滞納対策の実務 目次 > 【前頁】 11. 相続財産管理人選任手続 > 12. 不在者財産管理人選任手続 > 【次頁】 13. 受託責任を担保するしくみ

12. 不在者財産管理人選任手続

1. 不在者からの滞納債権回収の手続き

  不在者とは、住所又は居所を去って、容易に帰ってくる見込みのない人をいいます。(民法25条1項) 生きている場合だけではなく、亡くなっている可能性がある場合も含みます。
また、この手続きは、 不在者の利益を保護するだけではなく、利害関係がある人の利益や国民の経済上の利益を保護するためにあります。

2. 手続の流れ

1.申立てをする人

利害関係がある人、又は、検察官です。

2.申立てをする裁判所

不在者の住所地の家庭裁判所(支部・出張所)です。

3.どんな人が財産管理人に選任されるか

不在者との関係や利害関係の有無などを考慮して、不在者の財産を管理するのに最も適任と認められる人を裁判所が選任します。 場合によっては、専門職(弁護士・司法書士等)が選ばれることがあります。

 13.受託責任を担保するしくみ (利益相反行為の具体例)

4. 申立てに必要な費用

○収入印紙800円分 ( 平成27年10月現在の金額です。以下同様 )
○連絡用の郵便切手460円分
  [ 82円×5枚、10円×5枚 ]
○審理中に官報公告料3670円を納付します。
※そのほかに財産管理人報酬相当額の納付が必要になる場合があります。

5. 申立てに必要な書類

○申立書1通
○下記の戸籍謄本各1通(同じ戸籍に記載ある方の場合は1通で良い)
 申立てをする人のもの(親族からの申立ての場合)
 不在者のもの
 財産管理人候補者の住民票(又は戸籍附表)
○不在者の戸籍附表1通
○不在の事実を裏付ける資料(例えば不在者あて返戻郵便物、捜索願受理証明書など)
○財産目録、財産を裏付ける資料
○利害関係を証する資料
※その他、裁判所が書類の提出をお願いする場合もあります。

5. 裁判所の審理

家庭裁判所は、申立書や所在不明となった事実を裏付ける資料を確認した上で、 申立人から事情を聞いたり、不在者の親族に照会したりします。

6. 財産管理人が選任された後の手続き

財産管理人は不在者のために、財産を受理し、財産目録を作り、家庭裁判所に報告します。
財産管理人が選任されて2ケ月程度までに、不在者の財産を調査して財産目録や管理報告書を作成し、 家庭裁判所に提出します。

財産管理人は、不在者の財産と財産管理人の財産を区別して管理しなければなりません。
家庭裁判所は財産管理人に対し、定期的に不在者の財産状況の報告を求めます。

7. 不在者の財産を処分する場合

財産管理人は民法103条に定められた権限を持っていますが、それらは主に財産を保存することに限定されています。

財産管理人が、不在者に代わって遺産分割協議をしたり、不在者の財産を処分するときには、 それらの行為は財産管理人の権限を越えていますので、裁判所に対して「権限外行為許可」という手続きを行い、 裁判所の許可が必要になります。

8. 財産管理人の報酬

財産管理人の報酬は不在者の財産から支払われますが自由に支払を受けることはできません。 家庭裁判所に対して報酬付与を申し立てて、支払うことが認められた場合に、認められた金額を受け取ることになります。

9. 職務が終了するとき

財産管理人の職務は不在者が現れたり、死亡したことが確認されるまで続きます。 不在者が現れた場合には、それまで本人に代わって管理していた財産を本人に引き継ぎます。 死亡していた場合には、不在者の相続人に財産を引き継ぎます。 これらの場合、又は、管理する財産が無くなったとき、職務の終了についてはいずれも家庭裁判所の審判を仰ぐことになります。