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19. 二方向避難型特定共同住宅

1 二方向避難型特定共同住宅等は、特定共同住宅等の住戸等(住戸、共用室及び管理人室に限る。) において火災が発生した場合に、当該住戸等が存する階の住戸等に存する者が、当該階の住戸等から、 少なくとも1以上の避難経路を利用して階段室等(当該住戸等が避難階に存する場合にあっては地上。) まで安全に避難できるようにするため、次に定めるところにより、2以上の異なった避難経路 (避難上有効なバルコニー(*1参照)を含む。)を確保していると認められるものとする。 (避難経路は、*3参照 )

2 二方向避難型特定共同住宅等は、次に定めるところによるものであること。

 (1) 廊下型特定共同住宅等の階段室等は、廊下の端部又は廊下の端部に接する住戸等の主たる出入口に面していること。 (*2参照

 (2) 住戸等の外気に面する部分に、バルコニーその他これに類するもの(以下「バルコニー等」という。)が、避難上有効に設けられていること。

 (3) バルコニー等に面する住戸等の外壁に、消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第4条の2の2に規定する避難上有効な開口部が設けられていること。

 (4) 隣接するバルコニー等が隔板等によって隔てられている場合にあっては、当該隔板等が容易に開放し、除去し、又は破壊することができ、かつ、当該隔板等に次に掲げる事項が表示されていること。

   イ 当該バルコニー等が避難経路として使用される旨

   ロ 当該隔板等を開放し、除去し、又は破壊する方法

   ハ 当該隔板等の近傍に避難上支障となる物品を置くことを禁ずる旨

 (5) 住戸等において火災が発生した場合に、当該住戸等が存する階の住戸等に存する者が、当該階の住戸等から、少なくとも1以上の避難経路を利用して階段室等まで安全に避難することができること。
ただし、バルコニー等に設けられた避難器具(避難器具用ハッチに格納された金属製避難はしご、救助袋等の避難器具に限る。)により当該階の住戸等から避難階まで避難することができる場合は、この限りでない。

(*1)

避難上有効なバルコニーについて
構造類型告示第3第1号の「避難上有効なバルコニー」とは、次の@からBに定める基準に適合しているものであること。
@ 直接外気に開放されていること。
A 避難上支障のない幅員及び転落防止上有効な高さの手すり等を有していること。
なお、車いす利用者等の避難を考慮した場合に、80cmから90cm程度の幅員を有していることが望ましいものであること。
B 他の住戸等の避難上有効なバルコニー又は階段室等に接続していること。

(*2)

廊下型特定共同住宅等の階段室等の位置について
「階段室等は廊下の端部又は廊下の端部に接する住戸等の主たる出入口に面している」とは、階段室等が廊下の端部に面して設けられていることをいうほか、下図に示すように、階段室等が廊下の端部に接する住戸等(ここでは住戸Aを指す。)の主たる出入口に面していることを指す。これは、廊下の端部に接する住戸等に隣接する住戸等(ここでは住戸Bを指す。)が火災になっても、住戸Aの居住者が階段Aを使って避難できるようにするため、Wは廊下の端部に接する住戸等(ここでは住戸Aを指す。)の幅以下とするものであること。

(*3)

避難経路のうち住戸等における火災時に利用できない部分について「避難経路」として、次の@からDに定める部分は、利用できない。
@ 火災住戸等
A 下図に示す開放型の廊下の判断基準に適合する廊下にあっては、火災住戸等の主たる出入口が面する火災住戸等の幅員に相当する部分
B 開放型の廊下の判断基準に適合しない廊下にあっては、階段室等の出入口から一の住戸等の幅員に相当する部分以外の部分
C 階段室型の特定共同住宅等に存する火災住戸等の主たる出入口が面する階段室等
D 火災住戸等のバルコニー

避難に利用できない部分の設定に関する前提条件
廊下、バルコニー等が火災の影響によって避難に利用できなくなる条件は下記の通り
1.火災による煙によって人の通行が阻害される。
2.火災による熱によって人の通行が阻害される。

 下図に示すように、中廊下型の共同住宅等では、中廊下は、煙の拡散により、B両端1住戸分を除いた部分が避難に利用できない。また、D火災住戸のバルコニーも避難に利用できない。
隣接する住戸からは、連続するバルコニーを経由して、階段から避難することが可能であるため、二方向避難と認められる。


下図に示すように、階段室等を共用する隣戸で火災が発生した場合、C火災住戸等の主たる出入口が面する階段室が利用できないが、連続するバルコニーを経由して、他の階段から避難することが可能である
但し、端部から2つ目の住戸で火災が発生した場合、端部の住戸等は、主たる出入口が面する階段室を利用して避難ができず、バルコニーも経由できないことから、二方向避難とならない。但し、連続するバルコニーの両端部に下階への避難器具を設置することで、二方向避難が確保できる。

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