「建物設備の知識」 > 「防火管理 目次」 > 【前頁】 4.防火管理業務の一部委託 > 5.複合用途の防火と防災 > 【次頁】 6.定期点検報告制度」

5. 複合用途の防火と防災

テナントビルの防火・防災体制を強化
   ー消防法の改正・平成26年4月1日施行

 近年、雑居ビル等で多くの死傷者等を伴う火災が相次いで発生していること、東日本大震災では都市部でも大きな被害が発生したことを受け、高層ビル等の防火・防災管理体制を強化するため、消防法が改正されました。
 (平成24年10月19日告示、平成26年4月1日施行)
主な改正点は、
(1)テナントのある複合用途ビルは統括防火管理者を定め、
@建物全体の消防計画の作成、A避難訓練の実施、B廊下、避難口等の共用部の管理等の防火管理業務を行う。
(2)大規模なテナントビルは、統括防災管理者を定め、
防災に係る消防計画の作成、自衛消防組織の設置、防災設備定期点検報告などの防災管理業務を義務化。

防火管理と防災管理の強化 ( 従来、不明確だった管理体制の役割分担を明確化)

防火管理

防災管理

 「防火管理」とは、火災の発生を予防し、かつ、万が一発生してしまった場合でもその被害を最小限にするために対策をとることです。 「防火管理者」とは、「防火管理」に関する推進責任者を言います。防火管理義務対象物であれば、テナント(管理権原者)ごとに選任しなくてはなりません。

 防火対象物等で、その管理権原が分かれているものについては、当該防火対象物の管理権原者のうち主要な者を代表者とする共同防火管理協議会を設け、統括防火管理者の選任、防火対象物全体にわたる防火管理に係る消防計画の作成、消火、通報及び避難訓練の実施等について協議し、防火対象物全体の防火安全を図ることを各管理権原者に対して義務付けている。(消防法第8条の2)

 近年、建築物全体の防火管理体制が曖昧な雑居ビル等を中心として多数の死者を伴う火災被害が頻発していることから、建築物全体の防火管理業務を行う統括防火管理者の選任を法律上義務付け、 統括防火管理者に各防火管理者への指示権を付与することを内容とする消防法の一部を改正する法律が平成24年6月27日に公布(施行日:平成26年4月1日)された。

 「防災管理」は、火災以外の災害(地震など)に関する事項について被害を想定して対策をとることであり、 「防災管理者」は災害管理の推進責任者です。 「防火管理者」と同様、義務対象物であれば、テナント(管理権原者)ごとに選任しなくてはなりません。 「防災管理者」は平成19年の消防法改正で創設されたものです。

 平成23年3月11日に発生した東日本大震災による被害は、死者・行方不明者約2万人の人的被害、全壊約13万棟、半壊約25万棟の住家被害など、まさに戦後最大の規模となった。 この大災害を受け、消防庁長官の諮問機関である第26次の消防審議会で平成23年6月から5回にわたり集中的に審議が行われ、平成24年1月30日に、消防審議会から「東日本大震災を踏まえた今後の消防防災体制のあり方に関する答申」が行われ、 東日本大震災における被害の甚大さ、我が国における少子高齢化等の社会情勢等を踏まえ、今後発生が懸念されている東海地震、東南海地震、南海地震が連動して発生する、いわゆる三連動地震や首都直下地震などの大規模地震に対する備えとして、 「自助」、「共助」、「公助」それぞれの充実・強化を図ることが重要であると謳われ、地震・津波対策や地域総合防災力、消防本部や消防団の活動、緊急消防援助隊による広域応援体制、民間事業者における対策について、 東日本大震災における被害や活動等を踏まえ、更なる充実・強化を目指すための対処方針が示された。

統括防火管理者が必要となる防火対象物
(高さ31mを超える、又は複合用途の共同住宅が対象)

統括防災管理者が必要となる防火対象物
(共同住宅は含まれない)

管理権原が分かれている防火対象物で次のものです。

(1)高層建築物(高さ31mを超える建築物)

(2)消防法施行令別表第1(以下、「令別表第1」という。)(6)項ロ及び(16)項イ((6)項ロに掲げる防火対象物の用途に供される部分が存するものに限る。)に掲げる防火対象物のうち地階を除く階数が3以上で、かつ、収容人員が10人以上

