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4.世界の民泊事情

世界の民泊事情

世界中で既存のコミュニティに割り込んで増殖していった民泊は、 現在、多くの国で社会問題になっています。

1. 民泊仲介業者の収益構造

エアービーアンドビー(Airbnb)社の場合、 2017/5時点で191ヶ国、65,000都市で1億5,000万人(宿泊者数 50万泊/日)が利用し、 部屋を提供するホストから3〜5%の、宿泊するゲストから総宿泊料に応じて6〜12%を、 それぞれ徴収する手数料が事業収入です。
ホストが20%の手数料を支払い、ゲストの手数料チャージを無料にするサービスもあります。

○ 日本国内で民泊仲介業者に登録されていた部屋の数

特区民泊や民泊新法が施行される以前から日本でも既に民泊が行われていました。
中国系の「携程」の日本法人「シートリップジャパン」及び、 米国系の「Airbnb}の日本法人「Airbnb Japan」も共に2014年5月東京に設立され、 世界の民泊仲介他社も同様に相次いで日本の営業拠点を開設しています。

訪日外国人の数で圧倒的に多いのが中国人ですが、 中国からの訪日観光客に日本国内の民泊を紹介して手数料を稼いでいるのもまた中国系民泊仲介業者です。

(マンションNPO作成 2018.5.20)

2.世界の旅行業界の流れ

シェアリング・エコノミー
 シェアリング・エコノミー(Sharing Economy)とは個人が保有する遊休資産の貸出しを仲介するサービスの総称です。 民泊は宿泊する部屋を提供するバケーションレンタルサービス(Vacation Rentals Service)に含まれます。
その他、シェアリング・エコノミーには、配車アプリでライドシェア(相乗り)事業を展開するUber(ウーバーテクノロジーズ)や 国内で日産自動車などが手がけるイージーライドなどがあります。

オンライン予約サイト(OTA)
 OTA(Online Travel Agency)とは旅行プラットフォーム事業の中で、 店舗をもたないオンライン旅行予約事業者のことで、 日本でも楽天トラベル、じゃらん、るるぶトラベル、一休.com等がOTAです。

近年、OTAの取扱高は既存の店舗を構えた旅行業者の取扱高をはるかに上回っています。 Expedia(エクスペディア)社は世界最大手のOTA事業者で、独立系のバケーションレンタルサービス業者を次々に買収し、 既存の旅行プラットフォーム事業領域を拡大しています。 民泊仲介業界はOTA業界と独立系との生き残りをかけた熾烈な戦いの場になっています。

個人手配の自由旅行(FIT)
 FIT(Free Individual Travel)は個人手配の自由旅行のことで、 旅行会社が企画するパッケージツアーではなく、クチ込みサイトからの情報で個人が自由に旅行先を選ぶ時代の到来です。

ヤミ民泊と各国の規制
 民泊は個人の投機対象にもなっています。 民泊投機目的で住宅を購入し、匿名で登録できる民泊仲介サイトを利用してヤミ民泊を行い、 近隣トラブルや違法摘発を受けると転売して規制の網を逃れる新しい投機ビジネスも出現、 民泊は従来の賃貸よりも高収益が得られるため、賃貸から民泊への転用で賃貸物件が減少、 家賃が高騰し、賃貸住民が都市から追い出される(社会学ではこれをジェントリーフイケーション(gentrification:富裕層化)という)、 宿泊料金の低価格化競争の末、 民泊に客を奪われて既存のホテル業界が打撃を受けているなど、 都市住民の生活環境に深刻な影響が出始めたため、各国も規制に乗り出しています。

