「管理組合会計 目次」 > 【前頁】 4.5 分別管理していても > 4.6 区分経理 > 【次頁】 5.1 入金管理台帳と前年度繰越

4.6 区分経理

「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」(平成12年法律第149号)第三条に基づき告示された「マンションの管理の適正化に関する指針」(平成13年8月1日国土 交通省告示第1288号)では、管理組合の経理として、「管理費及び特別修繕費等について必要な費用を徴収するとともに、これらの費目を明確に区分して経理を行い、 適正に管理する必要がある。」としていますが、この指針が出る以前から全国の管理組合では公益法人会計を参考にして一般的に行われてきたことで、 国から指針としてご指導いただくような特別なことではありません。
指針は法律ではなく、強制力はありません。また、区分経理しなければならないのは、この二つだけではありません。

1.  公益法人の区分経理

 我が国の公益法人会計は国際水準に少しでも近づけるという意図から、米国のFASB(財務会計基準審議会)を参考にして来ました。

そのFASBが1985年12月に発表した概念意見書第6号「非営利事業体の財務諸表」及び1993年6月に発表した基準書第117号において、非営利事業体の正味財産(Net Assets)を次の3つの区分に分類しています。

(1) 永久拘束正味財産

 資源提供者の意思により提供された資源の運用又は使途につき、永久的に拘束されている正味財産

(2) 一時拘束正味財産

 資源提供者の意思により提供された資源の運用又は使途につき、期間的又は目的別に一時的に拘束されている正味財産

(3) 無拘束正味財産

 毎期の運営収入から運営支出を控除した差額などの、拘束が何もない正味財産

上記のFASBの概念は、我が国の公益法人会計における正味財産の勘定科目の区分に次のようにそのまま反映されています。

(1)基本金:出捐者(しゅつえんしゃ:資金提供者:出捐とは当事者の一方が自分の意思で、財産上の損失をし、他方に利益を得させること)の意思により、法人の存続する限り、その運用が拘束されており、元本をみだりに処分することが禁止されている正味財産

(2)会館建設積立金:提供者の意思又は方針決定機関の意思により、特定の目的のために別途に資金を留保して積み立てた正味財産、その使途は拘束されており、積み立てて留保された資金は、流動資金と区別されなければならない。

このような一時拘束正味財産は、他にも減価償却積立金、固定資産充当額などがあります。

(3)次期繰越金:正味財産に属する資金のうち、上記の1及び2以外のもので、流動性があるもの。
   [収支計算書における次期繰越収支差額] ≧ [貸借対照表の次期繰越金]

次期繰越金は、企業会計における未処分利益剰余金に近い性質のものですが、流動資金を留保したものである点に特色があります。

公益法人会計の平成16年改訂以前にも、主務官庁が個別の法律に基いて作成した各種の会計基準のなかで、区分経理としてセグメントごとに帰属する勘定科目を規定していました。

2.  管理組合の区分経理の意義


区分経理は、管理組合会計では下記の3つの意味で使われます。

1、一般管理費と修繕積立金等、目的別事業を区分し、各々に財務諸表を作成すること
2、収益事業と非収益事業を区分すること  
3、その他、組合独自の自主的なセグメント開示基準に従って区分すること

3 管理組合の区分経理の実態


何故、区分経理しなければならないのかを、その目的から考えていく事にしましょう。

1)一般的に行われている会計区分

  管理組合会計
     │
     ├─ 一般会計(管理費会計)
      │  
     └─ 特別会計(修繕積立金会計)

管理組合では、その会計を一般会計と特別会計に分けます。
1. 一般会計では、管理組合の運用と維持活動についての収支の状況を示します。
2. 特別会計では、大規模修繕の為の修繕積立金についての収支の状況を示します。
3. 収益事業を行っている場合には、この収益事業についての特別会計を区分します。
4. 機械式駐車場等で維持管理に多額の費用を要する施設を有する場合は、駐車場使用料
  会計等を区分します。(一般的には駐車場使用料は修繕積立金会計に含む事例が多い)

2) 区分経理の目的

1. 修繕積立金は、将来の大規模修繕のための資金として計画的に積み立てられるものであるため、 これを日常の管理のための経費に充当してしまうと、大規模修繕の際に多額の不足金が生じるおそれがあります。 こうした事態を避けるため、修繕積立金は公益法人会計における一時拘束正味財産と同様の性格であり、 基本的には流動性の無拘束正味財産である管理費と区分された帳簿を備えて経理する必要があります。

2. 管理組合は税法上、非営利事業に対しては非課税ですが、課税事業がある場合には、 組合本来の非課税事業と区分された帳簿を備えて経理する必要があります。

 収益事業の特別会計は企業会計方式の帳簿記録で行われ、固定資産に対する減価償却も実施します。

3. セグメント(区分単位)情報開示の要請から目的別の会計区分を立てることがあります。

  セグメント情報
     ├─事業活動別情報
      │  │
      │  ├─非営利事業の種類別 
     │ │  ├─管理費会計               
     │ │  ├─修繕積立金会計            
     │ │  ├─駐車場使用料会計          
     │ │ ├─専用庭使用料会計           
     │ │ ├─トランクルーム使用料会計           
     │ │ └─その他の非営利事業会計
     │ │
      │  └─営利事業の種類別              
     │    ├─地代、看板料、駐車場の外部賃貸事業   
     │    ├─コインランドリー、自動販売機事業会計  
     │    └─その他の営利事業会計   
     │   
     └─事業単位別情報
              │
           ├─複合型建物の事業単位別会計(テナント床・居住床)
           └─団地建物の棟別会計



 1 事業の種類別セグメント情報
                   
        管理費会計 修繕積立金会計 駐車場使用料会計 その他の事業  計 
 T 維持費収入   ××    ××      ××      ××    ××
  (セグメント
   間の内部
   収入を含む。)
 
 U 維持経費    ××    ××      ××      ××    ××
  
   
 
 V 当期収支差額  ××    ××      ××      ××    ×× 
 
 2  棟別セグメント情報
          A棟(高層)  B棟(中層)  C棟(低層)   計  
 T 管理費等収入
 
 (1)管理費収入   ××      ××      ××    ×× 
 
 (2)修繕積立金収入 ××      ××      ××    ××  
 
       計    ××      ××      ××    ××  
 
 U 経 費      ××      ××      ××    ××  
 
 V 当期収支差額   ××      ××      ××    ××  
 

4 会計区分と帳簿


財務諸表(計算書類)及び帳簿は下記とします。

 

補助簿として、公益法人会計基準では次のものを例示しています。
(1) 現金出納帳  日々の現金の収支を順を追って詳細に記入する補助元帳となるもの。
(2) 預金出納帳  二つ以上の銀行に預金してあるときは、銀行別、預金種別に区分して、 日々の預金状況を明らかにする補助元帳となるもの。
(3) 収支予算の管理に必要な帳簿  公益法人会計基準では、
 @ 予算の編成から承認にいたるまでの書類(当該事業年度全体の事業収入予算と事業予算、 事業部門別の細部支出予算などの編成書類、当該予算の承認までの経過を示す書類、
 A 承認された予算についての事後の変更に関する書類など)
(4) 固定資産台帳  固定資産の単位ごとに取得、処分などの推移状況を詳細に記入する補助元帳となるもの。
(5) 基本財産明細帳  固定資産台帳に類した補助元帳となるもの。管理組合では備品台帳に該当します。
(6) 会費明細帳  会員ごとに会費の入金状況を記入するもので補助元帳又は補助記入帳となるもの。 管理組合では管理費台帳・修繕積立金台帳、その他の入金台帳に該当します。