「管理組合の運営」 > 【住民へのハラスメント】 (1)抗告に対する決定  > (2)一審判決 > (3)控訴審判決 > (4)あとがき・訳注

住民へのハラスメント (1) 抗告に対する決定 (2021 ONCAT 1)

同一事件の3つの裁判の判決を、論評なしでそのままご紹介しています。本頁は最初の(1)抗告に対する決定 です。

(1) 抗告:2021年 1月12日(2) 判決:2021年 2月16日(3) 控訴審判決:2021年10月28日
事件番号: No. 2021 ONCAT 1事件番号: No. 2021 ONCAT 13事件番号: No. 2021 ONSC 7113
コンドミニアム裁判所裁判官(CAT):
Michael H. Clifton
コンドミニアム裁判所裁判官(CAT):
Laurie Sanford
オンタリオ高等裁判所裁判官:(3名)
F.B. Fitzpatrick /  S.T. Bale /
Kristjanson JJ.
MOTION DECISION
抗告に対する決定 (訳注1)
REASONS FOR DECISION
判決理由
ENDORSEMENT
控訴棄却・原審判決確定

抗告棄却:全8P

判決(原告勝訴):全16P

控訴棄却:全6P

事件の概要

ここは来客用だとして共用部の障害者用駐車場を障害者の区分所有者に使わせなかった管理組合に対し、
障害をもつ区分所有者が、使用者適格と管理組合によるハラスメントの確認を求めて裁判所(CAT)に提訴
(1) 被告管理組合は、裁判所(CAT)には裁判権がないとして抗告し、CATはこれを棄却(2021 ONCAT 1)
(2) 裁判所は原告の使用者適格と管理組合によるハラスメントを認定、管理組合に損害賠償を命令(2021 ONCAT 13)
(3) 敗訴した管理組合は高等裁判所に控訴、高等裁判所はこれを棄却。原審判決が確定(2021 ONSC 7113)

本頁 (1) 「抗告に対する決定」(2021 ONCAT 1) MOTION DECISION 目次
(1) 裁判所への申立てに対する決定
     裁判却下を求める申立に対する決定
     裁判却下を求める申立て内容
     争点ー裁判所実務規則 17.1 (b)
     争点ー裁判所実務規則 17.1 (c)
     決定

(1)抗告 裁判却下を求める申立に対する決定(2021 ONCAT 1)

CONDOMINIUM AUTHORITY TRIBUNAL

DATE: January 12, 2021
CASE: 2020-00371N
Citation: Rahman v. Peel Standard Condominium Corporation No. 779, 2021 ONCAT 1
Order under section 1.44 of the Condominium Act, 1998.
Member: Michael H. Clifton, Vice-Chair
The Applicant,
Aqib Rahman / Self-Represented
The Respondent, 
Peel Standard Condominium Corporation No. 779
Represented by Victor Yee, Counsel

コンドミニアム裁判所(CONDOMINIUM AUTHORITY TRIBUNAL)

判決日:    2021年1月12日
事件番号:   2020-00371N
事件名:    ラーマン 対 ピール スタンダード コンドミニアム管理組合(登記番号779), 2021 ONCAT 13
準拠法令:   共同住宅法1998 1.44
裁判官     ミッシェル.H.クリフトン(コンドミニアム裁判所副議長判事)
原 告:   アキブ・ラーマン/本人弁護
被 告:   ピール スタンダード コンドミニアム管理組合(登記番号779)(”PSCC779”と略)
       代理人  ビクター・イー(弁護士)

裁判却下を求める申立に対する決定 (MOTION DECISION)

[1]  本件の原告は、被告管理組合が管理する共同住宅共用部の「障害者が利用可能な駐車場
  (accessible parking)」について、原告がその使用者適格を有することの確認判決を求めて提訴
  したものである。被告管理組合は、原告がこの駐車場を使用することを、共同住宅の宣言書の
  規定条項を根拠に拒否してきた。

