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6.1 財務諸表の体系

財務諸表の体系

「財務諸表」というのは、お金の出入りや財産の状態を表わすために作成された幾つかの書類の総称です。

非営利法人である管理組合の財務諸表は公益法人の会計基準が基礎になっています。
「2.6 公益法人会計基準」に、公益法人の財務諸表の体系を示しています。
公益法人会計における、勘定群(貸借対照表勘定・収支計算書勘定・正味財産増減計算書勘定)と各々の勘定科目は以下のとおりです。

複式簿記の一般的なルールでは、ある勘定が借方で発生、ないし増加した場合、その勘定の減少は必ず反対側の貸方で記帳され、 常に各勘定が同時に複式記帳されていることで、貸借が一致する仕組みになっています。

 

 

 

 

 

 

 

 

左図「非営利法人の財務諸表」で、それぞれの勘定の財務諸表の数字が個別の表で左右の貸借が一致しているのみならず、異なる財務諸表の間でも、 同一科目では必ず一致していることに注意してください。

 

 

前年度の計算書類との連続性

毎年度の計算書類は前年度の計算書類を基礎として作成されます。そのため、勘定科目についても、前年度との連続性が必要ですので、 前年度と同じ科目名を用いて記載します。

財務諸表間で一致(バランス)していなければならない項目(整合性)

(1)正味財産増減計算書の前期繰越正味財産は、収支計算書の前期繰越金及び前事業年度末の貸借対照表上の正味財産の額と一致していること。
   (本頁下段の財務諸表4表の具体例の中で薄いオレンジ色で示しています。)

(2)収支計算書の差引収支差額と正味財産増減計算書の当期正味財産増減額が一致していること。
   (本頁下段の財務諸表4表の具体例の中で薄い水色で示しています。)

(3)収支計算書の繰越金合計額と貸借対照表の正味財産合計額及び正味財産増減計算書の期末正味財産合計額が一致していること。
   (本頁下段の財務諸表4表の具体例の中で薄いピンク色で示しています。)

(4)貸借対照表の貸借が一致していること。
   (本頁下段の財務諸表4表の具体例の中で薄い緑色で示しています。)

(5)財産目録には上記(1)〜(4)の数字がすべて一致して網羅されていること。

監査人は最初に必ずこれらのバランスチェックを行います。

経済用語でよく出てくる言葉に「ストック」と「フロー」があります。「ストック」とは、始めの量と終わりの量のこと、「フロー」とは、入ってくる量と 出て行く量を表わします。最初のストックは事業活動のフローによって最後のストックになります。

「ストックの最後の量から最初の量を差し引いた差は、その期間のフローの差に等しい」ということになります。 言い換えればストックを示している「貸借対照表」の「正味財産」(=資産ー負債)の額は、フローを示している「収支計算書」のフローの差、つまり 収入総額から、支出総額を差し引いた当期フローに、前期のフロー、即ち前期繰越金を加算した総フローに等しいということになります。

1 各財務諸表の意義と仕訳

貸借対照表とは

貸借対照表は「事業年度末現在におけるすべての資産、負債及び正味財産の状態を表示したもの」です。
(貸借対照表=期末の最終日時点の財政状態を全て表示したもの)
「財政状態」とは、単なる財産状態ではありません。お金をどこから調達し、どこへ運用しているのか、自分のお金を運用しているのか、 それとも借金が幾らあるのかなど、財産の状態だけではなく、そのお金の調達先も含めて指す言葉です。
貸借対照表は決算時におけるその組合の資金面での健康状態(組合の規模、体質、体力)を要約したもので、事業活動の期末時点におけるストックを示す「静的」な財政状態を示しています。

貸借対照表の仕訳

1.管理費10,000円が預金に入金された場合には貸借対照表では下記のように記録されます。
・(借方)普通預金 10,000  (貸方)管理費収入 10,000
2.管理費10,000円が期末において未収になった場合
・(借方)未収入金 10,000  (貸方)管理費収入 10,000

収支計算書とは

収支計算書は「当該事業年度における全ての収入及び支出の内容を明瞭に表示したもの」です。
(収支計算書=事業期間の収入と支出を全て表示したもの)
管理組合は活動の期間を1年ごとに区切って、これを事業期間(会計では1会計期間)といいます。

収支計算書はこの期間の管理費などの収入総額から委託管理費や保守費などに使った費用を差し引いた「差引収支差額」 (=純資産)の変化、すなわち、事業活動のフローを示す「動的」な情報を提供しています。

費用とは委託費、保守費など純資産を減少させるものと定義することができます。

収支計算書に記載される収入及び支出の内容は、資金の範囲をどのように設定したかによって異なりますが、 管理組合の場合、資金の範囲は、原則として、現金預金及び短期金銭債権債務となります。
この原則によっている場合、短期金銭債権債務の増減に係る取引が記載されます。

短期金銭債権とは、未収金、前払い金などのことで、短期金銭債務とは、未払金、前受金、預かり金などです。 資金の範囲が問題となるのは、例えば有価証券を資金の範囲に含めると収支計算書には表示されず、貸借対照表上での振替取引 となりますが、有価証券を非資金として扱うと、収支計算上も有価証券購入支出が計上されます。(下記(3)の仕訳例)