(3)「令別表第1」(1)〜(4)項、(5)項イ、(6)項イハニ、(9)項イ、(16)項イ((6)項ロの部分が存するものを除く。)に掲げる防火対象物のうち、地階を除く階数が3以上で、かつ、収容人員が30人以上

(4)「令別表第1」(16)項ロに掲げる防火対象物で地階を除く階数が5以上で、かつ、収容人員が50人以上

(5)「令別表第1」(16の3)項に掲げる防火対象物
(6)地下街で消防長若しくは消防署長が指定するもの。

共同住宅、倉庫、格納庫等以外の全ての用途で管理権原が分かれている次のものです。

(1)地上11階以上の防火対象物(延べ面積10,000u以上)

(2)地上5階以上10階以下の防火対象物(延べ面積20,000u以上)

(3)地上4階以下の防火対象物(延べ面積50,000u以上)

(4)地下街(延べ面積1,000u以上)

(備考)
複合用途の場合は、共同住宅、格納庫等、倉庫部分を除いた規模

「防火管理者」は比較的小規模の建物から必要となることが多いですが、「防災管理者」の方は大規模の建物について必要となります。これは、「防災管理者」という制度が、近年その切迫性が指摘されている大地震に備えるためのものであり、大地震が発生した際に、円滑な避難誘導が求められるような多数の者が利用する建物について設置を義務付けたものであるからです。

互いに間違いやすい制度ですので、届出の際には様式などお間違えのないようご注意ください。
防災管理に関する改正消防法の施行日は平成26年4月1日ですが、統括防災管理者の選任、自衛消防組織の設置などは平成26年4月1日までに管轄の消防署長に届け出なければなりません。
経過措置により施行日前の平成25年4月1日から届け出ることができますので、早めの届出をお願いします。
なお、すでに、共同防火(防災)管理協議事項作成(変更)届出書を消防本部へ届け出ている場合も、法改正に伴って再度、届出が必要となります。

共同防火管理制度、防災管理制度ともに所轄消防署への多くの届出書類の作成が必要です。
各消防署では地域の実情に合わせてそれらの書式と記入例をホームページなどで公開しています。詳しくは所轄消防署の予防課にお問い合わせください。

罰則の強化
 消防法第5条の2第1項の規定による命令に違反した場合は罰金(最高1億円)が科せられる等、罰金額の引き上げ、消防法令違反で命令を受けた場合は標識が設置されるなど。

消防法の改正に伴う用語の変更

防火・防災管理者選任(解任)届出書
消防計画作成(変更)届出書
統括防火・防災管理者選任(解任)届出書
全体についての消防計画作成(変更)届出書

防火管理者選任(解任)届出書
(防火管理に係る)消防計画作成(変更)届出書
共同防火管理協議事項届出書 (※)

※ 従来の「共同防火管理協議事項届出書」は新法による「統括防火管理者選任(解任)届出書」の添付書類の中に含まれる。

(注) 届出書に必要な添付書類

1.統括防火管理者選任(解任)届出書に必要な添付書類

@ 協議会に関する契約書
A 構成員一覧 (押印は不要)
B 防火管理講習修了証
C 統括防火管理者の権限及び知識を有する者であるための要件
D 統括防火管理者の業務の委託に関する契約書(委託する場合は上記Cに代えて)

2.全体についての消防計画作成(変更)届出書に必要な添付書類

E 構成員一覧 (押印は不要)
F 全体についての消防計画

 

5.1 複合用途の共同住宅における防火管理の実施単位

 複合用途防火対象物とは、令別表第1の(1)項から(15)項までの防火対象物の用途のいずれかのうちの、2つ以上の異なる用途がある防火対象物をいい、令別表第1の(16)項イ、(16)項ロに分類されています。 防火管理の義務は収容人員で決まります。

令別表第1の(16)項

(16)項

複合用途防火対象物のうち、その一部が(1)項から(4)項まで、(5)項イ、(6)項又は(9)項イに掲げる防火対象物の用途に供されているもの

収容人員30人以上
(6)項ロが含まれる場合は、10人以上

イに掲げる複合用途防火対象物以外の複合用途防火対象物

収容人員50人以上


防火管理の義務があるかないかの判断は、各々の事業所、テナント、住居ごとではなく、防火対象物全体の用途と全体の収容人員で判断しなければなりません。一つの建物の中に、複数の事業所、テナント、 住居が入っている場合、火災の危険は一つの事業所やテナント、住居にとどまらず、建物全体に及びます。

