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2.1 非営利法人の種別と制度

目 次    1 パブリックセクターとプライベートセクター

        2 パブリックセクター の会計基準     3 パブリックセクター の計算書類

        4 プライベートセクターの会計基準     5 プライベートセクターの計算書類


1 パブリックセクターとプライベートセクター

 法人は、大別して営利を追求することを主目的として設立された法人と、 非営利(公益)活動を法人の目的として設立された法人に分かれます。

前者は、商法上の規定に準拠した株式会社等の一般企業であり、営利企業といわれるものです。
後者は、国や地方自治体等の行政の一貫として、公益活動を事業目的として設立された法人及び民間の団体で、
非営利が事業目的となっています。

この非営利活動法人は次の二つに分けられます。

パブリックセクターとプライベートセクター

(1)パブリックセクター
  (Public Sector)

  地方公共団体、特殊法人、公団等の公的な機関

(2)プライベートセクター
  (Private Sector)

   民間の公益事業


但し、非営利は必ずしも公益と同義語ではありません。
その意味では、公益ではないが非営利である集合住宅の管理組合も、労働組合法、各種の協同組合法などの 特別法による労働組合や協同組合と同じく、広義のプライベートセクターに該当するものとして、本ページでは取り扱っています。

本来、これらの営利でもなく公益でもない法人の設立には一般法がなく、法人の種類ごとに労働組合法、各種の協同組合法 などの特別法があるのみでした。
そのため、中間法人法 ( 2001年(平成13年)6月15日公布、2002年(平成14年)4月1日施行 )が制定されたのですが、 しかし、2008年(平成20年)12月1日に施行された公益法人制度改革関連三法のうちの関連法律整備法の規定により、 中間法人は一般社団法人に吸収され、 「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」(平成18年法律第48号)の施行の日 (2008年12月1日)に中間法人法は廃止となり、これまでに設立された中間法人も、2009年11月までに一般社団法人に移行登記 することとなりました。


2 パブリックセクターの会計基準

区分 根拠法令 主務官庁 会計基準 会計の特徴
地方自治体 地方自治法
(昭和22年法律第67号)
総務省
(旧自治省)
特になし
(財務諸表の作成を地方自治法等に規定して自治体に義務付けるのか、会計基準の根拠を法律に置くか否かも未定
(平成20年11月総務省再建法制等問題小委員会)
 海外では、修正現金基準又は発生基準を採用している国が多い。EUでは国際会計士連盟 IFACが作成した「国際公会計基準」PSASsの採用を決定。
現行の認識基準は現金主義であるが、発生主義的要素を加味していく流れがある。

特殊法人 特殊法人特別法
特殊法人
総務省設置法(平成11年法律第91号)第4条第15号(国の出資又は、補助金等の交付がなされている法人・公社、公団、事業団、特殊銀行、公庫、金庫、特殊会社などが対象)
認可法人
(特別の法律に基づいて主務大臣の認可を受けて設立される法人)日本銀行(日本銀行法・財務省)、日本赤十字社(日本赤十字社法・厚生労働省)等
各省庁
特殊法人会計処理基準(昭和62年10月2日制定)
(但し、この基準は強制力をもたない)
発生主義を原則とするが、事業により損益計算書は収益獲得型、収支均衡型、行政移管型があり、必ずしも、特殊法人等会計基準に準拠していない法人がある。

独立行政法人 独立行政法人通則法
(平成11年7月16日法律第103号)
各省庁
独立行政法人会計基準(平成12年2月制定)
平成19年11月19日、「独立行政法人会計基準」及び「独立行政法人会計基準注解」が改訂
発生主義を原則とするが、公共的性格を有し、利益の獲得を目的とせず、独立採算制を前提としていないので、厳密に発生主義を適用できない場合がある。

3 パブリックセクターの計算書類

区分 計算書類の体系 正味財産(資本の部)の内容 法人税 消費税
地方自治体 歳入歳出簿
平成19年10月17日、総務省自治財政局長名で各都道府県知事等に「公会計の整備推進について」を通知
(公会計原則(案)により次の体系が検討されている。)
貸借対照表
成果報告書
損益計算書
正味財産増減計算書
資金収支計算書
正味財産の部
正味財産
  (うち基本金)
  (うち当期正味財産増加額  (減少額))
非課税 資産の譲渡、資産の貸付及び役務の提供については、国、地方公共団体も、会計毎に一法人とみなして適用がある。
なお、国庫補助金、都道府県からの補助金等、他会計からの繰入金等は、課税対象外。
課税対象限度額、簡易課税の適用も民間企業と同じ。
特殊法人 貸借対照表
損益計算書
財産目録
財務諸表の注記
付属明細書
資本の部
  T 資本金
     政府出資金
     地方公共団体出資金
  U 法定準備金
     資本準備金
     利益準備金
  V 剰余金
    資本剰余金
    利益剰余金又は欠損金
非課税 資産の譲渡、資産の貸付及び役務の提供については、適用がある。
なお、国庫補助金、都道府県からの補助金等、他会計からの繰入金等は、課税対象外。
課税対象限度額、簡易課税の適用も民間企業と同じ。
独立行政法人 (1) 貸借対照表
(2) 損益計算書
(3) キャッシュ・フロー計算書
(4) 利益の処分又は損失の処理に関する書類
(5) 行政サービス実施コスト計算書
(6) 附属明細書

