「管理組合会計 目次」 > 【前頁】 4.1 管理組合会計規程 > 4.2 管理組合監査 > 【次頁】 4.3 監査実施要領

4.2 管理組合監査

4.2.1 管理組合における監査の用語

 会計監査:管理組合財産の状況を監査すること。(区分所有法第50条第3項第1号)
 業務監査:理事の業務の執行の状況を監査すること。(区分所有法第50条第3項第2号)
 内部監査:管理組合の内部の者による監査のこと。(監事監査)
 外部監査:外部の専門家等の第三者による監査のこと。

監査報告書の例

監 査 報 告 書

    私は、平成25年5月20日青空ハイツ管理組合第○回総会の
  平成24年度(自 平成24年4月1日 至 平成25年3月31日)の
  青空ハイツ管理組合 一般会計収支報告書、特別会計収支報告書
  及び平成25年3月31日現在の一般会計貸借対照表、特別会計
  貸借対照表及び正味財産増減計算書・財産目録及び関係各証憑書
  綴りについて、厳正な監査の結果 いずれも公正であることを認める。

   平成25年4月20日
   監事    ○○  ○○○

4.2.2 管理組合における監査の必要性


         〜 監査は人に優しいシステム 〜

人はすべて完全ではありませんから、 「誤り」はどんな人でも発生する可能性はあります。
人が行った行為を他の人がチェックし「誤り」を修正する制度を、「内部統制制度」(Internal control)といいます。
誰でも間違いが生じる可能性があることを前提として、チェックすることで間違いを排除し、損失を被らないようにする仕組みです。

人は元来、不正を働くものという性悪説を基礎に、内部統制制度が必要だと云っているのではありません。
誤りを最小限にとどめる為に他人が行うチェックシステムを確立することで、結果として、不正をも未然に防止できる仕組みにしようということなのです。

「人間は間違う動物である」ことを前提にして「人間のミスを予防する仕組み」を確立することは、「ミスから生じる損失を事前に予防してくれる」「他人から疑いをもたれるリスクから守ってくれる」ことになり、 それこそが「人に優しいシステム」なのだということを、会計学の碩学 田中 弘博士(商学)が「複眼思考の会計学」(平成23年2月1日初版p177 叶ナ務経理協会刊)で紹介されています。

(この本は、専門外の人にも分かりやすい言葉で、最近のIFRSを含めて会計の問題の本質を平易に解説しています。「人に優しいシステム」の言い方は稲盛和夫さんの著書「稲盛和夫の実学 経営と会計」(日本経済新聞社刊)から引用して紹介されています。)

タイトルの「複眼思考」とは、「ダブルチェック」のことを指しています。同じ人が二度チェックしても「ダブルチェック」にはならない。「別の人」が「再チェック」したり、「別のやり方」で再チェックすることが「ダブルチェック」です。 最近の日本の会計や監査が「単眼思考」「シングルチェック」になってきたことに警鐘を鳴らしたいという想いを込めたと書かれています。

「単眼思考」になっていたのは何も会計だけではなく、耐震偽装問題の建築業界もそうでした。「ダブルチェック」が機能していれば、建築士本人も含めて、多くの人たちが不幸に出会うことは最初からなかったはずです。
そういえば、理研のSTAP細胞騒動も、「ダブルチェック」が機能していれば、もっと人に優しいHappyな結果になっていたのでは?


管理会社や、理事長、会計が、誰のチェックも受けずに独断専行できる体制や任せっぱなしの体制になっていませんか。 管理会社から出された決算書を中身を精査することなく、形だけの監査でそのまま通していませんか?
結果として、いいなりの高い料金をそのまま、負担させられていませんか?
必要のないサービスに疑問を感じながらも、そのまま受け入れていませんか?
管理会社が出してきた長期修繕計画や、提案してきた修繕工事の中身について、充分チェックしてますか?

