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訴訟の種類と方法

 市民紛争の解決手段  簡易裁判所    

 米国でも市民紛争の解決手段として、小法廷 (”Small claims court”)という名称で、「法に基いて、格式ばらずに、迅速に、公正に、安く、正義を実現する」ことを目標に、陪審なしで行われます。 裁判所による利用者のための分かりやすいガイダンスも充実しています。
(Small claims court is informal. The object, as stated in the law, is to "dispense justice promptly, fairly, and inexpensively." No one is allowed to make objections. And there are no juries.)

我が国でも、同様に、市民紛争の解決手段としての理念を持つ簡易裁判所は、同じ目標にさらに「親切に」を加えて、利用者のためのさまざまな支援を行って来ました。

地方裁判所の場合、受付相談は制度的にも存在しませんが、簡易裁判所の場合は受付相談の制度があります。
東京などの大規模庁の場合は、説明用のビデオが見られます。またリーフレットなどの資料や定型訴状もあります。

簡易裁判所の場合、紛争解決のための手段、方法としては、通常訴訟、支払督促、民事調停、小額訴訟などがあります。
訴えの案件に対してはどれを選んだらよいかという選択が必要になってきます。
紛争には相手方がいますので、手続の中立性・公平性に違反しない範囲で、手続の選択の問題と、訴状の記載の仕方という点を中心に、受付相談センターを設けて、そこで集中的にこの2点を中心に教示しているというのが現状です。

東京のような大規模庁の簡易裁判所では、受付相談窓口担当書記官と裁判所側の事前準備担当書記官(受付審査者)が別人ですから、情報の伝達に齟齬(そご)のないようにということと、 多くの利用者に対応できるように、との観点から「相談カード」の記載から始まって、さらに訴状提出を求める者にたいして、定型訴状の必要事項の記載および事情聴取票の作成がされ、訴状が完成したときには事件係に案内されるといった流れになっています。

訴状の作成に関しても、典型的な訴状類型について、訴状の定型用紙を用意しています。

地方の中小規模庁においては、手続の流れが大規模庁ほど細分化されていませんが、逆に、受付相談窓口担当者と受付審査者が同じ書記官でもあるといった雰囲気の中で、気楽に相談に応じてもらえます。

但し当然ながら、簡易裁判所は困りごと相談所でもないし、相手を訴えることを勧めるところでもありません。
あくまで、「裁判手続の中立性・公平性に違反しない範囲で」という前提に立った司法サービスです。

簡易裁判所で扱う訴訟は、争点も限られ、内容も単純明白なものが多く、実務においても、当事者がおよそどのような争いをするかを予測して考えられた事件類型別の事前準備(期日前の審査)が行われています。

そのような、@ある類型に特徴的な限られた訴訟案件に対し、A法律知識にあまり詳しくない一般市民の利用を考えてとられた態勢ですので、内容が込み入っている場合や、相手の属性に問題がある場合(例えば、プロの競売屋が自己破産住戸を競落し、前所有者の滞納管理費等を支払う義務のある特定承継人となった以後も滞納分も含めて一切支払わない状態で、さらに転売を予定など)は、できれば法律相談機関や弁護士などの専門家に相談するなどして、最初から区分所有法59条の競売請求を地方裁判所へ提出するなどの適正な方法を選択するか、簡易裁判所を選択するにしても、争点を明確にし、証拠を準備するなど、内容を整理したうえで、相談窓口に行かれたほうがよいと思います。

2 通常訴訟の流れ     

最初に、通常訴訟の流れを見ていきます。

1.民事訴訟は訴状の提出から始まる。
民事紛争の当事者のうち、最初に訴えを起こした方を原告、訴えを起こされた方を被告といいます。
刑事事件では、訴えを起こす方は検察官ですが、訴えを起こされた方を被告人といいます。
被告人というと、刑事事件になりますから、気をつけてください。民事では被告です。

民事訴訟は、原告が訴状と、訴状の副本(写し、コピーのこと)を裁判所に提出することから始まります。
裁判所は、訴状の副本を被告に送付します。あわせて、訴状に書いてあることについて、認めるのか、反論するのかを書いた答弁書を、裁判所に提出するよう求め、また、口頭弁論期日を定めて、期日に裁判所に出頭するよう、当事者双方に呼出状を送ります。

