「管理組合会計 目次」 > 【前頁】 3.1 管理組合に係る諸税 > 3.2 収益事業の意義と範囲 > 【次頁】 3.3 駐車場の収益事業判定

3.2 収益事業の意義と範囲

注意! 管理組合が追徴課税される例が増えています。
       ○ 外部貸し駐車場 ○ 携帯電話基地局・・・

管理組合に係る国税庁通達(質疑応答事例)  (※ 以下、国税庁のサイトにリンク)

1. 「マンション管理組合が区分所有者以外の者へのマンション駐車場の使用を認めた場合の収益事業の判定について」(平成24年2月13日回答)

2. 「団地管理組合等が行う駐車場の収益事業判定」

3. 「マンション管理組合が携帯電話基地局の設置場所を貸し付けた場合の収益事業判定」(平成26年7月25日)

公益法人等は収益事業を営む場合にのみ納税義務を負い、収益事業から生じる所得に対してのみ法人税が課され、 軽減税率の適用があります。 管理組合の場合も収益事業を営む場合には、通常の法人税の税率で課税されることとされており、 公益法人等に対する軽減税率の適用はありません。

そこで「収益事業」とは何かが問題になりますが、法人税法は「収益事業」を、「販売業、製造業その他の政令で定める事業で、 継続して事業場を設けて営まれるものをいう」と定義しています。 したがって、公益法人等が営む事業が「収益事業」に該当するかどうかは、「収益事業の範囲に含まれる事業であるかどうか」と 継続性が要件になります。施行令では具体的に下記の34業種が限定列挙されており、これに該当しないものは収益事業にはなりません。

1 収益事業の範囲

  税法は、収益事業の意義を政令に委任し、法人税法施行令第5条(平成25年5月31日政令第166号改正時点)では、「収益事業の範囲」として、 具体的に次の34業種を列挙して、これを「特掲事業」と呼びます。

特掲事業には、事業に付随して行われる行為を含むと施行令に定められています。 また、「収益事業を営む法人の区分経理」として、収益事業から生ずる所得に関する経理と収益事業以外の事業から生ずる所得に 関する経理とを区分して行わなければならない旨を施行令は定めています。(*1)

特掲事業(34業種)

 物品販売業、不動産販売業、金銭貸付業、物品貸付業、不動産貸付業、製造業、通信業、運送業、倉庫業、請負業、 印刷業、出版業、写真業、席貸業、旅館業、料理店業その他の飲食店業、周旋業、代理業、仲立業、問屋業、鉱業、 土石採取業、浴場業、理容業、美容業、興行業、遊技所業、遊覧所業、医療保健業、技芸教授業、駐車場業、 信用保証業、無体財産権提供業、労働者派遣業

(*1) 法人税法施行令第6条(収益事業を営む法人の経理区分)
第六条  公益法人等及び人格のない社団等は、収益事業から生ずる所得に関する経理と収益事業以外の事業から生ずる所得 に関する経理とを区分して行なわなければならない。

平成20年会計基準では、区分経理による会計表示を要請するいわゆる「セグメント会計」の考え方を導入した点が、平成16年会計基準と比較した場合の重要な改正事項のひとつである。

1.すなわち、貸借対照表内訳表において、公益社団・財団法人の会計区分は、@公益目的事業会計、A収益事業等会計、B法人会計の3つの会計に区分経理することが要請され、また、移行法人の会計区分は、@実施事業等会計、Aその他会計、B法人会計の3つの会計に区分経理することとされている。

2.さらに正味財産増減計算書内訳表においては、この3つの会計区分は、さらに事業活動の内容により必要に応じて事業区分に細区分して事業別の内訳表を作成する。

それぞれの法人が適用した会計区分・事業区分の内容は、公益法人については、公益認定基準の財務基準の算定、移行法人については、公益目的支出計画の履行状況の算定に、直接影響してくるため重要な会計ルールのひとつとなる。

なお、法人税法上は、これら公益法人制度改関連三法の要請に基づく会計上の区分経理とは別の観点から、すなわち「課税公平の見地」から、収益事業の範囲として34業種を特掲事業として定めている。したがって税務上の収益事業の範囲に対応した区分経理に準拠して、収益事業に係る課税所得の算定を行う必要がある(法人税法施行令5条)。

2 課税される?課税されない?

