【目次】 「個人情報保護法と管理組合」  > 【前頁】 1.管理組合のための個人情報保護ガイドライン(概要) > 
2.個人情報の収集、使用、開示  > 【次頁】 3.個人情報の保有と保護

管理組合のための
個人情報保護ガイドライン (Privacy Guidelines for Strata)

1.個人情報の収集

個人情報保護法は下記以外の情報収集は認めていません。
1.収集する個人から同意を得ておこなう収集
2.個人情報保護法が同意を得ずに収集してよいと認めた事例に該当する場合
3.個人の同意を得たとみなす方法による場合

管理組合は個人情報を収集する前に、その収集する個人情報が目的に適合することを検証しなければなりません。 収集しようとしている個人情報が事実上、管理組合の運営に必要であり、 共同住宅法で情報収集が認められているものに限定されなければなりません。

管理組合が収集する個人情報は、共同住宅法及び関連する法令に規定された管理組合の義務を遂行する上で、 合理的かつ必要最小限のものに限定されなければなりません。

管理組合が合法的に収集した個人情報の幾つかは、例えば、 区分所有者及び居住者の権利を証明する厳正な身分証明となりうるものであり、 コミュニティにおける意思の疎通に貢献するものです。

管理組合の個人情報を収集する目的とその手続きの規定は、 個人情報保護方針(プライバシーポリシー)及び規約で明記されていなければなりません。

2.同意を得て行う個人情報の収集


2.1 明示的同意と暗黙の同意

同意には「明示的同意」と「暗黙の同意」の二つの方法があります。

明示的同意とは、区分所有者又は居住者に個別的に口頭で、 或いは文書で個人情報の収集、使用、開示に関する特定の目的を告知して行う方法です。 例えば毎月の管理費等を銀行口座から自動引落しする場合は、明示的同意によらなければなりません。

暗黙の同意とは、本人から自発的に情報提供の申し出があり、収集の目的は自明のこととして、 同意の意思があったと認められる場合です。 例えば敷地内の庭の清掃のためのボランティアシートに区分所有者又は居住者が署名して管理組合に提出してきた人の情報は、 暗黙の同意とみなされます。この場合、ボランティアシートに「個人情報の収集、使用、開示に同意する」 旨の文言を入れる必要はありません。

管理規約に「明示して収集する」と定めた場合には、個人の同意は、 個人情報を収集するよりも前に同意を取得しなくてはなりません。(事後承認の禁止)

一般的に区分所有者または居住者からの情報収集は明示的同意によることをお勧めします。 明示的同意は、透明性を高め、信頼を促進します。


2.2 ボランティアの個人情報の扱い

管理組合に対してボランティアの個人情報が提供されることがあります。 そのような個人情報を受け入れて記録する前に、管理組合はボランティア申込み者に対して個人情報を 他人に開示したり、利用したりすることについて同意するか否かをその人に決定させなければなりません。

また、管理組合は用済み後の個人情報記録を残すか、又は本人に返却するか、 速やかに破棄又は無効化するかを決定しておかなければなりません。もし、情報を残す場合には、 それが確実に破棄されるまでの保存期間を定め、その間の保管体制を確立しておかなければなりません。

3.同意なしで行う個人情報の収集


3.1 同意なしの収集が法律上認められている場合

下記は共同住宅法第35条において管理組合が区分所有者又は賃借人の同意なしに個人情報を収集することを認めている 例です。

1.定期総会及び臨時総会、理事会の議事録(投票結果を含む)
2.理事会役員名簿
3.区分所有者の氏名、部屋番号、メールアドレス、 及びロッカールームなど専用使用権が設定されている施設等の番号、駐車場の割り当て区画番号
4.抵当権の実行要求を受けた個人の氏名と部屋番号の名簿
5.賃借人名簿
6.投票の権利行使の際に使用する保有議決権数及び敷地権の保有割合ほか共同住宅法で定める他の権利のリスト
7.管理組合会計帳簿に記載される金銭の受払いに関して区分所有者又は居住者が支払者又は受取人となっている 領収書又は経費の金額、費目明細
8.管理規約上認められている他の記録。例えば組合が独自に契約している工事元請事業者及び下請事業者名簿