2.口頭弁論期日の進行
まず、原告が訴状を口頭で陳述し、被告は、その原告の陳述内容を認めるのか、それとも反論するのかを口頭で述べます。 実際には簡略化されていて、原告は「訴状記載の通り陳述します」と述べ、ついで被告がすでに提出してある答弁書に基づいて、「答弁書記載の通り、陳述します」と言って終了するのが普通です。

3.審理は争点を整理する作業
原告の請求のうち、被告がどのような点を争い、どのような点は争っていないのかを明確にします。
事実関係について争いがあれば、裁判官の面前で、証拠調べを行います。どのような証拠を提出するかは当事者の自由です。
証拠調べをして、争いのある事実につき、原告・被告のいずれの主張が正しいのかを裁判官が認定し、訴状の内容の当否について、判断できるようになると、口頭弁論は終結します。

4.判決の言い渡し
裁判所は指定した日に当事者を呼び出して、判決を言い渡します。判決は、原告の請求に対する裁判所の判断です。

3 裁判所の選択    

3.1 管轄選択は重要です

実際に管理費等の請求訴訟を提起する場合、管理組合と管理者の態様、滞納者の属性、事情、滞納(支払)状況、滞納期間などに関連して、交渉経過からみて、争点がどこにあって、どう決着をつけられるかの見通しのもとに、どこの裁判所に提起するかということは、滞納請求訴訟活動の難易に影響を与えるばかりではなく、訴訟の勝敗にも直結しかねない重要な問題です。

3.,2 事物管轄(簡易裁判所と地方裁判所)

第一審訴訟事件を、これを職分とする簡易裁判所と地方裁判所のいずれかに分担させるかの定めを事物管轄といいます。

訴訟の目的価額(訴額)が140万円以下の請求は簡易裁判所、訴額140万円を超える請求及び不動産に関する訴訟は地方裁判所の管轄です。訴額140万円以下の不動産に関する訴訟は、簡易裁判所と地方裁判所の管轄が競合しています。

訴額は民事訴訟法8条・9条により、訴えで主張する利益によって算定され、具体的な算定方法・基準・納付の手続等は、民事訴訟費用に関する法律、同規則及び、最高裁判所事務総局民事局長通達等に定めがあります。

訟額は滞納金額です。遅延損害金であるとか利息を併せて請求する場合は、それらは訟額には算入しません(民訴法9条2項)。 

  但し、事物管轄は専属管轄ではなく、当事者の合意によって変えられるものであることを利用して、消費者金融絡みの業者事件では訴額が140万円をはるかに超える事件でも、簡易裁判所で扱われています。弁護士でなくても、消費者金融会社やクレジット会社の社員が訴訟代理人になれるという、簡易裁判所の制度を利用したものです。

3.3 土地管轄(原告所在地と被告所在地)

滞納管理費の請求裁判を提起する原告管理組合にとっては、下記@の例である被告の「普通裁判籍」を選択することは、被告の住所地まで赴くことになり、必ずしも有利ではないので、管理規約で、管理組合所在地を管轄する裁判所を第一審裁判所とする旨の合意管轄条項を 明記しておく必要があります。

これは、いわゆる業者事件といわれる消費者金融の債権回収事件が、被告の住所地が当該裁判所からみれば遠隔地でありながら、これらの事件を合意管轄ありとして、もっぱら業者サイドの便宜上の大都市の簡易裁判所に集中して提起されていることと同じことです。

合意管轄は下記の(9)項に説明があります。規約上で明記しておくことで、規約書面による合意管轄の根拠とするものです。

所在地が異なる同種の裁判所間での職務執行の地域的限界を定めたものが土地管轄です。

事件の当事者または訴訟物と密接に関連する特定の地点を指す概念を裁判籍と言います。
管轄を定める基準時は訴え提起時であり(民訴法15条)、訴え提起後に当事者の住所が変動しても管轄は失われません。訴え提起時に、どこの裁判籍を選択するかは下記の中から、選択することになります。

(1) 普通裁判籍 : 被告の居所(法人の場合は主たる事務所)のことです。(民訴法4条)
  原告にとっては不利なので、下記の(2)〜(7)を選択します。但し、支払督促手続は普通裁判籍です。

