滞納対策の実務 目次 > 【前頁】 1. 管理組合の滞納督促 > 2. 管理組合の滞納督促 > 【次頁】 3. 滞納の原因と対策

2. 管理組合の滞納督促(理事の悩み〜自発性パラドックス)

管理組合の理事や理事長は、何を、どのように、どこまでするかを、経済的かつ優先度を考えて選択的に立案し、 総会に提案し、住民間の合意形成を纏め上げ、その結果の住民の総意として、具体的に行動していく流れの中で、やればやるほど、自分自身を苦しい立場に立たせてしまうという、パラドックス(逆説)の状況に陥いることがあります。 これを、自発性パラドックスと言います。

We are struggling with rising nonpayment of maintenance fees.

役員の悩みの種は尽きません。役員のなり手がいない、修繕計画、防災計画など、様々ですが、中でも管理費や修繕積立金の滞納問題は、深刻で、心が痛む悩ましい問題です。

(腹が立つこと!)
「対策は管理組合員の意識を高めること」と言われること。
訴訟経験どころか、管理組合運営の経験すらない者から言われたくない。 意識の高揚や啓蒙で滞納が解消できるなら苦労はない。 評論家気取りで、法律の条文や抽象的概念を振り回して何が解決するというのでしょうか?

 1) 自発性パラドックスの解決策

@ あきらめること。その上で、現実を把握し、合理的な解決手段を考え、当面の目標を設定し、一歩ずつ解決していく。
A 「制度化」を求める。社会的な問題を個人が抱え込まないように社会の制度として成り立たせる。滞納債権回収機構などの制度化を進めていく。
B 「孤立」を避け「支援者」を得る。問題を自分たちだけで抱え込まず、仲間の輪を広げる。行政やNPOなどの組織と協働する。

滞納債権回収機構などの制度化を進めていく、専門家との相談会や交流会などを行うなど、AとBについては、現在、私達マンションNPOの活動目標として進めています。

 2) 滞納管理費の回収を制度化する

バブル崩壊後、債権の取立てを専門とする債権管理回収会社(サービサー)の制度が創設されました。
平成10年(1998年)小渕内閣の第143回国会において,金融再生関連法案のいわゆる民間サービサー制度の創設を内容とする「債権管理回収業に関する特別措置法」が可決成立し,平成10年10月16日に公布、平成11年2月1日に施行されました。 社会的に問題が多かった債権取立て業務だけに、資本金5億円以上、弁護士の参加を義務付けなどの参入規制が厳しく、10年たってサービサーの営業を許可された株式会社は平成21年1月末日現在、115社しかありません。

但し、この債権管理回収会社は、大手金融機関や信販会社などの債権回収を目的としたもので、すでにこのリテーリング分野に乗り出した一部の弁護士事務所などを除けば、マンション管理費等の回収業務を行う会社はまだ一般的ではありません。

 3) 滞納督促する具体的な方法は?

A.実際には、相手の実状に応じた処置をとらなければならないのですが、一般的には、電話、文書(手紙)、訪問の3通りがあります。

1)電話督促は、連絡をした日時、会話内容等を正確に記録しておかないと、電話での督促は意味がないばかりか、後日、トラブルの原因にもなりかねません。

2)文書による督促は、配達証明付内容証明郵便によること。法律効果だけでなく、心理的効果もあります。

差出人を弁護士にするなどの手段を講じることも考えられます。
支払請求のための催告状は、債権および支払期限の確認と、その後の法律手続の予告などをその内容として作成されなければなりません。
また時効の中断といった法律上の効果を期待するものですから、証拠力があり、かつ確定日付となる内容証明郵便によることが必要です。

内容証明郵便は(1行20字×26行)にて3通作成し、封をしないで、郵便局に行き、内容証明、書留、配達証明の3種類の郵便の特殊取扱いを併用して、初めてその機能を完全に果たすことができます。

3)督促訪問では、「暴力団風の男が、いきなり金を払えと云ってきた」などと相手に口実を与えないよう、品格、マナー、言葉遣い、身なり等に注意し、きちんとていねいに訪問の趣旨を伝えることが必要です。
昔は「ひざづめ談判をする」と云った人情味あふれる交渉もありましたが、今は、督促訪問は形式的に行い、早めに法的手続きに移行するのが多いように思います。

 4) 滞納管理費等の督促を行うときの注意点

滞納管理費等の督促を管理会社、または、管理組合が行うときの注意点を挙げておきます。

これは、前記「債権管理回収業に関する特別措置法」において、この業者が行う督促業務の禁止事項を具体的に定めています。管理組合にとっても、参考になりますので、下記に挙げておきます。

