「管理組合会計 目次」 > 【前頁】 4.3 監査実施要領 > 4.4 財産の分別管理 > 【次頁】 4.5 分別管理していても

4.4 財産の分別管理

ひとのモノは、ひとのモノ

 他人(ひと)から預かっている資産は、自分の資産ときちんと分離して保管しなければならない。

個人でも法人でも当たり前の話ですが、管理会社が管理組合から業務委託を受けて反複継続して預かる管理費や修繕積立金については、 マンション管理適正化法でも分別保管義務を課しています。

それでも制度上の欠陥を突いて、顧客である管理組合資産に手をつける業者が後を絶ちません。

 1.1.3 管理組合の資金を狙う犯罪

1. 財産の分別管理とは

 財産の分別管理とは管理組合から預かった管理費、修繕積立金等の財産を管理業者固有の財産および他の管理組合の財産と分別して管理することを言います。(管理適正化法76条)

平成15年9月、国土交通省に登録された管理会社が倒産しました。適正化法施行後では初のケースで、マンション管理会社の東洋ビル管理(東京都中野区 昭和39年創業・負債総額約7億円、管理戸数約5300戸、管理組合数68組合)

 同社は分別管理を行わず管理組合から預かったお金を運転資金に流用していたものですが、(社)高層住宅管理業協会の「管理費等保証制度」に加入していたため、 管理組合に対する債務は、管理費等一ヶ月分を限度として倒産管理会社に代わって協会保証制度で補填されています。(44組合総額5,523万5千円,平成16年3月末時点)

この事件を契機として、(社)高層住宅管理業協会は協会保証機構会員に対し、平成16年4月から毎月ごとの管理組合会計の収支状況報告と管理費等の収納状況報告を義務付けました。

たとえ保証機構から債権が補填されたとしても、その後の日常の維持管理や保守業者の契約変更・会計帳簿の点検・そして保証金の支払い要求と査定手続きなどで管理組合は大変な手間を要しています。

マンション管理業者による下記の行為は禁止されています。
1)マンション管理業者が管理組合等の預貯金を自らの裁量で払出すこと
2)マンション管理業者によるキャッシュカードの保管やインターネットバンキングに係るパスワードの保持等それをもってマンション管理業者が管理組合等の預貯金を自らの裁量で払出すこと
3)マンション管理業者による通帳と印鑑の同時保管・・・実はこれにも抜け道がありました。

2. 分別管理の種類

(旧法)平成14年4月24日付け国土交通省総合政策局不動産業課長通達  (PDFダウンロード)
「マンションの管理の適正化の推進に関する法律に基づく財産の分別管理等について」 (11KB)

(新法)平成21年10月国土交通省総合政策局不動産業課通達  (PDFダウンロード)
「マンションの管理の適正化の推進に関する法律施行規則の一部を改正する省令」について(471KB)

「マンションの管理の適正化の推進に関する法律施行規則87条関係規定の要点」
 (旧):平成13年8月1日施行 (原則方式・収納代行方式・支払一任代行方式 )
 (改):平成22年5月1日施行 (財産の分別管理の方法・・会計の収支状況に関する書面の交付等)

【改正法における口座の定義】

@ 収納口座・・・区分所有者からから口座振替された管理費等をすべて集め、管理費・修繕積立金などに 仕分けし決済するための口座。この口座から毎月の管理に要する費用が控除されます。 収納口座の名義人は、管理組合の場合も管理会社の場合もあります。

A 保管口座・・・修繕積立金と毎月の管理費用を控除した残額の管理費を預貯金として管理する口座です。 保管口座の名義人は、管理組合です。

B 収納・保管口座・・・区分所有者から徴収された修繕積立金、管理費等の金銭を預け入れし、 管理に要する費用が控除され、修繕積立金と管理費の残額が預貯金として管理される口座です。 収納・保管口座口座の名義人は、管理組合です。

※ 「保管口座及び収納・保管口座の名義人は、管理組合」と明確に規定されました。(規則第87条第6項)

@規則第87条第2項第1号(イ)方式

区分所有者から徴収された修繕積立金、管理費を管理組合の収納口座に預入れし、毎月、当該月中の管理事務に要した費用を控除した残額を、翌月末日までに、収納口座から保管口座に移し換える方法。

A規則第87条第2項第1号(イ)方式

(イ)方式には収納口座が管理会社名義の場合がある。(管理会社が修繕積立金、管理費の収納事務を集金代行会社に委託している場合など)

B 規則第87条第2項第1号(ロ)方式

区分所有者から徴収された修繕積立金を管理組合名義の保管口座に預入れ、管理費を管理組合の収納口座に預入れし、毎月、当該月中の管理事務に要した費用を控除した残額を、翌月末日までに、収納口座から保管口座に移し換える方法。
収納口座が管理組合名義の場合と管理会社名義の場合がある。

C 規則第87条第2項第1号(ハ)方式

区分所有者から徴収された修繕積立金、管理費を管理組合等を名義人とする収納・保管口座において預貯金として管理する方法

D 規則第87条第3項但し書きのケース

イ又はロの場合は、原則として保証契約の締結が必要ですが、保証契約を締結する必要がない場合というのが規則第87条第3項但し書きのケースです。


第87条第3項
3 マンション管理業者は、前項第1号イ又はロに定める方法により修繕積立金等金銭を管理する場合にあっては、 マンションの区分所有者等から徴収される一月分の修繕積立金等金銭又は第1項に規定する財産の合計 額以上の額につき有効な保証契約を締結していなければならない。ただし、次のいずれにも該当する場合は、 この限りでない。

