21. 共同住宅用スプリンクラー設備
この頁の目次
21.1 スプリンクラー設備の種類
21.2 共同住宅用スプリンクラー設備の選定フローチャート
21.3 共同住宅用スプリンクラー設備の設置及び維持に関する技術上の基準
(平成17年総務省令第40号に基づく平成18年消防庁告示第17号)
まえがき
スプリンクラー(residential fire sprinklers :Fire-Resistant Insulation and Systems) は、1864年、英国(UK)のメジャー・ハリソン(Major Harrison)によって発明され、
米国のヘンリー・パームリィ(Henry Parmelee)が、彼のピアノ工場を火災から守るために設置したのが最初と言われています。
スプリンクラー設備は全自動式の消火設備では歴史が最も古く、多くの実績のある設備です。
共同住宅用スプリンクラー設備は、オフイスや工場、店舗用と同じ閉鎖型湿式スプリンクラー設備に属しますが、
総務省令第40号により、共同住宅での設置義務は11階以上で、更に自動火災報知設備に代えて共同住宅用自動火災報知設備が使えるほか、屋内消火栓など免除されるものがあり、一般的なスプリンクラー設備のシステムよりも構成要件は緩和されています。
ただし総務省令第40号を選択するには、主要構造が耐火構造でなくてはならないことや、開口部の規定や区画の規定などさまざまな構造上の条件をクリアしなければなりません。
※避難のために患者の介助が必要な有床診療所・病院の設備については、 平成25年10月11日に発生した福岡市有床診療所火災を受けて、 消防法施行令等が一部改正(平成28年4月1日施行)されています。 それらのスプリンクラー設備についてはここでは触れていませんので、関係法令を参照ください。
21.1 スプリンクラー設備の種類
1.スプリンクラー設備の利点
スプリンクラー設備は防護対象における火災の発生を常時監視し、火災の発生を自動的に検知して放水を行い、 火災の拡大を初期に抑制し、かつ、安全に避難することを支援するための設備です。 湿式、乾式、予作動式のスプリンクラーは火災初期の時点で発火点とその周囲にのみ自動で放水して消火しますので、 延焼が拡大したあとでの消火栓や消防車から放水する量に比較してはるかに少ない水損ですみます。
2.スプリンクラーヘッドの構造
閉鎖型スプリンクラーヘッドの技術上の規格を定める省令(昭和四十年一月十二日自治省令第二号)
最終改正:平成二〇年一二月二六日総務省令第一五七号
2.1 閉鎖型スプリンクラーヘッドの種類
・標準型ヘッド 加圧された水をヘッドの軸心を中心とした円上に均一に分散するヘッド。
・小区画型ヘッド 標準型ヘッドのうち、加圧された水を散水分布試験で規定の散水範囲に分散するヘッド。
・水道連結型ヘッド 小区画型ヘッドのうち、配管が水道の用に供する水管に連結されたスプリンクラー設備に使用されるヘッド。
・側壁型ヘッド 加圧された水をヘッドの軸心を中心とした半円上に均一に分散するヘッド。
2.2 ヘッドの構造
・感熱部は上下のヒートコレクター(集熱板)にはさまれた温度ヒューズ(可溶合金)で構成されたヒュージブルリンクの例を図示しています。
・フレーム ヘッドの取付部とデフレクターを結ぶ部分。
・ヒュージブルリンク 易融性金属により融着され、又は易融性物質により組み立てられた感熱体(火熱により一定温度に達するとヘッドを作動させるために破壊又は変形を生ずるもの)
・グラスバルブ型ヘッド 感熱体としてガラス球の中に液体を封入したヘッド。
・デフレクター 放水口から流出する水流を細分させてヘッドの軸心を中心に円状に均一に分散させる作用を行うもの。
感熱体の構造(ヒュージブルリンクとグラスバルブ)
2.3 ヘッドの感熱温度標示(ヘッドの側面を見ると動作温度がわかります。)
60度未満 黒 | 60〜75度未満 無 | 75度〜121度未満 白 | 121度〜162度未満 青 | 162度〜200度未満 赤 | 200〜260度未満 緑 | 260度以上 黄
ヘッド1個当たりの放水量