業務従事者による威迫等の禁止(法第17条第1項関係)
 「威迫」とは,脅迫に至らない害悪の告知等により相手方に不安の念を生じさせることをいい,例えば,以下のようなことなどをいう。
 ○暴力的な態度をとること。
 ○大声を上げたり,乱暴な言葉を使ったりすること。
 ○多人数で債務者の自宅等に押し掛け,又は債務者等を債権回収会社に呼び出し,大勢で取り囲んで面談すること。

「私生活若しくは業務の平穏を害する言動」とは,社会通念上私生活や業務の平穏を害するに足りる言動をなすことをいい,例えば,以下のようなことなどをいう。
 ○正当な理由なく,午後9時から午前8時まで,その他不適当な時間帯に,電話で連絡し若しくは電報・ファクシミリ・電子メール等を送達し,又は訪問すること。
 ○反復又は継続して,電話で連絡し若しくは電報・ファクシミリ・電子メール等を送達し,又は訪問すること。
 ○債務者等につきまとうこと。
 ○張り紙,落書き,その他いかなる手段であるかを問わず,債務者等の借入に関する事実その他プライバシーに関する事項等をあからさまにすること。
 ○債務者等の意思に反してその勤務先を訪問すること。
 ○近隣者に対して,自らの来訪目的を明らかにした上,債務者等に電話をするように伝言を依頼すること。

 5) 債権回収のプロのノウハウ

 債権回収のノウハウの中には、倒産予知のための日常の与信管理、要注意先の保全バランス、回収原資の調査から債権回収の準備、任意回収、代位弁済、強制回収、抵当権の実行、その他の担保権の実行など、多岐に亘りますが、滞納督促にあたっては、どのような方法で実施しているかを、少しだけ挙げておきます。

債権回収業務における督促のノウハウから
督促は、「口頭から文書へ」、内容は「ソフトからハードへ」をモットーに行います。
交渉経過は、克明に記録しておき、督促の心構えとしては、
1)相手のいうことは容易に信じない。
2)念には念を入れる。
3)手続きは早くとる。
4)常識的に有り得ないことは信じない。
5)裏付け調査をして真偽を確かめる。
6)慌てないこと、焦らないこと。
7)うまい話しには気を付ける。
8)相手方は、最終的には逃亡・行方不明になることを前提に、請求できるものは請求する。
9)担保徴求・弁済は法的整理で否認されたら、その時点で考える。

(管理組合としてそのまま適用できるとは思いませんが、プロの心構えとして参考までに)

 6) 債務名義とは

金銭債権を、最終的に回収するためには、債務者の財産に対して、強制執行を行わなければなりません。
しかし、強制執行を行うためには、民事執行法22条に規定されている「債務名義」がなければ執行できません。そこで、債務名義(確定判決)を得て、強制執行をしようと思っても、相当の時間と労力がかかります。

このため、民事保全法(平成元年12月22日法律第91号、平成3年1月1日施行)で、「債務名義」のない債権者でも、債権者の申し立てにより、債務者が財産を処分することを禁止する命令を発することができるようになりました。(民事保全法20条1項)

 7) 時効とは

管理費等の債権が回収できないまま一定期間経過し,債務者が時効の援用を主張すると、法律上取立を行うことが出来なくなります。これを「時効による消滅」といい、一定の期間を消滅時効期間といいます。

債権者の側には時効が完成することを防ぐ方法があります。これを「時効中断事由」といい、この処置を債権者が行いますと、その日までの期間は計算されないで、改めてその日の翌日から時効が進むことになります。従って時効にかかりそうなときは、必ず時効の中断の処置をとらなければなりません。

Q.時効は何年ですか?
A.5年説と10年説があり、判例も分れていましたが,平成16年4月23日の最高裁判決は5年としました。

10年説:民法167条で、一般的に「債権は10年間之を行わさるに因りて消滅す」と定めており、通常の貸金返還請求権などは、10年の時効に係ることから、管理費の滞納にも10年を適用するというもので、管理費は会計年度ごとに総会決議によって決定・賦課されるものであるから、定期金債権ではないことを根拠としている。

5年説:民法169条では、定期給付債権(毎年或いは毎月幾ら払うと決めている債権=地代家賃のようなもの)についての時効は5年と定めている。管理費支払義務は建物の区分所有者たる地位に基いて発生するものであり、管理費請求権は1年以内の周期で定期に金銭を給付させることを目的とする債権であることを根拠とする定期給付債権であるとしている。

