15.7 消火器の緊急点検を
放置された消火器は危険です。
破裂事故の原因となっている消火器は、ほとんど点検もされず、永年放置された古い消火器に集中しています。
消防庁でもくりかえし注意を促してきました。
平成21年9月17日付け消防予第394号「老朽化消火器の適切な取扱いに係る周知の徹底について」
平成23年7月28日付け事務連絡「老朽消火器の適切な取扱いに係る周知の更なる徹底について」
平成25年7月11日付け事務連絡「老朽化消火器の適切な取扱いに係る周知の更なる徹底について」
過去における消火器の破裂事故
(1) 昭和43年度から平成21年度までの間で合計161件(死者11名、負傷者64名)
平成12年度から平成21年度までの事故件数26件(死者3名・負傷者22名)
(平成22年7月予防行政のあり方に関する検討会「老朽化消火器の破裂事故を踏まえた安全対策」消防庁予防課資料より)
事故発生 年月 |
場 所 | 人 的 被 害 |
機種型式 | 製造年 | 経過 年数 |
事故発生の状況 | 破損箇所 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
平成21年9月15日 | 大阪府 大阪市 |
負傷者1名(小4男児) | 粉末加圧式 20 型 |
1989年 | 20 年 | 子供が遊んでいたところ、屋外駐車場に置かれていた消火器が破裂 | 容器本体底部 |
平成21年9月16日 | 福岡県 行橋市 |
負傷者1名(67歳男性) | 粉末加圧式 | 表示毀損不明 | 不明 | 納屋の軒下に置かれていた消火器を自ら廃棄しようと、操作したところ破裂 |
容器本体底部 |
平成21年9月30日 | 愛知県 一宮市 |
負傷者1名 | 粉末加圧式 10 型 |
1989年 | 20年 | 隣人所有の消火器を廃棄のため放射したところ、本体底部に穴が開いた | 容器本体底部 |
平成21年10月11日 | 千葉県 船橋市 |
負傷者1名 | 粉末加圧式 10 型 |
1981年 | 28年 | 自宅屋外で消火器を触っていたところ、破裂 | 容器本体底部 |
平成22年2月27日 | 滋賀県 栗東市 |
負傷者1名 | 粉末加圧式 4型 |
1975年以前 (推定) |
30年以上 | 建物裏に野ざらしで放置されていた消火器を廃棄のため、放出したところ、本体底部が破裂 | 容器本体底部 |
平成22年7月22日 | 徳島県 那賀町 |
負傷者1名(20代男性) | 1973年 | 37年 | 住宅解体工事中に放置されていた消火器を移動する際に誤ってレバーを握って消火器が破裂 | 容器本体 | |
平成23年7月25日 | 鹿児島県 霧島市 |
負傷者1名(70代男性) | 1990年 | 21年 | 屋外にある消火器を片付けている際に誤って消火器が操作されて破裂 | 容器本体底部 | |
平成23年8月2日 | 栃木県 佐野市 |
負傷者1名(60代男性) | 粉末加圧式 | 1982年 | 28年 | 住宅解体工事中に放置されていた消火器の消火剤の放出操作をして消火器が破裂 | 容器本体底部 |
平成23年9月11日 | 大分県 宇佐市 |
死亡者1名(60代男性) | 表示毀損不明 | 不明 | 消火器廃棄物処理業者が消火器を廃棄処理中に誤って消火器が操作されて破裂 | 容器本体底部 | |
平成25年6月20日 | 宮城県 仙台市 |
負傷者1名(70代男性) | 粉末加圧式 | 1983年 | 30年 | 家庭で消火器を廃棄する際に消火剤粉末を放出させようと操作したところ、消火器が破裂 | 容器本体底部 |
平成25年7月8日 | 岡山県 倉敷市 |
負傷者1名(60代男性) | 粉末加圧式 | 1975年 | 38年 | 産業廃棄物処理事業者が、事業用の消火器を廃棄する際に消火剤粉末を放出させようと操作したところ、消火器が破裂 | 容器本体底部 |
