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6.個人情報取扱規定はなぜ必要か

まえがき

2017年1月20日に当サイトで個人情報管理規約を発表しました。
下記はその後に寄せられたご質問と回答をもとにご紹介しています。

「6.個人情報取扱規定はなぜ必要か」 目 次
Q1 個人情報取扱規定はなぜ必要か Q2 従来の管理規約でカバーしきれない部分はどこか
Q3 規約ではなく細則ではダメか? Q4 法令によって異なる第三者の意味
資料1 区分所有者の権利と義務 資料2 規約と細則(法令の体系)
資料3 届出書類の例

6.1 Q1 個人情報取扱規定はなぜ必要か

1.今 なぜ個人情報取扱規定が問題になるのか

マンションの規模に関係なく、すべての管理組合が個人情報保護法の適用対象です。

平成27年改正個人情報保護法の成立により平成29年5月30日以降、管理組合も個人情報取扱事業者になったことで 管理組合が業務を遂行する上で必要な個人情報の収集、保管、管理、利用・公開に関して、 組合組織の内部制度を整えることの義務が明確化されました。(個人情報取扱事業者の義務等(個人情報保護法15〜35条))

また、区分所有者の管理組合に対する自己の個人情報の開示・訂正・利用停止等の請求権(同28〜33条) も明確化されました。
詳細は、   3.1 個人情報保護法改正の要点

一方で、今まで統治の論理で運営してきた管理組合に、 いきなり個人保護の論理が入り込んできたことに、とまどう管理組合も少なくありません。

2.個人情報取扱規定を作ることは義務化されていない

この内部制度を整えることについては、 規約を作ったり管理責任者を置くといった形式的要件は規定していません。 個人が「個人として尊重される」ように、事業者がそれぞれ実質的なやり方で、 個人情報を適正に取り扱うよう図らなければならないとしているだけです。

個人情報保護法第18条「個人情報の取得に際して利用目的を通知、又は公表しなければならない」との規定も、 「あらかじめその利用目的を公表している場合を除き」 と除外規定があります。

個人情報保護法施行以前に、管理規約や細則で規定されている届出文書は、すべてこの除外規定に該当しますから、 あらためて利用目的を通知、又は公表すべき理由はありません。 規約・細則に根拠規定のある文書であれば従来のままです。

保管、管理、利用・公開に関しては今までのやり方を見直す必要があるかも知れませんが、 個人情報保護法の趣旨に則って適正に行い、結果として、住民が不安を感じる状況がなければ、問題はありません。

ただし現実には、従来の規約のままで「個人情報保護法の趣旨に則って適正に行う」のは無理があります。 詳細は「Q2_1・従来の規約・細則の改訂が必要になるケース」で述べます。

3・個人情報取扱規定がいらないケースもある

 小規模の自主管理マンションで、全員が賛成するならという条件で、 永年、管理組合のすべての業務をひとりで続けてこられた方がいます。 このマンションの住民にとって個人情報取扱規定を作る必要性は感じないでしょう。 なぜなら、個人情報保護に対する信頼は成文化された規約によらずとも、 実際に目に見える形で存在しているからです。

但し、上記は住民と役員が互いに近い距離にある小規模マンションだからいえることで、 規模が大きくなると、そうもいきません。 また、小規模であっても属人的な要素で成立している関係は、人が変わると、その関係も崩れます。 属人的な要素に依存するのではなく、制度、システムとして、 具体的には組合員の合意に基づく規約や細則で定立することが、いつかは、必要になってきます。

6.2 Q2 従来の管理規約でカバーしきれない部分はどこか

1 従来の規約・細則の改訂が必要になるケース

多くの管理組合でモデルとなっている標準管理規約及びマンション管理センターの使用細則では、 個人情報保護法に抵触する規定は見られませんが、 独自に追加した規約項目や独自に制定した細則などで、 一部抵触する規定や住民の権利保護上、不完全・不十分な例がみられます。

標準管理規約・細則に規定されている届出書類を資料3に示しましたが、 これ以外に独自に制定された実際の細則には下記の例があります。
「居住者名簿作成運用細則」、「防犯カメラ運用細則」、「バイク置場使用細則・契約書」、 「車いす用昇降機使用細則・契約書」、「店舗用途細則」(複合型マンション)など

