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【終章】 なぜ日本とカナダを比較するのか?

当Hpでは、いままで日本の共同住宅法制をカナダのコンドミニアム法と比較する形で示してきました。
共同住宅法制は、当然ながら、その国の社会体制のありかたを反映しています。

発展して伸びている国No.1のカナダ、凋落して破産していく絶望的な日本。
それが共同住宅法制の違いに現れています。


  ○ 共同住宅法制改革の公共政策概論 (Public Policymaking for Condominium Legislation)
  ○ 解説・リベラリズムとパターナリズム
  ○ リベラリズムの歴史 「今をどう生きるか」
  ○ 行政機構は誰のため? 日本とカナダの違い(リベラリズムとパターナリズム)
  ○ 都条例とカナダの登録法令との比較 〜なぜ こんなに違うのか?〜

対照的な二つの国



 (左) 国力(GDP)の伸び
       日本の4倍に伸びたTopのカナダと失われた30年のまま最下位で低迷を続けた日本
 (右) 国の借金(純債務残高)
       雪だるま式に膨れ上がった日本と、借金を抑制して財政健全化に努めたカナダ

(2) カナダの共同住宅法制


 【カナダのコンド法令体系】
             詳細は 「コンド所有者を守る3つの法律」 の頁を参照ください。

【 日本語訳全文 】 コンドミニアム法 【 Condominium Act 1998】
             コンドミニアム法 施行規則 【o.reg 48/01】
             コンドミニアム裁判所実務規則【Condominium Authority Tribunal
                                  RULES OF PRACTICE】
             管理業法施行規則 3/18【倫理コード、懲罰委員会 及び 控訴委員会】
             管理組合のための個人情報保護ガイドライン【Privacy Guidelines
                                  for Strata Corporations】

【主務官庁】 区分所有者保護に係る行政執行権・司法権ともに消費者保護省に一本化しています。
 ⇒  「消費者の権利と安全を守る監督官庁を消費者保護省に集約したカナダ」

 【カナダの共同住宅法制の決定過程】
 (1)共同住宅法制改革の公共政策・総目次
     (Public Policymaking for Condominium Legislation)
 (2)共同住宅法制改革 「第U期報告書」(日本語訳 全文)

 【法の構成と要素】 (construction and element of Law)
コンドミニアム法,1998 ( Condominium Act 1998)は、公式に併記される別名で
コンドミニアム所有者保護法,2015 ( Protecting Condominium Owners Act, 2015.)というように、
(1) 所有者保護を目的とした法ですが応分負担で全所有者から年額12ドルの目的税を徴収する。
(2) 全管理組合に登記義務あり、管理組合全理事も登録し教育コース履修しないと理事資格を失う。
(3) 担当庁自体も州当局と行政契約で行政権と司法権の執行を委任された民間の非営利法人です。
  (官僚制の逆機能(※)を徹底排除) 法の構成は@ 行政権と司法権の権原・運営・執行を規定
  A 管理組合(理事・役員・管理者)の義務 B 区分所有者・抵当権者の権利と義務を規定
  C 管理業者の経済犯罪を防ぐための統制・倫理規定・罰則を規定

  (※) 「官僚制の逆機能(inefficiencies of bureaucracy.)」の具体例については、
     ○ 「東京都条例とカナダの法令との違い」 ー 「官僚制の逆機能」
     ○ 「解説・リベラリズムとパターナリズム」 ー 「(3) リベラリズムの共同住宅管理制度」
        に詳しい解説があります。

(3) 日本の共同住宅法制

○ 建物の区分所有等に関する法律 ( Act on Building Unit Ownership, etc.)
○ マンションの管理の適正化の推進に関する法律 ( Act on Advancement
                       of Proper Condominium Management )
※ かっこ内は法務省が発行している日本国法律の英語名の正式表記です。
   マンションは用いず、コンドミニアムとしていることに注意

【主務官庁】 物権の権利手続・登記・裁判関係は法務省、業界の手続規定は国土交通省に分かれている。
○ 法務省    (民事基本法) : 区分所有法・被災区分所有法
○ 国土交通省  (行政事業法) : マンション管理適正化法・マンション建替え円滑化法

  「法制審議会・建物区分所有法部会」は法務省と国交省のラブ・ゲーム(Rub Game)

車でいうと、エンジンは法務省、変速機(transmission⇒変則機)以降の足廻り駆動系は国交省の担当。
縦割り、股裂き、股擦れの、法務省と国交省のラブ・ゲーム( Love ではなく、Rub : こすること)
ロート製薬(株)の外用消炎鎮痛剤商品名「メンソレータムのラブ」のラブ(Rub)はすり込むの意味

カナダは車輪とモーターが一体のEVにmodal shiftし、販売、保険、車検、整備市場まで消費者省が担当
更に、実際の行政執行権・司法権は行政契約で民間の非営利法人に業務委託し民営化を徹底している。

カナダには、その名もずばりの「官僚的形式主義撲滅・経済強化法」(Less Red Tape, Stronger Economy Act) という法律があります。ドキッとする法律名ですが、種明かしをすると、実は時限立法の「コロナ非常事態宣言法」 で電子的通信手段(DX)による各種の公的サービスが定着したことに伴い、経済の効率化、競争力強化のために、 このDXを時限立法が廃止となる2023年9月31日以後も継続する目的で、2023年10月1日施行された。(※1)