誰のチェックも受けずに行うことを、マネジメント・オーバーライド(management override)といい、形式的にはどうあれ、実質的には当事者以外のチェックを受けないで行う行為を指します。 リスクを少なくする為には、マネジメント・オーバーライドのないよう当事者以外のチェックが入る仕組みを構築する必要があるのです。
監査は不正,脱漏,誤謬等の発見だけではなく、不正を未然に防止し不測の損失を排除する仕組みです。

内部監査(Internal Audit)は、内部統制制度(Internal Control)の一部です。
内部監査の役割は「管理組合運営の適正化をはかり、重大なミスや犯罪など組合に対する重大なリスクを最小限に止めること」であり、更に無駄な経費を削減し、真の資産価値を高める方向に向かわせ、結果として区分所有者の受ける利益を最大にしようということなのです。

4.2.3 内部監査の適切な適用

内部統制制度は、マンションの規模や管理体制によっても異なります。 一律に硬直した内部牽制制度を構築すると実効性のないものになります。 管理組合の実態と、内部統制の目的を一致させ、規模、管理形態などに相応しい実効性のあるシステムの構築が求められます。

この章の最後に、「4.2.7 監査のアウトソーシング」で外部監査が出てきます。企業でも最近は社外取締役の必要性が強調されています。 実は、監査業務の効率性から見ると、実際に管理組合の活動を見ている監事の自立的な内部監査活動のほうが数倍もの効果があります。 しかし、お互いに遠慮が働く共同住宅の人間関係の中では、「会計に関する専門的能力」「第三者性」「外部性」が担保された外部監査のほうが 法令順守の専門的実効性(ミスの防止、経済犯罪の抑止)、会計業務の継続性、財務諸表の信用力といった点で優れているのも事実です。

※ 監事の職務

  区分所有法第50条第3項では、監事の職務について下記のように規定しています。
法では管理組合法人についてのみ強行規定(※1)としていますが 法人ではなくても自治規範である管理規約で監事を定めている場合には、法人同様に法の趣旨が引き継がれます。
(※1)強行規定とは、当事者の意思によってその規定の適用を排除することができない強制的な規定をいう。

区分所有法第50条第3項(監事の職務)
3 監事の職務は、次のとおりとする。
 1.管理組合法人の財産の状況を監査すること。
 2.理事の業務の執行の状況を監査すること。
 3.財産の状況又は業務の執行について、法令若しくは規約に違反し、
 又は著しく不当な事項があると認めるときは、集会に報告をすること。
 4.前号の報告をするため必要があるときは、集会を招集すること。
(監事の代表権)
第51条 管理組合法人と理事との利益が相反する事項については、監事が管理組合法人を代表する。


区分所有法第50条第3項第1号は会計監査であり、第2号は業務監査です。
第3号は法令若しくは規約に違反し、又は著しく不当な事項と監事が判断したときは 管理組合総会で報告せよということで、裏返せば規約違反や著しく不当な事項がなければ報告の義務はないことになります。 とはいえ、会計監査と業務監査の執行義務はあるわけで、適正に監事の職務を執行したことの報告(監査報告)はしなければなりません。

監査というと、会計監査だけが監査であるかのような誤解がありますが、むしろ重要なのは業務監査ですから、 理事会や重要な意思決定に係る会議に監事が出席し意見を述べることは重要な職務上の義務です。 但し、理事の業務の執行の状況を監査する立場上、理事会での議決には参加できません。(総会を除く)

(カン違いした監事の話)

税務監査は税務調査官が調査権という国家権力を用いて行う外部監査です。一方、都庁や県庁の監査室は自治体の業務執行についての内部監査をする部署ですが、 条例に基づく調査権があり、そこでは監査委員が質問をし、被監査人は求めに応じて証憑や資料を提示し、誠実に対応します。

監査委員が被監査人に敬意を払われているのを見て、権力欲、名誉欲に憧れた事務方の下級公務員が 自分の住むマンションの管理組合の監事に立候補して選任された。

待ちに待った監事監査では、目をぎらぎらさせて的はずれの事細かな質問を矢継ぎ早に発し、理事の回答に対して、 いちいち偉そうなコメントを発して「権威」を誇示する態度を示した。(え? アンタの狙いはそこなの?)  結局、この男は理事会でも総スカンとなり、不適格として任期2年のところ、1年で解任された。 民間企業でも内部監査はありますが、このような横柄な態度を示す監査はありえません。形式主義の役所にいた男の笑える話です。