3.各国の民泊仲介サイト

日本の民泊登録物件がある主なバケーションレンタルサービス(Vacation Rentals Service)業者

サイト名呼称 所在地 設立年
VRBO Vacation Rentals by Owner 米国 1996年 2006年11月HomeAwayに買収されグループ傘下に入る。
Holiday Lettings ホリデーレッティングス 英国/ロンドン 1999年 2010年6月にTripAdvisorに買収されグループ傘下に入る。 2015年12月時点で、世界150ヶ国以上で43万件以上の登録物件がある。
HomeAway ホームアウェイ 米国/テキサス州オースティン 2005年 2015年12月Expediaに買収されグループ傘下に入る。 2015年12月時点で世界190ヶ国で100万件以上の登録物件がある。
VacationRentals.com バケーション・レンタル・ドットコム 米国 約3万件の物件があった2007年5月、HomeAwayに買収され傘下に入った。
Airbnb エアービーアンドビー 米国/サンフランシスコ 2008年 2018年2月時点で世界8万1千の都市に450万件以上の登録物件をもつ。 日本法人のAirbnb Japanは2014年5月設立・東京
Trip Advisor トリップアドバイザー 米国 2011年、Expediaから独立、Flipkey、Holiday Lettings、Niumba(ニュンバ)などを買収
Flipkey フリップキー 米国/ボストン 2007年 2008年8月にTripAdvisorに買収されグループ傘下に入る。 2017年5月時点で世界1万1千都市に30万件の登録物件がある。
Holiday Lettings ホリデーレッティングス 英国/ロンドン 1999年 2010年6月にTripAdvisorに買収されグループ傘下に入る。 2015年12月時点で世界150ヶ国以上、約43万件の登録物件が掲
Niumba ニュンバ スペイン 2005年 20103年にTripAdvisorに買収されグループ傘下に入る。 2015年12月時点で、世界150ヶ国以上で32万件以上の登録物件がある。
House Trip ハウストリップ スイス 2010年 2016年4月、TripAdvisorに買収されグループ傘下に入る。 2015年12月時点で、世界2万都市に30万件の登録物件がある。
Agoda アゴダ シンガポール 2005年 2007年からは世界最大手の旅行会社Priceline Group(プライスライングループ)の傘下に入る。 2010年にAgoda International Japan設立、2015年4月大阪、2015年7月福岡、2016年4月札幌、沖縄オフィス設立
OneFineStay ワンファインステイ 英国 2009年 2016年4月、フランスのホテルグループ大手のアコーホテルズに買収。
Roomorama ルーモラマ シンガポール 2009年 2017年7月にサービス停止発表
Wimdu ウィムドゥ ドイツ/ベルリン 2011年 ロケット・インターネット社のグループ企業
9flats ナインフラッツ ドイツ/ハンブルグ 2010年 2012年にYelp!に買収された。
StopSleepGo ストップスリープゴー 英国/ロンドン 2010年 世界90か国で5万件以上の登録物件あり
Interhome インターホーム スイス/チューリッヒ 1965年/1999年Online Service 世界34か国で3万3千件の登録物件あり
BedyCasa ベディカーサ フランス/モンペリエ 2007年 2016年現在、世界185か国8542都市に約6万6千件の登録物件あり
Cities reference シティーズ・リファレンス イタリア/ローマ 1996年//2006年Online Service 2016年2月現在、世界27か国500都市に約1万1千件の登録物件あり
WaytoStay ウェイトゥステイ スペイン/バルセロナ 2004年 2016年2月現在、欧州18都市に登録物件あり
途家 ツィヤ(Tujia) 中国/北京
自在客 シサィケ(Zizaike) 中国/上海 2011年
住百家 シュウパィヤ(Zhubajia) 中国/シェンチェン 2012年
一家民宿 Onehome 中国/北京 2015年
大魚 Fishtrip 中国/北京
AsiaYo.com アジアヨー・ドットコム 台湾 2013年
携程 Ctrip/シートリップ 中国/上海 1999年 2003年NASDAQ上場、日本法人「シートリップジャパン」は2014年5月東京に開設、 日本のOTA各社と提携、拡大中
AsiaYo.com アジアヨー・ドットコム 台湾 2013年