資本の部
I 資本金
  政府出資金
  ××出資金  
II 資本剰余金
  資本剰余金 
  損益外減価償却累計額(-)
III 利益剰余金(又は繰越欠損金)
  前中期目標期間繰越積立金
  ××積立金
  積立金
  当期未処分利益
 (又は当期未処理損失)
(うち当期総利益(又は当期総損失))
利益剰余金(又は繰越欠損金)

非課税

資産の譲渡、資産の貸付及び役務の提供については、適用がある。
なお、国庫補助金、都道府県からの補助金等、他会計からの繰入金等は、課税対象外。
課税対象限度額、簡易課税の適用も民間企業と同じ。


4 プライベートセクターの会計基準

区分 根拠法令 主務官庁 会計基準 会計の特徴
公益法人

2008年11月までは民法34条「祭祀、宗教、慈善、学術、技芸等の公益に関する社団、財団にして営利を目的としない法人」

平成20年(2008年)12月1日に公益法人制度改革3法が施行された以降(一般社団・財団法人法により設立された社団法人または財団法人であって、公益法人認定法により公益性の認定を受けた公益社団法人・公益財団法人)

国所管(各省庁)
都道府県所管

但し平成20年12月1日施行の公益法人制度改革三法のもとでは、旧来の「主務官庁」の概念は存在しない

公益法人会計基準(昭和60年9月制定)
(公益法人会計基準の改正)
(1)・昭和60年9月17日改正基準(以下「旧会計基準」という)
(2)・平成16年(2004年)10月14日改正(以下「新会計基準」という)
(3)・平成20年(2008年)4月11日改正(以下「新・新会計基準」という)

新・新公益法人会計基準(平成20年4月11日改正・平成20年12月1日以後開始する事業年度から適用)

平成20年度改正までは、一般会計・特別会計等、会計区分単位の財務諸表(貸借対照表、正味財産増減計算書)および収支計算書が主とされ、法人全体の状況については、それぞれの総括表(貸借対照表総括表、正味財産増減計算書総括表、収支計算書総括表)で合算し、内部取引を消去して表示するものとされていた。
平成20年度改正によって、法人全体で作成される貸借対照表、正味財産増減計算書が主であり、会計区分単位の情報は、内訳表において表示することとなった。

社会福祉法人

社会福祉事業法(昭和26年法律第45号)は、平成14年に「社会福祉法」に改題された。(省008)
最終改正:平成20年12月30日法律第85号

厚生労働省所管
都道府県所管

社会法人会計基準
(平成12年4月制定)

収支計算
事業活動収支計算

宗教法人

宗教法人法
(昭和26年法律第126号)

文部科学省所管
都道府県所管

宗教法人会計基準(案)(昭和46年11月)

収支計算

学校法人

私立学校法(昭和24年法律第270号)

文部科学省所管
都道府県所管

学校法人会計基準

資金収支計算
消費収支計算

労働組合

労働組合法
(昭和24年法律第270号)
最終改正:平成20年5月2日法律第26号

厚生労働省所管
都道府県所管

労働組合会計基準
(昭和60年10月8日制定)

資金収支計算

医療法人

医療法
(昭和23年法律第205号)
最終改正:平成20年5月2日法律第30号

厚生労働省所管
都道府県所管

病院会計準則
(昭和58年8月最終改正)

損益計算

特定非営利活動法人(NPO法人)

特定非営利活動促進法(平成10年法律第7号)
最終改正(平成20年5月2日法律第28号)

経済企画庁所管
都道府県所管

(NPO法第27条に、会計についての基準が示されている)
2003年5月改正NPO法施行により予算準拠原則を削除。
これにより、旧公益法人会計基準をNPO法人の会計に適用する前提がなくなった。

「NPO法人等の会計指針」公開草案では、修正現金主義を採用

管理組合(人格なき社団)
管理組合法人

建物の区分所有等に関する法律昭和37年法律69号)
最終改正:平成23年6月24日法律第74号

法務省
(民事局)

なし

会計基準がないため、多種多様に存在する


2.1.5 プライベートセクターの計算書類

区分 計算書類の体系 正味財産(資本の部)の内容 法人税 消費税
公益法人

新公益法人会計基準(平成20年4月11日改正)

財務諸表
 貸借対照表(内訳表)
 正味財産増減計算書(内訳表)
 キャッシュフロー計算書(*1)
付属明細書
 基本財産及び特定資産の明細
財産目録(*1)
(*1)一般社団・財団法人・移行法人は作成義務なし

正味財産の部
正味財産
(うち基本金)
(うち当期正味財産増加額(減少額))

