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2. 管理組合の震災対応

(東日本大震災の6ケ月後、2011年10月16日開催のフォーラム「管理組合の防災を考える」発表資料より)

2.1 震災復旧の流れ

<第1段階>

発生直後の管理組合の対応

1)各戸の被害の確認、救出活動、消火活動、避難誘導等の自助活動、避難先連絡票の整備

2)役員による共用部分の被害確認、倒壊・剥落等の危険箇所の応急処置、管理会社への連絡

3)大量のがれき処理、ごみ処理、共用部の清掃、ライフラインの復旧見通しの掲示、日常の生活に戻すための活動

4)復旧委員会の立上げ、緊急理事会の開催、集会開催、臨時総会開催等の「後の復旧を見通した活動」の開始

建物及び設備の被害状況

(1)一般的に多く見られる例

「停電・断水」、「防火戸の開放・火災警報鳴動」、「外壁や廊下などに小さな亀裂発生」、「周辺地域の隆起、沈下、亀裂、液状化」、「建物のエキスパンションジョイント部の金物ないし周辺で亀裂、崩落発生」

(2)地域別の差が大きい例

「高架水槽・受水槽の破損、漏水、断水」、「玄関ドア・サッシの開閉不能」、「EVの停止」、「擁壁、塀等の倒壊」、「ガラスの割れ、落下」、「廊下外壁等に大きな亀裂、崩落発生」、「温水タンクの転倒、配管の破断」、「ガス漏れ事故」、「建物一部倒壊」、「落下物による車両の破損」、「立体駐車場から車両が転落」、「EV落下」

2.2 被災判定の種類


3種類の被災判定があります。目的も判定基準も各々異なります。

被災建築物
応急危険度判定

被災度区分判定

災害に係る住家の被害認定

目的

二次的災害の防止

適切かつ速やかな復旧

被害規模の把握、被災者支援策への適用(り災証明書の発行)

判定

当面の使用の可否
(調査済・要注意・危険)

継続使用のための復旧の要否(不要(無被害)、軽微な補修、応急復旧(構造補修)、応急措置または応急復旧、詳細調査、応急復旧不可能(倒壊))

被害程度の認定
(全壊・大規模半壊・半壊・一部損壊)

基準

被災建築物の倒壊危険性及び付帯物の落下危険性等を判定

構造躯体の損傷状況から被災建築物に残存する耐震性能を推定

損壊部分の延床面積比または、経済的被害の住家全体に占める損害割合で判定

実施主体

自治体

被災建築物の所有者が建築構造技術者に依頼

自治体

2.3 応急危険度判定

 応急危険度判定とは

応急とは暫定かつ緊急という意味で、恒久的な使用可否を判定するものではない。

余震等による倒壊や落下物の危険性を判定し、被災建築物の使用にあたっての危険性に関する情報を提供し、 人命に関わる二次災害を防止するため、被災後速やかに応急危険度判定士が被災建築物(通常の木造,S造,RC及びSRC造を対象とし 危険物貯蔵庫は適用外)、判定方法は構造種別ごとに行い、その建築物が使用できるか否か応急的に判定するもの。

この調査は行政が無料で行う。 なお、この調査は罹災(りさい)証明のための被害調査ではない。

応急危険度判定は、平成3年(1991年)に応急危険度判定基準が開発され、平成7年(1995年)1月17日の阪神・淡路大震災で本格的に 実施され、その有益性の認識と経験を踏まえ、その後都道府県において応急危険度判定士の養成登録が行われてきた。

判定結果は、建築物の見やすい場所に表示され、居住者の方はもとより、付近を通行する歩行者等にも、その建築物の危険性について 情報提供しています。

被災建築物の調査を「応急危険度判定基準」に従って行い、判定結果は、 下記の三種類の判定ステッカーを建物の見やすい位置に張って表示します。

ステッカーの表示

判定結果

調査済(緑色)

被災建築物が使用可能なもの

要注意(黄色)

被災建築物に立ち入る場合は十分注意するもの

危険(赤色)