最高裁判決の要旨(最判平成16.4.23)
  「管理費及び修繕積立金は管理規約の決定に基いて、区分所有者に対して発生するものであり、その具体的な額は総会の決議によって確定し、月ごとに所定の方法で支払われるものである。従って、基本権たる定期金債権から発生する支分権であり、民法169条に規定する債権(定期給付債権)にあたる。」

この最高裁判決は、管理費のみならず、修繕積立金までも定期給付債権としていることについて賛否両論がある(例えば、修繕費が不足して一時金を徴収決議した場合、当然、定期給付債権に当らず、時効期間は10年になるなどの矛盾がある)が、実務上は今後、管理費時効は5年で統一されていくことになります。

競売実務においてはマンションの時価よりも滞納管理費のほうが多額に上るケースがあり、最低売却価格を決定することが出来ず、競売が機能しないという問題が発生しており、法8条によって特定承継人(買受人)が承継すべき滞納管理費を5年に限定すれば、競売実行が可能とされるケースがかなり存在するという背景もあるようです。

(1) 「時効の中断」
原告は、消滅時効の抗弁に対し、請求等の時効中断事由(民法147条以下)を再抗弁として主張できる。
(1.1)原告は、被告に対し、本件債権の消滅時効満了前に代金支払の催告をし、
(1.2)(1.1)の催告から6ケ月以内に本件訴えを提起した場合。(下記、「時効を中断するには」参照)

(2) 「時効援用権の喪失」
原告は、被告が時効完成前に時効の利益を放棄する意思表示をしていたときは、それを再抗弁として主張できる。
(2.1)被告が、原告に対し、本件債権の消滅時効完成後、本件管理費の支払いの猶予を申し入れた場合。

(判例) 債務者が消滅時効完成後に債権者に対し、債務の承認をした場合は、時効完成の事実を知らなかったときでも、信義則上、時効の援用権を喪失する。(最判昭41・4・20)

この項目は後述する「時効の効果と援用」でもう一度、わかりやすく説明します。

Q.時効を中断するには?

A.時効の中断には次の3つの方法があります。
1)請求
2)差押、仮差押、仮処分
3)債務承認

請求には、裁判上の請求(訴訟、支払督促、和解、調停、破産手続等)と裁判外の請求(催告=内容証明郵便による請求)がありますが、催告(=内容証明郵便による請求)は、6ヶ月間時効の進行が停止されるだけですので、6ヶ月以内に、債務承認、支払督促、和解、調停、など、裁判上の請求をしなければ、時効中断の効果はありません。

差押、仮差押、仮処分は、裁判所に申請します。
相手が支払う意志を示し、支払督促に応じて、「分割支払い計画書」などの形式で文書を取り付けることを債務承認といい、相手方の時効の援用を防止することができます。
相手が滞納金の一部を支払ったとき、受け取るとき側では、「但し、滞納金の内金として」と、明確に記入した領収書などを発行した上で受領することが必要です。これも承認として、時効の中断になります。

以上により時効が中断したときは、中断の事由がやんだときから、また新たに時効が進行します。

時効の効果と時効の援用
 時効の効果は起算日にさかのぼり(民144)、起算日に債権が消滅していたものとして扱われます。
但し、この時効は当然に発生するものではなく、当事者が援用(時効の利益を受ける者による時効の利益を受けようとする意思表示)しなければ裁判所も時効について判断してはいけないことになっています。(民145)
時効制度を利用する、しないは当事者に委ねられています。
特定承継人も時効の利益を受ける者に該当しますので、債務の消滅時効を援用できます。

時効の利益の放棄
時効の利益を、時効完成前に放棄することは認められませんが(民146)、時効完成後に放棄することは認められます。
時効完成後に債務の一部を弁済したり、弁済の猶予を求めた場合には、たとえ時効が完成していることを知らずに債務者が弁済の猶予を求めた場合であっても、信義則上、その後に時効を援用することは許されません。(最高裁判決昭41.4.20 民集20-4-702))
したがって、時効が完成している債権であっても、諦めずに請求することは必要なのです。
時効完成後といえども、債務者から「債務の確認並びに弁済契約書」に類する書類を取得すること、即ち(民147条第三号の「承認」)にあたる時効中断手続の道が残されている以上、時効完成後の滞納金といえども免除できません。