これらの細則の中には、形式的に個人の権利保護を建前にしてはいるが、 実際には管理会社にとって都合のいい規定や、理事長に過度に権限を集中させている例が見られます。 一例を挙げます。

(1)「居住者名簿作成運用細則」
(名簿情報の取得)
第4条 名簿に掲載する情報は、規約第40条(届出義務)に基づく届出により、 管理組合が取得する。 ただし、管理組合の業務の全部又は一部を委託又は請け負うマンション管理業者が、 この届出を管理組合に代わって取得する場合がある。
注: この規定は明らかに個人情報保護法第22条(委託先の監督)に違反しています。

(名簿の保管、管理)
第6条 前条により取得した原本は管理員等の書庫に施錠の上、厳重に管理する。
マンション管理業者がその業務の履行のために写しを作成する以外は、写しの作成は認めない。
注:これが、管理業者が理事や組合員に名簿を渡さない根拠規定になっています。
  これも法第22条違反

この細則の中には、「組合員名簿は施錠された書庫に保管する」旨の規定もありますが、 その他の届出書類の保管に関しては、 「第4条の組合員名簿を除く他の届出書類は、管理員室、管理用倉庫その他の保管場所に保管するものとする。 届出書類は必要に応じて理事会の決議により、廃棄することができる。 理事長はみだりに届出書類を閲覧させてはならない。ただし、対象物件の管理のために管理組合が必要とするときは、 この限りでない」と規定しています。

注: 届出書類はいずれもその内容において個人情報に該当しますから、組合員名簿だけを特別扱いする理由はないし、 他の届出書類の保管・管理・運用に際しても、 問題が発生した場合の組織的対応が規定されていない、住民からの請求への対応が規定されていないといった点で、 不十分です。

(2)「防犯カメラ運用細則」
共用部分に16台(エレベータカゴ内2台含む)の防犯カメラが設置されているマンションで、 理事長の車に接触された傷が残っていた。この理事長が犯人をつきとめようとして、 駐車場防犯カメラの映像を外部USBメモリーにコピーしようとしたが、技術的に出来なかったので、 総会で、防犯カメラシステムを(外部メモリーにコピー可能なものに)更新することを提案した。

防犯カメラ運用細則では、映像の閲覧ができる場合として、
(一)犯罪行為あるいは事件が発生した場合及び予防保全措置が必要な場合
(二)共有財産が侵害された場合及び予防保全措置が必要な場合
(三)警察からの要請があった場合
(四)前各号のほか、理事会が必要と認めた場合
   の4つのケースが規定されている。誰がどんな根拠でこれを判断するかは示されていない。

更に映像の閲覧には次の各号に掲げる者に立会いをさせなければならない。として、
(一)当該映像対象者
(二)事件又は事故の関係者
(三)理事長(若しくは理事長が指名する理事)
(四)警察官(警察より要請があった場合)
   の4つのケースが規定されている。
   その前に映像を見て立会い者を決定するのは誰か、関係者を立ち合わせてどうするのか??

注; 前記理事長の行為も、この「防犯カメラ運用細則」の内容も突っ込みどころ満載ですが、 管理組合が個人情報取扱事業者になった機会に、 規約・細則を個人情報保護の観点から、見直す必要があります。

個人情報取扱規定は、個人情報保護法に定められた個人情報取扱事業者(管理組合)の義務の履行を 管理組合事業の全般にわたって規定したものです。一方、従来の規約・細則にも個人情報の取り扱いを定めた条項があり、 両者の間に整合性・統一性がとれなくなる場合があります。
新しく個人情報取扱規定を制定する場合でも、従来の規約・細則の見直しは必要です。

エレベータかご内は、皆さん、密室だと思っていらしゃるようですが、 一度録画を見てしまうと、すべての会話が録音されていることにあらためてショックを受けるはずです。

2.従来の管理規約では想定していないケース

 〜 組織としての信頼がなければ、組合運営はできない〜
 個人情報保護法が適用になる前の、ある中規模マンションでの出来事です。 総会前にA氏からの理事の立候補届けを受理し、 総会議案書にA氏を含めた理事候補者名を掲載して配布したところ、ある区分所有者から、 「A氏が理事になるのなら、管理組合に届けてある区分所有者届は返却して欲しい」との要求を受けました。 理由は「信頼できないから、家族情報名簿はA氏には見られたくない」でした。 区分所有者届は管理規約規定の組合員の義務であり (標準管理規約第31条「組合員の届出義務」)、 そこに記載されている家族情報は災害時に必要なものという利用目的を理解した上での要求でした。

