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1.2 会計と説明責任

すべての会計の原点、
  それは正しい情報開示を行い、透明性を確保し、説明責任を果たせということです。

なぜ、会計に説明責任が求められるのでしょうか?

説明責任とは、総会において口頭で説明することを意味するものではなく、
不完全な財務報告書をもとに口頭で説明したとしても、説明責任を果たしたことにはなりません。
説明すべき利害関係者は総会出席者だけではないからです。

また、管理者(理事長)には区分所有者を含む利害関係者に対して説明義務がありますが、
総会において質問者が納得するまで説明し続ける義務はありません。
質問者が納得しなくても、客観的に合理的と認められる程度に説明すれば、
質問に対する責任は果たしたことになります。 但し、下記の前提条件が必要です。

説明責任を果たすための必要かつ充分な前提条件とは、
「財務報告書自体に説明責任の4つの要素が盛り込まれていなければならない。」ということです。
   (4つの要素の詳細は、後段の「1.2.5 説明責任(Accountability)の4つの要素」で)

財務報告書は一般に、記録と慣習と判断の総合的表現と言われているように、
作成する管理組合自身の、或は委託している管理会社の会計実務に、
会計慣行と会計判断が複合されて作成されています。

従って、財務報告書には管理者の主観的な判断がある程度反映するのは避けられません。

そのため、これらの財務報告書に客観性と社会的信頼性を与えるには、会計上の拠るべき適正な指針(GAAP)が必要になってきます。

ここで、述べる説明責任に関する4つの要素に関しては、営利を目的とする企業会計の概念ではなく、非営利の管理組合会計との共通性から、公会計における米国財務会計基準審議会(FASB)の概念報告書において体系化された概念をもとにしています。FASBの概念報告書は、我が国の公益法人会計基準の改正に大きな影響を与えています。

(参考) (FASB)の概念報告書に関しては、会計検査院の研究誌「「会計検査研究」第15号(1997.3)に掲載された瓦田 太賀四(神戸商科大学商経学部教授)氏の論文「公会計責任と理解可能性」に詳しく説明されています。)

会計(Accounting)と説明責任(Accountability)の成り立ちには400年以上もの長い歴史があります。

本文ではまず、会計とは何かという素朴な疑問から始め,会計と説明責任の誕生、そして説明責任を果たすための具体的な手法について述べています。

1.2.1 会計( Accounting )の誕生

 取引を計算・記録する会計技術そのものは貨幣経済が発達した14世紀に会計の父と言われるルカ.パチオリによって基礎が築かれました。

 ルカ.パチオリ ( Luca Pacioli, 1445-1514  Father of Accounting: ルネッサンス初頭のイタリアの著名な数学者で、世界最初の印刷された複式簿記の著者) が1494年に最初の「教科書」を書いて以来、基本的な部分では会計はあまり変化していません。

当時の人的取引を基礎とする会計技術は、今でも貸方(credit)、借方(debit)などの用語として残っています。クレジット(貸方)カードとデビット(借方)カードの由来です。
 会計の初学者を悩ませる仕訳の問題、例えば、一般常識とは逆に「貸付金」が「借方」に記録され、「借入金」が「貸方」に記録されるのはなぜかといった疑問も、この人的勘定から始まった勘定理論の歴史的展開、貸借平均の原理、中世における負数(マイナス)忌避の考え方など、今日まで連綿として引き継がれていることから由来するものです。

仕 訳 帳

年月日 借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額 摘要
2014/4/1貸付金100,000現金100,000○○への短期貸付
2014/4/5現金100,000借入金100,000○○から短期借入

 この理由は簿記の成り立ちに関係しています。14世紀、出資者からお金を集めて、船を仕立て、航海に出して、 貿易で利益をあげて帰ってくるときの一連の取引記帳がブックキーピング(bookkeeping)即ち簿記でした。

出資者、つまりお金を貸す人、貸方(伊 Credito,英語 Credit クレジット ,独 Kredit クレディーツ 本来は返してもらう権利がある債権の意味)は右の陸地にいます。 左側には借りたお金をもって出港していく船があります。左側つまり借方(伊 Debito,英語Debit デビット、独Debet ディベッツ 本来は返す義務のある債務の意味)です。 右の貸方(陸の出資者)にあった現金は左の借方(船)に貸付金となって移動します。逆に、借入金の場合は船に積んであった現金が右の陸地にいる出資者に移動したことの記帳です。