被災建築物に立ち入ることが危険なもの

詳しくは、7. 応急危険度判定のページを参照ください。

2.4 被災度区分判定

 被災度区分判定とは

 被災度区分判定は、応急危険度判定が実施された後の次の段階として、震災建築物の復旧を目的とした被災建築物の所有者からの相談および業務依頼により、震災建築物の主として構造躯体に関する被災度を区分判定し継続使用するための復旧の要否を判定するために行われる。

被災度区分判定は、地震により被災した建築物を対象に、建築構造技術者がその建築物の内部に立ち入り、沈下、傾斜及び構造躯体の損傷状況など、主として構造躯体に見られる損傷状況から被災建築物に残存する耐震性能を推定し、その被災度を区分するとともに、継続的に使用するための復旧の要否を判定する。

財団法人日本建築防災協会と社団法人日本建築士事務所協会連合会が共同で、「震災復旧のための 震災建築物被災度区分判定・復旧技術者講習会」を開催し、「震災復旧のための震災建築物被災度区分判定・復旧技術事務所名簿」を作成して都道府県の応急危険度判定担当部局に送付しているほかホームページなどでも公表している。

地震被害を受けた建築物の復旧をできるだけ速やかに行うために、建築構造技術者と建築物の所有者等との間で復旧のための議論を十分に行い、その手順と費用をあらかじめ明確にしておくことが重要です。復旧の手順は、震災後の時間経過に応じていくつかの段階があり、種々の局面での様々な判断が求めらる。(災害の規模や構造種別により複雑なものとなる場合もある。)

また、被災建築物の復旧後の継続使用は、恒久使用を目的とした復旧がなされるまでの当面の間の一時的な対応であり、必ずしも恒久使用を目的とした耐震性能の確保を保証するものではない。また、耐震診断まで行うかどうかは費用との兼ね合いで建築物の所有者との話し合いによる。

被災度が軽微な場合など、補修で継続使用が可能と判断される場合でも、「建築物の耐震改修の促進に関する法律」等で必要とされる耐震性能を満たさない場合には、別途適切な耐震改修をできるだけ速やかに行うことが必要となる。

2.5 生活を再建させるための手続き

○ 「り災証明書」を申請する。

 被災した家屋や事務所などの被害の程度を証明する書類で市区町村が現地調査を行い、 「全壊」「大規模半壊」「半壊」「一部損壊」の区分で被害のレベルを判定し、「り災証明書」を発行します。 下記の場合に必要となります。

  • 保険金を受給する場合
  • 被災者生活再建支援金を受給する場合
  • 義捐金を受給する場合
  • 税金の減免などを受ける場合
  • 被災者向けの融資を受ける場合
  • 仮設住宅へ入居する場合

(注)加入されている損害保険の補償対象災害とその補償額をご存知でしょうか。
   今一度ご確認をされますように。

○ 主な公的生活再建支援

1.被災者生活再建支援制度
  自然災害により、その生活基盤に著しい被害を受けた方々に、当面の生活資金を給付するとともに、 住宅再建の方針が決まった時には、再建方法に応じた支援金を給付する制度。

2.住宅応急修理支援制度
  「災害救助法」適用市区町村が対象となり、大規模半壊、半壊と認定された住宅の応急修理に対する支給制度。

3.災害弔慰金・災害障害見舞金
  「災害弔慰金」  :自然災害による死亡者・行方不明者の遺族に対して支給される。
  「災害障害見舞金」:自然災害により重度の障害を負った被災者に支給される見舞金。

2.6 復興過程における問題点

1.方針決定の問題点

・非常に混乱した状況の中で適正な情報を収集し、それを各所有者に伝え、通常よりも専門的な知識が要求される中で、所有者の合意形成を 纏め上げていかなければならない。

復興委員会など理事会とは別の組織を新たに作るなど、震災被害を機に区分所有者が手探りで新たな絆と連帯を構築していくことになる。

・被害の程度と戸数規模によって復興方針の決め方は異なってくる。戸数が小さく日ごろからまとまっているところでは比較的スムーズに行くが、 50戸を越すあたりから合意形成が難しくなる。避難している戸数が多いと集まりにくく、通常の場合よりも話し合いの場を持つことは難しくなる。