居住して数年たつと、ある種の特異な性格の人などは周囲でもわかってきます。 他の皆さんも同じ思いだったらしく、総会ではA氏の理事就任は否決され、 区分所有者届を返してという要求もなくなりました。

この例は、たまたま目立つ存在だった人が候補者になった為に起きた事件で、 実際には候補者がどんな人かもわからないで役員を選んでいるのが現実です。

標準管理規約第37条「役員の誠実義務規定」の誠実という漠然とした概念規定では、 信頼の保証にはならない。

(注) 多くの管理組合の規約では、標準管理規約のこの項に追加して 「役員は、正当な事由なくして、その職務上知りえた組合員の秘密を漏らしてはならない。 また、その職務を退いた後においても同様とする。」との守秘義務規定を設けているが、 公務員法や医師法などの同規定では守秘義務違反に対する罰則があっても、 管理組合役員には罰則がない。(民生委員も民生委員法15条で守秘義務規定はあるが罰則はない)
役員の「誠実義務規定」も「守秘義務規定」も訓示的規定にすぎない。

管理規約や細則には組合員の個人情報の利用の停止又は消去を求める権利も明記されていない。 このような問題の存在は標準管理規約では想定していない。

住民の不安を解消し、組織としての信頼を得るのは、 従来の規約ではカバーしきれない領域です。

個人情報管理規約では、 第5条2項(エ)で、個人情報の利用の停止又は消去を求める権利を明記し、 第15条で管理組合がそれを拒否できる条件を示し、 第16条で苦情の処理に関する規定を置いています。 個人情報に関する問題の存在を認め、その解決の方法を明示的に規定していくことが規約の狙いです。

3.個人情報保護意識の高まり〜社会環境の変化への対応〜

個人情報取扱事業者とされたことで、管理組合も個人情報の管理責任を法的に負う立場となり、 管理組合が可罰的違法性を問われる事態への対応が必要になっています。

管理組合が保管している個人情報の流出事故が発生すると罰則が適用されます。

第八十三条  個人情報取扱事業者(その者が法人(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。 第八十七条第一項において同じ。)である場合にあっては、その役員、代表者又は管理人) 若しくはその従業者又はこれらであった者が、 その業務に関して取り扱った個人情報データベース等(その全部又は一部を複製し、又は加工したものを含む。) を自己若しくは第三者の不正な利益を図る目的で提供し、又は盗用したときは、 1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

 

ベネッセ事件のような個人情報漏洩事件が発生することも考えておかなければなりません。
(ベネッセコーポレーションの下請従業員が顧客情報を持ち出して名簿業者に販売した事件、2014年7月9日に発覚)

管理組合は従業者・役員及び管理会社等委託先への監督義務を負っています。
(個人情報保護法第21条従業者の監督、同第22条委託先の監督)
個人情報漏洩事件が発生した場合、管理組合もまた処罰の対象となります。(第87条2項・両罰規定)

6.3 Q3 規約ではなく、細則ではダメか?

管理規約は区分所有法第3条の委任を受け、細則は規約の委任を受けているという関係にあります。 規約で基本的事項を定め、規約の委任によってその具体的な手続きを規定するのが細則です。 規約は四分の三以上の特別決議、細則は出席議決数の過半数による普通決議です。
詳しくは「資料2.規約と細則 (法令の体系)」を参照

資料2で説明している標準管理規約第70条と同じ規定が、皆様の管理規約にあれば、 「個人情報管理規約」ではなく、「個人情報取扱細則」としてもよいのだという理屈も一応は成立します。

但し、管理組合業務全般にわたって関係する個人情報保護の基本的事項についての規定という性格上、 区分所有法第3条の委任を受けて個人情報管理規約として制定するほうが法体系としても、 組合員の合意を得た法の効力からしても望ましいのは言うまでもありません。