(2) 義務履行地の裁判籍 : 義務者がその履行をすべき地で、マンション(管理組合)の住所です。
  (民訴法5条1号) 通常の債権の請求では、弁済は債権者の現時の住所ですることとされています。(民法484条)

(3) 手形小切手による金銭支払請求の裁判籍 : 決済場所の裁判籍(民訴法5条2号)

(4) 事務所、営業所を有する者に対する当該事務所等の営業に関する訴えの裁判籍(民訴法5条5号) : 事務所の所在地

(5) 不法行為に関する訴えの裁判籍(民訴法5条9号) : 不法行為のあった地も管轄地とされます。

(6) 不動産に関する訴えの裁判籍(民訴法5条12号) : 不動産の所在地も管轄地とされます。つまり、マンションの現住所です。

(7) 登記登録に関する訴えの裁判籍(民訴法5条13号)

(8) 併合請求の裁判籍(民訴法5条13号) : 一つの訴えで数個の請求をする場合、どれか一つの請求について管轄があれば、管轄のない請求についても管轄が生じます。

(9)合意管轄とは、当事者間の合意によって生じる、法定管轄とは異なる管轄のことです。一定の法律関係(たとえば、特定の立替払契約)に基づく訴えに関し、書面でなされるものに限って認められます(民訴法11条)。

簡易裁判所は、管轄のある事件について相当と認めるときはその所在地を管轄する地方裁判所に訴訟を移送することができます(民訴法18条)。

相当と認めるかどうかの一般的な判断基準としては、簡易な手続により迅速に紛争を解決することを旨とする(同法270条)、簡易裁判所の訴訟手続になじむ事件であるかどうかという基準が立てられます。

4 裁判は言ったモン勝ち?〜弁論主義における主張責任と立証責任〜

 民事訴訟の目的は、主張されている権利・法律関係の存否を公権的に確定して紛争を解決しようとするものですが、裁判所が紛争を解決するための手段として判決をするには、当該事件に関する事実や証拠を裁判資料として収集しなければなりません。この裁判資料の収集を当事者の権限かつ責任とする建前を、弁論主義といい、裁判所の権限かつ責任とする建前を、職権探知主義といいます。
  弁論主義は財産関係を対象とする通常の民事訴訟において採用され、職権探知主義は身分関係を対象とする人事訴訟(人事訴訟手続法10条、14条、31条2項)など、特殊な手続に限って採用されています。

弁論主義の内容     ”重要!”


弁論主義の内容は次の3つに要約されます。

(1)裁判所は当事者の主張しない事実を(たとえ証拠上の認定ができたとしても)判決の資料としてはならない。

(2)裁判所は当事者間の争いのない事実(自白された事実)については、そのまま判決の資料としなければならない(証拠調べをしてこれと異なる事実を認定してはならない)。

(3)当事者間に争いのある事実を証拠によって認定する場合は、必ず当事者の申し出た証拠によらなければならない(職権で申し出のない証拠を取り調べてはならない)。

ここでいう「事実」とは、権利・法律関係の発生・変更・消滅という法律効果を判断するのに直接必要な主要事実(直接事実)をいい、主要事実の存在を確認するのに役立つ事実を間接事実、証拠の信用性に影響を与える事実を補助事実といいます。

  貸金請求事件で見ると、「返還約束のもとに金銭を交付した」との事実は貸金返還請求権の発生を根拠づけるための直接必要な事実であり、「被告は借り受けた金銭はすでに弁済した」との事実は貸金返還請求権の消滅を根拠づけるための「直接必要な事実」ですが、それに対して、「被告は当時金に困っていたが、貸付を受けた日以降に現金で大きな買物をした」との事実は「直接必要な事実」ではなく、貸付の事実を間接的に推認させる「間接事実」です。

主張責任

また、「借用書は偽造されたものである」との事実も直接必要な事実ではなく、借用証の信用性に影響を与える「補助事実」です。
したがって、裁判所は当事者が主要事実について主張してこない限り、これを判決の資料にはできないので、主要事実が主張されないことによる不利益は、これを主張することによって自己の主張を根拠付ける必要のある当事者が負担することになります。