圧力0.1MPa(メガパスカル)のとき、呼び8のヘッドの場合は毎分30〜50L(リットル)未満、呼び10のものは毎分約50L、呼び15のものは毎分80L、呼び20のものは毎分114Lの水を放出します。
共同住宅用スプリンクラー設備は、水源の水量は4立法メートル以上とし、4個のスプリンクラーヘッドを同時に使用した場合、それぞれのヘッドの先端において放水圧力が0.1MPa以上で、かつ、 放水量が毎分50L以上で放水できることという規定になっています。(平成17年総務省令第40号第3条第2項イ〜ハ)
2.4 ヘッド1個当たりの散水半径
標準型ヘッドの有効散水半径(軸心を中心とした円状に均一に分布)は、
0.1MPaから1MPaの圧力範囲内で半径2.3m〜2.6mの範囲に散水能力を有するものとなっています。
小区画ヘッドは0.1MPaから1MPaの圧力範囲内で半径2.6mの範囲に散水します。
ここから、共同住宅用スプリンクラー設備の各ヘッド間の水平距離は2.6m以内、かつ、1のスプリンクラーヘッドにより防護される部分の面積が13u以下となるように設置することとなっています。
(平成18年消防庁告示第17号第2条第1項(3))
2.5 ヘッドの形状
(日本消防検定協会「消防機器早わかり講座」閉鎖型スプリンクラーヘッドの図に一部追記しています。)
初期の頃は(a)の馬蹄形のフレームが使われ、その後(b)のような装飾性を加味したマルチ型が開発され、現在は天井からの突出部を減らした(c)のフラッシュ型が主流になっています。
その他、ヘッドがコンシールド部(ヘッドカバー)で覆われていて、火災の熱によりコンシールド部が作動すると、スプリンクラー配管が充水され散水するコンシールドヘッドがあります。
2.6 散水障害に注意を
スプリンクラーヘッドから散水が始まっても、ヘッドの近くにダンボールなどの障害物が置かれていると、 水がかからずに消火できないので注意が必要です。
2.7 スプリンクラーヘッドの取付位置
スプリンクラーヘッドのデフレクターから下方0.45m以内で、かつ、水平方向の壁面までの範囲には、
著しく散水を妨げるものが設けられ、又は置かれていないこと。
スプリンクラーヘッドは、天井の各部分から一のスプリンクラーヘッドまでの水平距離が2.6m以下で、
かつ、1のスプリンクラーヘッドにより防護される部分の面積が13u以下となるように設けることとされています。
2.8 制御弁を閉めて散水を止めるには?
スプリンクラーヘッドを誤って破損したり、火災が小規模で消火できた場合には、水による損害を防ぐため、その階に設置されている制御弁を閉め、散水を止めなければなりません。
防火管理者は、日頃から制御弁の設置場所と操作方法を覚えておく必要があります。
左図の例では、赤い流水検知装置の手前にある赤いレバーが制御弁です。
(1)制御弁(常時開の札がかかっている)を閉めます。
(2)試験排水弁(常時閉の札がかかっている)を開けます。
3.スプリンクラー設備の種類
スプリンクラー設備には大別して閉鎖型、開放型、放水型があります。
閉鎖型とは水の出口が常に閉じられているもの、開放型とは水の出口が常に開いているものをいいます。
放水型の詳細は、本頁の「(6)放水型スプリンクラー」を参照ください。
閉鎖型湿式スプリンクラー設備のシステム図
(1)共同住宅用スプリンクラー設備(閉鎖型湿式) スプリンクラーヘッドがつくのは住戸、共用室、管理人室の居室(建基法第2条第4号に規定するもの)と4u以上の収納室の天井の室内に面する部分です。 共同住宅用自動火災報知設備とは、住戸や共用部分で火災が起きた際に管理人室などに設置されている火災受信機(住棟受信機)で一括監視するシステムです。 住戸用自動火災報知設備は受信機、感知器、戸外表示器で構成され、かつ遠隔試験機能を持ち、当該住戸の外側から容易に機能の異常が確認できるもので、自動火災報知設備のインターホンが受信機の機能を持ち、戸外表示器もドアホンがその機能を持っています。 |
(2)湿式スプリンクラー設備(閉鎖型湿式) ・一般ビル向(配管内の水が凍結する恐れのない事務室、商店、倉庫、工場など)