従来の管理規約や細則を見直さないでそのままだった場合、従来の規定が 新たに制定した「個人情報管理規約」と矛盾する箇所が出てくることがあります。 その場合、「個人情報管理規約」でしたら、後法優先の原理と特別法優先の原理が働きますので、 「個人情報管理規約」が優先されることになります。「個人情報取扱細則」にした場合はそのような主張はできません。

新法の定めに抵触する規約の定めは、その法律の施行以降は当然にその効力を失いますから、 理論的には新法に抵触するこれらの規約の定めを廃止し又は変更する手続きを取る必要はありませんが、 それは個人情報保護法と周辺の法体系に詳しい法律家だけが理解している常識であって、一般的な常識とはいえません。

現実には、大勢の人が入れ替わりで管理事務を担当することになる管理組合の現場では、さまざまな混乱が繰り返し生じてきます。

これらの実務上の混乱を避け、無用の対立を避けるためには、 事情を判っている人が率先して、できるだけ早く所要の変更をとるのが望ましいといえます。

6.4 Q4 法令によって異なる第三者の意味

標準管理規約に出てくる「第三者」と個人情報取扱規定に出てくる「第三者」の意味は違います。

標準管理規約(区分所有法)では、区分所有者と居住者以外の人を「第三者」と呼んでいます。
個人情報管理規約(個人情報保護法)では、本人以外はすべて「第三者」と呼んでいます。

個人情報保護法では、国などの公的機関を除けば、個人情報取扱事業者と本人と第三者しか
規定していません。個人情報は、個人の人格尊重の理念の下で取り扱われるべきものであり、
本人がどこに所属しているかによって異なる対応をすべきではないからです。

その意味では、マンションNPOの「基本方針と個人情報管理規約」における第三者の定義と
公益法人における同規定の第三者の定義は全く同一であり、異なるものではありません。

具体例でご説明します。

区分所有者のある方がマンションを退去するにあたって、共益費の過払金或いは未払い金の
処理に関する会計事務のため、移転先の住所を管理組合に届け出ていました。(個人情報の
利用目的2項第1号に該当)
個人情報管理規約第15条の第三者への情報提供を拒否する届け出はされていませんでした。

後日、管理組合に、退去された方の親族(又は親しい友人、或いは同じマンション内で親しかった
居住者等)を名乗る方から、本人の移転先の住所の問い合わせがありました。

この場合、管理組合が保有している移転先の住所を相手に知らせるべきでしょうか。

いいえ、たとえ、個人情報管理規約第15条の第三者への情報提供に同意する意思を示す書類を
管理組合が受領していたとしても、それを確認するまでもなく、個人情報の提供はすべきでは
ありません。「個人情報管理規約で提供してはいけないとされていますので、申し訳ありません
が」と丁重にお断りして下さい。

個人情報管理規約第15条の規定は、無制限の第三者への提供を認める趣旨ではありません。
誰に提供してよいか、よくないかの判断は、本人以外できない以上、拒否の申し出がなかったことを
理由に無制限の第三者への提供はできません。勿論、明示的に拒否の意思が示されている場合は
絶対に提供してはいけません。損害賠償請求訴訟を起こされたら弁明の余地はありません。

逗子ストーカー殺人事件以後、本人の申出によって移転先の新住所を記載しない住民票の取扱も、
可能になりました。個人番号を記載した住民票は代理人では申請できず本人確認が必要なのと同じ
です。逗子市役所住民課の職員が求めに応じて移転先の住所を教えたのは窓口サービスの善意・
親切心だったかも知れませんが、手続き違反が重大な結果を招いてしまいました。
他人事ではありません。個人情報保護法では、本人が指定した代理人以外はすべて第三者です。

6.5 資料1 区分所有者の権利と義務

組織化された集団の構成員としての地位にある者は構成員としての集団的・団体的な義務を負う。

(1) 届出の義務規定
区分所有者は管理組合に対し、規約で定められた事項を届出る義務があります。

「4.管理組合総会の進め方」の「2 区分所有者の権利とは?」で 区分所有者が組合の運営に参加する権利は、同時に建物の保存行為に関係する放棄できない義務でもあること、 また、権利であると同時に義務でもあるという例は、民法で規定されている「親権」にも見られることなどを詳しく説明しています。

