1. 都市災害への備え
「防災」の法律上の定義を知ってますか? ・・・「防災」の定義
「災害対策基本法」第1章(総則)第2条2 「防災」とは、
「災害を未然に防止し、災害が発生した場合における被害の拡大を防ぎ、
及び災害の復旧を図る事」 (1961年(昭和36年)制定)
「防災」とは、事前の被害抑止、災害対応、復旧をあわせた概念です。
(1) 左図のすべてが防災活動です。
被害抑止だけではありません。
災害対応も復旧も入ります。
(2) 「危機管理」には
災害発生前のリスク管理と
災害発生後のクライシス管理
があります。
1.消防活動の重点が建物・市街地火災から自然災害へと移ってきました
平成7年(1995年) 1月17日の阪神・淡路大震災を契機に、消防庁の英語名がFDA”Fire Defense Agency”からFDMA ”Fire and Disaster Management Agency”(英語名「消防庁」から「火災・災害対策庁」へ)と変更されました。 消防庁の業務が、それまで主流であった建物・市街地火災から地震等の自然災害へと、備えの軸足が移されたことを示しています。
同時に大規模災害時における人命救助活動等を効果的かつ迅速に行えるよう、平成7年6月に緊急消防援助隊が創設され、 以後20年間、緊急消防援助隊の出動回数は30回にのぼります。
左の図は気象庁が毎日ほぼリアルタイムで伝えている「最新の地震活動データ」の画面です。
このように全国各地で毎日地震が起きています。
日本には2千を超える活断層があり、M7クラスの直下地震は全国どこで起きても不思議ではありません。
平成23年(2011年)3月11日の東日本大震災(死者・行方不明者2万1千人超)の後も、平成26年8月広島での集中豪雨による土砂災害(死者70人超)、平成26年9月御嶽山の噴火(死者50人超)、
平成27年は、5月に発生した口永良部島の噴火、9月関東・東北豪雨(常総市の鬼怒川堤防決壊・死者8人負傷者79人)等、多くの災害が発生しました。
いずれも緊急消防援助隊が出動しています。
自然災害を完全に防ぐことはできません。
私達は災害発生時にどう対処すべきかということが重要になってきます。
2.重層化された継続計画の重要性 (自助、共助、公助)
事業継続計画(BCP)は、災害発生時に優先的に取り組むべき重要な業務を継続し、 最短で事業の復旧を図るために事前に必要な資源の準備や対応方針・手段を定める計画のことですが、 私達の生活を災害から守るためには、下記のように重層化された継続計画が必要になっています。
- ACP
- Administration Continuity Plan 「行政業務継続計画」:政府/自治体の行政業務継続計画
- BCP
- Business Continuity Plan「事業継続計画」:民間企業の経済活動の事業継続計画
- CCP
- Community Continuity Plan「地区防災計画」:地域での共助のためのコミュニティ防災計画
- DCP
- District Continuity Plan「地区事業継続計画」:地区の事業者の共助による地区事業継続計画
- LCP
- Life Continuity Plan「生活防災計画」:自助による家族の生活防災計画
都市災害に危機感をもって取り組んでいる東京都中央区では高層住宅防災パンフレットで、 自助による家族の生活防災(LCP)と地域コミュニティによる共助防災(CCP)をどうやって実現していくかを具体的にわかりやすく解説しています。 管理組合が防災を考えていく上で大切な情報が充実しています。ぜひ参考にしてください。
3.高層住宅の防災パンフレットのご案内
東京都中央区のマンション防災パンフレット(A4判25ページ)
定住人口13万人のうち88%の世帯が集合住宅に住み、そのうち21.4%が11階以上の高層階に住んでいる東京都中央区では平成19年(2007年)3月、
全国で初となる高層住宅向け防災パンフレットを作成しました。
その後平成23年(2011年)の東日本大震災の教訓を踏まえ、平成26年(2014年)3月、内容を大幅に改訂しています。
「マンションにお住まいの方はもとより高層住宅全体の防災対策の推進にご活用いただければ幸いです。」(まえがき)より
揺れる高層住宅!【改訂版】
平成26年3月改訂版 中央区総務部防災課発行 |
目次
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ダウンロード(PDF 3,224KB)
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参考となる東京都中央区の高層住宅防災に関するホームページ
※「震災時活動マニュアル策定の手引き」
※「揺れる高層住宅!その時あなたは・・・」
※「中央区高層住宅防災対策検討委員会報告書」
※「マンションの防災対策」をお手伝いします! (注:対象は中央区内)
4.消防の出動件数 火災が減少し高齢者への救急出動が増加
図は全国の消防における平成25年中の救助活動の実施状況を示したものです。