配管内に予め加圧した水を充填させているので、スプリンクラーヘッドが開放されるとすぐに散水が開始されるのが利点となっている一方で、万が一スプリンクラーヘッドが壊れたりすると誤作動を起こしてしまう危険があります。 |
(3)乾式スプリンクラー設備(閉鎖型乾式) 配管内の圧力水が凍結する恐れのある冷凍倉庫、屋外軒下、寒冷地で暖房のない建物等で使用されます。 乾式流水検知装置の一次側迄圧力水が充水され、二次側配管には圧縮空気が充填されていて、 スプリンクラーヘッドの作動開放により二次側空気圧力が低下すると、乾式流水検知装置が開放され放水します。 @ 加圧送水装置は閉鎖型スプリンクラーヘッドがいずれの位置で作動開放しても1分以内で放水可能(二次側配管容量と二次側設定圧力を考慮)な容量を持つものを設けます。
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(4)予作動式スプリンクラー設備 スプリンクラーヘッドの誤作動による水損を特に避けたい病院、共同住宅、重要文化財、建造物、電算機室などで適用される方式
流水検知装置の一次側まで圧力水が充水され、二次側配管には圧縮空気が充填されています(二次側乾式の場合)。
予作動式スプリンクラー設備には、二次側乾式のもの、二次側湿式のもの、二次側湿式で負圧のものなどの方式があります。 下記は二次側乾式の動作フローを示しています。 |
(5)開放型スプリンクラー設備 ・急速に火災が拡大する可燃物の固体や液体が存在する場所、化学工場、倉庫、劇場舞台部など、 天井面が高く熱気流の影響でかならずしも火災の発生個所の真上のスプリンクラーヘッドが開放するとは限らない場所、 または火災が急激に拡大する恐れのある対象物に用いられます。 開放型スプリンクラーヘッドを用い、火災感知器等と連動して作動するか、又は手動によって一斉開放弁を開いて放水します。 スプリンクラーヘッド自体が既に開放していて、火災感知器で火災を感知し解放弁を作動させて水を噴射させる方式と、 感熱分解部分のない開放型スプリンクラーヘッドを使用し、手動起動弁により一斉開放弁を開放して、 区画されたヘッド全部から放水する方式があります。 |
(6)放水型スプリンクラー 放水型は施行令1の4項(百貨店、マーケツトその他の物品販売業を営む店舗又は展示場)及び16項イ(複合用途防火対象物)の4項の用途部分で床面から天井までの高さが6mを超える部分、 または上記の用途以外で天井高さが10mを超える大空間、高天井を有する総合体育館、空港通路、展示場などに設置されるものです。 放水銃のような構造をしていて、火災の火元に直接放水して消火することも可能な可動型ヘッドのものもあります。
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(7)特定施設水道連結型スプリンクラー設備(閉鎖型乾式) 高齢者向け賃貸住宅、サービス付き高齢者賃貸住宅向けの 特定施設水道連結型スプリンクラー設備のうち「乾式」のものは、通常時はスプリンクラー配管に水が入っていないため水漏れの心配がなく、 寒冷地での設置にも適しています。 また、停滞水が発生しない乾式スプリンクラーは、スプリンクラー配管を末端給水栓に接続する必要がありません。 そのため配管施工が容易になり、スプリンクラー設置のコストを抑えることができます。 ・断水や取水制限、また近隣の水道水状況などにより水道圧力が低下している場合には、規定の放水ができない場合があります。
水圧が不足する場合には増圧ポンプなどを設置する必要があります。
消防法施行令改正(H19年政令第179号)及び消防法施行規則改正(H19年総務省令第66号)が平成19年6月13日に公布されました。この改正により、火災発生時に自力で避難することが著しく困難な者が入所する社会福祉施設等について防火安全対策が強化されました。 275u以上の対象施設にスプリンクラー設備の設置を義務付けました(従来は延べ面積1000u以上のものに設置)。 ただし、総務省令で定める防火区画を有するものは除きます。 また、当該施設の廊下及び収納施設を、スプリンクラーヘッドの設置を要しない部分とします。 さらに、延べ面積1000u未満の対象施設に設置するスプリンクラー設備(特定施設水道連結型スプリンクラー設備)については、その技術上の基準を緩和しています。 |