区分所有者の権利と義務に関する根拠規定は区分所有法第3条にあります。
区分所有法第3条の団体は、管理規約第6条で○○管理組合と読みかえられます。
また、管理規約は建物や敷地などの管理又は使用に関する区分所有者相互の事項を定めたもので、 自治的規範として法的強制力をもつものとして判例でも判断されてきました。

標準管理規約に定められた区分所有者の義務
第3条:区分所有者は規約及び総会の決議に対して誠実に遵守する義務を負う。(遵守義務)
第5条:規約及び総会の決議は、区分所有者の包括承継人、特定承継人に対しても効力を有し、
    占有者も等しく同一の義務を負う。(規約及び総会の決議の効力)
第31条:新たに組合員の資格を取得し又は喪失した者は、直ちにその旨を書面により
    管理組合に届出なければならない。(入居届・区分所有者変更届けの届出義務)

(2) 個人情報保護を理由にした届出拒否及び管理費等の支払拒否に対する対応
(alla 判決文)
マンションの管理費等はマンションの区分所有者全員が建物およびその敷地等の維持管理という共通の必要に供するため、 自らを構成員とする管理組合の拠出すべき資金であり、この拠出義務は管理組合の構成員であることに由来し、 その内容は管理組合がその規約に定めるところによるものである。

また、マンションの維持管理は区分所有者の全員が管理費等を拠出することを前提として規約に基づき集団的・計画的・継続的に行われるべきものであるから、 区分所有者の一人でも現実にこれを拠出しないときには建物の維持管理に支障を生じかねないことになり、 当該区分所有者自身を含む区分所有者全員が不利益をこうむることになるのであるし、 さらには管理組合自体の運営も困難になりかねない事態が生じうる。

このような規約に基づく義務の集団的・団体的な性質とその現実の履行の必要性に照らすと、 マンションの区分所有者が管理組合に対して、 個人情報保護を理由にした届出拒否及び管理費等の支払拒否をすることは、 自らが区分所有者として管理組合の構成員の地位にあることと相容れないというべきであり、このような主張は、 明示の合意または法律の規定を待つまでもなく、その性質上許されないと解するのが相当である。

6.6 資料2.規約と細則 (法令の体系)

規約と細則の違いを法令の体系から説明しています。

法律優先の原則

社会生活の規範として強要性を有する成文の形式をとるものを「法令」といい、 法令が強要性を有する限り当然に法令の諸形式の全体がひとつの統一的秩序を形成し、 憲法ー法律ー政令ー省令ー規則という段階の順に、その形式的効力の上下関係が定められ、 上位法令に違反する下位立法は効力を有しないとされることによって、 その全体的な統一が図られています。

国民に義務を課し、又は国民の権利又は自由を制限するような規定を設けることができるのは、 国会の議決を経た法律だけであり(法律の専属的事項)、「法律優先の原則」といわれています。

各種法令にはそれぞれ専属所管事項があり、実際にはそれぞれの当該専管事項が互いに重複し、 各種の法令相互間でその内容に矛盾が生じた場合には、 国法体系の統一を確保するために、時間的に後から制定されたものを優先(後法優先の原則)すること、 更に、特別法は一般法に優先し、一般法の規定は特別法の規定に矛盾しない範囲内で、 補充的に適用されるとする「特別法優先の原則」があります。 区分所有法は民法の特別法であり、民法に優先します。

管理規約の法的根拠規定

管理規約の法的根拠は、区分所有法第3条の規定に基づいており、裁判でも自治的規範として、 規約の法的効力を認めています。

(区分所有者の団体)
第三条  区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、 この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。(後段略)

規約の設定・変更・廃止は区分所有法第31条に「区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によってする」 と規定されています。

管理規約の法的効力の範囲

規約は法律の委任に基づいており、その委任の範囲内で所管事項を定めている限りにおいて、 その規約規定事項についての法的効力が認められていることにすぎません。
規約で決められるのは、建物の「管理」又は「使用」に関する「区分所有者相互間の事項」に関してです。 そのいずれにも該当しない事項は、規約中に定めても、効力はありません。 そのことは、区分所有法第30条で定められています。