3.2 共同住宅法59,115及び116で定められた個人情報の収集

1.共同住宅法第59(3)条:区分所有者別の義務を記したリスト
2.共同住宅法第115条:区分所有者別の管理組合に支払う管理費・修繕積立金等の金額のリスト
3.共同住宅法第116条:区分所有者別の先取特権のリスト
 (管理組合は、管理組合に対して債務がある区分所有者の所有権に先取特権を登記しなければならない。)

もしも管理組合が共同住宅法の規定によらない方法で、 区分所有者又は居住者に対して追加的な個人情報の提供を要求するときは、 その追加される個人情報の収集、使用、開示の詳細な目的を規約に規定しておかなければなりません。 個人情報の収集には規約に定める等の法的根拠が必要です。 管理組合は規約に明記された目的に適合する必要最小限のものに限定された個人情報のみ収集することができます。

管理組合の理事会が管理組合を適正に運営するために必要な区分所有者又は居住者の下記の個人情報については、 管理規約に明記しておかなければなりません。

1.管理費等の引落としのための銀行口座又はクレジットカードの情報
2.室内で飼育しているペットに関する情報
3.監視カメラの映像を通して収集した個人情報の扱い
4.同居する全家族の氏名
5.管理組合が管理しているコンピュータ制御された機器にアクセスするために作られた個人別の暗証番号 (オートロックシステムの自動扉やロッカールーム等の個人別暗証番号等)


3.3 その他、本人の同意なしに個人情報を収集してよい事例

個人の利益となることが明らかな事項で、タイムリーに本人同意を得ることができないとき
例えば、区分所有者夫婦が休暇で一定期間不在となったとき、 本人が信頼を寄せる隣人又は親族が部屋を点検したり郵便物を取り出したりする場合です。 緊急事態が発生した場合に、その情報を伝えてくれた人や関係者から管理組合が区分所有者の個人情報を聞き出して、 休暇中の本人に連絡する場合も含まれます。


3.4 同意を得て情報収集すると情報の有用性や正確性を損なうことが予想されるとき

管理組合は、例えば、規約違反の苦情を受けて調査する場合など、情報収集にあたって本人同意を得ることが、 情報の有用性と正確性に疑いをもたれる蓋然性が高い場合には、 本人同意なしで個人情報を収集することが出来ます。

情報収集はその調査目的に沿った適正な手段でなくてはなりません。 例えば、55階以上には子供づれの家族は住んではいけないと定めている管理規約に違反しているとの情報が寄せられた場合、 管理組合の理事会は、本人に同意を求めることなく、第三者の証人からその状況を聞き出して調査しなければなりません。
特にこのケースの場合、本人に同意を求めることは、 規約違反の事実についての判断の有効性に疑いを抱かせる結果となるおそれがあります。


3.5 管理費等の滞納回収への対応

管理費等共益費の滞納者に対する督促などに必要な管理組合の債務者に対する個人情報の収集に関しては、 本人の同意を得る必要はありません。

滞納金回収を促進するには、関連する情報を集めることが必要になります。 管理組合は、滞納金の回収に際して必要な情報は、本人の同意なしに収集することができます。

3.6 公共出版物からの個人情報の収集

電話帳などから区分所有者又は賃借人の電話番号等の個人情報を収集する場合は 本人の同意は必要ありません。(個人情報保護規則第5条)

4.個人情報の使用

管理組合は本来の目的に合致した用途に限り、収集した個人情報を使用することができます。
「本来の目的」とは管理組合が個人情報保護方針(プライバシーポリシー)に従って適正な手続きで収集した個人情報の 収集時の目的のことを云います。

それ以外の個人情報は、「非公認の二次的使用」にあたります。収集時に個人に告知した目的以外での使用や 個人情報保護法で認められた個人の同意を得ないで使用できる範囲を超えた使用が該当します。

管理組合は本来の目的に限り、それも必要最低限の量と種類で、本来の業務に個人情報を使用しなければなりません。

同意なしで収集することが認められた個人情報に関しても、 管理組合は、その同意なしで収集することができる目的と一致した状況に限り、その個人情報を使用することができます。 例えば、緊急の非常事態が発生した場合、規約違反の調査、滞納債権の回収、その他、法で認められたケースなどです。

