法的或いは技術的、専門的な問題があるようには見えません。
時には、さまざまな、利害にまったく共通点のないグループの間での関係性が問題になることもあります。
“強い共同社会は強い絆を必要とする” (Strong communities require strong relationships )といいます。
そのためには区分所有者、理事会、管理者、分譲会社、法律家、消費者保護団体、その他の人々が
参加して係わり合い、全員が役割を分担して努力することが必要です。

消費者省が共同住宅法改正にあたって留意したのは、この共同社会の絆作りには、協同と歩み寄りが
必要ということでした。(“community-building” requires an approach based on collaboration and compromise)

問題を特定し、解決法を探るには、主要な利害関係者を巻き込み、利益と願望に関して優先すべき課題
についてのお互いの意見を尊重して話し合うことが重要になってきます。

そのため、消費者省は、このような見方に立って、共同住宅法を改正し、革新的な社会契約に導く事業を
「カナダ公共政策フォーラム」=「対話を通じて問題を解決する専門家集団(略称PPF)」に委託しました。

「カナダ公共政策フォーラム」は、共同住宅法の改正を目指して、社会の広い各層からメンバーを集め、
問題を特定し、意見を集約し、法改正のための推奨案づくりに18ヶ月かけて作業を進め、現在、第V期の
活動に入っています。

この3つの段階で最高点に到達したのは、PPFによって2013年1月に発行された第T期の問題提起報告です。
この報告は4つの異なる対話の流れ( different “discussion streams.”)をもたらしました。そのうちのひとつが、
居住者委員会( residents’ panel )でした。オンタリオ州の共同住宅の居住者(区分所有者と賃借人)の中から
ランダムに36人のメンバーを選び、共同住宅法をどのように改善していくかについての考え方について意見を
出し合いました。

多分、この委員会で得た最も重要な結論は、制度改革の検討過程は、管理組合の管理運用面を強固にする
だけではなく、区分所有者や他の利害関係者をもまた、自分達の共同社会のより良き福祉(for the well-being
of their communities)を実現するための各人の責任を分担する強固な意識を築くことになるということかも
知れません。

居住者委員会としては、共同住宅のすべての構成員( 所有者、管理者、理事、分譲会社、その他 )が他の
構成員の権利を考えたうえで、共同社会における各人の責任を分かち合うことも重要であると考えました。

この報告書における多くの推奨案では、問題を明らかにすることに照準を定め、時には、再調整しながら、
これらの権利と責任、及び、それらを実現させるための過程や方法論を提示しています。

結局のところ、所有者、賃借人、理事会、分譲業者、管理者の自発的参加意思なしに強靭で健康的な
共同体を築くことはできないし、また、妥協もしくは明確化の総量で決まるものではないということです。

成功する共同体は、全ての構成員同士がお互いに健全な信頼のもとに協同し、維持していくことを必要としています。

審議の過程と参加者 (THE PROCESS AND PARTICIPANTS )

共同住宅法の改定作業は、消費者省とPPFとの契約の骨組に基づいて、下記の3つの段階に分けられます。

・第T期(2012年秋)        問題点を出し合い、意見を選択・集約する作業
・第U期(2012年冬〜2013年春)問題点を審議し、対話で意見を最良の解決策に変換する作業
・第V期(2013年秋)        問題を解決する推奨案を法律的に有効にするための作業

第T期の問題提起報告では、法律に変換するための手段として、共同社会の絆を築くための実務上の
要因を組み合わせた長い、大きな表で提供されました。第U期では、参加者はこれらの意見から質問を
選択して実行手段のための具体的な提案に纏める作業を行いました。

第U期は2013年3月21日、トロント市に約40名の専門家を集め、オリエンテーション集会を開催しました。

この集会において、お互いを良く知るために、どのようにしてこのプロセスの結果を出すかについて、
各人が意見を表明し、それぞれの役割を討議しました。

第U期に向けた計画では、5つの作業部会に分かれて、そこで第T期で挙げられた問題点を提出し、
選択と討議に入りました。それらの討議の結果は専門部会での見直し作業に引き継がれました。

