15. 消火器の規格改正と設置基準
15.1 消火の原理
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15.5 消火器設置基準
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老朽化した消火器の破裂事故などをふまえて消火器の規格改正が行われました。平成22年総務省令第111号「消火器の技術上の規格を定める省令の一部を改正する省令」により、 @ 平成23年(2011年)4月1日より、製造から10年を経過した消火器に対する耐圧性能点検(水圧点検)が 義務付けられ、以後3年ごとの水圧点検が必要となりました。平成22年(2010年)12月22日消防庁告示第24号 A 平成24年(2012年)1月1日に旧型式の消火器は型式失効となり、新規に製造・販売・設置はできなくなりました。 ※型式失効とは、規格・省令等の改正により、既に型式承認を受けた機器の形状等が規格に適合しなくなり、 型式承認の効力を失うことをいいます。失効した場合、消火器として認められません。 B 特例として、既に設置されている消火器は、平成33年(2021年)12月31日まで継続して設置可能です。 (同・総務省令第112号)平成23年1月1日から11年間に限り令第30条第1項及び危険物政令第22条第1項の特例 業務用消火器の適応火災表示マークも改正されています。(下図) メーカーも老朽化消火器による破裂事故の発生、不用消火器の回収・リサイクルの促進に対応して、 従来、主力だった加圧式から、より安全性能の高い蓄圧式に生産をシフトしています。 既に設置されていて型式失効となっている旧型の消火器は、点検サイクルにあわせて平成33年(2021年)12月31日までに 新型の消火器へ順次、切り替えていくことになります。 |
2. 消火器の種類(蓄圧式と加圧式) |
普及型の最も一般的な消火器の例 旧型の加圧式です。(クリックすると拡大します)
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消火器には火災種別によって下記の3種類があります。
(参考省令) 消火器の消火能力 消火器の消火能力はどの大きさの「火災模型」を消火できたかで決まります。 A火災 B火災
C火災
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項目 | 蓄圧式消火器 | 加圧式消火器 |
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構造 | 常時0.98MPa 以下のガスで充圧 | 放出時加圧用ガス容器で加圧 |
日常点検 | 指示圧力計で状況を把握 | 容器等の外観腐食等で判断 |
容器腐食時の安全性 | 腐食箇所から圧力漏洩により放射必要圧の低下。 | 容器腐食の場合、設置状態では不明。使用時の閉塞圧により破裂の恐れもあります。 |
圧力源 | 窒素(N2)ガスを蓄圧 | 二酸化炭素(CO2)・窒素(N2)ガスで加圧 |
放出時 | 均一に0.7〜0.98MPa の圧力 | 瞬間的に1.2MPa まで加圧 |
放出状態 | 均一の圧力で放出 | 加圧直後が最高圧力 |
使用性 | レバー操作(レバーを握る力)に小さな力で操作可能 (40N、4.0 sf) | レバー操作(レバーを握る力)にある程度の力が必要 (78N、8.0 sf) |
一時放射ストップ機能 | 全機種有り | 最も一般的な開放式には無い・一部の開閉バルブ式にはある |
その他 |
レバーを上げると噴射され、下げると噴射が止まります。消火器内部に高圧の空気、窒素ガスや炭酸ガス、ヘリウムガスを充填したもの。薬剤は常時加圧されていて、レバー操作により圧力を利用して放射します。
内部圧力を示す指示圧力計(ゲージ)の取付が義務付けられています。現在国内では水消火器、強化液消火器、機械泡消火器、粉末消火器の一部がこの方式を採用し、
73℃になると自動的に安全栓が外れ自動的に放射される粉末ABC消火器も発売されています。
二酸化炭素消火器など消火薬剤そのものが圧力を持つ場合もあり、こちらは「自圧式」とも呼ばれます。(右図は圧力ゲージの例)
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一旦レバーを上げると全量噴射される開放式が一般的です。内部に加圧用のガスが封入された容器があり、使用時にレバーを操作するとカッターにより内容器の封板が破れガスが噴出、容器に充てんされた薬剤が攪拌された後、放射されます。