似たような話は結構多いですね。松本龍復興相のことを覚えてますか?
(菅直人第2次改造内閣時、2011年3月11日の東日本大震災発生後、6月27日復興対策担当大臣に松本龍が就任、7月3日に初めて被災地入りし、訪問先の宮城県庁、岩手県庁での発言が批判を集め、7月5日、松本は大臣を辞任した。)
詳しくは、 「権威をカン違いした男たちの物語」〜外国人記者が伝えたこと

監査人の質問でその人の専門的能力がわかりますから、監査を受ける側は、相手の監査人のレベルに合わせて対応します。 場合によっては監査人に対する反論や説得もありますが、形式主義、権威主義の組織では監査人への反論や説得はありえないでしょう。但し、管理組合では権威主義は通用しません。

4.2.4 監査チェックリストの使い方

監事がすべての項目について自ら検証するというのは付き合わせられる理事会にとっても負担ですから、 実務では、理事会に監査項目を示して自己申告を依頼し、その結果を監事が確認し精査するほうが合理的です。
下記はモデルとして示したものですので、参考としてください。

(1) 項目ごとにYes(できている)、No(できていない)、N/A(該当事項なし)のいずれかにチェックを入れてもらい、 監事はその自己申告が信頼できるものかどうかを判断すればよいというチェックリストになっています。

(2) 法令規約欄の◎は区分所有法その他の法令で遵守が求められている項目です。
〇は一般的に規約で定めてあることが想定される項目です。
△は通常、規約で明文化されているとは考えられない事項ですが、 No(できていない)であれば、監事として理事会等に意見を述べる必要があると考えられる項目です。 特に会計監査に関しては「管理組合会計基準」が存在しないため、ほとんどの項目が△になっていますが、 金額の整合性が取れていない場合やあるべき数字が計上されていない場合等は重要な瑕疵があると判断するべきです。

4.2.5 業務監査チェックリスト

業務監査チェックリスト

4.2.5.1 管理組合総会(総会招集通知書・議案書の監査)

項  目法令・規約YesNoN/A監事チェック
1.) 決算関係書類の事務所における備付けはされているか
法第48条の2(財産目録及び区分所有者名簿)罰則第71条6(過料)
 ◎ □ □ □ □
2.) 総会は規約に定める期日までに開催されているか ○ □ □ □ □
3.) 総会は正当な招集権者によって招集されているか ○ □ □ □ □
4.) 総会の招集通知は規約に定める期日までに通知されているか(法第35条1項・通知の方法は1項) ◎ □ □ □ □
5.) 組合員名簿は事業年度末時点で見直しされているか ◎ □ □ □ □
6.) 総会の議案書は招集通知と共に送達されているか ◎ □ □ □ □
7.) 総会の議題は規約に定める総会決議事項を網羅しているか ◎ □ □ □ □
8.) 規約の内容を変更する議案(規約の改定を要する事項)はないか ◎ □ □ □ □
9.) 特別決議を必要とする事項はないか ◎ □ □ □ □
 

 [議案の最後のチェック] 「1.規約の改定が必要な事項」

2.管理組合総会の運営(総会議事録の監査)

項  目法令・規約YesNoN/A監事チェック
1.) 総会議事録は作成されているか ◎ □ □ □ □
2.) 出席者数と議決権数ともに総会成立の定足数は満たしているか ◎ □ □ □ □
3.) 議長は規約の定めるところにより選出され、議事録に署名があるか(記名押印が必要か規約を要確認) ○ □ □ □ □
4.) 議事録署名人(議長以外の2名)の署名(同上)があるか ○ □ □ □ □
5.) 決議は規約の定めに従い適正にされているか ○ □ □ □ □
 