なんとなくイメージがつかめたでしょうか。(注:現在の簿記の学習では、借方、貸方は今日では本来の意味はないのだから、字句にこだわるな, 単なる符号と思え、としてこのような説明はしていません。念のため)

ちなみにルカ・パチオリがいたイタリア半島の東海岸では、右が陸地で、船の出ていく側が左になります。 陸地右側にいる貸方から資金を借りて、左側から船に積んで出て行く。 従って、右側に負債・資本勘定(負債も資本も、記帳者の立場で見たら、どちらも陸側に返さなくてはいけない義務がある)、左側に商品勘定等の資産がおかれたといわれています。
(左側=借方のことを私は,ヒダリ、カリと覚えています。「リ」が一致しているので・・・)

ちなみに、日本語でクレジットカードは後から請求がくる後払いのカードで、デビットカードは事前に入金(チャージ)しておくか、または原則即時引き落としのカードです。
カードを発行している金融機関からみて、お金を一時、貸すほうがクレジット(貸方)カード。先にお金を預かっていて、いずれ返すのがデビット(借方)カード・・・・(消費者から見たら逆ですが)

管理組合会計の仕訳の例

仕 訳 帳

年月日 借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額 摘要
2014/4/1預金100,000管理費100,000管理費入金・○号室○月分
2014/4/5管理業務費100,000預金100,000○管理会社へ支払・委託管理費○月分
2014/4/5事務経費105預金105振込手数料・委託管理費○月分

簿記の基本はすべての取引を時系列で上から順に仕訳帳に記入していくことから始まります。

1段目は右側の貸方の区分所有者から、管理費が銀行の管理組合口座に振込みされたとき、預金通帳を見て仕訳帳に記入します。 ・・・管理費が預金に入ってきました。
2段目は,管理会社への前月分の委託管理費を通帳から相手の銀行口座に振り込みしたときの仕訳帳への記入例です。 ・・・預金から、委託管理費(この組合では勘定科目を管理業務費としている)の支払に出て行きました。
同時に振込み手数料も預金から引き落とされたので、その分も記入しています。
このように勘定科目の異なる一取引ごとに分けて記帳します。

次いで、この仕訳帳から勘定科目別のそれぞれの元帳に転記します。
元帳というのは各勘定科目ごとに当該科目の取引だけを仕訳帳からそれぞれ抜き出したものです。
上記の例ではすべてが預金勘定に関係しているのでそのまま、「預金元帳」に転記します。
期末決算で、「収支計算書」に元帳の残高が各勘定科目ごとに集計されて表示されます。

仕訳の詳細は、第5章 管理組合会計の実務 
  5.2 預金通帳からの転記と仕訳」で出てきます。

1.2.2 説明責任(Accountability)の誕生

 その後、16世紀の英国で、貴族が所有する荘園の維持管理と経営を執事に行わせ、経営を委託された執事は雇い主の財産状態・経営成績に関する情報を会計(Accounting)を用いて経営の内容を説明することにより説明責任(Accountability)を果たすという制度が広まります。

 執事(Steward)の責任、すなわちスチュワードシップ(Stewardship)とは、他人から任された仕事を、その他人のためにする職または資格を総括的にあらわす言葉で、会計では、スチュワードシップを「受託責任」と呼びます。

スチュワード(Steward)という言葉は、中世16世紀頃の英国の執事(Steward)からきています。
この執事(スチュワード Steward)は、英国のマナーハウス(manor house=館、領主の邸宅)などに仕えて、 メイド、料理人、掃除係などの使用人を監督し、問題があればその解決にあたり、更に財産の管理も行う会計係も務め、領主に対しては秘書的な役割も果たす、実に重大な職務を指した言葉です。

執事の格
執事は仕事の格によって上位からチェンバレン(chamberlain)、スチュワード(Steward)、バトラー(butler)に分かれています。 チェンバレン(chamberlain)は貴族に直接仕える執事で男性に限られます。 バトラーはスチュワードより下位の職務です。

