大規模修繕工事会社に公取委が立入り検査 2025年3月4日
公正取引委員会は2025年3月4日、長谷工リフォームなど都内の大規模修繕工事会社約20社の
本社や営業所に対し、独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で立入り検査に入りました。
分譲マンションの大規模修繕工事の入札などで談合を繰り返した疑い。
これは単なる談合事件ではなく、建設スキャンダル(Japan construction scandal)であり、
その本質は日本の建設業界と管理業界の構造的な問題にあります。
現在の日本の大規模修繕工事では、競争入札制度自体が機能しなくなっています。
公正取引委員会の立入り検査を受けた会社
(1) 株式会社 長谷工リフォーム (東京都港区芝二丁目)発表
各位 2025年3月5日 公正取引委員会による当社への立入検査について 一部報道機関から報道されました通り、当社は大規模修繕工事の受注に関し、
お客様をはじめ、関係者の皆様には、大変ご心配をおかけしておりますことを深く
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(2) シンヨー株式会社 (川崎市川崎区大川町)発表
各位 2025年3月4日 公正取引委員会による弊社への立入り検査について 一部報道機関にて報じられております通り、弊社は、3月4日、大規模修繕工事の受注
検査の結果等につきましては、あらためてご報告申し上げます。お客様をはじめ関係者
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(3) 株式会社 日装・ツツミワークス(東京都豊島区東池袋三丁目)発表
各位 2025年3月4日 公正取引委員会による立入検査について 平素より格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
本件につきまして厳粛かつ真摯に受け止め、公正取引委員会の調査に対して
お客様をはじめ、関係各位の皆様には、大変ご迷惑とご心配をおかけしており
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(4) 株式会社 中村塗装店 (東京都品川区上大崎三丁目)発表
お客様各位 2025年3月5日 公正取引委員会の調査についてのお知らせ 平素より弊社をご愛顧いただき、誠にありがとうございます。 この度、弊社は公正取引委員会により、マンション大規模修繕工事の受注調整に関する
お客様にはご心配をおかけいたしますこと、心よりお詫び申し上げます。
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(5) 株式会社 大和 (DAIWA CORPORATION)(東京都中央区日本橋三丁目)発表
2025年3月5日 公正取引委員会の立ち入り調査について 一部の報道にありましたように公正取引委員会の立ち入り調査を受けました。
お客様の皆様には、ご心配をおかけし申し訳ございません。 |
(6) リノ・ハピア株式会社 (東京都大田区北千束)発表
2025年3月5日 公正取引委員会による立入検査についてのお詫びとお知らせ 一部報道機関にて報じられております通り、3月4日、公正取引委員会の立入検査
当社としましては、調査に全面的に協力し、事実関係の確認を進めるとともに、法令
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(7) 株式会社 富士防 (神奈川県横須賀市森崎)発表
2025年3月5日 公正取引委員会の立入り検査について 一部の報道機関にて報じられておりますとおり、弊社は、3月4日、大規模修繕工事
お客様をはじめ関係者の皆様には、多大なるご心配をお掛けし深くお詫び申しあげます。 |
(8) 株式会社 YKK APラクシー (千葉県松戸市東松戸3-7-21)発表
2025年3月8日 公正取引委員会による立入検査について 報道されておりますとおり、弊社は、去る2025年3月4日に、公正取引委員会
お取引先様を始め、関係者の皆さまには、多大なご心配をおかけしております
調査結果が判明した際には、改めてご報告させていただく所存です。
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立入りを受けた工事会社は他に、
建設塗装工業株式会社(東京都千代田区鍛治町二丁目)など約20社にのぼります。
壁を突き崩してきた 「泣く子も黙る公取委」
(1)一つ目の壁、国交省と業界団体の結合組織は独禁法の事業者に該当しない?
国土のインフラを担当する国土交通省(旧建設省)は、昔から利権の温床で、
「経済の憲法」とも言われる独禁法を無視した談合事件は日常茶飯事でした。
国交省と業界団体の結合組織は公共的な機関・団体とされ、独占禁止法の事業者に該当せず、
仮に該当しても、不当な取引制限の当事者にはなりえないとされていましたが、今から30年前の
平成7年(1995年),公取委はその壁を突き崩しました。
「日本下水道事業団発注電気設備工事談合事件」で、公正取引委員会は、日本下水道事業団
の工務部次長を刑事告発し有罪判決とした後、日本道路公団の公団副総裁及び理事2名を業者
と共に刑事告発して立件するなど、次々に実績を挙げてきました。
詳細は、本Hpの 「国交省の暴走に対する歯止め:独禁法」に詳しく解説しています。
(2)二つ目の壁 民間の発注工事には刑法の談合罪は適用されない?
この壁も、独禁法第2条第9項「不公正な取引方法」、公正取引委員会告示第15号 「不公正な取引方法」
などを適用して、平成14年6月三菱電機ビルテクノサービス株式会社に対する「不当な取引妨害」の排除勧告、
平成31年1月「大阪瓦斯株式会社に対する警告」〔優越的地位の濫用〕)の警告などを行ってきました。
伝統的に「一罰百戒」を旨としてきた公取委のこれまでの執行状況からみると、今回の大規模修繕工事業界の
永年の悪しき慣行だった不正取引に徹底的なメスが入れられることは期待していいと思います。
管理組合も当事者ですので、公取委への積極的な情報提供をお願いします。
公正取引委員会への「情報提供の仕方」及び「独占禁止法違反事件の処理の流れ」が、
本Hpの 「独禁法と公取委」 に詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
(注)文中の独禁法と公取委に関する参照頁は2018年1月25日に掲載していたものです。
待ち望んで7年目・・・ようやく・・・という想いです。
本文の最初に、これは日本の建設業界・管理業界の構造的問題だとした事について、詳しく知りたい方は、
「監理者の選び方」 を参照下さい。欧米のコンドミニアム修繕工事は
CM(Construction Management)
方式が主流ですが、日本ではゼネコン一括請負方式が一般的です。
ゼネコン方式では、人的・資金的な囲い込み・つながりで関連業者を纏めているので、一般競争入札では、
このゼネコンを選定することになりますが、既に管理会社はそれぞれの特定ゼネコンとつながっています。
管理組合の大規模修繕工事で一般公募をかけたとしても、管理会社とつながりのある業者が受注するの
が既にわかっていますから、他の業者は応札もしません。「他人の庭は荒らすな!」 ベテランの営業職が
後輩に伝える言葉です。近年は競争入札に参加する業者はいなくなりました。(2016年に問題提起された
後の、「2017年1月27日 国土交通省通達 国住マ第41号」
で、闇は、より深いものになりました。)
入札参加者がいないと、形式上、競争入札の形を取らざるを得ない管理会社やゼネコンとしては、協力
業者に合わせ見積りを依頼します。それを「談合だ」といわれてもなあというのがこの業界の言い分です。