組合費・・・・・・不課税
管理費・・・・・・不課税
修繕積立金・・不課税

駐車場の使用料・・・
  組合員に対するもので管理費等に組み入れているもの・・不課税
  組合員以外のものに対するもの・・課税 (駐車場業、更に、この資金を運用して
  得た受取利息も課税) 詳しくは 【次頁】 3.3 駐車場の収益事業判定

管理組合法人が保険代理契約を結んで生命保険や損害保険の代理業務を組合員を対象に行った・・・・課税(代理業 )

管理組合が組合員に対して有料で飲食の提供(調理業者から仕出しを受けて行うものも含む)をした・・・・課税(飲食業)

管理組合が組合員に対して広報を有料で配布した・・・・非課税(出版業にはあたらない。法人税法第5条第12号、但し購読が全組合員に義務付けられていること)

管理組合の広報に近隣商店街の広告を掲載し、広告収入を得た・・・・課税
  (出版業付随事業 )

管理組合が貸しロッカーを設置し、組合員に対して有料で利用させた・・・・非課税
  (「物品の貸付」とは、物品をその利用者の管理のもとに移してその利用をさせることをいい、専ら一定の施設内において、その施設を利用するものに対して、その施設利用の目的の範囲内で備え付けの物品を利用させる行為は、たとえその物品の利用について別途利用料を請求することがあるとしても、そのこと自体を物品貸付業とすることは相当ではない−法人税基本通達逐条解説)

屋上や壁面に他のものに使用させる広告看板を設置した。
管理組合が屋上に携帯電話基地局の設置場所の建物賃貸借契約を締結した・・・・課税
  (不動産貸付業)(基通15-1-17)

共同購入で、原価を購入者全員で均等負担した(物品販売業に該当?)・・非課税
  (物品販売業にはあたらない。原価ではなく、利益を得ることを前提とすれば、組合費に充当することを目的にしたとしても物品販売に該当し、収益に課税。
  但し、継続して事業場を設けて営まれるものではないバザー等は非収益事業で非課税)

町内会の娯楽、遊興等の用に供するための会合に集会場を有料で貸した・・・課税
  (席貸業ー基通15-1-38)

上記の収益事業会計における損金算入
人格のない社団である通常の管理組合が、何らかの収益事業で得た資金を管理組合の本来の組合費や修繕事業にあてた・・・・課税(収益事業から非収益事業への寄付金とされ、収益事業の費用にはならず、収益部分に課税されます。)

修繕積立金や組合費などを預金としていたり、金銭信託、国債などで運用して得た受取利息や受取配当は源泉分離課税を受けますが、別途それに課税されることはありません。
 しかし、収益事業で得た資金の運用益については収益事業による収入として課税されます。この点に関しては管理組合法人であろうと人格のない社団であろうと同様です。

 マンション管理組合の運営上、収益事業に該当することが発生したときにはこれを通常の経理とは別に収益事業会計として経理する必要があります。(法人税法施行令第6条)
 この場合、管理組合固有の財産の取得があったときには、資産及び負債の経理についても非収益事業にかかるものと収益事業にかかるものに区分する必要があります。

3 消費税

 消費税は昭和63年12月30日消費税法が公布・施行され、平成元年4月1日から税率3%で適用され、 平成9年4月1日以後の取引きから税率5%(国税4%,地方消費税1%)に引き上げられ、更に2014年4月に8%引き上げられました。

その後2015年10月には10%へと、引き上げられることが予定されていましたが、 2017年4月1日に延期され、さらに2019年10月1日まで2年半、再延期された後、 食料品等は8%のままとする軽減税率を適用してようやく実施されました。

非法人管理組合、法人管理組合ともに、消費税法3条の規程により、事業者として納税義務者になります。
 但し消費税は事業者が事業として行っていることがその前提となり、管理組合収入のうち管理費等及び借入金は 不課税(課税対象外)(*1)となり、更に駐車場、駐輪場、ルーフバルコニー、専用庭等の専用使用料のうち、 組合員が使用している場合に限り不課税となります。

収益事業に該当し、基準期間(前々事業年度)の課税売上高(*2)が1,000万円以上であることが条件です。(消費税法9条。小規模事業者に係わる納税義務の免除)

都市部の超高層マンションで共有部にテナントをもち、特掲事業の不動産貸付業に該当する例などでは、 消費税納税団体の届出も必要な場合があります。

課税事業者である管理会社が管理組合との間で管理委託契約を締結する場合については、建設省通達が出ています。(*3)

(*1)不課税とは、対価性がなく、資産の譲渡等に該当せず課税されないもの。
      会費または入会金のようなものは対価性がないから、不課税とされ、
      管理組合が雇用する従業員人件費も不課税取引とされています。
   非課税とは、資産の譲渡等のうち、課税しないこととされているもの。

(*2)課税売上高=原則として当該課税期間中に行った課税資産の譲渡等の
   対価の合計額をいい、課されるべき消費税に相当する額を除きます。
   平成15年度税制改正(平成16年4月1日より適用)によって、事業者免税点制度の適用上限が、
   3,000万円から1,000万円に引き下げられ、店頭表示も総額表示となった。

(*3)建設省通達(平成元年3月8日建設省経動発第22号、建設省住管発第8号)
   定額管理費の表示には、税抜価格、消費税等、合計月額別に明示すること。

4 所得税(給与・報酬の源泉所得税)

所得税については、所得税法11条1項の「公益法人」としての適用はありません。

 清掃員や管理員を直接雇用契約とした場合、マンションの管理組合は所得税法上は法人とみなされているため源泉徴収義務者となります。

 管理組合の役員に、経費の実費弁償とは別に、一定の役員報酬を支払っていたりすれば、改めて雇用契約などを結ばなくとも給与に当たるものと解され、給与所得に対する源泉徴収が必要です。(所得税法第28条第1項第183条)。 経費の実費弁償であることを証明するには、その都度若しくは任期終了時に領収書等を添えて清算する必要があります。