管理組合会計の処理としては、法的に債務が消滅するまでは時効完成後であっても全額が未収入金となります。
会計処理については、「滞納債権の圧縮と放棄の手続」を参照下さい。

2  管理会社に委託している督促業務

Q.管理会社の督促業務の責任範囲は?
A.管理委託契約書に定めているのが普通で、その範囲で責任を負います。

管理委託契約書に定める管理会社の督促業務に関する規定は、通常下記の事項です。
1)滞納期間別の督促方法
2)督促を続ける期間
3)督促を続けても尚、回収出来ない場合の管理会社としての免責事項

しかし、内容が必ずしも明確でなく、誤解を招いている事例も少なくありません。
これらのトラブルを回避するため、管理委託契約書を改訂する動きがあります。

マンションNPOが相談に乗り、管理会社が行う範囲と、その後の管理組合が行う範囲を、管理会社との覚書及び管理規約(督促に関する細則)として手順を定めた管理組合があります。 「規則があればすべて解決するというものではありませんが、対策にあたる管理組合の「指針」であり、”困ったときのよりどころ”としています。」とのことです。

Q.管理会社の行う範囲と、その後の管理組合の範囲は?

管理会社が督促を行っても滞納管理費等の回収が不可能の場合、管理組合がみずから督促を行うことになります。 通常、管理会社が行う督促業務の範囲は下記までとなっています。

1) 電話督促
2) 訪問督促
3) 通常文書による督促

次いで管理組合がみずから督促業務を行うことになります。
(尚、下記の数字は、順番を示すものではなく、督促相手の事情により、適宜選択する項目です)

4) 内容証明による督促
5) 配当要求
6) 先取特権の実行
7) 即決和解(訴え提起前の和解)
8) 民事調停
9) 督促手続
10) 小額訴訟
11) 通常訴訟

この中で、(9)督促手続と (10)小額訴訟は、少ない費用で法的な債務名義を獲得できる方法です。
訴訟手続は、管理者である組合の理事長本人が弁護士に依頼しないで訴えを提起する本人訴訟と、弁護士を代理人として立てる場合とがあり、代理人を依頼する場合には、簡易裁判所の場合を除き、弁護士でなければできません。簡易裁判所の訴訟代理人には弁護士以外では代理権付与の前提となる100時間研修を受けて法務大臣の認定を受けた司法書士(認定司法書士)も代理人になることができます。

督促手続と小額訴訟を申請するのは簡易裁判所ですから、弁護士に依頼しなくても、管理組合の理事長が直接、裁判所に行き、申請することができます。弁護士や前記の法務大臣の認可を受けた司法書士に依頼する場合には、手続き費用のほかに、着手金、報酬がかかります。
管理者である組合の理事長本人が弁護士に依頼しないで訴えを提起する本人訴訟も、民事訴訟手続きの要点さえ理解すれば、決して難しいことではありません。

督促に関する管理会社の責任範囲と委託契約書
  マンションの管理の適正化の推進に関する法律の成立により、管理会社との委託契約に関する内容が、 同法成立以前の(旧)建設省発行の中高層共同住宅標準管理規約及び、住宅宅地審議会が作成した標準管理委託契約書との整合性がとれなくなっており、 それについて、平成14年7月、(社)高層住宅管理業協会の関係機関の区分所有管理士会が作成した委託契約書と、全国マンション管理組合連合会が作成した委託契約書がそれぞれの立場で提案されました。

滞納督促に対する考え方の違いについて、意図するところを参考に見て下さい。

「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」(平成12年12月8日公布、平成13年8月1日施行)
「中高層共同住宅標準管理規約」平成9年2月版
「標準管理委託契約書」(昭和57年1月28日住宅宅地審議会答申、昭和58年9月20日一部改訂)

委託契約書に見る管理会社の責任範囲

1. 「住宅宅地審議会」版 標準管理委託契約書
(未収金の取扱い)
第10条 乙(管理会社)は、第3条第1号の業務のうち、出納業務を行う場合において、甲(管理組合)の組合員に対し未収納金の督促を行っても、なお収納することができないときは、乙はその責めを免れるものとし、その後の請求は甲が行うものとする。

2.前項に関わらず、甲は、当該未収納金に係る取立てを、別途乙に委託することができるものとする。

2. 「(社)高層住宅管理業協会」版 標準管理委託契約書
(滞納者に対する督促)
第9条 乙(管理会社)は、第1条第1号の委託業務のうち、出納業務を行う場合において、甲(管理組合)の組合員に対し別表第1の(2)のAの二及び三の督促を行ってもなお当該組合員が支払わないときは、乙の業務は終了する。その後の督促は甲が行うものとする。