4.各国の民泊に関する法制度

国/都市宿泊業(ホテル)を営業する場合の規定民泊(オーナー)に対する規定民泊(仲介事業者)に対する規定
イギリス
(ロンドン)
ホテル建築基準あり、ホテルへの使用目的の変更には許可が必要 ホテルへの転用許可が必要。但し、90日以内で住居を一時宿泊施設にする場合は許可不要(2015年5月〜) なし
フランス
(パリ)
都市計画の観点から建築の許認可が必要
公衆受入施設としての建物内の安全性に係る基準
自治体の許可要、家主居住型のみ年120日以内の制限付きで認可、家主不在型は認可されない。 実際には匿名で仲介サイトに登録できるため、ヤミ民泊は野放し 滞在税について、仲介事業者が納付代行(2015年10月〜)
スペイン
(バルセロナ)
観光登録(認可)が必要
衛生基準・避難経路・部屋数・部屋設備等の規定建
築基準・防火基準・都市計画の基準
自治体の許可、利用者へのサービス保障、利用者の身分証の登録と警察への情報提供 なし
イタリア
(ローマ)
自治体への届出要
部屋数・バスルーム・朝食用スペースの規定
防火、都市計画の規定
営業に当たっては事前の自治体への届出と承認が必要
ベッドルーム数、部屋の広さ等について規定あり
ドイツ
(ハンブルク)
廊下通路・部屋面積の最低基準建築検査当局の許可が必要
非常口・防火設備等の規定
所有者が年間4ヶ月以上居住の場合に観光客への貸出可能・許認可が必要等(2013年5月〜)
ベルリン特別市では、住居の目的外使用には許可が必要(2014年〜)
当局の許可を得ていない住宅の広告を掲載してはならない
オランダ
(アムステルダム)
構造安全性・火災安全性(消火器・警報器等の設備、扉の幅、障がい者のアクセス等) 利用者の滞在が2ヶ月まで、同時の宿泊者は4人までであること等を条件として許可は不要 旅行者税の自動支払いに関する契約(2015年1月〜)
オーストラリア
(NSW州、VIC州、QLD州)
各州法に基づき事業許可等が必要
建物の分類に応じて構造・防火要件が規定
自治体で立地規制がある場合には許可が必要
QLD州ではパーティ利用について制限できる旨の州法に基づきゴールドコーストではパーティー利用について禁止(2014年〜)
構造規制、立地規制について改めての許可の要否について訴訟になった
なし
カナダ
(トロント)
一般ビジネスとして事業登録、ライセンス等が必要
建築、防火の規制あり
ホテル等を建設可能区画の限定あり
自治体によっては、B&Bについては事業許可が必要(自宅の部屋の短期間賃貸・アパート又貸しは該当しない)
賃借中の家屋の譲渡・又貸しには大家の事前同意が必要等
アメリカ
(ニューヨーク)
市への登録が必要
構造・防火に関し、 それぞれ一般住宅以上の規定あり(仕切壁、出入口・警報器の掲示等)
立地制限あり
3戸以上が入居する共同住宅で、入居者が不在の状態で、30日未満の貸出を行うことは違法
これ以外の建築物でも、許可なしに使用用途を変更し短期滞在の貸出を行うことは違法
なし
アメリカ
(ポートランド)
事前の許可と更新が必要
建築物の種類によって防火、耐水、省エネ基準あり
立地制限あり
開始前に市からの許可と更新が必要
貸出者は年間270日以上の当該住居への居住が必要(以上2014年9月〜)
集合住宅でも解禁(2015年2月〜)一貸出人の貸出期間は30日まで
宿泊税の納付(宿泊料を受理した業者)
市の要請に基づく、貸主・物件の情報公開
アメリカ
(ナッシュビル)
事業ライセンスが必要
宿泊設備タイプ、保健規則が規定
防火に係る定期点検が必要
商業用建物として土地区画規制が適用
貸出者は毎年市からの許可が必要
一度に4部屋以上の貸出禁止、騒音等規制、食事の提供場所規制等(2015年2月〜)
アメリカ
(サンフランシスコ、サンノゼ)
カリフォルニア州法にホテルの権利と義務について記載 短期賃貸物件としての届出・許可が必要(サンフランシスコ)
貸主が市外に出る場合、連絡先登録が必要。貸出は年間180日まで。(サンノゼ)
貸主に対する注意喚起が必要(又貸しの違法性等)。(カリフォルニア州法)(2016年1月〜)
シンガポール ホテルとしての登録・許可等が必要
部屋の広さ、照明・換気等の構造規定あり
防火設備と避難経路等の規定あり
左記については、商用ホテルの規制であり、住居を利用した宿泊サービスには適用なし
住居の賃借について、6ヶ月未満の賃借は禁止
なし

(厚生労働省医薬・生活衛生局 生活衛生・食品安全部 生活衛生課) 2015年11月27日第1回「民泊サービス」のあり方に関する検討会(資料7) 「諸外国における規制等の状況について」を元に一部マンションNPOにて追記補足しています。

5.各国の民泊の現状

1.民泊は賃貸人を追い出す    San Francisco. CA. US

(写真・路上にスプレーで) " このAirbnbは5人を立ち退かせた。"
〜所有者が賃貸より利益のあがる短期レンタルに切り替えている流れが背景に〜

Airbnb、HomeAway、Flipkeyなどの短期レンタルプラットフォームの増加と成長が、 従来、手頃な価格で有効に機能していた長期賃貸住宅市場を破壊していることについて、 地方自治体、ホテル業界、不動産関係者、住宅活動家、地域住民の間で多くの論争を引き起こしてきました。