(出典:消防庁発行「消防の動き」平成27年3月号 No.527)
消防署による平成25年度の救助活動件数では火災や交通事故等の救助件数が減少する一方で、 「建物等による事故」が増加し、救急搬送される年齢別搬送者のうち高齢者の割合は年々増加し、 平成25年度では54.3%となっています。
救助出動件数は、8万8,392件(対前年比2,086件増、2.4%増)、
事故種別ごとに救助活動の実施状況をみると、救助出動件数では、
「火災」等の種別が4,547件(対前年比250件減、5.2%減)と減少する一方で、
「建物等による事故」が2万8,855件(対前年比1,219件増、4.4%増)と増加しています。
なお、「建物等による事故」は全体の32.6%を占めており、昭和55年以降第1位の「交通事故」を抜き、
第1位の種別となっています。次いで「交通事故」2万8,147件(31.8% )、
「火災の救助出動件数」4,547件(5.1% )の順となっています。(※)
(※)火災の出火件数と死傷者の数は 「防火管理制度の概要 1.2 住宅火災の現状」 参照
救急出動件数、搬送人員ともに過去最多
平成25年の救急自動車による救急出動件数は590万9,367件(対前年比10万6,922件増、1.8%増)、 搬送人員は534万117人(対前年比8万9,826人増、1.7%増)で救急出動件数、 搬送人員ともに過去最多を更新しました。 これは、約5秒に1回の割合で救急自動車が出動し、国民の約24人に1人が救急搬送されたことになります。
搬送人員の54.3%が高齢者
平成25年中の救急自動車による搬送人員の年齢区分をみると、 高齢者(65歳以上)が290万1,104人(54.3% )で最も多く、 続いて成人(18歳以上65歳未満)(197万2,433人、36.9% )となっており、 両者で救急搬送の9割を占めています。 また、構成比について過去からの推移をみると、高齢者の搬送割合が大きく増加し、 高齢者以外の搬送割合は減少しています。
5.市民を狙ったテロの脅威
民間人(ソフトターゲット)を狙ったテロが頻発してきた。
地下鉄サリン事件(1995年)やボストンマラソン爆弾テロ事件(2013年) パリ爆弾テロ事件(2015年)等の過去の実例から、2019年のラグビーワールドカップ、2020年のオリンピック・パラリンピック東京大会とい う国家的イベントの開催を前に、テロやその他災害等の緊急事態へ適切に対処するため、 消防庁では「大規模イベント開催時の危機管理等における消防機関のあり方に関する研究」を実施し、 平成27年3月に結果をとりまとめています。一般市民もテロ対策への備えから無縁ではなくなってきました。
6.バイスタンダーの役割
マンションの利用形態の多様化と一般市民が遭遇する要支援者への備え
住宅とテナント店舗、老人介護施設などの複合施設の多様化に加え、 近年は外国人旅行者の増加に伴うマンションのホテル化などの新しい社会問題が発生しています。
また、一般市民により心原性心肺機能停止の時点が目撃された傷病者は平成25年度で25,469人であり、 一般市民により心肺蘇生が実施された傷病者は13,015人(51.1%)、その1ヵ月後生存者は1,932人、 1ヵ月後生存率は14.8%であり、救急車が到着するまでの間に一般市民による心肺蘇生が実施されなかった場合の1ヵ月後生存率8.9%と比較して約1.6倍高くなっています。
応急手当講習普及啓発活動とバイスタンダー(※1)による応急手当(※2)件数の状況
平成25年中の消防機関が実施する応急手当普及講習の修了者数は144万2,872人で、 平成21年以降、ほぼ横ばいで推移しています。 一方で、救命入門コース(短時間講習)の受講者は事業開始の平成23年以降増加しており、 これらを合わせると応急手当講習の受講者は過去最高となっています。 また、救急搬送された心肺機能停止傷病者の44.9%にバイスタンダーによる応急手当が実施されており、 その実施割合は年々増加しており、平成25年は過去最高となっています。
(※1) バイスタンダー:救急現場に居合わせた人をいう。
(※2) 応急手当:胸骨圧迫心マッサージ、人工呼吸、AEDによる除細動をいう。
7.東日本大震災データ
東日本大震災は平成23年3月11日14時46分に三陸沖を震源地として発生し、 震度6弱・6強・7に限ってもその範囲は岩手県・宮城県・福島県・茨城県・栃木県・群馬県・埼玉県・千葉県の8県に及んだ。
東日本大震災で亡くなった方は18,958人、行方不明の方は2,655人、全壊した家屋は127,291棟となっている(総務省消防庁調べ。平成26年3月1日現在)。
とくに災害情報、避難情報の入手が困難であったり、避難移動等が困難な状況にあった障害者の被害が大きくなった。 JDF(日本障害フォーラム)が自治体や報道機関から得た情報をまとめた結果によれば、東日本大震災における障害のある人の死亡率は障害のない人と比べて2倍であったとされている (JDF・日本財団作成映画『命のことづて 死亡率2倍 障害のある人の3.11』より)。
【次頁】 2. 管理組合の震災対応