「管理組合会計 目次」 > 【前頁】 4.5 分別管理していても > 5.1 入金管理台帳と前年度繰越 > 【次頁】 5.2 預金通帳からの転記と仕訳

5.1 入金管理台帳と前年度繰越

前提としたモデル管理組合

 実際の管理組合会計の実務を、4階建15戸(1階は駐車場と事務室、住居は2〜4階部分)の小さな架空の自主管理組合をモデルに示してみました。

(1)自主管理で会計事務も外部に委託せずに、会計担当理事2名が入出金管理(印鑑保管)と記帳(通帳保管)を分担しています。
(2)手書きの現金出納帳や補助簿を使わずに、入出金はすべて銀行通帳一冊に記帳されています。
(入出金は原則としてすべて振込みとし、小口の事務用品や郵送料などは領収書をまとめて合計分を出金し、 そのときの預金通帳の欄に鉛筆で出金用途を備忘録として記入しておきます。)
(3)特別な会計ソフトを使わずに、汎用の表計算ソフトのExcelを使って管理しています。
(4)前期から引き継いだ状態で会計事務を開始するところから、始めています。

1.戸別負担金台帳を準備する

基本となる戸別負担金台帳は下記のようになっています。
所有者氏名をカタカナで示したのは、管理費等が振込みされる管理組合の銀行通帳や収納代行ファイナンス会社からの入金リストでは入金者の氏名がカタカナで表示されてくるので、その突合せ照合のためです。
同姓同名の方がいる場合、氏名の前に部屋番号を入れて入金していただくよう、お願いをしておきます。

1.戸別負担金台帳

部屋番号 所有者氏名 管理費 修繕積立金 駐車料 合計
201 サクラ ハナコ 6,500 3,200 0 9,700
202 アオゾラ タロウ 7,500 4,600 5,000 17,100
203 ハルノ ウララ 8,000 5,400 0 13,400
204 ナツウミ キヨシ 8,000 5,400 5,000 18,400
205 アキヤマ モミジ 8,500 5,900 5,000 18,400
301 ツバキ コウヨウ 6,500 3,200 0 9,700
302 オオゾラ ハクウン 7,500 4,600 5,000 17,100
303 スミダ ノボル 8,000 5,400 0 13,400
304 カワシタ フネオ 8,000 5,400 5,000 18,400
305 ヤマガミ ノボル 8,500 5,900 0 14,400
401 シライ ユリ 6,500 3,200 5,000 14,700
402 キクノ カオル 7,500 4,600 0 12,100
403 クラク タイシ 8,000 5,400 5,000 18,400
404 ヤマカワ タイヨウ 8,000 5,400 5,000 18,400
405 カリノ ウサギ 8,500 5,900 0 14,400
月別合計 _ 115,500 73,500 40,000 229,000
年間合計 _ 1,386,000 882,000 480,000 2,748,000

2. 前期の未収金と前受金の整理

未収金とは前期までに入金とならなかった管理費等の未納分、前受金とは前期中に今期の分まで入金となっている管理費等のことを、 管理組合の立場でそれぞれ未収金(資産),前受金(債務)としています。

笑い話ですが、決算報告書の財産目録で債務の部に前受金として部屋番号と金額が記載されているのを見た区分所有者からの質問です。
「いつも翌月の分まで払っているのに、なんで、債務に私のが載っているの?」
(あなたは組合に対する前受金の債権者で組合は債務者、この決算書は組合の立場での決算書)

寄り道ついでにもうひとつ・・・
法人所有の部屋の企業会計担当者からの電話「貴組合決算書の資産にある修繕積立金の当社分の積立額を教えてください。」「は?」 
この会社では管理組合に支払った修繕積立金を預金勘定の積立金に計上してきたという。
「経費で落とさなきゃだめですよ!、粉飾になりますよ!」・・(税金 余計に払ってきたの?・・と云いかけて、 これは逆の債務超過のケースだなと感じて・・) 会計やってるといろいろありまして・・

未収金と前受金は一般会計(管理費)と特別会計(修繕積立金と駐車料金)にそれぞれ区分経理します。

1.一般会計 未収金

部屋番号 管理費 月数 合計
207 7,500 1 7,500
402 7,500 1 7,500
合計 15,000 - 15,000

2.一般会計 前受金

部屋番号 管理費 月数 合計
302 7,500 1 7,500
404 8,000 1 7,500
合計 15,500 - 15,500

 