 つまり、防火管理の実施単位は、その防火対象物が全体として防火管理が義務付けられている防火対象物であれば、たとえ個々の事業所、テナント、住居ごとの収容人員が少なくても、 そこに入っているすべての事業所、テナント、住居の管理権原者に防火管理が義務付けられることになります。そして、複数の管理権原者が共同で防火管理にあたらなければなりません。
これを共同防火管理といいます。

共同防火管理を行わなければならない防火対象物は、次の防火対象物で、その管理について権原が分かれているものです(法第8条の2・政令第4条の2)。

5.2.1 複合用途防火対象物にならない例

 防火対象物に2つ以上の異なる用途があっても、それが主たる用途に従属している場合には複合用途防火対象物にはなりません。

たとえば劇場は(1)項イに属していますが、この劇場に付属している喫茶は令別表第1の(3)項、売店は(4)項に属しています。この場合、@ 主たる用途の部分と、管理権原者が同一、A 利用者が同一あるいは密接な関係にある B 利用時間がほぼ同一  の3つの条件を満たす場合には、これらは主たる用途の部分に従属しているとされ、複合用途対象物にはなりません。(令1条の2第2項)

従属の規定以外にも面積による判断基準があります。(根拠規定は本文末尾 「消防予第41号」参照 )

 主たる用途に供される部分の床面積(廊下、階段、便所等共用部分は床面積に応じて按分する)が全体の90%以上で、かつ、主たる用途以外の部分の床面積が300u未満の場合は複合用途防火対象物にはなりません。 つまり、事務所ビルにレストランが入居した場合、レストランの床面積が300u以下で、事務所の面積は全体の90%以上の2つの条件を満たした場合には、複合用途防火対象物にはなりません。
(但し、共用部分の面積を事務所とレストランの専用部分の床面積に応じて按分した面積をそれぞれ事務所とレストランの床面積に加算して計算します。)

なお、同一敷地内にある独立棟として存する電気室、ボイラー室、トイレ、更衣室等は常に(15〕項(1〜14項に該当しない事業場)に掲げる防火対象物として捉え、倉庫、駐車場、宿舎等は本来主たる用途に供される防火対象物に関係なく、独立的な性格を有する防火 対象物として捉えることとなっています。

5.2.2 みなし従属の対象から除外された例

近年、共同住宅の一部を利用して小規模なグループホーム等の福祉施設を開設する例が増加しています。

このように共同住宅の一部に住戸単位で居住型福祉施設が入り込む場合、「令別表第1に掲げる防火対象物の取り扱いについて」(昭和50年4月15日付け消防予第41号、消防安第41号。以下「41号通知」という。)1(2)に適合する部分については、 令第1条の2第2項後段に規定する「従属的な部分を構成すると認められるもの」に該当するものと取り扱われてきました (この取り扱いを以下「みなし従属」という。)が、 (6)項ロ等のうち、令別表第1(2)項ニ及び(6)項ロについては、 平成20年8月28日付け消防予第200号及び平成21年3月31日付け消防予第131号により、みなし従属の対象から除外されました。

なぜ、(2)項ニ及び(6)項ロが「みなし従属」から除外されたのか?
平成19年カラオケボックスで死者3名、負傷者5名となる火災が発生したことを受けて平成20年10月1日改正で、 それまで令別表第1(2)項には「ハ」までしかなかったものに「ニ」として「カラオケボックス」が追加され、規制が強化されました。
(6)項ロ「特別養護老人ホーム等」における火災は昭和62年東京都H市の特別養護老人ホームで死者17名、 負傷者25名の火災事故が発生した以後、特定対象物の中でも特に危険度の高い対象物として指定されてきていますが、 平成19年頃から共同住宅や事務所、複合用途対象物の一部に住戸単位で小規模の(6)項ロの居住型福祉施設が入り込む事例が増加したことによるものです。

さらに、平成22年2月5日総務省令第8号及び平成27年2月27日付けの改正41号通知によって、 これらに加えて(6)項ハの用途も除外対象となりました。(6)項ロは「居住型」、(6)項ハは「通所型」です。 ただし、現設備が改正後のスプリンクラー設備規定に適合しない場合は、平成30年3月31日までの間は、なお従前の例によるとして猶予期間を設けています。