古代の執事(stigweard)の仕事
古代の西ヨーロッパでは、家畜が大切な財産で、封建時代にはその管理が非常に重要な責務であり、この重要な役職に最初に与えられた古代の英語がスティッグワード「stigweard」で、 stigは「囲いの中の動物、転じて豚小屋」を意味し、weardは「見張り・番人」で、つまりスティッグワード=「豚小屋の番人」を意味していました。
やがて時代が変わり、スチュワード(steward) は管理人、世話係、執事などの役職を指すようになり、資格や役職を示す〜shipという言葉を付け加えて、「他人から任された仕事を責任を持って行う専門的職能」という意味で使われるようになり、会計では、これを「受託責任」といいます。

受託責任 ( Stewardship )

 「受託責任 ( Stewardship )」は、他人から財貨の委託を受けた者が、与えられた「裁量権 ( Authority )」の範囲内で実行する責任、すなわち「業務実行責任 ( Responsibility )」のことであり、「結果報告責任 ( Accountability ) 」を伴います。 委託された業務が終了したとき、あるいは委託者から要求されたときには、いつでもその成果や業務遂行状況を説明しなければならない。

これが連綿として続いている会計上の一つの理念、アカウンタビリティ ( accountability ) の根源の思想になっています。

「会計の原点とは、正しい会計処理(経済計算)をすることと、正しい情報開示を行うことである。つまり透明性を確保し、説明責任を果たせということである。」という普遍的な原則は、すでに16世紀から連綿として続いています。

1.2.3 株式会社の誕生

 この頃、オランダの東インド会社(1602年3月20日にオランダで設立され、世界初の株式会社といわれる)を発端とする株式会社制度の導入で会計と説明責任の制度は貴族が出資者(株主)に、執事が経営者に代わって、世界中の企業で用いられるようになりました。 その後、18世紀のイギリス産業革命を契機に原価計算に関する研究が中心となって、会計学はめざましい発展をしていき,会計の定義も、より具体的になっていきます。

会計の定義として、現在、最も代表的なものは、1966年、アメリカ会計学会(AAA: American Accounting Association)の『基礎的会計理論に関する報告書』(ASOBAT: A Statement of Basic Accounting Theory)において示された次のものです。

 「会計とは、情報利用者が、事情に精通した上で、判断や意思決定を行うことができるように、経済的な情報を識別し、測定し、伝達するプロセスである。」

今日の会計は情報革命のリーダーであり、会計への理解なくして21世紀の問題局面が認知できなくなるでしょう。

下記は米国における会計初学者向けのテキストの内容です。

1.2.4 米国の初学者向け教科書の「会計の定義」

会計理論(ACCOUNTING THEORY) 第1章 会計の基本(Basic Accounting)

 会計とは情報が内部の利害関係者(所有者と管理者)と外部の利害関係者(投資家、供給者、および債権者) の両方によって使用され、金融面での意思決定ができるように企業の経済取引を下記に示す規則に従って系統的に記録することです。
一般に、企業情報は2つの財務諸表、貸借対照表と損益計算書にまとめられます。
貸借対照表は決算時におけるその企業の資金面での立ち位置、もしくは企業の健康状態を要約したもので、 静的な財政状態を示しています。
損益計算書は、事業期間における純資産の変化、すなわち、動的な情報を提供しています。

Accounting is a systematic method (it follows rules) of recording the economic transactions of a business so that the information can be used by both insiders (owners and managers) and outsiders (investors, suppliers and creditors) to make financial decisions.
Business information is generally summarized in two statements, the Balance Sheet and the Income Statement.
The Balance Sheet summarizes the financial position or company’s wealth at a given point in time, providing a static picture.
The Income Statement shows the changes in net worth (over a given period) that result from conducting the business or how much the business has earned, thus providing a dynamic picture.

1.2.5 説明責任(Accountability)の4つの要素

会計の原点、それは正しい情報開示を行い、透明性を確保し、説明責任を果たせということです。

カウンティング(counting)とはカウントつまり(資産を)勘定することですが、「会計」を意味するアカウンティング(Accounting)とは、説明という意味になります。
つまり「会計とは財務諸表を用いて説明責任を果たすこと」という意味になります。 そのために、FASB概念報告書では財務報告書において説明責任を果たすための前提条件が示されています。