第U期の参加者は共同住宅に関係する全ての社会分野を代表する者から選ばれ、それぞれの
各界を代表して討議に加わりました。全員、共同住宅の分野では深い造詣をもつ経験者でした。
なお、慎重な選択過程を経て選ばれた参加者については、本報告の付録Uに作業部会及び
専門部会の参加者の詳細経歴を記したリストをつけました。(※1)

(※1) 付録2.参加委員名簿 参照。 (但し、日本語訳版では、参加者の詳細経歴は割愛しています。)

作業部会 (THE WORKING GROUPS )

第T期で提起された問題と意見は下記の5区分に分けられました。
・消費者保護(Consumer protection)
・財務管理(Financial management)
・紛争解決(Dispute resolution)
・ガバナンス(Governance)
・共同住宅の管理(Condominium management)

第U期では、これの区分に従って5つの作業部会を設けました。
各作業部会は9人から12人で構成されています。各委員は共同住宅を囲む部門からの出身者で、
保証された高い経験レベルでそれぞれの鍵となる利益を代表しています。

各作業部会では、第T期の問題提起報告で取り上げられた問題からテーマをリストアップしました。
その報告書の中の提案意見を深く掘り下げて検討し、解決すべき方向性について、有効性、
費用、他の公共政策に対する影響、更に、それらのテーマが他の作業部会のテーマに影響を
与える場合、どのようにして解決すべきかなどについて、参加者間での合意を得るための作業を
行いました。例えば、消費者保護に関心をもっと向けるべきという問題では、会議の統制も議事録
の記録もとれないほど白熱した議論が続きました。

問題のリストは、限られた時間的制約にお構いなく野心的に長く、余りにもしつこいこのリストから
逃れるには、このリストを投げ出さない限り、作業部会では新しい問題を提起することができなかった
ほどでした。

専門部会 (THE EXPERT PANEL )

共同住宅分野の中から12名の著名な個人の専門家で構成された専門部会を[冷静で客観的な
補佐役]として設けました。この専門部会のメンバーはさまざまな分野における高い専門技術と
ノウハウを持った人で、共同住宅法、共同住宅の管理、財務、建築・設備技術、そして消費者
保護の各分野の人たちです。

専門部会のメンバーは作業部会を引っ張って、作業部会から出てきた推奨案を下記の4つの視点
で見直す役割を担いました。
○ 提示された推奨案は公正かつ多様な立場の利益との調和がとれているか?
○ 5つの分野全体で筋が通って矛盾のないものになっているか?
○ 実施に際して実行不可能な障害はないか?
○ 提示された推奨案は問題に対して効果的な解決策となりうるか?

すべての参加者は、オンタリオ州が困難な財政状態にあること、及び、他の利害関係者に望まない
不本意な新しい報酬や費用を負担させないようにと、あらかじめ注意を受けていました。

メンバーは彼らの推奨案を組織立てて考えたとき、これらは心理的束縛となっていました。 
そして絶えず二つの疑問を自らに問いかけていました。
「政府は何を与えられるか」と「区分所有者または利害関係者が制度改善のために負担できるのは
幾らまでなのか」の二つです。最後の問いは具体的には、「管理者の免許制度または迅速な紛争
解決機構」のための費用負担を含みます。

消費者省 (the Ministry of Consumer Services )

消費者省はすべての作業部会と専門部会に出席しました。たとえ、これらの部会の公式メンバーではなくても、
彼らは、メンバーを励まし、助言をし、論評に加わり、提案をしました。

 他の参加者:

第T期の作業の始めに、消費者省の副長官のスタッフが参加しています。

(2021年8月28日初版掲載・随時更新)
(Initial Publication - 28 August 2021/ Revised Publication -time to time)