 詳しくは  「23. 複合型居住施設の省令改正」を参照

5.3 一般住宅と店舗が存在する場合の例

(1) 一般住宅の床面積 > 店舗の床面積
   @店舗部分の床面積の合計が50u未満の場合は複合用途防火対象物にはなりません。一般住宅になります。
   A店舗部分の床面積の合計が50u以上の場合は複合用途防火対象物になります。

(2) 一般住宅の床面積 < 店舗の床面積    ---->店舗用途の防火対象物になります。
(3) 一般住宅の床面積 ≒ 店舗の床面積    ---->複合用途防火対象物になります。

(根拠)消防法施行令(消防長等の同意を要する住宅)
第1条 消防法第7条第1項ただし書の政令で定める住宅は、一戸建ての住宅で住宅の用途以外の用途に供する部分の床面積の合計が延べ面積の2分の1以上であるもの又は50平方メートルを超えるものとする。

5.4 共同防火管理制度

 共同防火管理では、火災発生後の混乱と、火災の発生を防ぐため、各管理権原者の相互の連絡協力と建物全体としての一体的な防火管理が必要不可欠であり、 各管理権原者が予め防火管理上必要な事柄を協議し、共同して防火管理をすすめていくことが、消防法第8条の2で義務付けられています。

 そのため、各管理権原者が構成員となって共同防火管理協議会を設け、代表者を選出し、建物全体の防火管理者(統括防火管理者)を選任し、協議事項を定め、消防長(消防署長)へ届出しなければなりません。

 統括防火管理者は、各防火管理者と連絡し、各消防計画と全体の消防計画の整合性を図り、建物全体の防火管理を統括します。

【参考】
左図の中央管理室と防災センターについて

中央管理室とは、建築基準法施行令第20条の2第2号にその定めがあり、非常用エレベーター、排煙設備、空気調和設備の制御と監視を行う室のことです。中央管理室を設置しなければならないのは
(1)非常用エレベーターを設置している建築物(高さ31mをこえる建築物には非常用エレベーターの設置義務がある)
(2)床面積1千uを超える地下街

防災センターとは、東京都火災予防条令第55条の2の2にその定めがあり(消防法施行規則第3条の防災センターの規定は平成20年改正で廃止、都条令の規定は残っている)、消防設備等の制御と監視を行う室のことです。
11階建て以上で延べ面積が1万u以上、5階建て以上で延べ面積が2万u以上の建物などに設置が義務付けられます。
防災センターの設置場所は、建築基準法で定められた中央管理室でも良いこととなっていますので、中央管理室(防災センター)のように重複して室名を表示しているところもあります。  「中央管理室と防災センター」

5.5 共同防火管理を行わなければならない防火対象物

下記の6つの類型が法8条の2、令4条の2で定められています。

消防法施行令改正(平成19年政令第179号) 共同防火管理を要する防火対象物に、令別表第1(6)項ロ及び(16)項イに掲 げる防火対象物((16)項イに掲げる防火対象物にあっては、(6)項ロに掲げる 防火対象物の用途に供される部分が存するものに限る。)で、地階を除く階数が3以上で、 かつ、収容人員が10人以上のものを追加。(令第4条の2第1項第1号関係)

(注):共同防火管理の協議をすべき事項は令第4条の2で規定されています。

・協議会の設置及び運用          ・代表者の選任
・統括防火管理者選任・権限付与    ・全体にわたる消防計画の作成
・避難施設等の維持管理         ・災害発生時の自衛消防活動
・消防隊への情報提供と誘導       ・その他共同防火管理に関する必要事項

令第4条の2(共同防火管理の協議をすべき事項)
第四条の二  法第八条の二第一項 の総務省令で定める事項は、次に掲げるものとする。
一  防火対象物の管理について権原を有する者により組織する共同防火管理協議会の設置及び運用に関すること。
二  前号の共同防火管理協議会の代表者(防火対象物の所有者その他の当該防火対象物の管理について権原を有する者のうち主要な者で、共同防火管理協議会を代表するものをいう。第四条の二の七第三項第二号、第四条の二の九第二項第二号、第五十一条の十八第三項第二号及び第五十一条の十九第二項第二号において同じ。)の選任に関すること。
三  統括防火管理者(当該防火対象物の防火管理者となるべき資格を有する者のうち、当該防火対象物全体にわたる防火管理上必要な業務を統括する者をいう。以下同じ。)の選任及び当該統括防火管理者に付与すべき防火管理上必要な権限に関すること。
四  防火対象物全体にわたる消防計画の作成並びにその計画に基づく消火、通報及び避難の訓練その他防火管理上必要な訓練の実施に関すること。
五  避難通路、避難口、安全区画、防煙区画その他の避難施設の維持管理及びその案内に関すること。
六  火災、地震その他の災害が発生した場合における消火活動、通報連絡及び避難誘導に関すること。
七  火災の際の消防隊に対する当該防火対象物の構造その他必要な情報の提供及び消防隊の誘導に関すること。
八  前各号に掲げるもののほか、共同防火管理に関し必要な事項