5.個人情報の開示

管理組合は収集した個人情報を本来の目的に応じて第三者及び関係機関に開示することができます。 但し、開示する第三者及び関係機関は、収集した目的に完全に一致した適正なものでなければなりません。

管理組合は個人情報を、本来の目的に限り、それも必要最低限の量と種類を、 本来の業務のために開示しなければなりません。

管理組合に対し本人から明示的同意が与えられた個人情報は、 その開示目的に沿った第三者への開示が認められています。

明示的同意を得ていない場合には、非常時、規約違反の調査、及び滞納の回収などの法律で認められている場合など、 本人の同意なし情報を開示して良いとする確実な事情が存在する状況でなければ開示すべきではありません。

一般的に管理組合は同意なしの情報は第三者への開示はすべきではありません。

管理組合代理人弁護士に対しては管理組合は本人同意なしの情報を開示することができます。

法律に基づく提出命令が出された場合、管理組合は本人の同意なしで収集した個人情報を開示することができます。 (共同住宅法第35,36条)
(訳注)(※2 日本の個人情報保護法23条1項1号 にも同様の規定があります。)

管理組合が連邦政府、州政府、地方自治体及び警察のような強制力のある公的機関から、 正式な令状、召喚状、又は裁判所の命令書なしに個人情報の提出要請を受けた場合、 それが”善意に基づく要求”であると管理組合みずから納得した場合には、 それらの要請に応じて個人情報を開示して構いません。

但し、カナダでは、そのような場合、管理組合は公的な相談機関又は 法的強制力のある代理人弁護士の助言を求め、それらの機関の調査によってそのことを確認する必要があります。 個人情報の開示は司法当局にとって起訴にあたっての判断の助けとなるものです。

もし、公的機関又は法的強制力のある代理人が口頭で管理組合に対して区分所有者又は居住者の個人情報を要求した場合、 管理組合はそれらの相手に対し法定文書での提出を要求するのは賢明な方法です。 例えば、警察から犯罪捜査のために監視システム上に記録された個人の音声又は映像情報の提供を求められた場合などが該当します。

6.個人情報に関する同意の撤回

個人情報の収集、使用、開示に同意して管理組合に情報を提供した後も、その本人は元の同意を撤回することができます。

しかしながら、共同住宅法第35条の規定、或いは管理規約の規定に該当する場合、撤回はできません。 組合員個人が管理費等の徴収に当たって申告した個人情報を撤回するなどの管理組合の法的義務の履行を妨げる行為は出来ないことになっています。

管理組合は個人情報に関する同意撤回の申し込みに対して、本人に撤回理由を尋ね、 情報の提供取り下げに伴う影響の重大性を本人に説明する義務があります。

訳注

原文に対する訳語は下記のとおりです。

【第2章 個人情報の収集、使用、開示】("collection,use or disclosure" )
・「明示的同意」と「暗黙の同意」("Express consent and Implied consent")
・工事元請事業者及び下請事業者名("contractors and subcontractors")
・先取特権("Certificate of Lien")
・抵当権の実行要求("Mortgage's Request")
・本来の目的("Primary purposes")
・非公認の二次的使用("Unauthorized secondary use of personal information")
・連邦政府、州政府、地方自治体の機関("federal,provincial,municipal government agencies")
・令状("warrant")・召喚状("subpoena")・裁判所の命令("court order")
・善意に基づく要求("Bona fide request")

 ※2 日本の個人情報保護法23条1項1号の場合

法令に基づく場合であれば、個人情報取扱事業者は、 あらかじめ本人の同意を得ずに個人データを第三者に提供することができます(個人情報保護法23条1項1号)。

管理組合に対しての「法令に基づく個人情報に関する調査」には下記のような例がありますが、 誰が、何の法律に基づいて行う調査なのかを相手方に文書で提示してもらってください。

【例】
●警察などからの(捜査に必要な事項の)報告の求めに応じる場合(刑事訴訟法197条2項)
 「捜査については、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。」