21.2 共同住宅用スプリンクラー設備の選定フローチャート
共同住宅用スプリンクラー設備は、特定共同住宅等における火災時に火災の拡大を初期に抑制する目的で設けられるもので、 スプリンクラーヘッド(小区画ヘッド感度種別1種)、制御弁、自動警報装置、加圧送水装置、送水口等で構成され、住戸、共用室または管理人室ごとに自動警報装置の発信部が設けられています。
共同住宅用スプリンクラー設備は、配管内に、常時、充水加圧され、火災発生と同時にスプリンクラーヘッドから放水され、制御弁に設けられたリミットスイッチが、制御弁の全開状態を監視し、 次ページの共同住宅用自動火災報知設備に接続されています。
(注): 上の図で、「〜に代えて」とあるところは、「初期拡大抑制性能を満たすものとして、単独でスプリンクラー設備を共同住宅用スプリンクラー設備に代えることは出来ず、当該性能を有する設備等をセットで代えることができる」ものです。
複合用途防火対象物の場合の特例
小規模な老人ホーム等の令別表第1(6)項ロに掲げる防火対象物が存することにより、複合用途防火対象物となるものについては、原則として、 延べ面積にかかわらずスプリンクラー設備を設置しなければならないことから、 特定共同住宅等の部分であって、令別表第1(6)項ロに掲げる防火対象物の用途に供される部分が10階以下に入居した場合においても、 スプリンクラー設備等の当該部分に対する初期拡大抑制性能を有する消防の用に供する設備等を設置しなければなりませんでした。
単一用途((5)項ロ)と複合用途((16)項イ)の消防用設備等の規制の違い (例 スプリンクラー設備)
平成27年2月27日付け消防予第81号により、41号通知の一部を改正し、10階以下の階に存する福祉施設等には共同住宅用スプリンクラー設備の設置を要しないこととされました。
共同住宅におけるスプリンクラー技術基準 (220号特例通知と省令第40号)
共同住宅等の消防用設備等技術基準として平成7年10月5日消防予第220号通知がありましたが、この220号通知には法的拘束力がなく、消防機関ごとに独自の運用がなされることによる統一性のなさが浮き彫りになったこと、 行政の透明化・自治事務化の流れにより、予防課長通知などによる通達行政が制限されたことから、 総務省消防庁では、220号通知の基本的な枠組みを維持しつつ、これらの問題を解決するため、平成17年3月25日 共住省令(総務省令第40号)として規定し直し、全国で統一的な運用を図るとともに、共同住宅用スプリンクラー設備、 共同住宅用自動火災報知設備等、必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等の技術基準として法制化したものです。
詳しくは 「16 特定共同住宅の消防法令」 及び 「16.1 共住省令第40号」を参照ください。
項目 | 220号特例通知 (旧基準) |
省令第40号・告示第17号 (新基準) |
---|---|---|
スプリンクラーヘッド | 小区画型ヘッド(1種) | 同左 |
同上設置場所 | 各住戸・共用室・管理人室の厨房、居室、収納室(4m2以上) | 同左 (厨房は消防予第500号にて設置義務が明記) |
同上設置単位 | 水平距離2.6m以下包含 | 水平距離2.6m以下包含かつ13m2以下ごと |
制御弁 | 各住戸、共用室又は管理人室ごとに設ける | 同左 |
閉表示の非常電源は1時間以上 | 閉表示の非常電源は10分間以上 | |
自動警報装置 (流水検知装置) |
各住戸、共用室又は管理人室ごとに設ける | 同左 |
発信部は各住戸、共用室又は管理人室ごとに設ける | ||
湿式のものとすること | ||
放水性能 | 4個同時放水した場合に放水圧力が0.1Mパスカル以上で放水量が50リットル/分以上 | 同左 |
水源 | 4m3以上 | 同左 |
ポンプ吐出量 | 220リットル/分以上 | 240リットル/分以上 |
表示装置 | 共同住宅用自動火災報知設備の戸外表示器と兼用可 | 同左 |