2.前項に関わらず、甲は、乙に対し、当該滞納者の督促に係る助言等を求めることができる。

(社)高層住宅管理業協会の解説

管理費等滞納者に対する督促は管理組合の業務であり、徴収義務は管理者たる管理組合理事長にあります。当該業務に関するマンション管理業者の役割は管理委託契約書に規定する督促を行うことであり、督促の結果滞納者が支払わなくても、マンション管理業者は、善管注意義務を果たしたものと解されます。

第2項は、管理組合の責任で行う督促に関し、管理組合はマンション管理業者に対し、小額訴訟、督促手続等に関する助言等を求めることが出来ることを規定したものです。
(以上は、(社)高層住宅管理業協会の発表内容です)

3. 「全国マンション管理組合連合会」版 標準管理委託契約書

(管理費等の処理)
第9条 甲(管理組合)の組合員が負担する管理費等の支払方法は、各組合員が○○銀行○○支店に口座を設け毎月末日までに翌月分をその口座から甲の一般会計口座に自動振替する方法による

2. 乙は、毎月○日までに、翌月分の「管理費等戸別振替額請求通知書」を作成し、甲(会計担当理事)に提出するとともに、○○銀行へ送付する。

3. 乙は、毎月10日までに、第2項の「管理費等戸別振替額請求通知書」のうち、積立金口座、駐車料等口座等に繰り入れるべきものと定められた金額を、管理費会計口座から該当口座へ移し替える。

4.乙は、○○銀行から「振替結果明細報告書」が送付された場合、ただちに、振替え不能者に対して、別表2「4未収納金の処理」に定める督促業務を日程に従って実施し、その督促状況を個別記録簿に記入する。

5.乙は、前項の滞納者のうち、内容証明郵便により督促してもなお支払いが無い者に関しては、毎月取りまとめ、個別記録簿を添付して甲(会計担当理事)に報告する。

6.支払督促、小額訴訟、訴訟、先取特権の行使等の法的措置は、甲が主体となって実施するものであるが、乙は、申立書、訴状等の作成、提出等の補助事務を行う。

7.乙は、未収納金の回収について、別表第2会計管理業務「「4未収納金の処理」に従い履行するものとするが、支払期限を2年以上経過した場合は、当該未収納金の2分の1を買い取らなければならない。

8.長期滞納者(納期限を90日以上経過しても支払いのない者をいう)に対して、乙は「長期滞納管理簿」による管理を行い、1年に1回以上は督促状を送付しなければならない。

9.長期滞納の未収納金が時効となった場合においても、長期滞納者が時効の援用を行うまでは督促を行うものとする。

10.区分所有権が競売等により承継が行われたときは、当該承継人に対しても回収に努めるものとする。

別表2「会計管理業務」
(4 未収納金の処理)
未収納金については、次により処理を行い、その処理状況を管理費等督促個別管理簿へ記録する。
(1)振替不能・・・・銀行から報告書受領後、電話により振替不能者に支払依頼を行う。
(2)納期20日後・・電話督促及び封書による納入督促を行う。
(3)納期40日後・・訪問督促(敷地・共用部分等の利用停止、法的措置の予告を含む)
(4)納期60日後・・配達証明付内容証明郵便を送付
(5)納期80日後・・駐車場使用契約の解除
(6)納期90日後・・支払督促送付
(7)納期120日後・弁護士等の訴訟
(注1)前各項実施に伴う送料等は、甲の負担とする。
(注2)納期90日後の「支払督促」は、管理組合が主体となって行い、管理会社は、申立書の作成、提出その他の補助事務を行う。
(注3)納期120日後の「法的措置」は、管理組合が実施し、管理会社は、必要な資料の作成補助を行う。

(マンションNPOとしての主張)

 すべての商行為、例えば商品を購入するときには各商品の値段、工事契約するときには見積内訳明細を見ます。
ところが、管理会社との委託契約の中では、運営管理業務、会計管理業務などの各項目別に、どこまでやったら幾らと決めている詳細なサービスメニュー(内訳明細)を提示しているところは少なく、包括的な内容で契約した結果、管理組合は何でもやってくれると期待し、管理会社はそこまでの義務はないと云い、トラブルになります。

1.価格情報開示が不充分な業界の問題点

 