各消防署のホームページでは「共同防火(防災)管理協議事項作成(変更)届出書」の作成見本を提示していますが、 それらの記載事項はこの令第4条の2の規定項目に従っています。

共同防火管理の進め方

1  管理権原者全員による協議会の設立
2  協議会の代表・統括防火管理者選任
3  防火管理上の必要事項の協議・決定
4  協議事項に基づき全体の消防計画作成
5  全体の消防計画に基づき防火管理を推進
6  定期または必要に応じ協議会を開催
7  消防計画の検証・確認・変更についての協議

5.6 防災管理制度

 防災管理対象物(自衛消防組織の設置と防災管理者の選任が必要な防火対象物)

 防災管理対象物のすべての管理権原者は、一定の資格を有する者のうちから防災管理者を定め、消防計画の作成、当該消防計画に基づく避難訓練の実施、 その他防災管理上必要な業務を行わせること、及び防災管理点検資格者に防災管理上必要な業務等について毎年1回定期的に点検させ その結果を消防長又は消防署長に報告することが義務付けられました。この報告のことを「防災管理定期点検報告」といいます。(消防法36条)

防災管理者を必要とする建築物その他の工作物は、消防法施行令第46条に規定される建築物その他の工作物で、 消防法施行令第4条の2の4(自衛消防組織の設置を要する防火対象物)です。

対象用途等地階を除く階数延べ面積
共同住宅、格納庫、倉庫等を除く、すべての用途の建築物等  11(階)以上   1万u以上
 5(階)以上10(階)以下   2万u以上
 4(階)以下   5万u以上
 地 下 街     1千u以上



(参考)

1. 【災害想定】
  台風等風水害・土砂災害・地震津波・コンビナート災害・大火災・林野火災・原子力災害・火山災害・その他

2. 地方自治体が作成する都道府県地域防災計画における【特定災害対策計画】
  震災対策・風水害対策・火山災害対策・雪害災害対策・原子力災害対策・その他

3. 【自衛消防組織の平常時の任務とされている活動項目別組織】
  防災訓練・防災知識の啓発・活動範囲内の防災巡視・バケツ、消火器等の配布又共同購入・その他

4. 【自衛消防組織の災害時の任務とされている活動項目別組織】
  災害危険箇所等の巡視・情報の収集・伝達・初期消火・(負傷者等の救出・救護)・住民の避難誘導・給食給水・その他

5.7 自衛消防組織の規定

法8条の2の5の「自衛消防組織」(平成21年6月1日施行改正法)については、
  「11.2 消防法改正(平成19年法律第93号)の要点」 を参照ください。
改正法の要点(大規模地震等に対応した防災体制を整備・強化するための消防法改正)


防災管理者・自衛消防組織を定めた同改正法では、共同住宅(5)項ロは対象外です。
複合用途の場合は、共同住宅、格納庫、倉庫部分を除いた規模が上記に該当する部分が適用対象です。

下記は、共同住宅以外の高層ビルなどの例です。参考としてください。

1.(自衛消防組織を置かなければならない者)

消防法第4条の2の5
 法第8条の2の5第1項の自衛消防組織(以下「自衛消防組織」という。)は、前条の防火対象物につき、その管理についての権原を有する者(同条第2号に掲げる防火対象物にあつては、自衛消防組織設置防火対象物の用途に供される部分の管理についての権原を有する者に限る。)が置くものとする。《追加》平20政3012
 前項の場合において、当該権原を有する者が複数あるときは、共同して自衛消防組織を置くものとする。《追加》平20政301

2.(消防計画における自衛消防組織の業務の定め)