財務報告書の前提条件
「財務報告書自体に説明責任の4つの要素が盛り込まれていなければならない。」

FASB概念報告書における説明責任(Accountability)の4つの要素

(1)理解可能性(Understandability)
   会計に関して専門的知識を有しない者にも理解できる内容であること
(2)目的適合性(Relevance)
   利用者の目的に適っていること
(3)信頼性(Reliability)
   信用できる根拠に基づいていること
(4)比較可能性(Comparability)
   時系列および他の同種組織間における特定業務のコストや収入の比較を利用者が行うことができること

1.2.6 説明責任の4要素 (1) 理解可能性(Understandability)

 公会計の財務報告書にも情報の意思決定有用性(Decision Usefulness)アプローチを採用する事は世界的な流れになっていますが, 情報利用者の予備知識に基づいた理解可能性を前提としなければ,情報の有用性を確保することは不可能です。

では会計の専門知識をもたない一般の情報利用者に対して,いかなる情報が適切なのでしょうか。

(1)グラフィックの手法を用いたポピュラー・レポートの重要性

 専門知識の有無を問わず,可能な限り多くの人々に情報を伝達する事を目的に、グラフィックの手法を用い,図表を多用し、 視覚によって情報を伝達しようとする狙いで作成されている報告書をポピュラー・レポート(Popular Report)と呼びます。

政府が発表する「白書」(行政、経済、国民生活、教育などの各分野に関する公式報告書)もそうですし、民間上場企業の 「株主総会招集ご通知」にも、財務諸表4表(「貸借対照表」「損益計算書」「株主資本等変動計算書」「キャッシュフロー計算書」 そして「注記」等)の数倍のページ数を用いた事業報告がありますが、これらの多くはポピュラー・レポートの手法を使っています。

ポピュラー・レポートは圧縮された情報としての要約データで構成されますが、財務報告書に関して言えば、要約データに関しては, 会計基準上のいかなる規定も存在しないために,多様な報告形態が見受けられます。

一貫して基礎にあるのは一般市民レベルの基礎知識を前提とした理解可能性が基準となっています。

(2)詳細な財務報告の重要性

 しかしながら,ポピュラー・レポートのみによって,財務報告の目的が達成されるものではありません。

要約された情報であるポピュラー・レポートは,特定の情報が欠如しています。また、単に理解可能だからといって, 単純化された報告書だけでは通りません。たとえ少数であれ,会計知識を熟知した専門の情報利用者がいるという前提に立って, 信用できる根拠に基づいた正確で詳細な財務報告を作成しなければなりません。つまり簡略化された誰でも理解できる情報から、 高度な知識を修得した人々のみが理解可能な詳細な情報までを提供しなければならないということになります。これが理解可能性の基本です。

管理組合会計におけるポピュラー・レポートの手法を使って記述された事業報告書の例です。
 (大規模修繕を実施した管理組合の例)

1.2.7 説明責任の4要素 (2) 目的適合性(Relevance)

目的適合性とは「利用者の目的に適っていること」という意味ですが、利用者の目的とは何でしょうか?

FASBによれば目的適合性とは「情報利用者が過去,現在そして将来の事象の結果を予測するのに、または事前の期待を確認または修正するのに役立つことによって、意思決定の際に相違を生じさせる情報の能力」と定義されています。

すこし、専門的になりますが、このFASBにおける定義の構成を説明しておきます。

「情報の有用性(Usefulness)は第1次的特質として目的適合性(Relevance)と信頼性(Reliability)の二つの特質を備えていなければならず,前者の目的適合性は予測価値(Predictive Value),フィードバック価値(Feedback Value)そして適時性(Timeliness)の三つの要素から構成されており,後者の信頼性は検証可能性(Verifiability),中立性(Neutrality)そして描写的忠実性(Representational Faithfulness)の三つの要素から構成されている。

フィードバック価値とは過去に行った期待ないし予測の確認または修正を可能ならしめる能力を意味し,換言すれば,過去の期待ないし予測が適正であったか否かを判断できる内容を有しているかどうかを問うものである。適時性とは情報が意思決定に影響を及ぼす能力を失う前に,意思決定者が情報を利用できることを意味している。」

次に、目的適合性を具体的に示す非営利組織の財務報告基準がFASBではどう定義されているかを見ていくことにします。

FASBの非営利組織の財務報告基準

FASBの非営利組織の財務報告基準における会計及び財務報告の目的は、概念基準書第4号「非営利組織の財務報告の目的」(Objectives of Financial Reporting by Nonbusiness Organizations)及び、具体的な取引の認識と測定は、FASB の一般原則並びに財務会計基準書第1116号「受入寄付金及び支払寄付金の会計」(Accounting for Contributions Received and Contributions Made) 及び第117号「非営利組織の財務諸表」(Financial Statements of Not-for-Profit Organizations)に示されています。