 労働集約型産業の管理業界市場の根本的な欠陥は、価格概念の設定が未熟で、価格情報開示が不充分なことにあります。
 滞納督促の実務では滞納者、未払者の属性、事情、内容、滞納期間、督促に係る事務費、人件費などの費用は一定ではありませんから、管理会社としては日常管理の範囲で履行できる最低限の業務範囲に限定し、それを越えて管理会社が督促業務に係わる場合には別料金による実費負担を求める考えが合理的だろうと思います。

 基本となる内訳明細をつけた標準見積書を作成し、業者にはこの内訳明細を提示させ、その中で、個々の管理組合が自分のマンションの実情に合わせ、合理的、選択的に判断できるようにすべきではないでしょうか。
過大に管理会社に期待しても、それによって高く付いた経費は、消費者(管理組合)が負担することになるのですから。

2.「全管連」版の問題点

「全国マンション管理組合連合会」版では、7項の規定(当該未収納金の2分の1を管理会社に買い取らせる制度)のように、意図や法的根拠が不明で、実施した場合の権利関係の混乱を考えますと首をかしげざるを得ません。

管理委託契約は諾成、有償、双務契約、すなわち、双方合意の上、義務に見合う対価を支払う双務契約ですから、義務だけを規定しても意味がありません。企業がリスクのある業務を受託する場合、リスクヘッジの対価費用は、当該顧客に負担して頂くのは公平性の観点から当然なことです。
結果として、「2分の1を管理会社が買い取る」という名目のもとに、実質は「全額を管理組合に支出していただく」ことになります。 更に、上記の措置が行われた後で、法的に消滅していない滞納債権は、どこに帰属するのでしょうか? この方法で滞納債権を消滅させたら、区分所有法8条の裏をかいた巧妙な資産隠しができます。5年の時効を繰り上げて、2年で債権をチャラにできます。管理会社はこの滞納債権を「買い取った」訳ですから、債権市場に転売できます。整理屋が買い取って地上げしてくれます。管理会社から譲渡を受けた民間サービサーも入ってきます。民間サービサーは法務大臣の認可を受けています。

国土交通省のパブリックコメントにも、「マンション標準管理委託契約書」第10条(管理費等滞納者に対する督促)の中に「免責の文言は削除し「督促を行っても、なお当該組合員が支払わないときは、甲及び乙は、その回収方法を協議する」に修正し、さらに「支払期限を2年以上経過した場合は、乙は、当該滞納管理費等の2分の1を買い取らなければならない」を追加すべきである」との意見があり、その理由として、「管理会社に委託している業務が中途で責任が免れるのは無責任である。また、管理会社の滞納督促の努力の程度は管理組合では知り得ないので、結果責任として双方折半とすることが適切である」との意見がありました。

 それらの意見に対し国土交通省は、「管理費の債権者は本来、管理組合であり、管理会社はその督促業務を受託しているのみであるから、原案で、特段支障ないものと思われる。」と回答し、標準管理委託契約書には採用しませんでした。

標準管理規約及び標準管理委託契約書は区分所有法の定めを前提としながら、それとは異なる次元で、行政庁(旧建設省)が住宅宅地審議会の答申に基づいて採用したもので、行政はこれらに「業界を通じて奨励する規範体系」としての性格をもたせることを目的としています。区分所有法には「管理組合」「総会」「理事会」「理事長」などの語は出てきません。これらの語は標準管理規約や標準管理委託契約書の中で定義されています。標準管理規約自体には法的強制力もありませんし、法の欠缺(けんけつ)を補う拘束力のある規範でもありません。だから、裁判所が判決にこれらの語を使用する際はその意味を「法の欠缺を補うために」判決文の中で新たに定義しなおしているのが現実です。

実際のマンション管理の運営においては、このような区分所有法とは次元を異にする標準管理規約のような規範体系が重要な意味を有していることは否定できませんが、管理規約は生活に密着した自律的内部規範ですから現実の管理規約を見ると札幌と福岡では地域特性を反映して相当の違いがあります。首都圏と地方都市でも異なります。中央集権型の標準管理規約には限界があります。その限界と節度を無視した内容を盛り込んでも規範性を弱める作用にしか働きません。

3  滞納管理費等で提訴する前に

裁判を起こす前に為すべきこと。
できるだけ、全ての資料を持参し、弁護士又は認定司法書士(簡易裁判所事件)の相談を受けてみて下さい。弁護士事務所でも、裁判を提起する前に、最大限交渉の努力をして最後の手段として、裁判を起こすのが基本です。