収支計算書の仕訳

1.管理会社への委託管理費を預金から振り込んだ場合、収支計算書では次のように記録されます。
・(借方)委託管理費 100,000  (貸方)普通預金 100,000
2.直接雇用の管理人へ源泉所得税と社会保険料を天引きして給与振込
・(借方)給与手当て 100,000  (貸方)普通預金 95,000
                    (貸方)預り金   5,000
3.有価証券を資金の範囲に含めない場合の有価証券購入は、各財務諸表では下記のように表示されます。
・(借方)有価証券購入支出 100,000(収支)  (貸方)現金預金     100,000 (B/S)
・(借方)有価証券       100,000((B/S)  (貸方)有価証券購入額 100,000 (正味)

正味財産増減計算書とは

正味財産増減計算書は「当該事業年度における正味財産のすべての増減内容を明瞭に表示したもの」です。
管理費や修繕積立金の繰越金合計、つまり累積余剰金(積立金)を正味財産 ( net assets )といい、 貸借対照表では資産と負債の差額で示されます。 正味財産増減計算書は、この正味資産 ( net assets ) が期間内にどのように変化して年度末の残高になったかを示すものです。

正味財産増減計算書の様式には、ストック式とフロー式がありますが、原則的にはストック式を用います。

正味財産増減計算書の前期繰越正味財産は、前事業年度末の貸借対照表上の正味財産の額及び当期収支計算書の前期繰越額と一致している必要が あります。

正味財産勘定の仕訳

大規模修繕の資金を銀行融資を受けて貸付けが実行された場合、正味財産勘定は次のように記録されます。
(借方)借入金増加額×××  (貸方)借入金      ×××
(借方)当座預金   ×××  (貸方)借入金受入収入×××

管理組合会計における財務諸表4表の具体例 

平成25年度一般会計 収支計算書

自 平成25年4月 1日
至 平成26年3月31日

青空ハイツ管理組合 一般会計                                         (単位:円)
科 目 決 算 予 算 差 額 備 考

収入の部

 管理費収入

 雑収入

 受取利息

5,580,000

113,084

21,184

5,580,000

80,000

20,000

0

33,084

1,184

(内遅延損害金51,597円)

収入の部計5,714,2685,580,00034,268

支出の部

管理費

 管理員業務費

 通信交通費

 慶弔費

 水道光熱費

 事務用消耗品費

 保険料

 植栽費

 会議費

 消耗品費

 管理諸費

 雑費

 

 

維持費

 保守料

 受水槽清掃費

 受水槽法定点検費

 防災設備点検

 消火器交換

 敷地内車道補修工事

 水漏れ対策工事

 

2,629,151

738,100

47,094

30,000

804,635

96,197

99,820

70,560

24,710

79,955

535,500

102,580

 

 

2,138,205

1,045,800

152,250

18,900

277,200

151,360

128,625

363,070

 

2,629,151

738,100

47,094

30,000

804,635

96,197

99,820

70,560

24,710

79,955

535,500

102,580

 

 

2,138,205

1,045,800

152,250

18,900

277,200

151,360

128,625

363,070

 

2,629,151

738,100

47,094

30,000

804,635

96,197

99,820

70,560

24,710

79,955

535,500

102,580

 

 

2,138,205

1,045,800

152,250

18,900

277,200

151,360

128,625

363,070

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

支出の部計4,767,3564,401,580365,776 
差引収支差額946,9121,278,420△331,508 
前期繰越金14,845,08714,845,0870 
繰越金合計15,791,99916,123,507△331,508 

 

貸借対照表

平成25年3月31日現在

青空ハイツ管理組合 一般会計                                         (単位:円)
資 産 の 部負 債 の 部
科 目金 額 科 目金 額

[流 動 資 産]

 現 金 ・ 預 金

 未 収 入 金

 出 資 金

[16,316,099]

14,418,599

1,866,500

30,000

[流 動 負 債]

 前 受 金

 預 り 金

 未 払 金

 仮 受 金

[523,100]

84,500

15,000

60,400

363,200

負 債 合 計523,100
正 味 財 産 の 部

[正 味 財 産]

 正 味 財 産

 (うち当期正味財産増減額)

[15,791,999]

15,791,999

 (946,912)

正 味 財 産 合 計15,791,999
資 産 合 計16,315,099負債・正味財産合計16,315,099

 

正味財産増減計算書

自 平成25年4月 1日
至 平成26年3月31日

青空ハイツ管理組合 一般会計                                         (単位:円)
科   目金   額

T 増加の部

  1 資産増加額

    当期収支差額

 

  2 負債減少額

         増加額合計

U 減少の部

  1 資産減少額

  2 負債増加額

         減少額合計

  当期正味財産増加額

  前期繰越正味財産額

  期末正味財産合計額

 

 

946,912

 

 

 

946,912

 

 

 

 

 

946,912

 

 

 

0

946,912

14,845,087

15,791,999

 

財産目録

平成25年3月31日現在

青空ハイツ管理組合 一般会計                                         (単位:円)
科  目 当年度前年度増減額摘 要
資産の部    
  普通預金 13,796,17413,281,702514,472 
  定期預金 13,796,17413,281,702514,472 
  未収入金 1,866,5001,481,500415,000 
  信用組合出資金 30,00030,0000 
            計 16,315,09915,383,687931,412 
       
       
       
負債の部    
  預り金 15,00010,8004,200 
  前受金 84,500144,000▲59,500 
  仮受金 363,200383,800▲20,600 
  未払金 60,400060,400 
            計 523,100538,600▲15,500 
       
       
       
正味財産の部     
  正味財産 15,791,99914,845,087946,912 
  (AーB)