音声警報音 | 非常警報設備の基準による | 同左 |
音声警報 (火災警報)の範囲 | 廊下型:出火階及び直上階 | 同左 |
階段室型: 5層以下を1ブロックとした出火ブロック及び 直上ブロック |
5層以下を1ブロックとした出火ブロック及び直上ブロック並びにエレベータ昇降路(カゴ内) →カゴ内へも認定品のスピーカが必要です。 |
下記は平成18年消防庁告示第17号(原文は縦書き)
http://www.fdma.go.jp/concern/law/kokuji/h18/pdf/180530_kokuji17.pdf
を横書きにしたものです。
21.3 共同住宅用スプリンクラー設備の設置及び維持に関する技術上の基準を定める件
(平成18年5月30日 消防庁告示第17号)
特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令(平成17年総務省令第40号)第3条第2項第2号チの規定に基づき、
共同住宅用スプリンクラー設備の設置及び維持に関する技術上の基準を次のとおり定める。
第1 趣旨
この告示は、特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令
(平成17年総務省令第40号。以下「省令」という。)第3条第3項第3号チに規定する共同住宅用スプリンクラー設備の設置及び維持に関する技術上の基準を定めるものとする。
第2 設置及び維持に関する技術上の基準
共同住宅用スプリンクラー設備は、次の各号に定めるところにより設置し、及び維持するものとする。
1 スプリンクラーヘッドは、次に定めるところによること。
(1) スプリンクラーヘッドは、閉鎖型スプリンクラーヘッドの技術上の規格を定める省令
(昭和40年自治省令第2号)第2条第1号の2に規定する小区画型ヘッドのうち、
感度種別が一種であるものに限ること。
(2) スプリンクラーヘッドのデフレクターから下方0.45m以内で、かつ、水平方向の壁面までの
範囲には、著しく散水を妨げるものが設けられ、又は置かれていないこと。
(3) スプリンクラーヘッドは、天井の各部分から一のスプリンクラーヘッドまでの水平距離が
2.6m以下で、かつ、1のスプリンクラーヘッドにより防護される部分の面積が13u以下
となるように設けること。
2 制御弁は、次に定めるところによること。
(1) 制御弁は、住戸、共用室(省令第2条第3号に規定する共用室をいう。以下同じ。)又は
管理人室ごとに、床面からの高さが0.8m以上1.5m以下の箇所に設けること。
(2) 制御弁は、パイプシャフト、パイプダクトその他これらに類するものの中に設けるとともに、
その外部から容易に操作でき、かつ、みだりに閉止できない措置が講じられていること。
(3) 制御弁には、その直近の見やすい箇所に共同住宅用スプリンクラー設備の制御弁である旨
を表示し、及びいずれの住戸、共用室又は管理人室のものであるかを識別できる標識を
設けること。
3 自動警報装置は、次に定めるところによること。ただし、省令第2条第14号に規定する
共同住宅用自動火災報知設備により音声警報が発せられる場合は、(6)に規定する音声
警報装置(流水検知装置又は圧力検知装置から発せられたスプリンクラーヘッドが開放した
旨の信号を受信し、音声により火災の発生を報知するものをいう。以下同じ。)を設けない
ことができる。
(1) スプリンクラーヘッドの開放により音声警報を発するものとすること。
(2) 発信部は、住戸、共用室又は管理人室ごとに設けるものとし、当該発信部には、
流水検知装置又は圧力検知装置を用いること。
(3) (2)の流水検知装置又は圧力検知装置にかかる圧力は、当該流水検知装置又は
圧力検知装置の最高使用圧力以下とすること。
(4) 受信部には、次に定めるところにより、表示装置を設けること。
ただし、第14号において準用する消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号。
以下「規則」という。)第14条第1項第12号において準用することとされる規則