上記の概念基準書第4号では、非営利組織は企業の利益のような単一の業績指標を一般的に持たないため、他の業績指標が必要とした上で、財務報告目的を当該組織の資源配分に関する合理的決定を現在及び将来の資源供給者がするのを支援するのに有用な情報を提供することとし、次の三つの目的をその達成のため必要なものとしています。

1)サービスとサービスを提供する能力を評価するに有益な情報を提供すること

2)組織の経済資源、義務及び純資源に関する情報提供

3)管理者が受託責任を解除されるのを評価したり業績を評価するのに有益な情報を提供すること
「受託責任を解除されるのを評価」という意味は「受託責任はアカウンタビリティの実施によって解除される」ので、 業務の遂行によって如何にその責任を全うしたかを数字の上で評価するのが会計の役目であるという意味です。

非営利組織の財務諸表

FASBでは非営利組織の財務諸表として次を挙げています。

(1)収支計算書 ( income and expenditure account )
 企業会計の損益計算書 ( profit and loss account (略)P/L)に相当するもので、収支差額は純利益(損失)でなく純余剰(欠損)とされる。

(2)貸借対照表 ( balance sheet (略)B/S)

(3)キャッシュフロー計算書 ( cash flow statement (略)CF計算書)

(4)正味財産増減計算書 ( statement of total recognized gains and losses)
 管理費や修繕積立金の繰越金合計、つまり累積余剰金(積立金)を正味財産 ( net assets )といい、貸借対照表では資産と負債の差額で示されます。この正味資産 ( net assets ) が期間内にどのように変化して年度末の残高になったかを示すものです。


我が国の「新公益法人会計基準」の改正内容

 我が国の「新公益法人会計基準」が20年ぶりに改正され、(平成16年10月14日「公益法人等の指導監督等に関する関係省庁連絡会議申合せ」発表)平成18年4月1日以後開始する事業年度から実施されています。

改正の要点として、

ア 従来の資金収支計算を中心とする体系を見直し、貸借対照表、正味財産増減計算書及び財産目録から構成する財務諸表を作成する。このため、従来会計基準で定めてきた収支予算書及び収支計算書については、会計基準の範囲外とする。

(注)
   (収支予算書及び収支計算書の作成は内部管理事項となったが、但し、日本公認会計士協会の「新公益   法人会計基準適用に伴う収支予算書及び収支計算書の取扱いについて」(平成17年11月9日発行)では、 「公益法人は、新会計基準に基づく財務諸表を作成するとともに、公益法人制度の抜本的改革が行われるまでの間、法人の管理運営上必要な書類として従前どおり収支計算書を作成し保存しなければならないことに留意する必要がある。」としています。)

イ 大規模公益法人については、その財務内容に対する関心が多数の利用者から向けられていること、資産及び負債の内容が多様かつ複雑となっていることから、上記の財務諸表の体系に加えて、キャッシュ・フロー計算書を作成する。

ウ 貸借対照表の正味財産の部について、寄付者等から受け入れた財産に対する法人の受託責任を明確化するため、寄付者等の意思によって特定の目的に使途が制限されている寄付を受け入れた部分を指定正味財産として表示する。 また、指定正味財産以外の正味財産は一般正味財産として表示する。

エ 正味財産増減計算書の様式について、当期正味財産増減額を増加原因及び減少原因に分けてその両者を総額で示す様式(フロー式)に統一するとともに、正味財産の増加原因を収益とし、減少原因を費用として表示する。

となっています。

前頁で、下記の文章を示しましたが、その理由がおわかりでしょうか。

「日本における管理組合会計については、企業会計と公益法人会計の二つの異なる会計方式のどちらを採用すべきかといった論争がありましたが、いずれの会計基準も会計ビッグバンによって激変し、揺れ動いており、どちらも将来における永続的な準拠枠にはなりえない状況となっています。」

1.2.8 説明責任の4要素 (3) 信頼性(Reliability)