  被告は、本訴訟はコンドミニアム裁判所の裁判権限から逸脱している確かな法的根拠があると
  して、本件訴訟を却下するよう求める本申立てを行ったものである。

  裁判官は、両者の主張を聞いた上で、本件訴訟の却下を求める被告の申立てには充分な根拠、
  がなく申立てを棄却し、係属訴訟の聴聞手続きを進めることととした。以下にその理由を述べる。

裁判却下を求める申立て内容 (Motion for Dismissal)

[2] 被告の申立て理由となっているのが、コンドミニアム裁判所実務規則(Tribunal’s Rules of Practice)
  の17,1項の (b)号と (c)号の規定である。それらは下記のように規定されている。

   17,1項 コンドミニアム裁判所は、下記の事実に基づき、いつでも訴訟の審理を却下することができる。
   (b) コンドミニアム裁判所に当該事件の聴聞または判決を下す権限が付与されていない事件
   (c) 原告が不正な目的(例えば、人を困らせる厄介な訴え)で裁判を利用しようとしているとき

[3] 被告は裁判所実務規則17.1項 (b)号について、  
  共同住宅法(Condominium Act, 1998)の117条に関連した事件は、コンドミニアム裁判所には
  当該事件の聴聞または判決を下す権限が付与されていないと主張する。

  しかしながら、コンドミニアム裁判所の権限と運営管理規定を定めたコンドミニアム裁判所規則179/17
  1(1)(d) ,(i)号は、コンドミニアム裁判所に次のように裁判権限を付与している。
  「共同住宅の宣言書、管理規約、使用細則等に敬意を払い、それらが規定している禁止及び制限事項
  または、駐車場の管理等に対し、それらの紛争を解決すること」
    (訳注)コンドミニアム裁判所実務規則及びオンタリオ州法179/17 については
        訳注(4)「 共同住宅法(コンドミニアム法)の法令体系」 を参照

  これらは、本件係属訴訟事件の中心的争点であり、同法1(3)項の制限規定は、
  「紛争における裁判権は、これらもまた、法117条に敬意を払って行う」と規定している。

[4] 被告は裁判所実務規則17.1項 (c)号について、下記のように主張する。
  原告は「裁判制度を悪用して、人を攻撃するために」訴訟に持ち込み、さらに脅しを目的として、
  さまざまな他の法的手続きを使って同様の状況を作り出している。

争点ー裁判所実務規則17.1項 (b)
    コンドミニアム裁判所規則1(3) 項の制限規定に対して
    当裁判所に当該事件の聴聞または判決を下す権限が付与されているか?

(Re: Rule 17.1(b) Does the Tribunal have legal power to hear and decide this case despite the restriction set out in section 1(3) of Ontario Regulation 179/17 )

[5] 上記で示した通り、コンドミニアム裁判所規則179/17の1(3) 項は、コンドミニアム裁判所の裁判権
  に関して、コンドミニアム法117条を遵守する制限を設けている。
  コンドミニアム法117条の規定を下記に示す。
    「なんびとも他人に障害を与え、または共用部の資産を損傷するような室内の行動或いは
    共用部への物品の搬入を許可する権限を有しない。」

[6] 被告は、本件紛争には「法117条に敬意を払って行う」との規定に抵触する二つの問題があると主張する。
  最初に、被告は次のように主張する。
  「原告は本件に関する理事会と管理者の行動はハラスメントを構成するというが、それは原告が
  引き起こしたものである。そして注目すべきは被告が原告にハラスメントをしていると告発した事
  である。次いで、被告は「原告が自分自身の安全が危険であるという事を強調していることを
  確認した」と主張した。

