共同住宅の防火と防災 目次 >【前頁】3. 応急危険度・損傷度判定基準  >  4. 災害に係る住家の被害認定 > 【次頁】 5.要災害支援者名簿の注意点

4. 災害に係る住家の被害認定

(東日本大震災の6ケ月後、2011年10月16日開催のフォーラム「管理組合の防災を考える」発表)

4.1 被害認定を実施する目的

(1)災害による被害規模の把握(災害対策基本法第53条に基づく被害情報の報告
   ・災害救助法、被災者生活再建支援法等の適用
(2) り災証明書の発行(り災証明書は各種被災者支援策に関連)>

4.2 被害の認定基準

被害の程度

認定基準

全壊

 住家がその居住のための基本的機能を喪失したもの、すなわち、住家全部が倒壊、流失、埋没、焼失したもの、または住家の損壊が甚だしく、補修により元通りに再使用することが困難なもので、具体的には、住家の損壊、消失若しくは流出した部分の床面積がその住家の延床面積の70%以上に達した程度のもの、または住家の主要な構成要素の経済的被害を住家全体に占める損害割合で表し、その住家の損害割合が50%以上に達した程度のものとする。

大規模半壊

居住する住宅が半壊し、構造耐力上主要な部分の補修を含む大規模な補修を行わなければ当該住宅に居住することが困難なもの。具体的には、損壊部分がその住家の延床面積の50%以上70%未満のもの、または住家の主要な構成要素の経済的被害を住家全体に占める損害割合で表し、その住家の損害割合が40%以上50%未満のものとする。

半壊

住家がその居住のための基本的機能の一部を喪失したもの、すなわち、住家の損壊が甚だしいが、補修すれば元通りに再使用できる程度のもので、具体的には、損壊部分がその住家の延床面積の20%以上70%未満のもの、または住家の主要な構成要素の経済的被害を住家全体に占める損害割合で表し、その住家の損害割合が20%以上50%未満のものとする。

 

4.3 住家とは

・住家とは現実に居住のため使用している建物をいい、社会通念上の住家であるかどうかは問わない。

・集合住宅の扱い

  原則として一棟全体で判定し、その結果をもって各住戸の被害として認定する。
ただし各住戸間で明らかに被害程度が異なる場合は、各住戸ごとに判定し認定する。
集合住宅等の大規模なもので、全体で調査、判断することが困難な場合は、被害が最も大きいと思われる階のみを調査し、全体の損害割合として差し支えない。

「構造耐力上主要な部分」とは、被災者生活再建支援法施行令第2条により、建築基準法施行令第1条第3号に定めるものとする。具体的には、住宅の荷重を支え、外力に対抗するような基本的な部分(基礎、基礎ぐい、壁、柱、小屋組、土台、斜材(筋かい、方づえ、火打材その他これらに類するもの)、床板、屋根版又は横架材(はり、けたその他これらに類するもの))等を指し、構造耐力上重要でない、間仕切り用の壁、間柱、畳、局所的な小階段等は含まない。

4.4 被災者生活再建支援の法制度

行政の誤った認定による不当利得は受益者の住民が返還する義務を負う
として被災者に支給済みの支援金の返還を命じた。
○ 最高裁(令和3年6月4日)判決「被災者生活再建支援金支給決定取消処分」

裁判の背景 (被災者生活再建支援の法制度)

○ 災害救助法(昭和22年(1947年)10月18日法律第118号)
 災害救助法は、政令で定めた災害の被災地における応急的な被災者保護を目的
とする(同法1・2条)。具体的な救助内容(同法4条1項に列記)の「被災した住宅の
応急修理(同条6号」では、半壊以上の被害を受けた住宅について、1世帯あたり
56万7千円の限度で応急修理への支援があるが、これには所得制限があり、日常
生活に必要な最小限度の部分に限られ、資金供与の形ではなく自治体が工事発注
を代行する現物給付の形をとっている。更に応急修理を行うと仮設住宅への入居は
認められない。(内閣府告示第228号「災害救助法による救助の程度、方法及び期間
並びに実費弁償の基準」)。

 災害救助法は、災害時に自治体から無償貸与される「応急仮設住宅」の法的根拠であり、
平成7年(1995年) 1月17日の阪神・淡路大震災の仮設住宅の戸当り建設費は2,867,000円、
新潟県中越地震では4,725,864円、能登半島地震では5,027,948円だった。その後も
平成23年(2011年)3月11日の東日本大震災では、574万円(福島県)、664万円(宮城県).、
568万円(岩手県)と上昇した。(金額はいずれも1戸(29.7u=9坪)当たりのプレハブ建設費)

 応急仮設住宅の供与期間は原則2年だが、1年ごとに更新されて5年以上継続使用されて
いるケーズもある。だが、いずれ解体撤去される。仮設住宅にかかる費用を個人被災住宅
の修理費用にあてて、自宅を継続使用してもらったほうが経済的社会的合理性がある。

 阪神・淡路大震災では、住宅再建への支援は私有財産の形成に公費を投じることに
なるので認められないという政府見解により、義援金以外の金銭給付の国の支援は
なかったことに「住居を私権の財産的視点のみで捉え、生活的視点や社会的視点を
欠いている」との社会の批判が高まり、全国的な市民運動により、1998年(平成10年)、
第2次橋本内閣第142回通常国会で、被災者生活再建支援法が成立した。

○ 被災者生活再建支援法(平成10年(1998年)5月22日法律第66号)
 法の制定時は住宅再建資金への使用が禁じられ、金額も再建資金としては極めて
不十分であったが、1999年(平成11年)〜2020年(令和2年)の6度にわたる改正によって、
住宅再建の方法に応じて最大300万円が世帯主に支給される制度となった。
(同法第18条 支援金の額の2分の1に相当する額を国が補助する。)

 東日本大震災は、改善された被災者生活再建支援法がはじめて本格適用された災害で
あったが、現実に住宅を再建するには全く足らず、被災自治体の岩手県では独自の資金
上乗せ制度を設けるなどして不足分の手当てをしているが、それでも半壊以下の災害には
全く支援がないこと、非居住の所有者は支援の対象外であることなどの問題は残っている。

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