 4.管理組合総会の進め方 「3. 総会のすすめ方」

3.関係機関への届出

項  目法令・規約YesNoN/A監事チェック
1.) 「法務局」 管理組合法人代表理事(理事長)の改選は2週間以内に変更登記されているか ◎ □ □ □ □
2.) 「税務署」 直接雇用・有給の職員がいる場合の給与支払事務所の届、支払調書合計表の提出は適正にされているか ◎ □ □ □ □
3.) 「税務署」 携帯電話の基地局管理料などの収益事業の法人税、消費税は事業年度終了後2ヶ月以内に申告されているか ◎ □ □ □ □
4.) 「税務署」 講演料、顧問料等の報酬の源泉所得税、復興特別税の徴収、納付は適正にされているか ◎ □ □ □ □
5.) 「都道府県、市町村の均等割」 減免申請はされているか、又は不要か ◎ □ □ □ □
6.) 「社会保険事務所・労働基準監督署」 直接雇用・有給の職員がいる場合の社会保険、及び労基36条協定等の届出は適正にされているか ◎ □ □ □ □
7.) 「市区町村」 納税事務処理・県税事務所・市区町村納税窓口への代表理事変更届は適正にされているか ◎ □ □ □ □
8.) 「市区町村」 資源ごみの回収団体連絡先(代表者)変更通知は適正にされているか ○ □ □ □ □
9.) 「消防署」 防火管理者の変更通知は適正にされているか ○ □ □ □ □
10.) 「自治会・防災・防犯関係団体」 管理組合理事長変更の通知は適正にされているか ○ □ □ □ □
11.) 損害保険」保険契約者の代表者名の変更通知は適正にされているか ○ □ □ □ □
12) 総会議事録の区分所有者あての掲示・配布は適正にされているか ○ □ □ □ □
 

 「1.事業年度終了後の諸手続一覧」

4.ガバナンス

項  目法令・規約YesNoN/A監事チェック
1.) 理事会は規約規定の定例会議を適正に行っているか ○ □ □ □ □
2.) 理事会の付議事項は明確にされているか、特に前年度からの引継ぎは適正になされているか ○ □ □ □ □
3.) 理事会の決定事項は議事録に記載されているか ○ □ □ □ □
4.) 修繕委員会等の理事会以外の組織がある場合、その位置づけ(理事会の諮問機関等)は明確に文書化されているか ○ □ □ □ □
5.) 上記の組織がある場合、その構成メンバーの選出方法は明確であり、区分所有者に通知されているか ○ □ □ □ □
6.) 上記の組織がある場合、その決定事項は議事録等により明らかにされているか ○ □ □ □ □

5.コンプライアンス

項  目法令・規約YesNoN/A監事チェック
1.) 防火管理者が選任され、消防署に「消防計画」が提出されているか ○ □ □ □ □
2.) 各種法定点検は適正に実施されているか ○ □ □ □ □
3.) 個人情報保護のルールが定められ遵守されているか ○ □ □ □ □

 3. 建物診断の基礎データ (4)法定点検項目

4.2.6 会計監査チェックリスト

 1.会計責任

項  目法令・規約YesNoN/A監事チェック
1.)会計及び決算についての管理組合・管理会社 双方の責任者が明確になっているか △ □ □ □ □
2.)財産の分別管理は適正化法施行規則第87条のどの方式を適用しているか明確になっているか   4.4 財産の分別管理 ◎ □ □ □ □
3.)分別管理の保証措置は契約証書を確認したか(同上) △ □ □ □ □
4.)預金口座は収納・保管・収納保管の各口座別に管理されているか △ □ □ □ □
5.)保管又は収納保管口座の印鑑は管理会社に預けていないことが確認できるか。(管理適正化法違反) ◎ □ □ □ □
6.)組合が保管すべき保管口座の印鑑保管責任者は明確になっているか △ □ □ □ □
7.)預金口座はペイオフ対策がとられているか △ □ □ □ □
8.)決算報告書は理事会で承認されているか ○ □ □ □ □
9.)支払事務はルールが定められ、そのルール通り遵守されているか △ □ □ □ □