詳細事例 (1)
消火器が破裂、小4男児が重体に
平成21年(2009年)9月15日(火)午後4時50分ごろ、大阪市東成区中本(JR大阪環状線玉造駅東約500メートルの住宅街)の駐車場でドカンという音がし、子供が倒れていると110番があった。大阪府警東成署員が駆け付けたところ、近くに住む小4男児(10歳)が右側頭部から血を流して倒れており、病院に運ばれたが意識不明の重体。
駐車場の管理人の男性によると、消火器を置いたのは約20年前。経営していた石油販売店を廃業した直後に駐車場の管理を委託された際、駐車場で火災があったときに使えると思い、店に備え付けていた4本の消火器を駐車場の敷地の隅に置いた。その後は放置して点検することもなかったという。
破裂した消火器は粉末加圧式消火器(高さ55センチ、直径17センチ)で、主にガソリンスタンドや工場など業務用の大型。1989年に製造され、重量は10キロ前後ある。この小4男児が駐車場内で遊んでいた際、消火器の安全栓のピンを触っていたのを、一緒にいた同級生が見ており、その際に消火器が破裂したとみられる。消火器の胴体部は底が抜けた状態で約10メートル離れた駐車場に接する路上に落ちており、底も胴体部近くにあった。
詳細事例 (2)
消火器破裂事故 男性が11針縫う重症
平成21年(2009年)9月16日午後3時15分ごろ、福岡県行橋市沓尾の男性(67)方の裏庭で、男性が納屋に置いていた消火器の薬剤を抜こうとレバーを握ったところ底部が破裂した。男性は消火器が下あごに当たり11針を縫う重症を負った。大阪市で15日に発生した消火器破裂事故を報道で知り、廃棄を思い立ったという。
同署や行橋市消防本部の調べでは、消火器は高さ約50センチ、直径約12センチの粉末加圧式。男性は薬剤を抜こうとしたが、さびついてスムーズにいかないため力任せにレバーを握ったという。このため圧縮空気が容器内で充満。底部が腐食していたことから破裂したと見られる。
消火器の設置場所としての注意
1、直射日光の当たらない場所に設置してください。
2、雨水や湿気の少ない場所 (このような場所では、消火器収納箱に入れて設置しましょう)
3、1.5m以下の誰でもが目にしやすい場所で、取りやすい場所 (目立つようにステッカーを貼りましょう)
消火器点検の注意
1、容器が錆びていたり、古くなったら絶対使用しないで、専門の消防設備士に交換してもらって下さい。
2、古い不要消火器は放置せず、使用禁止のシールを貼り、廃棄物処理業者に依頼してください。
3、消火器の点検は消防設備士の資格をもった専門業者に依頼してください。
災害時における廃消火器の回収
地震・津波・台風・集中豪雨等の災害発生時、被災地では大量のがれきが仮置場や一次集積所に持ち込まれますので、がれき火災が発生しやすくなります。
これらに対し、がれきの中に集積された廃消火器も有効に使用できるとの誤った一部報道がありましたが、
消火器は圧力容器であり、しかも水や泥に埋まっていた消火器には変形や傷、腐食があるため、使用時に内圧が詰まり破裂の危険性があるので、
再使用が可能かどうかは「乙種6類の消防設備士」が点検・整備しなければ極めて危険な二次災害を引き起こすおそれがあります。
そのため、東日本大震災のときには、消火器工業会が津波ゴミ中の廃消火器の回収事業を行い、5万本を回収し、そのすべてを手作業で解体処理しましたが、
金属類は廃金属としての価値がなく、消火薬剤も100%リサイクル不可の状態でほとんどが埋立処理とせざるを得ませんでした。
震災時のがれきの中には消火器をはじめ多くの危険物が持ち込まれます。
消火器は危険な圧力容器であることを今一度思い起こしてください。
(2009.09.17掲載)
(2013.12.25改訂)