[7] コンドミニアム裁判所規則179/17の1(3) 項に関して、被告は「法117条に敬意を払って行う」との規定
  について、広く解釈しなければならないということを暗に主張している。
  ここで二つの最高裁判例を引用することにする。
   ナウジック 対 国家賠償訴訟(Nowegijick v. The Queen, 11983 CanLII 18 (SCC), [1983] 1 SCR 29
    (“Nowegijick”) と カナディアンオキシ ケミカルズ 対 カナダ司法長官(CanadianOxy Chemicals Ltd.
    v. Canada (Attorney General), 1999 CanLII 680 (SCC), [1999] 1 SCR 743 (“CanadianOxy”),
  この二つの判例で最高裁法廷は厳密な法令解釈を提供している。

[8] ナウジック判決において、ディクソン判事(Dickson J)は判決において次のように述べている。
  「敬意をもって」("in respect or" [sic] )(訳注 [sic]=原文ママ の意味で、orではなくofの誤記を指摘)
  という用語は、私の意見では、広い概念を含んでいる。

  それらには「(具体的に)・・に関係する」("in relation to")、
  「(参考となる)・・に関連する」("with reference to")、或いは、
  「(因果的・論理的に)・・につながる・関係する」("in connection with" )の意味を含んでいる。

  「敬意をもって」("in respect of")の語句は関係する二つの主題を伝える意味で用いられる表現である。 
  カナディアンオキシ判決においても、「〜に敬意をもって」(“with respect to”)の法文解釈において同様の
  概念を適用している。

[9] 裁判官は被告が主張する「裁判官は分析の結果を基礎として訴訟指揮を行うべき」との意見に同意する。
  それは、コンドミニアム裁判所規則179/17の1(3) 項に適合する広い法解釈を与えるということである。
  然しながら、「可能な限り最も広い見方」ということは、「制限なしの」ということではない。
  そして、裁判官は、本訴訟に関してコンドミニアム裁判所の関与を排除する被告の立場には同意しない。

[10] カナディアンオキシ判決の論証の基礎となっているのが、「〜に敬意をもって」(With respect to)
  というフレーズであり、それは特に段落[15]において明確に表れている。
  この判決で用いられている「関連性(relevance)には、{(当面の問題にとって)適切な関連のある(relevant)」、
  または「道理をわきまえた合理的な(rationally)」の意味が特に含まれていると捉えるべきである。

  カナダ法において最も普遍的に用いられている基本的な原則「証拠に基づいて」(regarding evidence)
  という語を、論理と表現面から見ると、事件の判決に「(影響を及ぼして)作用する」、
  又は「(影響を及ぼす)関連のある適切な」(affect or influence )【証拠】いう意味である。

  「合理的関連」(Rational connection)もまた、カナダ法で普遍的に用いられている語で、
  この中の「関連」(connection)という語は、論理的または実際的に必要なものを結合するという
  意味であって、決して「独断的な」又は「無意味で馬鹿げた」ものを結合するという意味ではない。
  この判決では、他にも同様に、適正さと公正さを命じているところがある。

[11] 裁判官は、コンドミニアム裁判所規則179/17の1(3) 項にこの論証の趣旨を適用して、以下のように
  判断する。本件は、損害または損傷に対する懸念または危険は、時と場所によって、或いは状況に
  よって、偶然に、又は、偶発的に生じるものと考える被告の主張は、単に自説を主張するだけのもの
  で、深く考えるべき問題ではないと結論づける。

  むしろ本件は、裁判となって争う前から、「法117条に敬意をはらって」見るべきであった。
  充分な考慮を払うということは、合理的に、或いは簡単に分離することができないものであるところ、
  本申立て理由に示した問題提起における紛争の分析、とりわけ、紛争における中心的争点の事実に
  合致した正しい決断力は、このような充分な考察なしに生れる事はない。

  被告は本件において、そのようないかなる因果的・論理的関係性も、現在の問題との関連性も示さなかった。

[12] 他人に対する嫌がらせ(ハラスメント)に関する当事者のそれぞれの陳述における被告の主張について云えば、
  法117条を適用して、その範囲内で判断する事が可能であるとの被告側の判断には、裁判官は同意しない。