一 修繕積立金等金銭若しくは第1項に規定する財産がマンションの区分所有者等からマンション管理業者が 受託契約を締結した管理組合若しくはその管理者等(以下この条において「管理組合等」という。)を名義人とす る収納口座に直接預入される場合又はマンション管理業者若しくはマンション管理業者から委託を受けた者が マンションの区分所有者等から修繕積立金等金銭若しくは第1項に規定する財産を徴収しない場合

二 マンション管理業者が、管理組合等を名義人とする収納口座に係る当該管理組合等の印鑑、預貯金の引 出用のカードその他これらに類するものを管理しない場合


※ 上記の例で、管理会社が修繕積立金、管理費の収納事務を集金代行会社に委託している場合には、収納経路は、区分所有者の口座から集金代行会社の口座に振り替えたあと、管理組合又は管理会社の収納口座に収納することになります。

※ 管理組合の保管口座、収納・保管口座に係る管理組合の印鑑は原則として、管理会社が管理することは出来ません。(通帳の再発行を防止するため) 収納口座に係る印鑑、カード、通帳等を管理会社が管理する場合は、保証契約を締結する必要があります。

2.保証契約の締結(第87条第3項関係)

管理業者が1.イまたはロの方法により修繕積立金等金銭を管理する場合にあっては、原則として、当該方法により区分所有者等から徴収される一月分の修繕積立金等金銭(ロの方法による場合にあっては、管理費用に充当する金銭)の合計額以上の額につき有効な保証契約を締結していなければならない旨を定めました。

3.印鑑等の管理の禁止(第87条第4項関係)

修繕積立金等金銭を1.イからハまでの方法により管理する場合の保管口座または収納・保管口座に係る管理組合等の印鑑、預貯金の引き出し用のカード等について、原則として管理業者が管理してはならない旨を定めました。

3. 分別管理はどう変わったのか

下記のアンダーライン(朱書き)の部分は、現在は改正施行規則第87条第4項で禁止されています。

(旧)原則方式

居住者から口座振替された管理費等を「管理組合」名義の収納口座へ収納し、管理に要した費用を控除した残金を「管理組合」名義の保管口座(余剰管理費や修繕積立金を保管するための口座)へ移管する方式。
管理業者は保管口座に係る通帳、印鑑のいずれかを保管することができる。
(単に同時保管が禁止されていただけで、印鑑を管理会社が預かっている場合、通帳の再発行が簡単にできてしまう抜け道があった。)

(旧)収納代行方式

居住者から口座振替された管理費等を「管理会社」名義の収納口座へ収納し、管理に要した費用を控除した残金を1ヶ月以内に「管理組合」名義の保管口座へ移管する方式。 管理業者は保管口座に係る通帳、印鑑のいずれかを保管することができる。
(原則方式と同じ欠点があったことに加え、保証額が明確ではなかった。)

(旧)支払一任代行方式

居住者から口座振替された管理費等を「管理組合」名義の収納口座へ収納し、管理に要した費用を控除した残金を1ヶ月以内に「管理組合」名義の保管口座へ移管する方式。 管理業者は収納口座に係る通帳と印鑑を同時に保管し、保管口座に係る通帳、印鑑のいずれかを保管することができる。 (収納代行方式と同じ欠点があった。)

4. 管理業者の実態

管理業者とは,管理組合の委託を受け,管理事務等を行う事業者で,マンション管理適正化法に基づき,国土交通省に備えられたマンション管理業者登録簿に登録されたものをいいます。

管理業者の中には,マンションの分譲を行う大手不動産業者,建設業者,商社等の大手分譲会社が,分譲したマンションの管理事務等を行わせる目的で設立した子会社もありますが,これら系列子会社を除くと小規模な事業者が多く, 全国の登録事業者数は平成15年3月末で2,321社、平成24年3月末では2,252社となっています。このうち、業界団体であるマンション管理業協会(現在)へ加入している業者は全事業者のわずか2割にも達していません。

管理業者の団体である社団法人高層住宅管理業協会(昭和54年12月15日建設大臣設立許可)は、平成25年4月1日一般社団法人へ移行し、協会名称を「一般社団法人マンション管理業協会」へ変更しています。

平成15年11月時点の(社)高層住宅管理業協会に加入している管理会社376社の調査では、原則方式29.1%、収納代行方式23.0%、支払一任代行方式47.9%となっており、預かっている管理費等の月額は総額で846億1,283万円、1組合当り139万6千円(=小規模マンションが多い)、1戸当り23、300円となっています。

マンション管理業者による通帳と印鑑の同時保管が禁止されているにもかかわらず、管理費等収納口座用に同時保管している業者は原則方式で2.1%、また、管理費等収納口座の印鑑を管理業者の印鑑で運用している業者が0.3%ありました。

管理業者との取引の見直しを行うため,管理組合が管理業者に対し,居住者名簿,設備管理の引継書,会計資料等を請求しても入手できないなど,管理組合が管理業者との契約を見直すことを妨害する事例がありました。

管理業者によるこのような行為は,管理組合が他の管理業者や設備保守業者と契約することを阻止するために行ったとして,「不当な取引妨害」(一般指定第15項)として,独占禁止法違反事案となる場合があります。

平成15年10月24日付け公正取引委員会の調査報告書  (PDFダウンロード)
「マンションの管理・保守をめぐる競争の実態に関する調査について《公正かつ自由な取引の実現に向けて》