信頼性とは「信用できる根拠に基づいていること」という意味ですが、FASBではもっと根源的な定義がされています。

「情報の有用性のもう一つの特質である信頼性の基準は,検証可能性,中立性そして描写的忠実性の三つの要素から構成されている。 その構成要素から推察されるように,信頼性は「情報が適度に誤謬がなく,不偏的であること,また情報が描写しようとしているものを忠実に描写していることを保証する」というものである。

(1)検証可能性は,独立した複数の測定者が同一の測定方法を用いれば,同一の結果が得られることを意味しており,測定自体よりも,測定者自身の不偏性を検証することを意味している。

(2)中立性は会計基準の設定主体の中立性を除けば,検証の対象となる測定者自身の不偏性を問題とし,ある特定の方向へ活動を導くような目的で情報を伝達することを排除することを意味している。

(3)描写的忠実性は,尺度ないし記述が表現しようとしている現象とその尺度ないし記述が一致することを意味しており,情報が単純な表現上の誤謬のために信頼されない事態を防止することを意図している。」

1.2.9 説明責任の4要素 (4) 比較可能性(Comparability)

比較可能性(Comparability)は同一組織における期間比較、及び、複数組織における組織間比較が可能な状態のことで、 同一組織における期間比較でも会計処理および手続きの継続という意味での継続性の原則が守られなければ財務諸表の比較可能性を達成することが出来ません。

特に、複数組織間での財務諸表を利用して比較するための加工・分析は大変でした。  これまでも、一部の財務諸表はPDFやHTMLの電子データとして開示されていましたが、それでも利用者が加工・分析するためには、手作業で表計算ソフトなどに1件ずつ入力しなければならず、多くの手間がかかっていました。

会計基準は決算書の作成ルールは定めているものの、財務諸表の詳細な表記法までは定めていません。このため、現在使われている勘定科目名は数万にも及ぶとされており、 業種をまたぐ場合は勿論、同一業種内でも表記が異なることは普通でした。

簡単な例ですが、例えば上場企業の貸借対照表の「資産の部」の1行目に出てくる「現金及び預金」を見てみますと、「現金及び預金」、「現金預金」、「現金及び現金同等物」とあり、 さらに「現金及び預金」、「定期預金」と2本立てで表記している例ありと、様々な表記となっています。これを比較検討するためには企業間で異なる勘定科目名を同一の名称として整理変換する手順が必要でした。

 近年、開示された財務諸表が電子データとしてXBRL(EXtensible Business Reporting Language)化され、ダウンロードしてダイレクトに財務諸表を加工・分析できるようになってきました。 XBRLでは、上記のような勘定科目の違いも、辞書としての役割をもつ名称リンクベースによって例えば「現金」を「Cash」として表示することができるため、国の壁すら乗り越えてしまいます。

すでに、我が国でも、東京証券取引所では、上場有価証券の発行者である上場会社に対して、投資判断に重要な影響を与える会社の業務、運営または業績等に関する情報を適時開示することを義務付けており、 会社情報の広範かつ迅速な伝達を目的として、適時開示情報伝達システム(TDnet:Timely Disclosure network)を構築し、平成10年4月から第1次システムが稼働。その後、平成20年7月には、XBRL対応した第3次システムが稼働しています。

XBRLの誕生と仕組みについては次頁で説明しています。

その他の原則

基本的制約 (Constraints)

・客観性の原則 (Objectivity principle) :会計士が作る企業の財務報告書は客観的な証拠に基づいて構成される。

・重要性の原則 (Materiality principle) :報告書に記載される時には、1つ1つの項目の重大性が考慮される。各々個別の理由に基づいて判断されて、1つの項目の重大性が考慮される。

・継続性の原則 (Consistency principle) :会計方針が合理的な理由も無く毎会計年度ごとに頻繁に変更されることは許されず、各期を通じた事業成績の変化が財務報告書の一覧によって容易に取得出来るように努められる。

・慎重の原則 (Prudent principle) または保守主義の原則 (Consistency principle) :2つの選択肢がある場合は、資産と収入が過大評価されない方や負債と損失が過小評価されない方を常に選ぶ。具体的には、負債と損失はある程度の確実性があれば当期に記載されるべきものとなり、資産と収入は確実とならない限りは当期に記載してはいけない。

・即時認識(Immediate recognition):発生した費用は直ちに認識され、その期の内に記録される。