  被告は本件裁判の却下を申立て、その理由をコンドミニアム裁判所規則179/17の1(1)(d)項で規定されている
  当裁判所の裁判権限に充分には該当していないことを主張の根拠の基礎としている。

  早くから注目されてきた事だが、被告が、共同住宅宣言書と管理規約・使用細則の規定を根拠に、同共同住宅
  の共用部にある障害者が使用可能な駐車場区画(Accessible common elements parking space)の使用者
  適格について、原告がこれを使用することを拒否してきた被告の主張が、本件紛争の中心的争点である。

  本件紛争をもたらしたハラスメントに関する陳述において、本件紛争を決定付ける合理的かつ正当な関係性は
  存在しない。たしかに、本件紛争を、被告陳述のように、ほかの事を考慮にいれず、複雑にしないで当事者の
  主張を援用し、勇気づけて解決することができることは明白である。

[13] 以上述べてきた原則を本件事実に適用して考えていく中で、数多くの紛争を見てきた裁判官には、気づいた
  ことがある。それは当裁判所にはかなりの人が訴えを持ち込むが、その中には、少なからず、他の当事者に
  対して嫌がらせ(ハラスメント)または扇動(アジテーション)の意思をもって論争するために告訴する人達が
  少なからず存在するという事実である。裁判官は本件においても同様の思いを、たびたび感じてきた。

  もしも、裁判官が、事件の中心的な争点に対する幾つかの合理性や正当性を考えることなく、そのような状況
  下にある被告だけの主張に同意したとしたらどうなるであろうか。 
  被告は本裁判の忌避を求めて申立てしているが、忌避の申立てには他に高等裁判所への上告という手段が
  ある。仮に本申立てと同様の内容で高等裁判所に上告したとしても、当裁判所内での審理で得られる以上の
  広い法解釈が得られることはないであろう。

  当裁判所内の審理には他にも合理的・合法的な面があり、単に審理を忌避するだけの申立てではなく、
  被告に許可を与え、勇気づけられることもまた可能である。

  このことによって、本裁判所が理路整然として筋道の通った合理的で重要かつ有意義で効果的な判決を
  提供することが容易になる。

[14] 被告が本聴聞において主張した第2の訴え内容は法117条に関係するものである。それは原告自身の
  意見陳述において、原告に共同住宅共用部の障害者用駐車場の利用者適格が与えられるかどうかの
  彼の安全性に関係するものであった。

  裁判官は原告の陳述に注目する。 それは原告の主張のごく僅かな一部で、たった一回の偶発的事象に
  すぎないものであった。裁判官はさらに本件訴訟において原告が代理人弁護士を付けずに、本人訴訟で 
  臨んでいることにも注目する。被告が自らに有利な関係性を積極的に主張しているのに対して、
  原告は自分の安全に関して表現できていなかったかも知れないと裁判官は予想する。

  いずれにせよ、原告主張のすべてを包括し、上記で述べた理由を適用した上で、原告は、裁判所に対して
  本件を「法117条に敬意を払って」、判決を出すことを望んではいないことを認める。

  同時に、原告の安全に対する関心事は正真正銘のものであり、駐車場の使用権に対する適格性の争点は
  申立てたリスクの評価次第で決定するという被告、或いは原告主張のどちらでもないと裁判官は確信する。

  (訳注) ここでの安全に関する主張の中身は、 次の (2)一審判決・[20]段 で明らかにされています。

[15] 裁判官は、当裁判所の管轄から離れて、安全(または損傷または他の幾つかの事情)に関して考慮すべき
  価値はないこと、或いは、法117条の範囲内で解決すべき他の事情に関しては、関係性または正当性を取り
  上げる必要性はないことを一般的な原則として認める。裁判官はまた、本件にはそのような関係性はないこと
  も認める。

  裁判官は、被告が本件裁判の当事者聴取を拒否し、かっこうな時間稼ぎのために附帯的な手段として本申立て
  を利用していることが本質的な基礎になっていると信じざるを得ない。

規則17.1(c)Re: Rule 17.1(c) 争点ー裁判所実務規則17.1項 (C)号
    原告が不正な目的でCATを利用しようとする事案か?