.同じマンションの中で被害状況が異なるために建替にすべきか補修でいくべきか意見が対立する。

世代によっても異なり、高齢者は補修を望む傾向にある。

.立場の違いがある。店舗と住宅、所有者が居住している住戸と賃貸にしている住戸、ファミリータイプかワンルームタイプかで立場が異なる。

.あなたまかせの住民が多く、そのくせ権利のみを主張する。賃貸にしている外部居住者が多く、遠方への連絡が大変である。

.全員素人なので、専門的なことがわからない。 .集合住宅の区分所有ということを住民がよく理解していない。

.数棟ある建物では被害状況が異なるため、全体で方針を決めるか、個々の棟別で決めるかでもめる。費用負担の算定が問題。

.行政の対応に不満(職員が区分所有法を理解していない、指導があいまいで明確でない、方針決定が遅い)

(参考)

・区分所有法上及び被災区分所有建物の再建等特別措置法の決議には大きく分けて5種類ある。

(1)「修繕」:共用部分の変更にあたらない場合「普通決議=1/2以上」、
        共用部分の変更にあたる場合「特別決議=3/4以上」(区17条)

(2)「復旧」:小規模減失「普通決議=1/2以上」(61条1項3項)、
        大規模減失「特別決議=3/4以上」(区61条5項)

(3)「建替」:「特別決議=4/5以上」(区62条)

(4)「再建」:被災区分所有建物の再建等特別措置法「特別決議=4/5以上」

(5)「解体」:全員の同意が必要

2.改修計画の問題点

・改修計画を作る際の技術者の補修の範囲に対する見方と住民の見方は異なる。
両者が十分話し合ってその違いをすり合わせなければ、住民に不満が出てくる。
(応急的な震災被害の復旧・機能回復なのか、経年劣化の修繕も含めての恒久的な対策なのか)

・再建情報の洪水とコンサルタントの助言、区分所有者の思惑が入り乱れて混乱する。

・業者の見積には平常時よりも時間がかかる。業者がのってこない。

改修計画の問題点はコンサルタントの質(経験、技術力、提案力)の問題に起因するところが大きく、 大規模修繕の際のコンサルタントの選定の条件も実は同じなのですが、震災の際は、大規模修繕の経験のない、 又は不慣れな建築士等が改修計画を担当することによる問題点が鮮明になっています。

2.7 震災便乗商法に注意

災害時は災害に便乗した悪質な業者による調査やセールスが発生しています。 行政からの判定員と同じように胸に名札をつけて行政からの調査のように思わせ、 廃棄物処理や解体・修繕工事を法外な価格で勧誘しています。 不審な場合は、登録証の提示などを必ず求めて身元を確認してください。
 お年寄りの家庭が彼らのターゲットになりやすく、がれき処理をしていたマンションの役員が、 近隣の住戸の一人暮らしの老婦人と業者との話しがどうも怪しいと感じて、 割り込んでいって、相手の名札を見て撃退したこともあります。

「復興の中で欠陥住宅を産み出さないために」〜 16年前の被災地神戸からの緊急アピール 〜
平成23年5月29日 欠陥住宅被害全国連絡協議会(欠陥住宅全国ネット) 第30回神戸大会参加者一同
(下記はその中の一部を抜粋したものです。)

阪神・淡路大震災の後、多くの住宅が一時に建築されましたが、その際、
@建築工事に従事する者が未熟練あるいは多忙により、法遵守の意識や作業の水準が落ちる、
A建築資材が払底し、間に合わせの資材を使用したり、承諾のない仕様変更が横行したりする、
B悪質施工業者が、当初から利潤だけを目的に施工を行う、
C住宅取得者の側も「設計・監理」と「施工」との分離を求める意識が低かったうえ、当時の建築基準法のもとで完了検査率は低く、中間検査制度も未だ導入されていなかった、
といった要因により、多数の欠陥住宅が産み出されました。
その後、完了検査率の上昇、建築基準法の改正による中間検査制度の導入等の手当がされてきましたが、大震災直後の復興需要時期においては欠陥住宅が産み出されやすい状況にあることは、現在も変わりません。

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