これを「主張責任」といいます。

裁判上の自白」(民事訴訟法179条)とは、当事者が口頭弁論期日または争点整理手続期日において、相手方が主張する自白に不利益な事実を認める陳述を言います。自白の対象となるのは「具体的事実」であり、法規、その解釈、経験則等は自白の対象になりません。

裁判上の自白が成立すると、当該事実については裁判所の事実認定の根拠は排除され、自白された事実について証拠調べをし、これと異なる事実を認定してはならないことになります。

また、裁判上の自白が成立すると、相手方は立証責任を免れ、これを前提とした訴訟活動を行うことになります。
その後に自白を撤回することを認めたのでは、相手方の信頼ないし期待を損ない、裁判所の審理も混乱し、禁反言の原則(*)にも反することから、自白の撤回は原則として許されません。

(*)禁反言(きんはんげん, estoppel, エストッペル)とは法の世界におけるフェアプレイの現れであり、過去の自分の行為と矛盾する主張をすることはできないとする原則をいいます。

立証責任

当事者は立証責任を負っている事実の高度の蓋然性を裁判所に認識(確信)させるに足る適切な証拠を提出することに失敗すれば、その事実は認定されず、当事者の主張は根拠を失い、認められないという不利益を受けることになります。この当事者の不利益ないし負担を「立証責任」といいます。

特に、「過失」、「正当事由」、「公序良俗」、「権利濫用」、「信義誠実」等の抽象的概念を主張する場合は、その概念を具体的に示す態様の存否を争点として実質的な事実認定を行うので、当事者としては、重要な間接事実については主張をしておくことが重要になってきます。与えられた攻撃防御の機会を利用しなかった場合には,一定の不利益を課されてもやむをえないとの考えから,相手方や裁判所の手続違背の行為について異議を述べる権利を失うとされています。(民訴法第90条)

「裁判所による釈明権の行使」

当事者の申立てや主張が不明瞭であったり、法律上の見解の相違等から当事者の主張・立証が不十分・不適切と裁判所が判断した場合、弁論主義を補完する目的で裁判所は、当事者に事案の事実関係や法律上の事項について問いを発し、または立証を促すことがあります。

これを「裁判所による釈明権の行使」といい、裁判所の権能とされています。(民事訴訟法149条1項)

これは、例えば貸金請求裁判における時効の援用について、法的知識としての時効制度の説明を行ったうえで、援用の意思があるかどうかの釈明を求めることは許されてよいとする見解もありますが、現実には裁判所の中立性・公平性の確保との関連で釈明権の行使は裁判所に委ねられています。

攻撃・防御方法の趣旨が不明瞭であるとして釈明を求められているのに、これに応じなかったり、釈明すべき期日に欠席すると、裁判所はその攻撃・防御方法を却下することができる(民事訴訟法157条2項)とされているので、釈明を求められたら当事者としては慎重に対応を検討しなければなりません。

「立証責任」の項で述べたように、与えられた攻撃防御の機会を利用しなかった場合には,相手方や裁判所の手続違背の行為について異議を述べる権利を失うことになります。

5 どんな種類の訴訟があるか

(1) Q.配当要求とは?    

A.滞納区分所有者の不動産が競売に付された場合、区分所有法第7条の先取特権に基づき、地方裁判所に対し、配当要求を行います。
差押債権者以外の債権者が強制執行手続きに参加して、その債権の満足を受ける方法です。

配当要求書は、本ホームページの「書式一覧(ダウンロード)No.9」にありますので、ご覧下さい。

配当要求権者、管理費等の支払請求権者は誰になるか?
1)法人化されている管理組合の場合は、管理組合法人
2)法人化されていないが、権利能力なき社団の要件を満たしている管理組合の場合、管理組合
3)権利能力なき社団の要件を満たしていない管理組合の場合、他の区分所有者全員
(注)権利能力なき社団の要件は、「法人制度はどう変わったのか」本文「権利能力なき社団」を参照

配当要求は、差し押さえられた財産からの売得金による債務者弁済を行う手続きであり、差押債権者以外の債権者でも配当要求の終期までに配当要求をすることができます。

必要な書類(詳細は、配当要求書の文面を見て戴ければ、わかります)
1)「配当要求書」本ホームページの「書式一覧(ダウンロード)No.9」
2)先取り特権が存することを証する書面
3)管理費等の額を証明する管理規約及び集会議事録及び理事長選任議事録

この配当要求を行わなかった場合でも、区分所有法第8条により、滞納管理費等の債権について、特定承継人である競落者に対して支払請求することができます。

(2) Q.先取特権の実行とは?    