 

 

 

 

3.特別会計 未収金

部屋番号 修繕積立金 駐車料 合計
207 4,600 5,000 9,600
402 4,600 0 4,600
合計 9,200 5,000 14,200

4.特別会計 前受金

部屋番号 修繕積立金 駐車料 合計
302 4,600 5,000 9,600
404 5,400 5,000 10,400
合計 10,000 10,000 20,000

 

 

 

 

 

3. Excelの落とし穴

上記で2種類の表が出てきましたが、この後の財務諸表まで一貫して数学関数の四則演算(+-×÷)と合計のsum関数しか使いません。 マクロも使いません。但し、簡単なだけに下記の注意だけは知っておいてください。

(1)数式で計算させた後で、その結果が表示されているセルに直接、数字を入力すると、入力された数字に置き換わります。 例えば、(A1)セルに15 (A2)セルに28 (A3)セルに=(A1)+(A2)と入力すると画面は左のように表示されます。 ここで、計算結果の(A3)セルに直接55と入力すると画面は右にようになります。

(A1)(A2)=(A1)+(A2)
152843
(A1)(A2)=(A1)+(A2)
152855


 

一見しただけでは、分かりませんね。コンピュータだから間違いないと思い込んでしまいます。 複式簿記ではこれが後で勘定間の差異となって出てきますから、その原因を突き止めるのに、大変な思いをします。 うっかりは誰でもあります。計算が終わったら、最後に、数式の入力欄が上書きされて数式が壊されていないか、 数字が全角で入力されていないかなど、チェックする習慣をつけてください。

(2)管理組合会計は駅伝リレーみたいなもので、次の人に引き継いでいかなくてはなりません。自分だけ分かるマクロなどを組み込んでしまうと、 パソコンのスキルに差がある次の人たちにとっては??だらけの代物になってしまいます。 泥くさいといわれるかも知れませんが、シンプルが一番です。

管理組合会計に取りかかろうという人は、企業で使っている財務会計ソフトでも出来ると思い込みます。 が、いざ、入力して初めて、あっこれは使えない、 無駄な抵抗だったと気づきます。非営利法人の組合会計には企業の財務会計ソフトは使えません。 まあ、経費の仕訳ぐらいなら使えますけど、会計って経費の仕訳だけじゃないよ!

組合会計ソフトもピンからキリまでありますが、基本的にソフトというのは結構寿命が短くて、OSのバージョンが変わる度に更新費用がかかります。 なにより、最初に自分の組合に合ったやり方にソフトを初期設定しなくてはなりません。 これをカスタマイズといいますが、自分の組合に合わない無駄な項目が多く、延々と挑戦を続けた挙句、多くは設定作業の段階で採用をあきらめてしまいます。

管理組合で使える会計ソフトは帯に短し、タスキに長しで自分の組合にあったソフトはなかなかないか、目玉が飛び出るくらいに高額なものかのどちらかです。
値段を聞いて、思わず絶句したことがあります。え!○百万円! 担当者は親切に言い換えてくれました。 「いいえ、○百万円 から です。・・・カスタマイズ費用は含んでいませんので・・」

汎用表計算ソフト Excelを使って、仕訳帳・元帳などの会計帳簿を作成し、決算時にはそれをもとに試算表・精算表を作成し、 さらに収支計算書、貸借対照表、正味財産増減計算書、財産目録を作成している管理組合も実際に多くなってきました。

パソコンとExcelと基本的な簿記の知識があれば可能であり、特別なことではなくなってきています。 Excelの場合、直接、帳簿データを入力し、 そのまま出力帳票に展開していきますので、簡単にしかも直截的に結果を確認できる利点があります。

但し、上記の3つの能力を備えた会計担当者が存在して初めてできることで、 そのため、会計理事が固定してしまい、後継者がいないという問題が発生してきます。 そんな悩みをお持ちの方にこのページが少しでもお役に立てればと願っています。