 また、法的手続き依頼に対する弁護士報酬、法人代表理事登記のための司法書士報酬、大規模修繕等のための改修設計や 監理を個人事業として行っている設計士や建築士に依頼した場合には、これらのものに対する報酬料金としての源泉徴収義務が生ずることになります。 (所得税法第20条)。
但し、改修設計や監理に関しては当該業務の契約相手が法人であれば、源泉徴収は、 必要ありません。

5 決算財務諸表の届け出義務


税法上では、それぞれの設立根拠法で公益法人等にみなされている下記のいわゆる「みなし公益法人」は、国税法人税課税制度の適用において、収益事業を営んでいない限り収支計算書等の決算財務諸表の届け出義務はありません。
 @地方自治法により法人格を得た地縁による団体
 A建物の区分所有に関する法律により法人格を得た管理組合法人
 B政党交付金の交付を受ける政党等に対する法人格の付与に関する法律により
   法人格を取得した政党等。
※ 但し上記いずれも地方税の扱いは別になります。 3.4 管理組合と地方税

6 現行税制概観

(1) 非営利法人は法人税制上大きく3つに分類されます。

@ 民法公益法人、社会福祉法人、学校法人、更生保護法人、宗教法人、労働組合 =法人税法上、公益法人等と分類し、収益事業のみ課税。
 税率、寄付金控除枠、みなし寄付金制度、利子配当源泉税も特例扱いになっている。

A NPO法人、政党法人、地縁団体、マンション管理組合、マンション建替組合 =それぞれの法人根拠法の規定により公益法人等とみなして収益事業のみ課税、
 ただし税率、寄付金控除枠、みなし寄付金制度、利子配当源泉税の特例扱いは原則ない。

B 協同組合、医療法人、中間法人 =普通法人として扱われる。ただし、協同組合、特定医療法人については税率軽減措置あり

上記@〜Bの中で、下線がついた法人は講学上、共益法人と分類されているものです。

(2) 一般非営利法人の課税原則に対する税調の議論

(市民社会団体の主な意見)
・完全非分配法人は担税力がない。
・不完全非分配法人であっても担税力がない。私的分配をしたときに法人税を課税すればよい。
・会費・寄付金の類は、自由処分のできない一種の前受金、資本金ないし信託財産で、本来課税対象ではない。

(財務省・税調の主な意見)
・公益を目的とせず、残余財産の帰属に制限のないかつ準則主義の法人は原則課税とするべき。
・登記により簡単に設立ができ、事業内容に制限のない法人は原則課税が妥当。
・人格なき社団は法人税の対象でないものを課税するため一定のものを法人とみなして整備したもので非営利性に着目したものではない。
・会費非課税といっても対価性の有無が不明確、課税潜脱に使われる。
・国際的にも非営利法人即非課税というわけでない国も多い。
・ただし、会費や寄付金などに対して課税上配慮すべき点があるかどうか、税体系の整合性、租税回避防止の観点を踏まえ検討する必要。
・非営利性に着目して非課税とする考えではなく、公益性に着目して優遇している。

(3) 34業種に限り課税している現行方式に対する税調の議論

(市民社会団体の主な意見)
・収益事業課税は非関連事業のみとすべき(本来の公益事業とその関連事業は非課税とするべき)。

(財務省・税調の主な意見)
・民間企業と競合するものは随時範囲を追加するべき。
・そのような対応に限界があれば対価性事業はいったん課税対象とし、一定要件を充足するものは免税とする見直しも必要。
・公益関連事業とそれ以外を明確に区分することは不可能ではないか。
・課税対象事業を制限列挙する現行方式を改め、免税事業を列挙する方式に改め、挙証責任を法人側に負わせるべき。

出典:2004/4/19・民間法・税調事務局作成資料(但し本稿掲載時、すでに変更になっている部分は、一部修正)

7 法令における「課さない」と「課すことができない」の違い

「課さない」は、「租税や課徴金を課することが適当でない」と認めて、非課税等の趣旨を
表わす表現です。

「課すことができない」は、法律で地方税やその他の課徴金を課すことを規定する場合
において、地方税や地方公共団体の公課については国が賦課主体でないために用い
られる表現です。従って、地方公共団体がその課税権に基づき、特定の場合について
その地方税を非課税とする旨を条例で定める場合は、国税の場合と同じく「課さない」
の表現になります。

なお、「課する」とは、国叉は地方公共団体等の公的団体が、国民叉は住民に対し、
公権をもって租税等を賦課し、徴収することを言います。従って、手数料等の、公権
をもって徴収しない金銭に対しては、「課する」という表現はされません。
また、刑罰については「課する」ではなく「科する」を用います。

平成19年 3月 3日掲載
平成20年 1月 1日見直
平成22年 4月 1日見直
平成24年 5月 1日見直
平成28年 9月16日見直
令和元年10月 1日見直