第12条第1項第8号に規定する総合操作盤が設けられている場合又は共同住宅用
自動火災報知設備の設置及び維持に関する技術上の基準(平成18年消防庁告示第
13号において単に「告示」という。)第2第2号に規定する住棟受信機(スプリンクラー
ヘッドが開放した旨を火災が発生した旨と区別して表示することができる措置が講じら
れているものに限る。)が設けられている場合にあっては、この限りでない。
イ 表示装置は、スプリンクラーヘッドが開放した階又は放水区域を覚知できるものである
こと。
ロ 表示装置の設置場所は、次に定めるところによること。
(イ) 規則第12条第1項第8号に規定する防災センター等を有する場合は、当該防災センター
等に設けること。
(ロ) (イ)以外の場合は、管理人室に設けること。ただし、当該管理人室に常時人がいない
場合は、スプリンクラーヘッドが開放した旨の表示を容易に確認できる場所に設けること
ができる。
(5) 1の特定共同住宅等(省令第2条第1号に規定する特定共同住宅等をいう。)に
2以上の受信部が設けられているときは、これらの受信部のある場所相互間で同時
に通話することができる設備を設けること。
(6) 音声警報装置は、次に定めるところによること。
イ 音声警報装置(補助音響装置(住戸、共用室又は管理人室にいる者に対し、有効に
音声警報を伝達するために、流水検知装置又は圧力検知装置からスプリンクラーヘッド
が開放した旨の信号を受信し、補助的に音声警報を発する装置をいう。以下同じ。)
の音声警報装置を含む。以下このイ及びハにおいて同じ。)の音圧は、次に定める
ところによること。
(イ) 住戸、共用室及び管理人室に設ける音声警報装置の音圧は、取り付けられた
音声警報装置から1m離れた位置で70デシベル以上であること。
(ロ) (イ)に掲げる部分以外の部分に設ける音声警報装置の音圧は、規則第25条
の2第2項第3号イの規定の例によること。
ロ 音声警報装置の設置は、次の(イ)及び(ロ)に掲げる区分に従い、当該(イ)
及び(ロ)に定めるところによること。
(イ) 住戸、共用室及び管理人室に設ける場合 当該住戸、共用室又は管理人室ごとに、
音声警報装置を1個以上設けること。ただし、有効に音声警報が伝わらないおそれがある
部分については、当該部分に音声警報を有効に伝達することができるように補助音響装置
を設けることとする。
(ロ) 住戸、共用室及び管理人室以外の部分(直接外気に開放された共用部分(省令第2条
第4号に規定する共用部分をいう。)を除く。)に設ける場合、規則第25条の2第2項
第3号ロの規定の例によること。
ハ 音声警報装置の音声警報音は、次に定めるところによること。
(イ) 音声警報音は、シグナル及びメッセージにより構成するものであること。
(ロ) シグナルは、非常警報設備の基準(昭和48年消防庁告示第6号)第4第3号(二)に定める
ところによること。
(ハ) メッセージは、男声によるものとし、火災が発生した場所、避難誘導及び火災である旨の
情報又はこれに関連する内容であること。
(二) 音声警報音は、サンプリング周波数8キロヘルツ以上及び再生周波数帯域3キロヘルツ
以上のAD−PCM符号化方式による音声合成音又はこれと同等以上の音質を有するもので
あること。
二 音声警報を発する区域は、スプリンクラーヘッドが開放した住戸、共用室及び管理人室の
ほか、次の(イ)及び(ロ)に掲げる区分に従い、当該(イ)及び(ロ)に定めるところ
によること。
(イ) 特定共同住宅等の構造類型を定める件(平成17年消防庁告示第3号。(ロ)において
「構造類型告示」という。)第2第4号に規定する階段室型特定共同住宅等 当該住戸、
共用室及び管理人室の主たる出入口が面する階段室等(省令第2条第5号に規定する階段
室等(省令第2条第7号に規定する開放型階段を除く。)をいう。)のうち、6以上の階
にわたらない部分を1の区域として当該区域及びその直上の区域並びに当該区域に主たる
出入口が面する住戸、共用室及び管理人室並びにエレベーターの昇降路
(ロ) 構造類型告示第二第五号に規定する廊下型特定共同住宅等 当該住戸、共用室及び管