法第4条の2の6 前条第1項の権原を有する者は、その者が定めた防火管理者に、総務省令で定めるところにより、防火管理に係る消防計画において、自衛消防組織の業務に関する事項を定めさせなければならない。《追加》平20政301

3.(自衛消防組織の業務)

法第4条の2の7
  自衛消防組織は、前条の自衛消防組織の業務に関する事項の定めに従い、火災の初期の段階における消火活動、消防機関への通報、在館者が避難する際の誘導その他の火災の被害の軽減のために必要な業務を行うものとする。《追加》平20政301

4.(自衛消防組織の要員の基準)

法第4条の2の8
  自衛消防組織には、統括管理者及び総務省令で定める自衛消防組織の業務ごとに総務省令で定める員数以上の自衛消防要員を置かなければならない。《追加》平20政3012
 統括管理者は、自衛消防組織を統括する。《追加》平20政3013
 統括管理者は、次の各号のいずれかに掲げる者をもつて充てなければならない。
1.都道府県知事、消防本部及び消防署を置く市町村の消防長又は法人であつて総務省令で定めるところにより総務大臣の登録を受けたものが行う自衛消防組織の業務に関する講習の課程を修了した者
2.前号に掲げる者に準ずる者で、総務省令で定めるところにより、統括管理者として必要な学識経験を有すると認められるもの《追加》平20政3014
 前項第1号に規定する講習の実施に関し必要な事項は、総務省令で定める。《追加》平20政301

5.統括防災管理者

東日本大震災の教訓から、平成24年10月19日に告示され、平成26年4月1日からの施行が決定された消防法の一部改正事項です。 統括防災管理者は「建物全体の防災管理に係る消防計画(防災計画書)」を作成し、その旨を管轄地の消防機関に届け出なければなりません。 なお、統括防災管理者の義務や役割・権限などその細かな内容については、同改正で義務化された統括防火管理者とほぼ同じです。

6.自衛消防組織

自衛消防組織とは、防火対象物及びその存する敷地等において、火災、地震その他の災害等による人的又は物的な被害を最小限に止めるために、防火対象物において編成された組織です。
事業所の消防組織には法令で設置が義務付けられているものと、事業者が任意に設置しているものとがあります。

自衛消防組織の状況 ( )内の数字は平成24年4月1日現在における全国の自衛消防組織数

  1. 消防法第8条2の5第1項に基づくもの (79.256)
  2. 消防法施行規則第3条第1項に基づくもの (928.125)
  3. その他の法令に基づくもの (1,838)
  4. 市町村条例、規則に基づくもの (1,551)
  5. 事業所において任意に設置しているもの (1,841)

7.自主防災組織

自主防災組織とは、地域住民の連帯意識に基づいて編成される防災組織です。
消防庁では、地域住民の連帯意識に基づく自主防災組織の育成強化を推進するよう、都道府県、市区町村に要請しており、 平成24年4月1日現在、1,724市区町村のうち、1,640団体(94.1%)で自主防災組織が設置されています。 なお、自主防災組織数は、150,512組織、自主防災組織活動カバー率(全世帯数のうち、自主防災組織の活動範囲に含まれて いる地域の世帯数の割合)は77.4%です。活動カバー率の推移を見てみますと、平成20年4月1日から平成24年度までの各年度の4月1日 時点での活動カバー率(括弧内の数字は対前年度差)は、それぞれ71.7%(+1.8)、73.5%(+1.8)、74.4%(+0.9)、75.5%(+1.1)、77.4%(+1.9)と、 毎年定常的に伸びてきています。特に、兵庫県96.2%、山梨県95.3%、愛知県95.3%と、東海沖地震に係る地震防災対策強化地域 及びその周辺地域では活動カバー率が高いという特徴があります。

婦人(女性)防火クラブは、家庭の主婦等により組織され、日ごろ家庭における防火の分野では大きなウエイトを占める主婦等が 火災予防の知識を習得し、地域全体の防火意識の高揚を図るとともに、万一の場合にお互いに協力して活動できる体制を整え、安全な 地域社会を作るため、初期消火訓練、炊き出し訓練、防火防災意識の啓発等の活動を行っています。 平成24年4月1日現在、組織数は10,126団体、加入人員は1,517,404人となっています。

