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第1章 集合・共同住宅における私的所有権の背景
(BACKGROUND ON PRIVATE OWNERSHIP IN MULTIUNIT CONDOMINIUMS)

 はじめに

 ※免責事項
   このマンションNPOのHpでは国連発行文書(UNITED NATION PUBLICATION-ECE/HBP/198)の
   内容をご紹介しています。同文書の日本における公式の文書ではありません。
   また文中の翻訳表現は権威ある公式の翻訳ではない事をお断りしておきます。(マンションNPO)

 ※ 本文の章・項・号番号は便宜的に当Hp日本語訳でつけたもので、報告書原文には付いていません。

集合・共同住宅における私的所有権の背景

ソビエト連邦とベルリンの壁の崩壊に伴う中東及び中央アジアにおける政治・経済システムの変革の流れは、 従来の国家の政策と法規制の枠組みにおける経済活動に対し、 すべての分野での新しい法規制システムを確立する要求を生み出しました。

新しい市場経済、私有財産を優遇するルール、統治機構(governance schemes)の民主的選挙、 経済活動の規制は市場主義に基づくこと、サービスのコストを回収する適正な価格設定、 顧客満足度に焦点を当てることなど、これらの変革は、 社会の中で経済と住宅分野のすべてのセクターに影響を及ぼしてきました。

時代が変革を要求する分野の中に、集合住宅/共同住宅(multi-apartment buildings/condominiums)の所有権、 保全、及び管理の分野で、新しい民間支援のあり方に適合する法的枠組みを創り出す要求があります。

複数の住戸からなる賃貸用建物を共同住宅に用途変換する事を政府が許可した事によって、 建物設備資産に対する保全と運営管理にかかわる責任の放棄(そして財政的負担)をもたらしました。

それは公共部門(public sector)の財政難を助けるためのものでしたが、いずれにせよ、 この民営化の多くの実例の中で、新しい共同住宅の区分所有者が、保守修繕の繰り延べによって劣化した建物、 非効率で無駄なエネルギーと熱源システムのために、予期せぬ費用を工面しなければならない事態に直面し、 自分達で管理費を徴収し、組織を統率することに挑戦しなければならなくなりました。

国家及び地方行政機関、及び、新しい共同住宅の区分所有者に向けて、 2003年に国連欧州経済委員会(UNECE)から「過渡期にある国家のための共同住宅の所有権に関する指針(ECE/HBP/123)」が発行されました。

この文書は、建物の容積(居住者数)の制限、財政計画の作成、その他の問題点に関して求められている法的規制による介入のガイダンスをタイムリーに提供するものでした。

国連欧州経済委員会のすべての加盟国と地域にとって、2003年以降の技術革新、環境問題、 そして社会の関心の変化は、共同住宅の管理と所有権に関して、次のような新しく挑戦すべき課題を生み出しました。

1)  IoT(Internet of Things)、個人資産で共有ビジネスをする基盤(sharing economy platforms)、
   スマートビルディング(smart buildings)などの新しい技術の出現
2)  世界的な気候変動に対処するエネルギー消費の新しい効率化と持続可能な開発の実行
3)  急激に進む都市化に伴う社会的弱者(vulnerable groups 直訳:攻撃されやすい脆弱なグループ)の
   保護が必要とされています。

持続可能な開発目標を定めた新しい国際協定「2030アジェンダ」は、国連ジュネーブ協定として、 持続できる住居、新しい都市政策を掲げて新しい社会と環境目標を紹介し、 各国の法的枠組みに影響力を与えてきました。

今回の報告「共同住宅の所有権と管理に関する指針」は, 以前に発行されたガイダンスの範囲を現時点で兆戦すべき課題にまで拡げると共に、 更に進んで、以前の限定地域よりも拡げて国連欧州経済委員会(UNECE)地域全体の問題を含めたものになっています。

(訳注:) 本文の「過渡期にある国家」(Countries in Transition)という表現は「経済的に逼迫した国家」を配慮的に表現したものです。 尚、本文の「社会的弱者」(vulnerable groups)の括弧内の注は、日本語の「社会的弱者」に含まれる階級社会からの脱落者(mob)の意味ではない事を示すためです。

(2021年5月12日初版掲載・随時更新)