●弁護士会からの報告の求めに応じる場合(弁護士法23条の2第2項)
 (弁護士が受任事件について所属弁護士会に申し出て、弁護士会が適当と認めたとき)
 「弁護士会は公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。」

●家庭裁判所調査官による職権探知主義に基づく調査に応じる場合(家事事件手続法58条)
 「家庭裁判所は、家庭裁判所調査官に事実の調査をさせることができる。」

●法定後見人に選任された弁護士からの求めに応じる場合(家事事件手続法62条)
 認知症になった人の代理人として裁判所から任命された弁護士等の法定後見人は、 本人(法では関係人という)が管理組合に対して支払うべき管理費等の調査のほか、 「銀行、信託会社、関係人の使用者その他の者に対し関係人の預金、信託財産、収入その他の事項に関して必要な報告を求めることができる。」

●児童虐待に係る通告(児童虐待の防止等に関する法律6条1項)
 「児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに、 これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、 都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない。」

 実際には民間人が警察や福祉事務所等に通告しても無視・放置される例が相次いでいます。
 DV事案や児童虐待事案等では、地域の民生委員に相談すると、事案に最適な関係機関に連絡し、 助言その他の援助をしてくれます。 無報酬(※3)の準公務員(非常勤特別職)である民生委員は、児童福祉法第16条に基づき、児童委員を兼ねています。 民生委員は地域福祉、高齢者福祉、障害児・者福祉に関する業務、 児童委員は児童福祉(対象者は児童と妊産婦)に関する業務を行っています。

(※3) 国から交付される地方交付税交付金の中で民生委員活動費として年間6万円の算定基礎が示されており、 各地方自治体の裁量権で活動費として支給されるところもありますが、無報酬であることに変わりありません。 民生委員には守秘義務があり、相談内容が他の人に伝わることはありません。(民生委員法15条)

●国の統計調査への協力(統計法30条)
 国勢調査や労働力調査をはじめとする54の基幹統計調査については、個人情報保護法とは別に、 統計法第13条によって個人又は法人等の調査対象者には、報告義務が課せられているので、 個人的な事柄に関する調査であっても必ず回答しなければなりません。
これら基幹統計調査に対し、報告を拒んだり虚偽の報告をしたりした場合の罰則(同法第61条)も規定されています。

また、基幹統計調査に際し、調査員がアパートやマンションなどの管理人に、その世帯の居住の有無の確認、 世帯員の数などを聞くなどの協力依頼を行うことは、統計法第30条に基づく協力要請であり、 個人情報保護法に定める『法令に基づく場合』に当たり、本人の同意なしに情報を提供することが認められています。

なお、統計調査で得られた情報(人、法人又はその他の団体の秘密に関する事項)については、 統計法により、調査に従事するすべての者に対して厳格な守秘義務(同法第41条)が課され、 違反すると二年以下の懲役又は百万円以下の罰金(同法第57条)が課されます。

統計法(関係部分)

(報告義務)
第13条 行政機関の長は、第9条第1項の承認に基づいて基幹統計調査を行う場合には、 基幹統計の作成のために必要な事項について、個人又は法人その他の団体に対し報告を求めることができる。
2 前項の規定により報告を求められた者は、これを拒み、又は虚偽の報告をしてはならない。
(協力の要請)
第30条 行政機関の長は、前条に定めるもののほか、 基幹統計調査を円滑に行うためその他基幹統計を作成するため必要があると認めるときは、 地方公共団体の長その他の関係者に対し、協力を求めることができる。
(守秘義務)
第41条 次の各号に掲げる者は、 当該各号に定める業務に関して知り得た個人又は法人その他の団体の秘密を漏らしてはならない。
(罰則)
第57条 次の各号のいずれかに該当する者は、二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
二 第41条の規定に違反して、その業務に関して知り得た個人又は法人その他の団体の秘密を漏らした者
第61条 次の各号のいずれかに該当する者は、五十万円以下の罰金に処する。
一 第13条の規定に違反して、基幹統計調査の報告を拒み、又は虚偽の報告をした者

(掲載)2017/2/28