【目次】 「個人情報保護法と管理組合」  > 【前頁】 7.監視システム上の個人情報  【次頁】  付録1:管理組合プライバシーポリシーのガイドライン

管理組合のための
個人情報保護ガイドライン (Privacy Guidelines for Strata)

8.1 規約違反への対応

共同住宅法第135条では、 「管理組合は、規約違反を犯した区分所有者又は居住者にその旨を文書で通知しなければならない」 と明記しています。
規約違反をしているとされる区分所有者又は居住者には、 規約違反の場所、日時、規約違反内容と共に規約の該当部分の写しを添えて通知します。

これらの通知文書の中で開示される個人情報は、 共同住宅法第135条の目的に限定されなければなりません。
すなわち、個人情報の開示にあたっては、 分別ある人がその時の状況に合わせて適切と考えるものを超えてはなりません。(*訳注1)
ほとんどの場合、本人や申立人の個人情報を開示することは適切ではないかも知れませんが、 訴えと密接に関連していて情報の開示が妥当であると認められる場合もあります。

さらに、共同住宅法36条は、 管理組合が、要求に応じて区分所有者または権利を有する他の当事者に記録および文書を提供することを要求しています。
管理組合及び管理会社は、苦情に関連する要求を処理する際には、以下を考慮する必要があります。

(1)共同住宅法35(2)(k)は、管理組合が送付または受領した記録の写しを保持することを要求しています。 この記録には規約違反の告発文が含まれることもあります。

(2)共同住宅法第36条では、管理組合は、 当該区分所有者本人又は所有者本人から記録及び書類の閲覧及び取得の代理権を委任された居住者(共同住宅法147条)、 又は委任状を有する代理人(共同住宅法148条)による閲覧に利用可能な、 共同住宅法35条規定の記録と文書を作成しなければならないと明記しています。

(3)共同住宅法35,36条における「本人に対して連絡先へのアクセスを提供するための義務規定」は明確であり、 その対応における個人情報は個人情報保護法のもとで保留される必要はないとされています。

したがって、一般的には個人情報の開示は限定されるべきですが、 その対応が規約違反に関連する場合は、個人情報保護法の下でいかなる形でも開示を制限される理由には該当しません。

8.2 プライバシーに関する苦情の申立

管理組合は、苦情やそのプライバシーポリシーと慣行に関する問い合わせに対応する明確な手続きを講ずるべきです。 苦情処理手続きは、簡単にアクセスでき、使いやすいものでなければなりません。 管理組合は、関連する苦情手続きの照会または苦情の申し立てを行う個人に通知する必要があります。

最後に、管理組合はすべての苦情を適切に調査し、苦情が正当であると判明した場合は、 適切な措置(必要に応じてその方針や慣行を修正するなど)を講ずるべきです。

8.3 管理組合のプライバシーポリシーを作成する

個人情報保護法は、管理組合が個人情報保護法に基づく義務を果たすために必要な方針と手続きを定め、 それに従うことを要求しています。 その一環として、 管理組合はプライバシーポリシーを作成し、それに従うべきです。

管理組合のプライバシーポリシーに関する個人情報保護委員会のガイドラインは、付録1にあります。

8.4 個人情報保護法施行以前に収集された個人情報の扱い

管理組合は、個人情報保護法施行以前に収集された個人情報の使用、 開示または保持に関して、新たに区分所有者及び居住者から同意を得る必要はありません。 それはもともと収集されたものだからです。

個人情報が新しい目的のために使用または開示されている場合は、 区分所有者及び居住者個人から新たな同意を得る必要があります。 管理組合が個人情報を収集した元の目的が、 現在の個人情報の現在の使用または開示の目的と変わらないことがよくあります。

8.5 プライバシー侵害への対応

プライバシー侵害は、個人情報の不正なアクセス、収集、使用、開示または処分が行われた場合に発生します。 そのような行為が個人情報保護法に違反している場合には「不正なプライバシー侵害」となります。 最も一般的なプライバシー侵害は、所有者、居住者または管理組合の従業員の個人情報が盗難、 紛失または誤って開示された場合に発生します。

例としては、個人情報を含むコンピュータが盗難された場合や、 個人情報が間違った人に誤って電子メールで送信された場合などがあります。

管理組合は、付録2に記載されているプライバシー侵害に対応するための4つの重要なステップに従ってください。

訳注

原文に対する訳語は下記のとおりです。

【第8章 苦情の申し立てへの対応】
1・分別ある人がその時の状況に合わせて適切と考えるもの
 (a reasonable person would consider appropriate in the circumstances)
  義務の履行を表わす言葉として、日本では民法298条(留置物の保管義務)、 644条(委任に伴う受任者の注意義務)等で「善良な管理者の注意義務」(善管注意義務)の表現が使われますが、 ここでは、一般人の良識といった意味で使われています。

(掲載)2017/2/28