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1. 調査・診断の目的と種類

マンションの快適な居住環境を確保し、資産価値の維持・向上を図るためには、 建物等の経年劣化に対して適時適切な修繕工事等を行うことが重要です。
そのためには、建物調査診断を実施し、長期修繕計画を作成します。

1. 調査・診断の目的と種類

(1) 定期的な調査 ( Regular inspections )

建築・設備には定期検査が義務付けられています。   【次頁】 2.定期報告制度

(2) アフター点検の期限が切れる前の調査 ( Building envelope inspection )

この診断の目的は、主に「建設時の施工不備」や「現況と竣工図面との違い」等のチェックになりますので、
「法医学的分析( Forensic analysis )」を要する特定目的のための検査といえます。
経験と知識を持った第三者の専門家による診断であることが非常に重要です。
   ( Specialist who does not have a vested interest)
アフター点検の期限が切れる前であれば、交渉もスムーズに進みやすくなります。

(3) 長期修繕計画を策定するための調査

建物全体のあらゆる箇所の損傷や劣化度を調査して、総合的・長期的に修繕の必要な箇所や時期を策定するための調査です。  (外壁、廊下、階段などの表面的な状況、塗装の劣化やクラック(ひび割れ)、給排水管の錆び、汚れ、閉塞状況、手摺や扉、非常階段などの 鉄部の塗装、受水槽・高置水槽の劣化、ポンプやファンなどの磨耗など)

(4) 修繕工事のための事前調査

既に修繕が必要な箇所や範囲が特定されている場合、その部位の適切な修繕方法を具体的に策定するための調査です。
例えば、外壁の再塗装工事を行うとき、塗膜の劣化原因(紫外線、湿度、結露など)や劣化の程度に応じて下地剥離をどの範囲までするか (モルタルまで撤去再生するか、表面だけ剥離するかなど)を決定するために調査を行います。また、給排水管の材質、経過年数、ねじ切り接合部 の施工方法と劣化の程度を調査して、およその修繕方針(更正、修繕、取替え)を決定した後に、部屋タイプ別で異なる施工方法、工事金額の算定の ために行う調査など、工事内容をより明確にするための調査があります。

(5) 工事発注後の調査

外壁クラックやタイルの浮きなどを全面にわたり詳細に調査するには足場をかけなければできません。修繕工事に入って仮設足場をかけてから、 あらためて全面を目視、打診等で調査し、補修方法ごとにマーキング等で補修範囲を特定していきます。

(6) 機能アップのための調査

結露や臭気、防音、安全対策、美観、バリアフリー、情報・通信機能の向上、エコ対策など、さまざまな居住性能のグレードアップを検討するための調査です。
その機能のために必要な設備の設置場所や設置後の維持・保守の方法、電力・ガス・給排水などのエネルギーと環境の負荷など 関連する項目を総合的に検討していきます。共用部の重大変更にあたる場合や、公開緑地など敷地の総合的設計制度に関連する制限事項に抵触する 場合もでてきますから、規約や法令などとの整合性の検討も必要になってきます。

(7) 耐震診断

旧耐震基準で設計された建物を、現行の構造基準(耐震基準)をもとに耐震性を確認します。
構造耐震指標(GIS)は保有水平耐力(Qu)を[必要保有水平耐力(Qun) × 重要度係数(I) ×補正係数(α)]で除した値です。 一貫構造計算プログラムを用い、許容応力度設計を含めて検討を行います。
一般に構造耐震指標(GIS)が0.6未満の建物は耐震改修の対象となります。

補正係数(α)は靭性能とモデル化による補正係数を劣化係数(U)で除した値ですが、 この、劣化係数(U)は現地調査により、経年係数(T)及び品質係数(Q)を求め、劣化係数 U=min(T,Q)を算出します。
経年係数(T)とは、経年劣化により性能の低下を表わす係数であり、品質係数(Q)とは、建築物が竣工当時、既に 持っていた品質の程度を表わす係数です

鉄筋コンクリート造の劣化係数(U)算定表

チェック項目判定基準標準値
経年係数 (T)変   形下記のいずれにも該当しない。
サッシの窓又は扉が開き難い。
肉眼で、梁及び柱の変形が認められる
建築物が傾斜しているか、または明らかに不同沈下している。
1.0
0.95
0.9
0.9
壁、柱の亀裂下記のいずれにも該当しない。
肉眼で、柱の斜め亀裂がはっきり見える。
外壁に数えられないほどの亀裂が入っている
雨もりがあるが、錆が生じていない。
雨もりがあり、鉄筋の錆がでている。
1.0
0.9
0.9
0.9
0.8
変質、剥落下記のいずれにも該当しない。
外部の老朽化による剥離が著しい。
内部の変質、剥落が著しい。
1.0
0.9
0.8
その他特殊事情による劣化(注1)特になし。
若干の低減の必要がある。
低減の必要がある。
1.0
0.9
0.8
品質係数 (Q)施工品質普通
やや不良の箇所がある。
かなりの不良箇所がある。
1.0
0.9
要判定
材料品質問題なし
問題あり(注2)
1.0
要判定

 (注1)「特殊事情」とは、海浜又は多雨地域等の周辺環境や火災経験、化学薬品使用等の条件をいう。
 (注2)骨材等に問題のある場合は、ここで低減を行う。数値は0.8〜1.0とし、数値と共にコメントを併記する。

2. 調査の方法

目視: 目で見て劣化状況を判断する。
打診: テストハンマーを使って音の違いからモルタルなどの浮きを判断する。
触診: 触った感触で、塗装の劣化(チョーキング)やポンプパッキンなどの劣化を判断する。
内視鏡調査: ファイバースコープを配管内部に挿入して内部の錆びや閉塞状況を判断する。
X線調査: コンクリート内部の鉄筋や配管の状況を判断する。
超音波調査: X線調査と同じ。
赤外線調査: タイル全面の浮きなどを一気に調査するために赤外線カメラで撮影して判断する。
コア抜き: コンクリート壁から垂直に直径60〜100mmほどの筒型サンプルをとり、コンクリート内部の中性化やコンクリート強度の状況を判断する。

中性化に対する点検は外観検査が基本となるが、中性化がある程度進行し鋼材の腐食が顕在化するまでは、一般に外観上の変状は認められない。

詳細に中性化の進行を測定するには、以下の方法がある。
コア採取・はつり試験による中性化深さ試験
電気化学的手法による鋼材の腐食傾向・速度
これらの点検結果から、今後の中性化の進行深さを時間の関数として予測し、要求耐用年数との比較により、必要に応じ補強・補修を行う。