A.先取特権とは、債権を有する者が、債務者の財産から優先的に弁済を受ける権利です。(民法第303条〜341条)
マンションの共益費用の先取特権は区分所有法第7条に規定され、不動産先取特権は登記しなくても一般債権者に対抗することができますが、登記されている抵当権よりは後順位になります。(民法第336条)

先取特権の実行は、滞納区分所有者に対する債務名義がなくても、債権を回収できる方法です。
区分所有法第7条に規定される先取特権の実行は、占有部分又はその区分所有建物に備え付けた滞納区分所有者の財産について、競売の申立を行うことになります。(民事執行法第181条〜、民事執行規則第170条〜)

先取特権の実行順位
1)まず、動産の先取特権が実行できるときは、これによって弁済を受けます。
2)動産による弁済で足りないときは、不動産の先取特権を実行できます。
3)動産だけで明らかに弁済を受けるに足らないときは、不動産の先取特権から実行できます。

競売の申立人は誰になるか?
1)法人化されている管理組合の場合は、管理組合法人の代表理事
2)法人化されていない管理組合で、管理者を定めている管理組合の場合、区分所有法第26条第4項により、当該管理者
3)上記いずれもに該当しない場合、他の区分所有者全員 又は 管理者を選任して管理者を競売の申立人とする。

どこに申し立てるか
1)占有部分に関して競売を申立る場合は、マンションの所在地を管轄する地方裁判所
2)動産に関しては、マンションの所在地を管轄する地方裁判所に所属する執行官
動産の競売の場合は、執行官に動産自体を提出するか、または、動産の占有者が差押えを承諾する文書の提出が必要です。

先取特権の実行は、弁済に足る動産もなく、あっても動産の占有者の差押え承諾が得られない場合、または、占有部分について、その価格いっぱいに抵当権が設定されている場合、差押えの効力はありません。

但し、目いっぱいに抵当権が設定されている場合でも、その抵当権者からの抵当権の実行(競売)を待ち、その競落人に対して請求することとなります。

(3) Q.即決和解とは?    

A.即決和解は、相手の合意を得て、相手方の住所のある地区の裁判を担当する簡易裁判所に対して行います。
正式には「訴え提起前の和解手続」といい、一般的には即決和解といいます。

1)「和解申立書」の書き方
「和解申立書」と題して、申立人の住所氏名と相手方の住所氏名を書きます。
次に争いの内容、即ち申立人、相手方双方の言い分を書きます。
これとは別に、成立する見込みの和解案、すなわち、申立人、相手方双方のすべきことを箇条書きにします。
当事者が法人の場合、それぞれの登記簿謄本又は抄本または全部事項記載証明書を提出します。

2)手続費用
申立手数料は1,500円(収入印紙)と切手(裁判所が関係者に書類を送付するために使用)

3)即決和解が成立した場合
裁判所が「和解申立書」を受理すると、和解の期日が指定されます。
和解が成立すると、その内容を裁判書記官が調書に記載します。
この調書は判決と同一の効果があるので、当事者の一方が和解の内容を実行しなかった場合、その相手方は調書に基づいて裁判所に強制執行の申立をすることが出来ます。

4)即決和解が成立しなかった場合
和解の期日に当事者が出てこなかったり、出てきても合意に至らない場合、和解手続きは終了します。
双方が訴訟で争うことを申立てた場合、訴えを提起したものとみなされ、訴訟手続きに移行します。

(4) Q.民事調停とは?    

