各戸の契約容量アップを目的とした電気幹線設備の改修工事
高経年マンションの中には、電気幹線設備の改修工事を行うところが出はじめています。 その理由の多くは、経年劣化ではなく、各戸の電気容量不足の解消にあるようです。 容量アップにはどんな工事が必要になるのか、概要をまとめてみました。 ※動力設備(ポンプ類・エレベーターの制御盤やモーター等)の改修には触れていません。 |
なぜ、戸別の契約容量に制限があるのかマンションは、建設時に、各戸の契約電気容量の上限 を何A(アンペア)にするか決定後に幹線設計をしてい ます。そして、それに応じた変圧器、配電盤、幹線ケー ブル、電力計、分電盤が設置されています。 そのため、マンション全体が受け取れる電気容量には 上限があり、各住戸が際限なく契約容量をアップするこ とはできません。 例えば、建設当時、30Aを上限としていた50戸のマ ンションが、全戸60Aまで契約できるようにしたいという 場合ですと、電力会社からの受電方法の変更、変圧器の 新設と電気容量アップに適応した幹線ケールブル等の更 |
低圧受電と高圧受電通常、マンションは、電気を「高圧」か「低圧」で受け取っ ています。 電柱には円筒型のトランスが設置されていますが、こ れは変電所から6000Vで送られてくる高圧の電気を低圧 (100Vと200V)にする変圧器です。これによって、 利用者に高圧も低圧も送れるようになっています。 [表1]をご覧ください。 総電力量が50KVA未満である小規模マンションの場 合は、戸建てと同様、電柱から低圧電力を引き込む契約 をしています(2引込みが可能であれば98KVAまでの容 量を引き込める)。 一方、1棟の総電力量が100KVAを超える場合には、 高圧電力を受け取る契約となり、マンション内に設置し た変圧器によって、高圧から低圧へ変換しています。 [表1]のように借室方式以外は、上限があります。 既存の方法のままで、必要な増量が無理であれば、以下 のように引き込みの方法等を変える必要がでてきます。 |
容量アップのために−1(引き込み方法等の変更)
(a)低圧受電のまま「1引込み」⇒「2引込み」にする電力会社との事前協議が必要ですが、条件が整えば、 引き込みを2本にすることで、2倍の98KVAまで受け 取ることができるようになります。 (C)電気室借室内の変圧器の容量を増設すでに借室の中に変圧器が設置されている場合は、そ の容量を増設することで容量アップができます。 |
(b)「低圧」⇒「高圧」での引き込みに変更必要量が100KVA を超えてしまう 場合は、高圧受電になり、新たに変圧 器が必要です。電気室の新設は、現実 的ではありませんが、250KVA未満で 対応できるのであれば、パットマウント 方式があります。 |
容量アップのためにー2(各幹線設備の更新)
必要に応じて、[図1]の@〜Dを更新することになり ます。@CDは電力会社所有の機器なので、更新費用は、 電力会社の負担になります。ただし、事前協議が必要です。
各マンションは、既存の幹線設備の状況と必要電気量 から、具体的な改修計画を立てることになります。室内 工事、停電もありますから、丁寧な広報活動を実施し、 住民の納得と協力を得ることが非常に重要です。 |
注意点◎2回の停電と室内工事が必要1回目は、共用部分の幹線の引き替え時の停電で、半 日程度になります(古い幹線を使用しつつ、新しい幹線 を新設し、切り替える場合)。2回目は住戸内の分電盤を 取り替える際の停電で、各住戸1時間程度になります。 この工事は室内工事になります。 ◎露出配管になる可能性が高い高経年マンションの場合、電気幹線の管路は細く、既存 の管路の中にサイズアップした電気線を通すのは困難なた め、新しい配線は、露出配管になる可能性が高くなります。 |
専有部内の配線引替えについて・通常、管理組合が工事を実施するのは、引き込み 部分から各戸分電盤までになります。 ・その先の室内コンセントの配線の引替えや増設は、 各戸が必要に応じて実施することになります。ガス 調理器具からIH調理器具に変更を希望する場合に は、配線も単相3線式に更新する必要があります。 |
「マンションNPO通信 67号(2015/2/15発行)P4〜5所載」