(規約事項)
第三十条  建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、 この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる。

細則の制定根拠

建物の「管理」と「使用」に関して、規約で規定された基本事項を詳細に説明する内容であって、 規約で委任する範囲において、規約を補充するために、その具体的な手続きを規定するものが「細則」です。

標準管理規約の中で細則に委任している条文は下記の通りです。
第18条:対象物件の使用については、別に使用細則を定めるものとする。
第70条:総会及び理事会の運営、会計処理、管理組合への届出事項等については、別に細則を定めることができる。

以下は、これらの規定についての標準管理規約のコメントです。

マンション標準管理規約(単棟型)コメント
第18条関係
@ 使用細則で定めることが考えられる事項としては、 動物の飼育やピアノ等の演奏に関する事項等専有部分の使用方法に関する規制や、 駐車場、倉庫等の使用方法、使用料等敷地、共用部分の使用方法や対価等に関する事項等があげられ、 このうち専有部分の使用に関するものは、その基本的な事項は規約で定めるべき事項である。
なお、使用細則を定める方法としては、 これらの事項を一つの使用細則として定める方法と事項ごとに個別の細則として定める方法とがある。

A 犬、猫等のペットの飼育に関しては、それを認める、認めない等の規定は規約で定めるべき事項である。 基本的な事項を規約で定め、手続き等の細部の規定を使用細則等に委ねることは可能である。

第70条関係
細則は他に、役員選出方法、管理事務の委託業者の選定方法、文書保存等に関するものが考えられる。

 

標準管理規約におけるその他の細則に関する規定
第19条(専有部分の貸与)、第22条(窓ガラス等の開口部に係る改良工事)、第37条(役員の誠実義務等)、 第48条第4項(総会議決事項)、第54条第2項(理事会議決事項)、第67条(理事長の勧告及び指示等)

規約・細則の設定・変更・廃止
規約の設定・変更・廃止(区分所有法31条)は区分所有者及び議決権の各四分の三以上で、
規約以外の諸規則(使用細則)等の設定及び変更・廃止は区分所有者及び議決権の半数以上が出席した総会の出席議決権の過半数で決します。

6.7 資料3.規約と細則に基づく届出書類の例

管理組合は、建物の管理又は使用に関して、 区分所有者及び居住者に対し管理規約と細則に基づく届出を義務付けています。 標準管理規約及びマンション管理センターの使用細則で規定されている届出書類の例を示します。

規約様式1管理規約第18条第1項専有部分貸与に関する届出書
規約様式2管理規約第18条第2項占有者の入居書と規約遵守に関する誓約書
規約様式3管理規約第18条第3項専有部分譲渡(売却)予告届
規約様式4管理規約第18条第6項マンション売買・賃借取引受託届
規約様式5管理規約第18条第8項他受理書
規約様式6管理規約第21条専有部分の改修に関する届出書
規約様式7管理規約第23条第2項代理人選任通知書
規約様式8管理規約第35条第1項新たに管理組合員となった者の届出書
規約様式9管理規約第35条第2項管理組合退会届兼退去届
規約様式10管理規約第53条第1項総会通知
規約様式11管理規約第54条第1項総会招集請求書
規約様式12管理規約第55条第2項総会における占有者の意見陳述通知書
規約様式13管理規約第56条第5項議決権行使書
規約様式14管理規約第56条第7項代理人選任通知書
細則様式駐車場使用細則第3条第1項駐車場使用契約申込書
細則様式駐車場使用細則第6条第1項駐車場使用契約書
細則様式駐車場使用細則第9条第3項契約自動車変更届約書
細則様式駐車場使用細則第12条第1項解約申入書
細則様式ペット飼育細則第5条第2項ペット飼育申請書
細則様式ペット飼育細則第6条第2項誓約書
細則様式ペット飼育細則第8条第2項ペット飼育承認書
細則様式ペット飼育細則第17条第2項ペット飼育終了届
細則様式集会室使用細則第6条第1項集会室使用申込書
細則様式集会室使用細則第7条第1項使用承認書
細則様式自転車置場使用細則第5条第1項使用申込書

 

(掲載) 2018/2/8