A.民事調停とは、裁判所の調停委員会の仲介によって、相手方との話し合いにより、金銭の貸借等にからむトラブルを解決する手続きです。当事者の自由意志により、互いに譲歩し、円満な解決を目指し、紛争を解決する手段です。

但し、民事調停に持ち込まれても、相手方は調停の場に出る義務はありません。
申立てた側にも、譲歩や妥協を強く求められるので、滞納分の即時回収という訳にはいきません。
1)手続き
「調停申立書」を相手方の住所のある地区の裁判を担当する簡易裁判所に対して行います。
2)手続費用
申立手数料は訴額5万円ごとに300円、35万円越えて5万円ごとに250円、詳しくは簡易裁判所で確認ください。(100万円で5,300円、200万円で9,300円)
この申立手数料は収入印紙で、他に切手が必要です。(裁判所が関係者に書類を送付するために使用)

3)調停の進み方
裁判官と民間から選ばれた2人以上の調停委員で構成される調停委員会が、話し合いをするための期日を指定し、申立人と相手方に通知します。
調停委員が双方から紛争の内容や主張を聞き、もっとも適切と思われる解決方法が提示されます。
当事者の云うことだけでは内容がわからないとき、第三者にきてもらったり、調停委員会で現場を見に行ったり、専門家の意見を聞くこともあります。

4)調停が成立した場合
調停委員が提示した解決案に当事者が合意した場合、その内容を裁判書記官が調書に記載します。
この調書は判決と同一の効果があるので、当事者の一方が和解の内容を実行しなかった場合、その相手方は調書に基づいて裁判所に強制執行の申立をすることが出来ます。

5)調停が成立しなかった場合
お互いの意見が折り合わず、話し合いの見込みがない場合、手続きは打ち切られ、裁判所は、適切と思われる解決案を示し、(これを「調停に代わる決定」と云う)、これに双方が同意すれば、調停が成立したと同じことになりますが、どちらかが2週間以内に異議を申し立てると、調停は成立しなかったことになり、なお、紛争の解決を希望する場合には、訴訟を起こすことになり、請求の額が140万円以下(*)の場合には簡易裁判所、140万円を越える場合には地方裁判所に訴訟はを提起することになります。(*2004年4月1日から従来の90万円から140万円に改訂されました)

(5) Q.支払督促とは?    

A.別紙「督促手続の実際」に詳細な説明があります。

支払督促制度の特徴
(民事訴訟法上は「督促手続」と言います)
1)通常の訴訟によらないで滞納管理費等の債権者(管理組合)が簡易裁判所に申立てると、簡易裁判所書記官が債権者の申立てに理由があると認めれば、債務者の言い分を調べることなしに、債務の支払いを命ずる制度です。
2)支払督促に仮執行宣言を付けてもらい、強制執行ができます。
3)申立人は裁判所の法廷に出頭する必要はありません。
4)債務者の所在地の簡易裁判所が管轄裁判所であり、管理規約に「この規約に関する管理組合と管理組合員間の訴訟については、対象物件を管轄する○○地方(簡易)裁判所を第一審管轄裁判所とする」と規定していても、支払督促の場合は異なります。

(6) Q.小額訴訟制度とは?    

A.別紙「小額訴訟手続の実際」に詳細な説明があります。

小額訴訟制度の特徴

1)訴額が60万円以下の金銭支払請求事件について利用できます。(2004年年4月に従来の30万円から60万円に改訂)
2)特別の事情がある場合を除き、原則として1回の口頭弁論による審理だけで終了します。
3)訴訟代理人が選定されている場合でも、裁判所は当事者本人(又は法定代理人)の出頭を命じることができます。
4)訴えを提起する際に、原告が小額訴訟による審理及び裁判を希望し、相手方(被告)がそれに異議を申し立てないときに審理が進められ、審理が開始されるまでは、通常の訴訟手続きに移行させることができます。
5)当事者は、口頭弁論が続行された場合を除き、第一回口頭弁論期日までに、すべての言い分と証拠を提出しなければなりません。
6)証拠調べは、即時に取り調べができる証拠に限られます。
7)裁判所は、小額訴訟の要件を満たさない等の場合は、職権で訴訟を通常の手続きによって行う旨の決定をします。
8)一人の原告による、同一簡易裁判所における、同一年内の小額訴訟手続利用回数は10回以内に制限されます。
9)小額訴訟においては、反訴を提起することができません。
10)判決の言い渡しは、口頭弁論の終結後、直ちに行われます。
11)裁判所は、一定の条件のもとに、支払い猶予、分割払い、訴え提起後の遅延損害金の支払免除を命ずることができ、この決定に異議の申立てはできません。
12)当事者が判決を受け取った日の翌日から起算して2週間以内に異議を申立てなければ判決は確定します。
13)適法ではない異議は却下されますが、適法な異議申立てがあると、小額訴訟の判決をした同一の簡易裁判所において通常の手続きによる審理及び裁判になります。
地方裁判所に控訴をすることはできません。
また、異議申立て後の判決に対しては、原則として不服の申立てはできません。
14)原告の言い分が認められますと「この判決は、仮に執行することができる」旨の仮執行宣言が付され、相手方(被告)が判決に従わないときは、原告は判決確定前であっても、執行文なしに、判決内容による強制執行が行えます。

