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5.2 預金通帳からの転記と仕訳

目次 5.2.1 預金通帳の入出金記録  5.2.2 転記と仕訳の準備  5.2.3 入出金管理台帳

5.2.1 預金通帳の入出金記録

預金通帳には通常、下記のような形式で入出金が記録されています。

No 年月日 摘要 お支払い金額(円) お預り金額(円) 差引残高(円) 備考
3125-4-1スミダ ノボル \13,400\3,515,253
3225-4-5電気\15,121 \3,500,132
3325-4-5電気\23,400 \3,476,732
3425-4-12アオゾラ タロウ \17,100\3,493,832
3525-4-15口座振替\7,125 NTT\3,486,707
3625-4-20カワシタ フネオ \18,400\3,505,107
3725-4-20ハルノ ウララ \13,400\3,518,507
3825-4-20口座振替\12,750 ○シスイドウブ\3,505,757

 

5.2.2 転記と仕訳の準備

上記の預金通帳を「銀行預金出納帳(bank deposit book)」に転記するのですが、銀行預金出納帳は金額欄がひとつの一欄式仕訳帳 (one-column journal)です。

頻繁に発生する定期的取引を処理するために複数の金額欄を用いる仕訳帳の形式で多欄式仕訳帳(multi-column journal)があります。

ここで、上記の預金通帳を元に、下記のExcelの表に転記していくのですが、この表は銀行預金出納帳に仕訳帳の機能をもたせた多欄式の特殊仕訳帳(special journals)になっています。 つまり、預金通帳をこのまま転記するのではなく、同時に相手科目に仕訳して転記していきます。
仕訳といっても、意識しないで簡単な決まりだけを守れば誰でも簡単にできるようにしてあります。

準備するもの

(1) 前頁で示した 「戸別負担金台帳」を準備しておきます。 
(2) 6.2 勘定科目の設定 で示した勘定科目リストの中から、当管理組合で使用する勘定科目を選んでおきます。

どの勘定を使うかということをはっきり決めておくことと 更に 勘定科目名の入力は半角、全角、スペースの有無など、同一科目ではすべて一致していることがが、重要なポイントになります。
従って、勘定科目は逐一 手入力するのではなく、コピーアンドペースト(複写して貼り付け)を多用することになります。

下記のExcelの表の中で、年月日、摘要、出金、入金、残高の欄が預金通帳から転記する項目で、それ以外の横に展開している列項目は仕訳のために準備した項目です。

それでは、上記の預金通帳の項目をそのまま順番に、この表に転記していきましょう。

5.2.3  特殊仕訳帳(入出金管理台帳) 〜預金通帳からの転記〜

No 年月日 部屋番号 摘要 出金 入金 残高 管理費 修繕積立金 駐車料 一般会計 特別会計 小計
3125-4-1303スミダ ノボル13,4003,515,253 8,0005,4008,0005,40013,400
3225-4-5共用電気料(電灯)15,1213,500,132
3325-4-5共用電気料(動力)23,4003,476,732
3425-4-12302アオゾラ タロウ17,1003,493,832 7,5004,6005,0007,5009,60017,100
3525-4-15通信費(NTT電話)7,1253,486,707
3625-4-20304カワシタ フネオ18,4003,505,107 8,0005,4005,0008,00010,40018,400
3725-4-20203ハルノ ウララ13,4003,518,507 8,0005,4005,40013,400
3825-4-20水道料12,7503,505,757

(注)
(1) この預金通帳は収納口座でもあり保管口座でもある「収納・保管」口座になっています。(自主管理なので分ける必要がない)
  この口座には、一般会計の「管理費」と特別会計の「修繕積立金」「駐車料」が一緒に振り込まれています。
  これを、転記と同時に、一般会計と特別会計に分けています。(仕訳)

(2) 前頁の「戸別負担金台帳」から、そのまま、「コピー&ペースト(複写と貼り付け)」で転記しています。

(3) 支払経費の電気料、通信費、水道料などは、集計された合計額がそのまま決算書に計上される科目ですから、勘定科目を決める際に統一した転記の方法をあらかじめ決めておきます。 期の半ばで変更しますと、同一の勘定科目が集計されなくなり混乱しますから、注意してください。 「総勘定元帳」への転記を実際に経験すると、その仕組みが理解できると思います。

(4) 次頁の「総勘定元帳」への転記で、同一の勘定科目ごとに集計していく仕組みについて説明しています。

(参考: 簿記についての簡単な知識 )

管理組合の簿記

 管理組合の簿記は、管理組合会計に特有の点を除き、実質上は、企業の簿記と何ら異なるところはありません。管理組合に限らず、公益法人と企業会計との間にも本質的な差はありません。 つまり、商業簿記の解説書に書かれてあることはそのまま適用できますので、ここでは要点だけを説明します。 尚、外国の管理組合の財務諸表を見る機会も増えてきましたので、英文会計の基本用語も併記しました。会計の方式は世界共通になっています。少し見ずらいかも知れませんが、ご容赦ください。

簿記の意義と種類

 簿記(bookkeeping)とは、会計(accounting)の目的を達成するための記録及び計算に関する手法及び技術を総合したものをいいます。 複式簿記(double-entry bookkeeping)とは、複式簿記原理(貸借平均の原理 equilibrium principle)による簿記をいいます。即ち、取引が発生したとき、 どの勘定科目の借方と、どの勘定科目の貸方に記帳するかについて一定の法則にしたがって仕訳を行い記帳する方式が複式簿記であり、一方の勘定科目だけを記帳するのが単式簿記です。