日本の非常事態宣言は割り箸と同じで、その場しのぎの使い捨て、反省なく未来に経験が活かされることもない。

実務を知らない官僚と御用学者はDX(デジタルトランスフォーメーション)を短絡的にテクノロジーを導入すること とカン違いしているが、米マイクロソフトなど世界のIT企業では10年前から、DXとはテクノロジーの問題ではなく、 取り組む人の思考態度(mind-set)の問題であって、継続しながら成長する "growth mind-set"が共通認識です。 その認識が、カナダの「官僚的形式主義撲滅・経済強化法」の法令題名に端的に表れています。  (※2)

    [コロナ非常事態宣言における住宅行政の対応]
        ○「3.法務省が総会延期についての法解釈を示した日本」
        ○「4.法律を改正し、総会延期についての規則を定めたカナダ」


 【日本の共同住宅法制の決定過程】
  ○ 「マンション管理適正化法の限界」−「公共政策の決定過程」 (2018年1月25日掲載)
  ○ 「老朽化対策と法改正〜令和2年改正の概要〜」 (2020年8月26日掲載)
  ○ 「区分所有法の見直し 法制審議会へ諮問」 (2022年10月28日掲載)

 【法の構成と要素】
○「区分所有法」 は実体法である民法第二編「物権法」を基礎とする「区分所有権」の手続きについて定めた 手続法です。「区分所有権」は、区分所有法第2条「定義」で、「一棟の建物に構造上区分された部分の所有権」 と規定しています。区分所有法には所有者の権利を守り、所有者に義務を課すという目的も立法趣旨もない。

権利能力なき社団の管理組合は登記義務どころか設立義務規定もない。法第3条で規定する管理組合は 「〜団体を構成し、〜管理者を置くことができる。」という確認的宣言規定であって、管理組合を義務化した ものではない。「管理組合をあるものとみなす」という曖昧なみなし規定。昭和39年10月15日最高裁判例で 示された団体法理適用条件が下敷きになっている。 (管理組合の位置付け)「4. 権利能力なき社団」

この第3条は昭和37年法律第69号の旧法から昭和59年1月1日施行の新法になったときに新設された条項で、 第6節「管理組合法人」もこのとき新設された。管理組合組織形態には「民法上の組合」「権利能力なき社団」、 「管理組合法人」があるが、区分所有法上定められている組合業務の範囲、組織、管理、運営等に関する 基本的な事項を除けば、実務の多くは当事者主義で管理規約に基づく組合自治に委ねられている。 そこに、規制改革という(手段を目的化した)訳のわからない名目で、業者が組合自治に介入する口実を作る。 「区分所有法制の見直し・審議会」は目先の業界利益を追求する経団連の要望から生まれたものです。 (令和7年に改正法が国会に上程予定)
 令和4年10月13日法務省参事官が経団連に出向き説明
      [経団連「都市・住宅政策委員会企画部会」]
  [区分所有法の改正履歴(T)]

区分所有法は昭和59年施行から2024年末現在で40年経過し、今現在の、現実の問題に対応できていない。 法改正はいつも一時しのぎで取り繕った弥縫策(びほうさく)。
新しい「共同住宅法」の制定は、今の日本では絶望的。

○ 「マンション管理適正化法」 は、「行政の組織及び作用並びにその統制に関する国内公法」としての行政法 の枠組みで作られた、国交省のマンション行政における統治権限と体制の確立が目的の法律です。


※1 「官僚的形式主義撲滅・経済強化法」
ギル・パーム官僚主義撲滅担当大臣(Gill, Parm Minister of Red Tape Reduction)が提出した法案(Bill 91 )で 既存の法律の改廃を行ったもので、議会で成立後2023年6月8日公布(Royal Assent )されました。この法律で 修正を受けた他の法律は 37 あり、その中の別表7(Schedule 7)にコンドミニアム法の修正があります。施行日は コンドミニアム法の修正条項に関しては2023年10月1日施行で、時限立法の非常事態宣言法終了の翌日です。

修正内容の詳細は、【官僚的形式主義撲滅・経済強化法】によるコンドミニアム法の一部改正事項」 参照

※2 「成長する国、成長できない国」
米国の心理学者でスタンフォード大学教授の キャロル・ドゥエック (Carol Susan Dweck) 女史の著書
「成功の心理学(Mindset The psychology of success)」で状況に向き合う人の心理を2種類にわけた。

「成長する思考態度 (growth mind-set)」:今を成長への通過点と考え、達成すればさらに上を目指す。
「固定された思考態度 (fixed mind-set)」:成長できない人は、他者との比較で物事をとらえ、自分の
優位性にこだわり、自分に都合の悪い批判は退け、難しい問題からは逃げる。この硬直型のマインド
セットは4歳児でも観察され、自分が正解できるとわかっているパズルしかやりたがらないが、成長型
の幼児は「もっと難しいパズルを出して」とせがむ。この差は先天性でもないし年齢によるものでもない。

成長実感を得て好循環を獲得する組織的な関与によってマインドセットも変えられることがわかっている。
どうやって成長を実感できる社会環境を作り出していくか、社会を変えるのは、そこがキーポイントになる。

【G7 Summit Canada 2025 】 Represented By Justin Trudeau Prime Minister
  2025年、カナダ西部アルバータ州のカナナスキス(Kananaskis,Alberta)でG7サミットが開催される。


(2024年7月1日初版掲載・随時更新)
(Initial Publication - 1 July 2024/ Revised Publication -time to time)