(7) Q.通常訴訟とは?    

A.「支払督促」も「小額訴訟」も、相手方から異議の申立てがあると、通常訴訟に移行します。
滞納区分所有者が異議の申立てで応ずることが見込まれる場合には、支払督促や小額訴訟による手続きを利用するよりも、最初から裁判所に訴えを提起したほうが良い場合もあります。

1)訴えを提起する裁判所
請求額が140万円以下の場合には簡易裁判所、140万円を越える場合には地方裁判所で管理組合の所在地を管轄裁判所とすることができます。簡易裁判所においては、簡易な事件を扱うことから、法曹以外の者も許可を受けて代理人となることができます。実は、平成14年度の簡易裁判所訴訟事件のうち72%の事件がいわゆる「業者事件」(金融商工ローン債権の取立訴訟)であり、そのほとんどが訴訟代理権の許可を得たローン会社の社員によって訴訟追行がなされているという現実を知っておいてください。

2)訴状は、正本1通と被告の人数分だけの副本を裁判所に提出します。
3)訴状には、申立手数料(訴額に応じた収入印紙)と速達用郵便切手を予納します。
4)申立手数料
申立手数料は訴額5万円ごとに500円、35万円越えて5万円ごとに400円、詳しくは裁判所で確認ください。(100万円で8,600円、200万円で15,600円)

訴訟を起こす場合には、弁護士と打合をし、区分所有者に対し、状況報告を適時行う必要があります。
裁判では、弁護士に支払う着手金、報酬など、相当の費用がかかりますので、予算上の措置を講じておく必要があります。

(8) Q.支払督促とは?    

支払督促に向いているもの

支払い督促は、金銭その他の代替物等の給付を目的とする債務の履行が任意には履行されていないが、相手方が請求そのものについて争うおそれがほとんどないときに適しています。
この方法によるメリットは、申立人の証明等が不要という簡便さと申立手数料(貼付印紙)が訴訟の半額で済むという点にあります。いわゆる業者事件における業者が多く利用しています。
もっとも、相手方から異議が出されれば通常訴訟に移行するので、その場合は当然時間を要することになります。
また、支払督促は金銭の支払い等の限定された場合であること、申立のできる管轄についても、債務者の住所、営業所等の所在地の簡易裁判所に限定されていること、相手方が所在不明で公示送達をしたいときでも、公示送達はできないといったマイナス面もあります。

支払督促に向いていないもの

1. 相手方が所在不明の場合は、公示送達ができませんので、支払督促はできません。
2. 支払督促は債務者の住所地の簡易裁判所書記官の専属的職務管轄(民訴法383条1項)なので、同一マンション内の
複数の滞納者に対して法的措置をとる場合、管轄裁判所が複数になる可能性があり、複雑になるため
最初から、マンション所在地を管轄とする地裁に通常訴訟を提起したほうが適切な場合があります。

(9) Q.小額訴訟手続とは?    