複式簿記の仕組み

 事業体に帰属する金銭的価値のあるものを資産、負債及び正味財産の3つに大別して計算します。

(1)資産(assets)とは、事業体の持つ金銭などの財貨のほか金銭的価値のある権利等をいいます。

(2)負債(liabilities)とは、資産と反対の性質のもので、金銭的債務その他の負債をいいます。
財産とは、資産と負債を合わせたものをいいます。財産目録の財産とは、この意味です。
資産は正(プラス)の財産、負債は負(マイナス)の財産です。
従って、この財産の額は資産の額と負債の額の差額をいいます。この差額を純資産または正味財産(net assets)といい、企業会計では資本(capital)と呼びます。

(3)正味財産とは、資産の合計額が負債の合計額を超える額と定義されています。(公益法人会計基準別表3の取扱要領)
これは次の式で表されます。これが「貸借対照表等式」(accounting equation)で、複式簿記の最も基本になる等式です。
     資産=負債+正味財産

貸借対照表(balance sheet)は、事業体に帰属する財産及び正味財産の状態(企業会計ではこれを「財政状態」(financial condition)といいます。)を表形式で示したものです。

仕訳と元帳

仕訳とは取引を分類整理すること

郵便局では、はがきや手紙などを行き先別に分ける操作を仕訳といっています。
会計でも同様に、日々発生するたくさんの取引を分類整理するという仕訳が必要になります。 現在の簿記会計では「会計上の取引 ( accounting transactions ) を発生順 ( chronological order ) に原始帳簿へ記入すること ( original entries to books)」 を仕訳 ( journalizing )といい、 その帳簿を仕訳帳(journal)といいます。(ジャーナリストの語源は日誌をつける人、転じて新聞や雑誌の記者。)

この仕訳帳への記入の後、勘定科目別の元帳 ( ledger ) に記入していきます。これを転記 ( posting ) といいます。ポスティングとは、仕訳された郵便物を届け先に配達すること、会計でポスティングとは「転記」のこと。

会計では、まず取引が発生すると複式簿記のルールに従って、取引を借方(debit 略してDr. )、貸方(credi t略して Cr. )の2面に分解します。
たとえば、「事務用品1、050円を現金で購入した」という取引は、複式簿記では、
(借方)事務費 1、050円、(貸方)現金1、050円、と仕訳されます。

勘定 ( Account : 略して a/c )とは、帳簿上に設けられた計算単位のことで、性質に応じて名称がつけられたものを勘定科目(account title)と呼びます。
勘定は左の「借方」(Dr.)と呼ばれる部分と右側の「貸方」(Cr.)と呼ばれる部分との二つに分解されます。
「借方」「貸方」の用語は現代社会では 単なるひとつの符号にすぎなくなっています。

英語では貸方をクレジット ( Credit )と、借方をデビット ( Debit )と呼びますが、仕訳帳( journal )や元帳( ledger )で借方( debit 略してDr. )、貸方( credit 略してCr. )のように略記でDr./Cr.と書くのは 「借りているお方・債務者=Debitor」、「貸しているお方・信用供与者・債権者=Creditor」の取引相手を表わすDebitor、Creditorの短縮形だからです。これは簿記の歴史に由来しています。

勘定科目には資産科目、負債科目、費用科目があります。これらの科目を借方、貸方に振り分けるとき、図に示すようなルールで処理していきます。
「事務用品1、050円を現金で購入した」という取引は、事務費という費用が発生したので借方に、そして、 現金という資産が減少したので貸方に仕訳したわけです。

図のとおり、どんな取引でもこの組合せのなかで仕訳されることになります。

仕訳のルール
元帳(ledger)とは必要な勘定を網羅した一組の帳簿(a book of accounts)のことをいいます。

次に帳簿ですが、これには仕訳帳(journal)、総勘定元帳(journal)、補助元帳(subsidiary ledgers)があります。
これらはすべて取引を整然と記録、計算するためのものです。

仕訳帳(journal)
仕訳帳は、取引を借方、貸方に振り分けた仕訳の内容を、取引の発生順に記録するものです。

例えば、上記の5.2.3  特殊仕訳帳(入出金管理台帳)の内容を仕訳帳に転記したのが、下図の「仕訳帳」です。

本例ではこのような仕訳帳に転記することはしませんが、次ページの総勘定元帳への転記では、 この仕訳帳が存在すると仮定して特殊仕訳帳から直接、総勘定元帳への転記を行っています。

補助元帳 ( subsidiary ledgers ) は特定の勘定科目の内訳を口座別に網羅したもので、取引内容をもっと細かく知るために、必要に応じて設けられるものです。

総勘定元帳 ( general ledger : G/L )とは、組織に発生したすべての取引を分類・集計したものです。

総勘定元帳は、仕訳帳から取引内容を転記して、資産 ( assets )・負債 ( liabilities ) ・純資産 ( net assets )(企業では資本 capital )・収益 ( revenues ) ・費用 ( expenses ) に属する当該組織のすべての勘定別に分類・記録した帳簿です。

財務諸表作成のための基礎データを提供するものとして会計システムには不可欠のものです。

帳簿記帳は明瞭性を主眼としますから、形式と記帳方法が決まっています。(次ページにあります。)

{会計ノート}

造幣博物館展示室(東京都豊島区東池袋4-42-1)に明治3年(1870年)の仕訳帳が展示されていますが、現在の仕訳帳と同じ様式で書かれています。 仕訳帳は日本で複式簿記が採用された140年前から同じ様式で今日まで受け継がれています。
ちなみに、この洋式出納簿(仕訳帳)の作成を指導したのは造幣局採用の「お雇外人」ポルトガル人、V.E.ブラガで、その後、大蔵省に転じ、明治8年から11年まで「簿記計算取調方」に任用されています 。 簿記には連綿と続く永い歴史があって、奥が深いですね。