理人室の存する階が2階以上の階に存する場合にあっては当該階及びその直上階、1階に
存する場合にあっては当該階、その直上階及び地階、地階に存する場合にあっては当該階
、その直上階及びその他の地階
ホ 音声警報の構成は、第1シグナル、メッセージ、1秒間の無音状態、第1シグナル、
メッセージ、1秒間の無音状態、第2シグナルの順に連続する警報を1単位として、
これを10分間以上連続して繰り返すものであること。
へ 住戸、共用室又は管理人室ごとに、当該住戸、共用室又は管理人室の音声警報を停止
できる機能を設けることができること。
4 流水検知装置は、湿式のものとすること。
5 流水検知装置の一次側には、圧力計を設けること。
6 呼水装置は、規則第14条第1項第5号の規定の例により設けること。
7 流水検知装置又は圧力検知装置の二次側の配管には、流水検知装置又は圧力検知装置
の作動を試験するための弁(以下「試験弁」という。)を次に定めるところにより設けること。
(1) 試験弁の一次側には圧力計が、二次側にはスプリンクラーヘッドと同等の放水性能を
有するオリフィス等の試験用放水口が取り付けられるものであること。
(2) 試験弁にはその直近の見やすい箇所に試験弁である旨を表示した標識を設けること。
(3) 試験弁を開放した場合に、住戸、共用室及び管理人室の音声警報装置が音声警報
(戸外表示器の警報を除く。)を発しない措置を講じることができるものであること。
8 非常電源の容量は、規則第14条第1項第6号の二においてその例によることとされる
規則第12条第1項第4号ロ(イ)の規定の例によるほか、警報及び表示に要する容量
にあっては、次の(1)から(3)までに定める容量以上であること。
(1) 5の住戸、共用室又は管理人室に設置されている音声警報装置が10分間以上連続して
鳴動することができる容量
(2) 5の作動表示灯(表示器に設けられ、当該表示器が設置された住戸、共用室及び管理人室
の感知器が作動した旨を表示する表示灯をいう。以下同じ。)が10分間以上連続して
点滅することができる容量
(3) 5の制御弁表示灯(表示器に設けられ、当該表示器が設置された住戸、共用室及び管理
人室の制御弁旨を閉止したを表示する表示灯をいう。以下同じ。)が10分間以上連続
して点滅することができる容量
9 起動装置は、規則第14条第1項第8号イ(ロ)の規定の例によること。
10 操作回路の配線、表示装置から流水検知装置又は圧力検知装置までの配線並びに流水
検知装置又は圧力検知装置から表示器、音声警報装置及び補助音響装置までの配線は、
規則第14条第1項第9号の規定の例によること。
11 配管は、規則第14条第1項第10号(各号列記以外の部分に限る。)の規定の例によること。
12 加圧送水装置は、規則第14条第1項第11号(ハ(イ)を除く。)の規定の例によるほか、
次に定めるところによること。
(1) 点検に便利で、かつ、火災等の災害による被害を受けるおそれが少ない箇所に設けること。
(2) ポンプを用いる加圧送水装置のポンプの吐出量は、240リットル毎分以上の量とすること。
13 表示器は、告示第3第10号に規定する戸外表示器の規定の例によるほか、次に定める
ところによること。ただし、告示第3第10号に規定する戸外表示器のうち、次の(1)及び
(2)に掲げる機能を有するものが設けられている場合には、当該戸外表示器によることが
できる。
(1) スプリンクラーヘッドが開放した場合に当該スプリンクラーヘッドが開放した住戸、共用室
及び管理人室の作動表示灯が点滅すること。
(2) 制御弁を閉止した場合に当該制御弁に係る住戸、共用室及び管理人室の制御弁表示灯
が点滅すること。
(3) 作動表示灯及び制御弁表示灯は、相互に兼用することができること。
14 規則第14条第1項第12号の規定は、共同住宅用スプリンクラー設備について準用する。
15 貯水槽、加圧送水装置、非常電源、配管等には、規則第14条第1項第13号において適用
される規則第12条第1項第9号に規定する措置を講ずること。
附 則
この告示は、平成19年4月1日から施行する。