少年消防クラブは、少年少女により編成されるもので、この年代から火災・災害を予防する方法等を身近な生活の中に見出すと共に 、研究発表会、ポスター等の作成、実地見学等の活動を行い、地域や家庭における防火防災を図るために組織づくりが進められている。 なお、平成24年5月1日現在における少年消防クラブは4,746組織、クラブ員数計417,165人となっており、その内訳は小学校単位で2,772  中学校単位で553、市町村単位で54、地区単位で1,110となっています。

幼年消防クラブは、幼年期において、正しい火の取り扱いについてのしつけをし、消防の仕事をよく理解させることにより、 火遊び等による火災の減少を図り、近い将来少年消防クラブ員として活動できるための素地づくりのため、幼稚園、保育園の園児等を対象として 編成されるもので、消防機関等の指導の下に組織の育成が、進められています。 なお、平成24年5月1日現在における幼年消防クラブは13,653組織、クラブ員数計1,163,307となっており、その内訳は幼稚園、保育園単位で 13,482、学校単位で103、市町村単位で16、地区単位で39、その他13となっています。 また、幼年消防クラブの指導者数は、約10万9千人となっています。

上記の統計には、東日本大震災の影響により、福島県広野町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村の値は含まれていません。

自主防災組織データ出典:総務省消防庁発行「地域防災行政の現況」(平成24年度改訂版)

5.8 「41号通知」(機能的従属部分の解釈と運用)(消防予第41号)

「主な用途に機能的に従属する部分」の解釈と運用を初めて明示した基本通達をご紹介しておきます。
昭和50年4月15日に公布され昭和59年3月改正の古い通達ですが、最近では平成27年2月に改正されています。
平成27年改正については、このHp内の「みなし従属」に関係する各項目で詳細に解説しています。


○ 令別表第1に掲げる防火対象物の取り扱いについて

(昭和50年4月15日 消防予第41号消防庁予防課長 消防安第41号消防庁安全救急課長)
改正 昭和59年3月消防予第54号

各都道府県消防主管部長

 先般の消防法及び消防法施行令(以下「令」という。)の改正により複合用途防火対象物に関する規定の整備が 行われたことについては、昭和49年6月25日付け消防予第91号消防安第66号及び昭和49年7月12日付け 消防安第79号をもって通知したところである。

これらの改正によって令別表第1に掲げる防火対象物に関する基本的な解釈及び運用については従来の方針を 変更するものではないが、令第1条第2項後段の規定を加えたことにより、令別表第1(1)項から(15)項まで及び(16)項 に掲げる防火対象物の範囲を明確にする必要が生じ、令別表第1に掲げる防火対象物の取り扱い基準を下記のとおり 定めたのでその運用に遺憾のないよう格段の配慮をされるとともに、貴管下市町村にもこの旨示達のうえ、よろしくご指導願いたい。

別表

区分(イ)
(主たる用途)
(ロ)
(機能的従属部分)
(一)項イ 舞台部、客席、映写室、ロビー、切符売場、出演者控室、大道具、小道具室、衣裳部屋、練習室 専用駐車場、売店、食堂、喫茶室
(一)項ロ 集会室、会議室、ホール、宴会場食堂、喫茶室、専用駐車場、図書室、展示室
(二)項イ 客席、ダンスフロア、舞台部、調理室、更衣室託児室、専用駐車場
(二)項ロ 遊戯室、遊戯機械室、作業室、更衣室、待合室、景品場、ゲームコーナー、ダンスフロア、舞台部、客席 売店、食堂、喫茶室、専用駐車場
(三)項イ客席、客室、厨房結婚式場、専用駐車場
(三)項ロ客席、客室、厨房結婚式場、専用駐車場
(四)項売場、荷さばき室、商品倉庫、食堂、事務室 催物場、写真室、遊技場、結婚式場、専用駐車場、美・理容室、診療室、集会室
(五)項イ宿泊室、フロント、ロビー、厨房、食堂、浴室、談話室、洗濯室、配膳室、リネン室 娯楽室、宴会場、結婚式場、バー、会議室、ビアガーデン、両替所、旅行代理店、専用駐車場、美・理容室
(五)項ロ居室、寝室、厨房、食堂、救護室、休憩室、浴室、共同炊事場、洗濯室、リネン室売店、専用駐車場
(六)項イ診療室、病室、産室、手術室、検査室、薬局、事務室、機能訓練室、面会室 談話室、研究室、厨房、付添人控室、洗濯室、リネン室、医師等当直室食堂、売店、専用駐車場
(六)項ロ居室、集会室、機能訓練室、面会室、食堂、厨房売店
(六)項ハ教室、職員室、遊戯室、休養室、講堂、厨房、体育館食堂
(七)項教室、職員室、体育館、講堂、図書室、会議室、厨房、研究室、クラブ室、保健室食堂、売店
(八)項閲覧室、展示室、書庫、ロッカー室、ロビー、工作室、保管格納庫、資料室、研究室、会議室、休憩室食堂、売店
(九)項イ脱衣場、浴室、休憩室、体育室、待合室、マッサージ室、ロッカー室、クリーニング室食堂、売店、専用駐車場
(九)項ロ脱衣場、浴室、休憩室、クリーニング室専用駐車場
(十)項乗降場、待合室、運転指令所、電力指令所、手荷物取扱所、一時預り所、ロッカー室、仮眠室売店、食堂、旅行案内所
(十一)項本堂、拝殿、客殿、礼拝堂、社務所、集会室宴会場、厨房、結婚式場、専用駐車場
(十二)項イ作業所、設計室、研究室、事務室、更衣室、物品庫売店、食堂、専用駐車場、託児室
(十二)項ロ撮影室、舞台部、録音室、道具室、衣装室、休憩室売店、食堂、専用駐車場
(十三)項イ車庫、車路、修理場、洗車場、運転手控室売店、食堂
(十三)項ロ格納庫、修理場、休憩室、更衣室専用駐車場
(十四)項物品庫、荷さばき室、事務室、休憩室売店、食堂、専用駐車場
(十五)項事務室、休憩室、会議室売店、食堂、専用駐車場、診療室