「小額軽微な事件を簡易・迅速に解決する裁判所」(民事訴訟法270条参照)としての簡易裁判所の趣旨からすると、小額訴訟手続を利用して、自分自身で訴訟を行い、仮に負けてしまった場合でも、惜しくないという処分容易性の観点からみて、さしあたり30万円という上限額でしたが、 平成15年の民事訴訟法改正により、簡易裁判所の事物管轄が140万円に、小額訴訟の訴額も60万円に引き上げられ、平成16年4月1日から施行されました。

小額訴訟手続が果たしてきた「迅速に、利用しやすく、わかりやすい」手続の精神と「事前準備」と「一体型審理」審理モデルは、その後、民事訴訟全般に拡大されてきています。

「事前準備」とは、口頭弁論期日前に、相応の準備を行うことで期日における審理を充実させることであり、
「一体型審理」とは、口頭弁論期日での審理において、主張尋問としての当事者に対する釈明手続と、証拠調べ手続としての本人尋問とを明確に区別せずに、同時並行的に行う審理方式を言います。
この審理方式は、争点ごとに当事者と裁判所が対話する方式で進められ、当事者にとって分かりやすく、裁判所にとっても事案を順次明らかにして心証を得るために効率的な方法と考えられています。

利用回数が制限された理由

小額訴訟事件は、庶民の小額事件のための手続です。これが、消費者金融業者、クレジット会社による債権取立てのために利用されると具合が悪いし、そうした業者事件が席巻すると、庶民のための手続というイメージから離れてしまうことは問題と考えられました。
アメリカの小法廷(Small Claims Court)でも、利用回数を制限しています。(例えばMontana州では年に10回以下)
実は、現在でも、簡易裁判所の通常民事裁判の7〜8割が消費者金融業者、クレジット会社の社員が会社の代理人となって大量に持ち込んでいる消費者信用関連事件(債権回収事件)なのです。
小額訴訟事件を、庶民の小額事件のための手続として機能できるように保全するためには、回数制限も止むを得ないと思います。

小額訴訟に向いているもの    

1.争点が比較的単純なものであること。
2.当事者本人尋問等の即時取調べによって、審理を遂げられる見込みがあるもの。
3.送達や事前準備等において、当事者との連絡が円滑に進む見込みがあるもの。
4.訴訟準備について、当事者の意欲、協力が見込まれるもの
5.被告が応訴する可能性が高いもの
など、こういう類型のものが小額訴訟手続には向いています。

小額訴訟には向かないもの    

1.被告の行方が不明なもの
2.争点があまりにも複雑で入り組んでいて、1回目の期日ではちょっと終わりそうにないもの。
3.濫訴が疑われるもの
4.消費者信用関連事件(消費者金融業者、クレジット会社などの債権回収における、いわゆる業者事件)、またはそれに類するものなど
は小額訴訟手続には向かないことは承知しておいてください。

訴状の記載方法については、被告の出頭可能性の低い欠席型になるものについては、少なくとも請求原因だけは要件事実をきちんと踏まえて書くことが大切なポイントになります。
そして、本件紛争の要点は何なのかということをしっかりと書いてもらって、これまで相手方とのやりとりがあるならば、その情報も入れておいていただくことも必要です。そうすれば、裁判官としてこの事件をどのような見通しで、どのように進めるべきかの参考になると思います。
逆に、出頭可能性の高い対席型、及び対席型の場合でも、さらに和解の可能性の程度により、和解型と判決型に分けているのですが、担当書記官には、当該紛争の解決局面がどの類型にあたるのかの見込みを立てるための具体的な事情を聴取することが求められているということになります。
たとえば、被告との間で事前交渉があれば、その中身はどんなことか、当事者間に契約関係を通じて一定の人的関係が形成されている、いわば、相手方の顔が見える紛争であれば、相手方の経済状態、滞納経過(支払状況)などはどうであったか、また競落人(特定承継者)への請求など相手方の顔がよくわからないというような事件であれば、相手方との事前交渉の経過がどうであったか、等々の観点から、具体的にどのような方向で解決されるのかの見込みを立てるための事情を十分に聞きだすということになります。

小額訴訟手続は効果の点でも、通常の訴訟手続とは異なり、判決になる場合でも、弁済期を猶予したり、分割弁済をするという判決まで出すことができます。

弁護士に相談する場合は、そこで、訴額が60万円にとどまるものでも、簡易裁判所の通常の訴訟手続が良いか、小額訴訟手続が良いかというところは、あるいは相手方の属性なども見ながら専門家として、適切な助言をし、手続の選択をするように支援することを裁判所は期待しているところだろうと思います。
本人訴訟の場合には、実際には、担当書記官が事前準備をしっかりと行うわけですが、それは、その訴訟をどう円滑に、一期日審理で終了させることができるかという視点で必要なものです。