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2. 専有部分と共用部分を理解しよう

マンションが一戸建てと大きく違う点は、ひとつの建物を複数の人が共同で所有しており、
「共用部分」と「専有部分」という区別があることです。

1. 専有部分と共用部分

共用部分には、法律上あきらかに共用部分とされる「法定共用部分」と、法律上の区分からは専有部分ですが、管理のために規約で共用部分とした「規約共用部分」があります。

また、共用部分には「専用使用部分」という、特に注意が必要な部分があります。

法定共用部分とは、外壁、界壁(住戸間を仕切る壁)、床スラブ、基礎、屋上、電気室、廊下、階段、玄関ホールなどです。設備関係では、エレベーター設備、給排水設備、電気設備、オートロック設備、テレビ共聴設備、避雷針などになります。
規約共用部分の代表例は、管理員室、ごみ置き場、倉庫、集会室などです。

共用部分と専有部分との境界が管理規約にうたわれている文言では必ずしも明確でない場合、大規模修繕がその境界を明らかにする契機になります。 規約で確認をしておきましょう。

2. 改修工事の対象

対象部位 共用部分 専有部分
建 物 @構造躯体(基礎・柱・梁・壁・スラブ・屋根等)
Aエントランスホール、廊下、階段、エレベーター室
Bバルコニー、ルーフバルコニー ○(※1)(※2)
C壁仕上げ材、防水材、鉄・アルミ部等の金物
D各戸仕玄関ドア(住戸外側)、サッシ
E給排水設備、消火設備、ガス、給湯・冷暖房、換気設備、 電灯幹線、動力設備、照明器具・配線器具、情報通信設備、 テレビ共聴設備、防災設備等の(パイプスペース内の)縦管、 各住戸入口までの配管・配線等
F上記Eの各種設備の住戸内の配管・配線 ○(※2)
G住戸内の居住空間、内装仕上げ材、配線設備等 ○(※3)
付属施設等 @管理事務所、集会所・コミュニティセンター、給水塔、クラブハウス、倉庫等
A駐車場、バイク置場、自転車置場
B外構工作物(遊具・柵・掲示板・サイン等)、屋外灯
敷地 @建物の敷地、道路、歩道、広場、緑地等
A専用庭 ○(※1)(※2)

 (※1): ただし、通常、専用使用権が設定されています。
 (※2): 管理組合の規約により、共用部分の範囲又は共同管理をする範囲を定めている場合があり、マンション毎に扱いが異なる。
 (※3): 設備機器については共用管等の容量等に影響を及ぼす場合があり、一定の設置ルールを定めている場合があります。

3. 専有部配管工事も管理組合で一斉に行う方向へ

 配管などは、水漏れ事故などの時に個人責任の専有部か、管理組合責任の共用部かの範囲があいまいな場合、トラブルにつながります。
2004年に改正された標準管理規約では、給水管については「本管から各戸メーターを含む部分」、
排水管については「たて管と配管継ぎ手」が共用部分とされました。
このように規約ではっきり区分しておく必要があります。

以前は、専有部分内の配管が老朽化した場合の改修については各戸の責任で行うとされてきました。
しかし、配管の老朽化は漏水なども引き起こすため個人の問題にとどまりません。

最近は、専有部分の工事であっても、専有給排水管(室内の横引き管)の更正・取替え工事など、 共用配管と一体的に扱うことが必要とされる工事、浴室防水工事や給湯設備・冷暖房設備工事など専有部分の改善のために 共有部分に変更を加える必要がある工事については、一斉に行う動きが出てきています。
専有部分の配管や設備を一斉に更新する場合、各住戸タイプ別に異なる工事費を修繕積立金の中から管理組合で一括負担とする場合と、個人負担分として別途徴収する場合の二通りの方法があります。
工事費の負担を巡って、個人負担分として別途徴収する場合には、反対若しくは工事費支払いを拒否する所有者が出ることが予想されますので、そのための対策が必要です。

4. その他の注意点 

専有給排水管(室内の横引き管)を規約共用部分にすると、工事完了後に各区分所有者が独自の判断で工事を行うことはできなくなります。 また、全戸一斉に専有部給排水管の取替え工事を管理組合で行うとした場合、その決定以前に既に老朽化した専有給排水管の取替え工事を個人で 実施済みの室内での工事は、共用縦管への接続部だけの工事となりますから、その方が負担している修繕積立金からの減額分の返還義務が生じます。