収益事業について低率課税
22%(改正前25%)

課税取引について課税
収益事業以外でも対象となる場合あり。但し、公益法人の場合、資産の譲渡、基本財産収入投資有価証券売却収入等について非課税の特例がある

社会福祉法人

収支計算書
事業活動収支計算書
資金収支決算内訳表
事業活動収支内訳表
貸借対照表
財産目録
(資金収支予算内訳表)

純資産の部
基本金
 基本金
国庫補助金等特別積立金
その他の積立金
 ○○積立金
次期繰越活動収支差額
次期繰越活動収支差額(うち当期活動収支差額)

収益事業について低率課税
22%(改正前25%)

課税取引について課税
収益事業以外でも対象となる場合あり。

宗教法人

収支計算書
財産目録
(貸借対照表)

貸借対照表の作成は義務付けられていない。作成する場合、例えば、下記となる。
正味財産
(うち基本金)

収益事業について低率課税
22%(改正前25%)

課税取引について課税
収益事業以外でも対象となる場合あり。

学校法人

資金収支計算書
資金収支決算内訳表
人件費支出内訳表
消費収支計算表
消費収支内訳表
貸借対照表
固定資産明細表
借入金明細表
基本金明細表
基本金明細表の付表

基本金の部
 第1号基本金
 第2号基本金
 第3号基本金
 第4号基本金
消費収支差額の部
翌年度繰越消費
支出超過額

収益事業について低率課税
22%(改正前25%)

課税取引について課税
収益事業以外でも対象となる場合あり。

労働組合

収支計算書
貸借対照表
(本部・支部及び特別会計を有する場合には、会計区分毎の計算書類を作成する)
付属明細表(又は、財産目録、但しこの名称で作成の場合は、収入・支出明細表を作成する)

正味財産の部
T固定資産等見返正味財産
U次年度繰越金

 

収益事業について低率課税
22%(改正前25%)

課税取引について課税
収益事業以外でも対象となる場合あり。

医療法人

損益計算書(平成4年以前は収支計算書)
貸借対照表
財産目録
「準則」では、以下の書類を含む。
 利益処分計算書
 付属明細書

資本の部
 T資本金
 U資本剰余金
国庫等補助金
 指定寄付金
 その他の資本剰余金
 V利益剰余金
 任意積立金
当期未処分利益
前期繰越利益
当期準利益

普通法人と同じ扱い。(30%)
なお、社会保険診療報酬に係る事業税は非課税。
また、自由診療にに係る事業税は、軽減税率(400万円未満5%、400万円以上は7.3%)

 

医療関係の取り扱いとして社会保険診療は、社会的配慮により非課税扱い、但し、下記の医療は課税
・特定療養費中、差額ベッド代
,歯科材料差額・給食の差額
・老人保健施設の差額ベッド代
・特別の病室提供等
・予防接種、健康診断
・人工妊娠中絶
・その他自由診療

特定非営利活動法人(NPO法人)

(標準型会計)
 活動計算書
 貸借対照表
 収支計算書
複式簿記で、活動計算書、貸借対照表を作成。収支計算書は枠外で、現預金出納帳より直接作成する。
(簡易型会計)
  収支計算書
  財産目録
  小規模、活動内容が単純・非継続的なNPO法人について、簡便な計算書類の作成。

純資産の部
 無拘束分《資産》
 一時拘束分《資産》
 永久拘束分《資産》

 

収益事業については、普通法人扱いとなり、
34.5%   
 800万円以下の分
    ・・・・25%
 800万円を超える分
    ・・・・34.5%

課税取引に対し課税。
 収益事業は課税取引に該当
 収益事業以外でも対象となる場合がある。

管理組合(人格なき社団) 規定なし 規定なし

特定の収益事業から生じた所得に対してのみ課税が行われ、それ以外の事業については課税の対象としない(法人税法第4条第1項)
共益費や組合費など維持管理に必要な共通の費用を組合員が分担して負担し、必要な事業を行うことは、非収益事業とする。(法人税法施行令第5条第1項第31号)
収益事業については、普通法人扱い、
 800万円以下の分
    ・・・・25%
 800万円を超える分
    ・・・・34.5%

消費税法3条(人格のない社団等は、法人とみなして、この法律(第12条の2及び別表第3を除く)の規定を適用する)により納税義務者となるが、管理組合収入のうち管理費等及び借入金は不課税となり、更に駐車場、駐輪場、ルーフバルコニー、専用庭等の専用使用料のうち、組合員が使用している場合に限り不課税。(消費税法第2条第1項第8号)


管理組合法人

最終改正:平成23年6月24日法律第74号「区分所有法第四十八条の二」
財産目録及び区分所有者名簿(計算書類の規定はない)

規定なし

区分所有法47条13項の規程により、法人税法上は公益法人等として取り扱う(法人税法第2条)

収益事業については、同上

 

区分所有法第47条の14 消費税法上、別表第3に掲げる法人とみなす。(非課税)