設置消火器が加圧式の場合は、破裂しないバーストレス消火器への早期の取替えをお願いいたします。(平成22年12月22日消防予第556号) |
3. 消火器の用途と種類 |
火 災 種 別 |
着火物 | 粉末系消火器 | 水系消火器 | |||||
ABC粉末 | BC粉末 | 強化液 (霧状) |
水(浸潤剤等入)(棒状) | 機械泡 | 化学泡 | 二酸化炭素 | ||
普 通 火 災 |
木製品 | ○ | × | ○ | ◎ | ○ | ○ | × |
紙・繊維製品等 | △ | × | ○ | ◎ | ○ | ○ | × | |
ふとん類 | △ | × | ○ | ◎ | ○ | △ | × | |
ゴム・ セルロイド類 |
△ | × | ○ | ◎ | ○ | ○ | × | |
合成 樹脂類 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
油 火 災 |
引火性 油類等 (ガソリン等) |
◎ | ◎ | ○ | × | ◎ | ◎ | ○ |
動物性油類 (天ぷら油等) |
○ | ◎ | × | △ | △ | × | ○ | |
礦物油類 (灯油等) |
○ | ○ | ○ | △ | ○ | ○ | ○ | |
電 気 火 災 |
電線被類 (通電中) |
○ | ○ | ○ | × | × | × | ◎ |
注 ◎:非常によく消火できるもの ○:消火できるもの △:完全に消火できないが、火災を抑制できるもの ×:消火できないもの |
噴射された粉末によって周囲が汚染されるのを避けたい場所では、強化液消火器が使用されます。
(注)車両や舟車(船舶)に設置する消火設備の適用基準は消防法ではなく、消防法施行規則第10条(車両に係る消火器具に関する基準)で、鉄道営業法、軌道法若しくは道路運送車両法またはこれらに基く命令の定めるところによるとしています。 技術の進歩に則して、防災機器も、より優れた性能のものを供給する必要がある為、新しい規格に合わないとき、総務大臣により「型式失効」となる場合があります。 消火器は必ず「国家検定合格品」(検定合格表示)であること、「型式失効」になっていないことを確認してください。 |
種類 性能 |
粉末消火器 | 強化液消火器 |
薬剤量 | 1.5kg以上 | 3.0以上 |
放射時間 | 約10秒から14秒 | 約16〜40秒 |
放射距離 | 3〜8m | 4〜10m |
重 量 | 3〜5kg | 6〜7kg |
特 長 |
粉末による窒息効果で一瞬のうちに炎を抑え消火できるが、
浸透性がなく、冷却効果がないため、燃えているものによっては再燃することがあるので、
これを防止するためには更に水をかける必要がある。薬剤の放射時間と放射距離が強化液消火器と比べて短い。 |
強化液は中性のものと強アルカリ性のものがある。使用温度が20〜40℃のものもあるので注意要。
浸透性があり、冷却効果があるため、木材などの火災には有効。瞬間的に炎を消すことはできないが、冷却効果を持ち、粉末消火器と比べ、放射時間、放射距離は長い。 |
粉末(ABC)消火器と強化液(強アルカリ性)消火器を併用使用した場合、刺激臭のあるアンモニアガスが発生し、 また、アンモニアガスだけでなく火災により生ずる燃焼生成物の人体への影響も考慮する必要があることから、消火を確認した上で換気を行ったり、 長時間その場所に留まらないように留意する必要がある。密閉性の高い小空間での併用使用は注意を要する。 |
5. 消火器設置基準どんな消火器を設置しなければならないか(消防法施行令別表第二)
消火器の設置条件(1)「面積による計算式」・・・(延べ面積を消火能力で割った本数を、歩行距離20m以下おきに配置します。)
消火器設置計算方法共同住宅(耐火構造) (2)「歩行距離 その他 設置のしかた」 消防法における建築面積、床面積の計算 (1)建築面積 点検・報告の概要@点検及び報告の義務(消防法第17条の3の3) A点検の内容と期間(平成16年消防庁告示第9号) B防火対象物の点検の範囲(施行令第36条第2項) C点検結果の記録及び報告期間(施行規則第31条の6) D罰則(消防法第44条) |
6. 「悪質な消火器点検業者」の手口(紹介事例は平成9年12月1日付 消防庁予防課長発・消防予第186号記載事例です) 消火器の不適正な点検等を行う業者の手口について 「不適切な点検」に係る相談事例 消火器の破裂で小4男児が重体に(次頁へ) 「15,7 消火器の緊急点検を」 |