 シンプル イズ ザ ベスト! Excelでも60戸程度の管理組合でしたら、本職を他に持つ忙しいあなたでも、 片手間に管理組合会計ができます。大丈夫! さあ、次にいきましょう

4. その他の会計専用ソフト

(1) NPO法人専用会計ソフト

企業会計ソフト(販売管理・給与管理・財務会計等)で実績のあるソフト会社から、 NPO法人会計のための専用ソフトが家電量販店のソフトコーナーで3万円台で販売されています。 非営利事業と収益事業の2部門管理ができるなど、 事業会社向けの企業会計よりは管理組合会計に近いものですので、 企業会計ソフトを使うよりは、なじみやすいと思いますが、管理組合としての使用は想定していませんのでサポートは期待できません。 あくまで、自己責任でのカスタマイズとなります。

公益認定を受けていない一般的なNPO法人は企業と同じく法人税を払っている団体ですので、 決算財務諸表は「収支計算書」、「貸借対照表」、「損益計算書」、「財産目録」の4種類で、「損益計算書」は法人税の申告に使用します。 (他に活動計算書を作成する場合もあります)。
(注)NPO法人も明確な会計規定がないという管理組合会計と同じ悩みを抱えていて現在も揺れ動いています。

(2) 管理組合専用会計ソフト

 管理組合会計専用ソフトの場合は、最初の項目設定(カスタマイズ)を適切に設定すれば、後の定型業務は楽になる(はず)です。 例としてカスタマイズが必要な項目を本項の末尾に示しました。(結構、大変な作業です。)

管理組合専用ソフトの問題点
 ソフト開発会社にとって、特注ではない汎用業務用アプリケーションソフトの販売価格は、 (販売価格×販売本数)>(開発コスト+販売コスト)で決まります。

どこの管理組合でも使えるように会計処理仕様が標準化されていれば、ソフト開発も効率的に行えますし、 販売本数も一定程度は見込めますので、事業として採算ベースに乗ります。企業会計ソフト(販売管理・給与管理・財務会計等)がその例です。

 ところが、ご存知のように、管理組合会計は会計基準もありませんし、これが標準だというモデルもありませんから、 広く一般的に行われているであろうという方式の機能を標準メニューとして網羅した上で、 顧客に選択適用してもらうというシステムにならざるを得ません。このため、開発コストもかさみます。

また使う側でも面倒な導入・設定のカスタマイズ作業が必要になります。
自主管理と委託管理(管理会社)では、会計システム、特に入出金処理機能の構成も全く変わってきます。 市場としては特殊な分野で販売本数も多くは見込めません。 通常の業務用ソフトに比べて販売後のユーザーサポートコストもかかります。

大手ソフト会社が管理組合用会計ソフトの最低価格を提示して上限を表示していないひとつの理由は、 価格が数百万円もするソフトは、ERP(Enterprise Resource Planning)システムと呼ばれる統合基幹業務ソフトであり、 財務会計だけの処理ではないので、選択するシステムの組み合わせで価格が異なることと、 導入・設定のカスタマイズなどのイニシャルコストとサポートコスト(保守契約ランク)が 管理組合や管理会社ごとに異なるためです。

管理会社の場合は会計担当者がほぼ固定し、たとえ要員の交代があっても社内で引継ぎされますが、1〜2年ごとに会計担当者(会計理事)が変わり、 充分な引継ぎも期待できない管理組合向けに販売するのはリスクを伴います。

 管理組合会計用の専用ソフトの価格は数万円のものから、数十万円のものまで多様にあり、 多数のマンションから管理基幹事務を受託している大手管理会社向けの専用ソフトでは最低価格250万円以上〜700万円以上のものまであります。

会計ソフトではDB(データベース)を使いますが、そのDBもMS Access(マイクロソフト・アクセス)や、Oracle(オラクル)、 MS SQL Server(マイクロソフトエスキューエルサーバー)など、さまざまで、それぞれ一長一短があります。

Accessなどは中小企業の小規模な社内専用アプリケーションとして社内担当者が作る場合にはDBの価格も安く、 ソフト開発も手軽でいいのですが、プログラムモジュールの構造化には不向きなAccessVBAで大型システムを開発するのは無理があり、 エラーリカバリー処理(間違った操作や、開発者の意図しない操作をした場合の回復機能)を完全に作り込むのは難しく、 不特定多数の第三者が使用することを前提にした市販ソフトにAccessを使用するのはソフトの完成度の点で無理があるように思います。 さすがに大手の製品ではAccessは使っていません。