最近出版されたHarvard Law & Policy Reviewによれば、 短期レンタルが住宅市場を破壊し、手頃な価格の賃貸住宅の供給を減らしている原因は、 二つの関連したメカニズムによるもので、 最初のメカニズムは単純な転換、即ち、市場のターゲットが都市住民よりもジェントリー(裕福)な層に移行したこと(コミュニティのコアの部分)、 二つ目のメカニズムは、部屋のホテル化(hotelization)で、利用者にとっては"ホテルの部屋よりも安い料金でホテルの部屋を借りることができる”のに、 所有者にとっては賃貸で貸すよりも高い収益を生むという点にあります。 その結果、コテージホテル(小さな別荘風ホテル)という新しい形態のホテルを生み出しました。

つまり、賃貸住宅の供給を減らし、賃借人の立ち退きを促している原因は、 ジェントリフィケーション(gentrification・富裕層化)とセグレゲーション(segregation:差別化)です。

マサチューセッツ大学の2016年の研究では、マサチューセッツ州ボストンでは、 都市住民に利用可能な部屋の供給が減り家賃も上昇しています。 平均0.4%の家賃の上昇に対し、エアービーアンドビー社で上位10%の区域では、 1.3%から3.1%の上昇となっています。

短期レンタルプラットフォーム市場は2011年以来8倍に成長してきました。

この記事の出典:https://hostcompliance.com/short-term-rentals-and-housing-affordability/
”Are Short-term Vacation Rentals Contributing to the Housing Crisis? ”

2.民泊は地域のつながりを破壊する    San Diego. CA. US

(写真) " 地域(Neighborhoods)は隣人たち(Neighbors)のためのもの。/ 民泊反対 "
〜住人同士のつながりを破壊する短期レンタルに抗議する〜
地区(Neighborhood)は隣人(Neighbor)の派生語で、そこに住む人が強く意識されます。

サンディエゴで手頃な価格の家を見つけるのはすでに難しくなりました。 失われているのは既存の住宅だけではありません。 新築住宅においても、新しい長期賃貸住宅ではなく、短期バケーションレンタルを目的とした多くの新規住宅建設プロジェクトが見られます。

この記事の出典:"https://www.voiceofsandiego.org/topics/opinion/vacation-rentals-worsen-housing-Crisis”

6.日本の民泊犯罪事例

ヤミ民泊によって治安の悪化、深夜の騒音、ごみの散乱、セキュリティー問題などが全国で発生している。 仲介サイトを通じての宿泊予約は匿名でできる上、ヤミ民泊は宿帳を書く必要もなく、足が付きにくいから犯罪に利用される。

○ 警視庁は2017年4月、東京都新宿区の賃貸マンションの一室(無登録のヤミ民泊)に2週間近く滞在し、 偽造カードでATMから現金を不正に出金したとされる台湾出身の男3人を窃盗容疑などで逮捕した。 同グループに よる犯行を含む一連の不正出金の被害総額は32億円に上る。

○ 警視庁が2017年6月に覚せい剤取締法違反容疑で逮捕した男女らは米国から覚醒剤約1キロを都内のヤミ民泊施設に発送し、 別の住宅に転送させて受け取っていた。

○ 大阪市は2016年春、市の認定や旅館業法の許可を得ていないヤミ民泊800軒超の施設に対し営業中止を指導した。 市内には違法な施設が1万軒以上もあると指摘されている。

○ 京都市が2017年4月から10月に行った指導状況によると、無許可営業の疑いで調査した施設は1134軒と、 前年度の年間実績1159軒に迫る勢いだった。このうち違法施設は382軒あった。

○ 2017年7月、福岡市の無許可施設で韓国人の女性観光客が貸主の30代の男から暴行を受け、 男は強制性交等致傷の疑いで逮捕された。

○ 2017年11月、大阪で、無認可の施設で客を盗撮していた40代の男が旅館業法違反と軽犯罪法違反の疑いで書類送検された。 このほかにも強制わいせつ、宿泊客による盗難などが発生している。

○ 2018年2月17日兵庫県三田市に住む女性会社員Aさん(27)の家族が警察に不明者届を提出、 警察は2月22日にアメリカ人容疑者をAさんの監禁容疑で逮捕、 24日には、容疑者が使っていた西成区の別の民泊施設でAさんとみられる頭部遺体が発見され、 その後は本人の供述通りに大阪や京都の山中で切断遺体が見つかり、2月28日に死体損壊・遺棄の疑いで再逮捕した。 1月末に来日した容疑者は民泊を利用し、容疑者が接触していた日本人女性は10人を超えていた。

掲載 2018/5/17