 消防法施行令(以下「令」という。)第1条の2第2項後段に規定する「管理についての権原、利用形態その他の状況により他の用途に供される防火対象物の部分の従属的な部分を構成すると認められる」部分とは、 次の(1)又は(2)に該当するものとする。

(1) 令別表第1(1)項から(15)項までに掲げる防火対象物(以下「令別表対象物」という。)の区分に応じ、別表(イ)欄に掲げる当該防火対象物の主たる用途に供される部分(これらに類する部分を含む。)に機能的従属していると認められる同表(ロ)欄に掲げる用途に供される部分(これらに類するものを含む。)で、 次の(ア)から(ウ)までに該当するもの。

(ア) 当該従属的な部分についての管理権原を有する者が主たる用途に供される部分の管理権原を有する者と同一であること。

(イ) 当該従属的な部分の利用者が主たる用途に供される部分の利用者と同一であるか又は密接な関係を有すること。

(ウ) 当該従属的な部分の利用時間が主たる用途に供される部分の利用時間とほぼ同一であること。

(2) 主たる用途に供される部分の床面積の合計(他の用途と共用される廊下、階段、通路、便所、管理室、倉庫、機械室等の部分の床面積は、主たる用途に供される部分及び他の独立した用途に供される部分のそれぞれの床面積に応じ按分するものとする。以下同じ。) が当該防火対象物の延べ面積の90パーセント以上であり、かつ、当該主たる用途以外の独立した用途に供される部分の床面積の合計が300平方メートル未満である場合における当該独立した用途に供される部分


 一般住宅(個人の住居の用に供されるもので寄宿舎、下宿及び共同住宅以外のものをいう。以下同じ)の用途に供される部分が存する防火対象物については、前期1によるほか、次により取り扱うものであること。

(1) 令別表対象物の用途に供される部分の床面積の合計が一般住宅の用途に供される部分の床面積の合計よりも小さく、かつ、当該令別表対象物の用途に供される部分の床面積の合計が50平方メートル以下の場合は、当該防火対象物は一般住宅に該当するものであること。

(2) 令別表対象物の用途に供される部分の床面積の合計が一般住宅の用途に供される部分の床面積の合計よりも大きい場合又は令別表対象物の用途に供される部分の床面積の合計が一般住宅の用途に供される部分の床面積の合計よりも小さく、かつ、当該令別表対象物の用途に供される部分の床面積の合計が50平方メートルを超える場合は、 当該防火対象物は令別表対象物又は複合用途防火対象物に該当するものであること。

(3) 令別表対象物の用途に供される部分の床面積の合計が一般住宅の用途に供される部分の床面積の合計とおおむね等しい場合は、 当該防火対象物は令別表対象物又は複合用途防火対象物に該当するものであること。

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