(Re: Rule 17.1(c) Has the application been brought for an improper purpose? )

[16] 被告は、本件は原告が裁判制度を悪用して面倒な揉め事を起こすことを目的として提訴したものであり、
  原告が不正な目的で裁判所を利用しようとする事案であるという理由で、裁判却下の申立てを提出した。

  この申立てにおいて被告が最初に提出した証拠として、原告がオンタリオ高等裁判所(OSCJ)の管轄下
  にあるオンタリオ人権裁判所(the Human Rights Tribunal of Ontario " HRTO")への申立て、及び、
  被告管理組合側弁護士に対して、オンタリオ法曹協会(Law Society of Ontario "LSO")への申立て、
  などの複合的な手続きを開始し、”脅し” を掛けてきたことを証言した。

  被告管理組合及び被告側弁護士は原告からこのような犯罪的な脅迫を受けていたのであり、それらは
  管理組合の理事会の管理運営についても同様であると証言した。

[17] 同一の問題をさまざまな裁判手続きで行ってきたことは裁判制度の悪用を構成するものである。
  それらは通常は、不当なまたは不合理な行為を更に進める目的での手続きと特徴付けられるもの
  である。

  これらは本件裁判の棄却を求める原告が質疑応答なしでの主張の中で述べてきたことである。
  原告は、障害者が利用可能な共用部の駐車場及びその動線区域の使用を拒否してきた。そして、
  その区域は管理組合が多目的利用の選択肢を確保するために把握し管理している場所である。

  裁判制度の悪用に関して省みれば、被告は下記を主張してきた。
    オンタリオ法廷においては、多重訴訟は無効としなければならない。
    訴訟手続きの多様化は公的資源の無駄遣いである。

  これらの主張は一般的な原則の的確な表現であるが、然しながら、それらは、本件が手続き上の
  脅迫または、不正な目的を構成していることの証明にはならない。

[18] 裁判官は、被告の防御証言及びOSCJへ申請書の写しの提供を受けてきた。これらの基礎に、 
  なっているものは、原告の「障害者が使用可能な駐車場」の使用者適格をめぐる問題であり
  それらはより広い見方に基づいて検討されなければならない問題を含んでいる。

  当事者間のそれぞれの主張には、当事者間のハラスメント(harassment)、及び、
  先取特権の執行(lien enforcement)の問題が含まれている。
  (訳注)ハラスメントと先取特権の問題は、次頁の (2)一審判決 で明らかにされます。

 本申立てにおける被告の基本的な立場は、本件のような事件はOSCJでの適切な裁きに委ねる 
 べきというものであり、本裁判官もそれに同意するものである。

 一方において、当裁判所は、共同住宅法1.42(1)項に基づいて設置された専門的な裁判所であり、
 裁判官が本件紛争の中心的な争点と認識している「障害者が利用可能な駐車場」の適格性に
 ついての問題に有効な判決を下すことができる特別な裁判所である。
 それゆえに、当法廷の聴聞を通じて完全に紛争解決の目的に適合させる事ができるのは明白
 である。

 更に云えば、COVID-19パンデミックによる裁判所の未処理の残務増大などによる状況の悪化に
 対して、本件聴聞手続きを速やかに進めて効率的に紛争解決を目指すほうが、OSCJを通す
 よりもはるかに簡単で手早く片付けることができる。

[19] 被告側弁護士はまた、当法廷が本件を扱う事ができるのかについて疑問を呈している。
 被告側は、本件が高等裁判所の管轄で扱われるべきであると主張している。
 コンドミニアム裁判所は本件の裁判籍を有していないとする理由を被告側は下記のように
 記している。