特注ではない汎用の管理組合専用ソフトを導入する場合、下記の事前の設定(カスタマイズ)が必要になります。

(1)管理データの設定
1)建物施設概要データの設定
・マンション名称 ・マンション所在地・敷地面識 ・専有面積合計(u)
・マンションの各棟別・各階別の戸数の一覧表
・建物施設概要・竣工日(年月日) ・建設後(何年)・建物構造 ・全戸数・敷地面積 ・共有部分延べ面積・公園面積 ・建物延床面積・建物高さ

2)管理組合資金状況の設定
管理組合名称・管理組合設立年月日・組合電話番号・組合ファックス番号・理事数・理事長氏名・小口現金残高の有無・預貯金、各銀行預金通帳ごとの金融機関名、支店名称、口座種類、預金残高

3)入金費目の設定
a)部屋タイプ別管理費計算(・専有面積(u) ・バルコニー面積(u)・管理費u単価(円) ・修繕積立金u単価(円)・ 専用庭を利用している方の使用料と使用者一覧・トランクルーム使用者・電気・水道・ガス等の請求費目)
b)全居室の部屋番号と部屋タイプ一覧/区分所有者全員一覧表(氏名・フリガナ・所有者の購入年月日・所有者住所・電話番号・ファックス番号・メールアドレス・管理費引落金融機関名称・支店名・預金口座番号・預金の種類・預金口座名義)

4)区分所有者・入居者一覧表(氏名・入居者人数・電話番号)入居年月日・退出年月日

5)管理組合取引関係業者の一覧表
各業者の取引開始時期。管理組合の運営上経費の支払いが生じるすべての業者
公共機関も含む(ガス・水道・等…)・管理会社・新聞・清掃関係業者・廃品回収業者・飲食店・消耗品購入先店舗・放送関係・燃料会社・管理組合が支払う修繕工事関係業者

6)特別管理項目の設定(駐車場情報)
駐車場のブロック数・駐輪場・バイク置場・契約者の駐車場番号(契約者氏名・登録番号・利用開始時等の一覧表)

(2)入力の開始・運用初期値(前期繰越額・通帳残高・滞納未収金等)の入力

「管理組合会計ソフトはどれがお薦めか?」というご質問には、ご自分の管理項目に合わせて選んでというしかありません。(すみません!)

5. パソコンの電磁的記録は商業帳簿である。(最高裁判例)

(最高裁判例 平成14年1月22日第三小法廷判決)パソコン入力の会計記録も商業帳簿と認定

パソコンで管理する帳簿への虚偽情報入力が破産法の商業帳簿への不正記載罪に当たるかどうかが争われていた破産法違反(詐欺)事件について、 最高裁第三小法廷は平成14年1月22日、電磁的記録が破産法の商業帳簿に当たるとする初めての判断を示した。

本件は、元金融会社社長が、整理を頼まれたパチンコ店経営会社の破産宣告確定前に、自分の関連会社が同社に資金を貸し付けたという虚偽の情報を パソコンの総勘定元帳ファイルに入力させるなどして破産財団に属すべき金銭債権と固定資産を隠匿したというものである。

本件の一審・千葉地裁は、電磁的記録も商業帳簿に当たる」として元社長を有罪としたのに対し、二審・東京高裁は「電磁的記録を帳簿として認めることはできない。
明文化されていないのだから罰することはできない」として不正記載罪の成立を否定した。

このため、検察側は「実務とかけ離れた判断で、法解釈の誤り」として最高裁に異例の上告受理の申立てを行い、統一的判断を求めていた。
同小法廷は、「商業帳簿には、可視性、可読性が確保されている電磁的記録が含まれると解するのが相当であり、本件総勘定元帳ファイルは商業帳簿に当たる」として、 原判決を破棄し、元社長の控訴を棄却した(一審判決が確定)。

実務ではパソコンによる会計処理が主流となる中で、法的強制力のある最高裁判決でもパソコン入力の会計記録は商業帳簿であると認定されたことの意味は大きいといえます。