      たとえ、コンドミニアム裁判所が駐車場使用適格性について判断を下したとしても、
      被告側がコンドミニアム裁判所判決に従わなかったことを理由として、ラーマン氏は
      更に高等裁判所に控訴することになる。高等裁判所はコンドミニアム裁判所よりも
      判決の執行力への信頼も高いので、コンドミニアム裁判所は高等裁判所の代わり
      にはなりえない。

 高等裁判所への提訴は信頼がある分、裁判費用はより高くつくので、代わりに本件訴訟を
 選択したと考える被告の主張の基本となっているのは、コンドミニアム裁判所の現在までの、
 判決を見て管理組合はコンドミニアム裁判所の判決は拒否できるという思い込みがあるが、
 それは被告が根拠もなく決めてかかっていることである。

 この主張にはいうまでもなく、当裁判所に不信と軽蔑を示す冷笑と皮肉のシニシズム(Cynicism)
 が存在していることは被告の率直な感情であろうと推察される。この事はまた、コンドミニアム
 裁判所が、公正を重んじ時機を計って効果的な共同住宅の初期紛争の解決に尽力してきた
 事実を無視しているようにも見える。

 もしも、裁判官がこの被告の立場を信じたとしたら、裁判官は共同住宅に関連する紛争において
 不適切な背信行為を犯すことになるであろう。

[20] 原告のオンタリオ人権裁判所(HRTO)への申立てを考慮して、カナダ高等裁判所における
 「トランシェモンターニュ対オンタリオ州長官、障害者支援プログラム」(訳注(5)(HRTO Claim)
 についての判決ではHRTOは、オンタリオ州人権法に係る排他的裁判権は有していないとの
 判断が示された。
 当裁判所は、HRTOの管轄下にある人権法関係の裁判権を有している。

 本件はオンタリオ州人権法に抵触する内容を含んでいる。従って、当裁判所には裁判権がないと
 する申立てを上記の理由で却下することができる。さらに進んで、当裁判所はオンタリオ州人権法
 のもとで人権侵害に対する矯正命令を発することができる。このことは原告が受けている悩ましい
 確信がもてない手続き上の問題に対しても、HRTOが為しうる制限範囲を超えた充分な判断を、
 当裁判所は行うことができる。

[21] 本件が、オンタリオ法曹協会(LSO)への苦情と脅迫を理由として刑事訴訟が可能であること
 について明白な証拠があるとする被告の主張については、たとえ、個別の関係性を基礎としても、
 本裁判で取り上げることはない。そのような主張は裁判権の濫用(乱訴)につながるものである。

[22] 被告はまた、原告がコンドミニアム裁判所実務規則の第2段階以降で訴訟手続きの濫用行為
 を行っていると陳述する。これらの立証に必要不可欠な証拠はないので、これらの主張に同意は
 できない。原告・被告双方の当事者が第3段階に進む入口に達していることは確実である。
 (訳注) この3段階の手順は、「控訴審判決パラグラフ[8] 法令の体系」で説明されている。

[23] 裁判官はまた、原告の事例をやっかいな事件として形容する正当性については納得していない。
 やっかいな事件と表現するには、(1)充分な、或いは適切な背景や成功の見込みなしに、
 (2)被告の事態を悪化させ、深刻化させる目的が根底にある事の二つが含まれていると考える
 べきである。

 原告は障害者用駐車場の使用適格に関する原告の権利の請求を主張しているが、被告は本申立て
 の陳述において、その原告の主張には適切かつ充分な説明が欠けている、もしくは、そのような
 主張が成功する見込みはない旨の説明をしてこなかった。

 その上で、裁判官は被告が本事件をさらに悪化させるように意図していると理解する。
 裁判官は原告が誤った目的で本件提訴を意図したものとの主張を支持することはできない。

決定(Conclusion)

[24] 上記で述べた理由により、本件申立ては棄却する。
    係属事件の聴聞は予定通り開始する。 
    本件訴訟費用は、当事者のいずれも課されない。


(以上 マンションNPO 訳)       (2022年9月20日初版掲載・随時更新)
(Initial Publication - 20 September 2022/ Revised Publication -time to time)