2.資産

 1.現金預金

項  目法令・規約YesNoN/A監事チェック
1.)現預金の出納責任者は明確になっているか △ □ □ □ □
2.)プレイルーム、来客駐車場の使用料など現金で直接利用者から受ける場合の取り扱い方法が明確化されており、収受簿と実際に入金された預金通帳の照合もされているか (小口資金を現金で受払いするのは間違いのもと・会計事務は二人以上でダブルチェックを)  △ □ □ □ □
3.)手元現金有高は定期的に出納責任者以外の者が出納帳と照合しているか △ □ □ □ □
4.)期末の現金有高は間違いないか(期末に現金を残さず、現金はすべて一旦金融機関に預け入れるのが原則) △ □ □ □ □
5.)期末の預金残高は間違いないか(期末後(翌期)の取引が記載されている通帳や証書の現物で確認するのが原則、コピーは不可) △ □ □ □ □

 2.その他の流動資産

項  目法令・規約YesNoN/A監事チェック
1.)仮払金は適時に清算されているか △ □ □ □ □
2.)未収金の計上基準は、毎事業年度、同じ基準によっているか(資源ごみ回収報奨金などのように毎回、前期四半期分が翌期首に振り込まれるものは、あえて未収金に計上しないなどの例) △ □ □ □ □
3.)未収金(管理費等の滞納金)は毎月、理事会に報告され、その督促回収は適切な手続きによってなされ、その証拠書類は保存されているか △ □ □ □ □
4.)前払金は、毎事業年度、同じ基準で計上されているか、複数年一括前払い保険金などのような場合、事業年度ごとに前払金の清算が行われているか △ □ □ □ □
5.)各資産の残高は補助簿等により管理され、残高が正確なものであることを確かめられるか △ □ □ □ □

 3.固定資産

項  目法令・規約YesNoN/A監事チェック
1.)固定資産の取得や廃棄の意思決定は適切なルールに基づいて行われているか △ □ □ □ □
2.)固定資産に計上されている実物資産及び権利等は、1件ごとにその現物確認と帳簿残高が適正でありことを確認しているか △ □ □ □ □
3.)什器備品の固定資産と消耗品等の経費などとの計上区分は、毎事業年度で同一の基準が適用されているか △ □ □ □ □
4.)減価償却に関するルールが定められているか(収益事業を行い納税義務のある管理組合では、経費算定のため、設備の減価償却が必要となる。収益事業をしていなければ減価償却は本来不要かつ任意である) △ □ □ □ □

3.負債

 1.流動負債

項  目法令・規約YesNoN/A監事チェック
1.未払金の計上基準は、毎事業年度、同じ基準によっているか △ □ □ □ □
2.前受金の計上基準は、毎事業年度、同じ基準によっているか △ □ □ □ □
3.短期借入金等がある場合、適切な手続きを経て実行され、証拠書類は保存されているか △ □ □ □ □
4.流動性負債はもれなく計上されているか(網羅性) △ □ □ □ □
5.各負債の残高は補助簿等により管理され、残高が正確なものであることを確かめられるか(補助簿は必須ではない。個別の残高の合計が勘定科目の残高に一致していることが確認できれば他の方法でも可) △ □ □ □ □

 2.固定負債

項  目法令・規約YesNoN/A監事チェック
1.長期借入金等がある場合、適切な手続きを経て実行された借入金か、証拠書類は保存されているか △ □ □ □ □
2.長期借入金等がある場合、長期借入金の償還計画が明確になっていて、規定に基づき償還が適切に行われているか △ □ □ □ □
3.保証金等がある場合、その収受もしくは返還手続きは規定に基づき適切に行われているか △ □ □ □ □
4.固定負債はもれなく計上されているか(網羅性) △ □ □ □ □
5.各負債の残高は補助簿等により管理され、残高が正確なものであることを確かめられるか(補助簿は必須ではない。個別の残高の合計が勘定科目の残高に一致していることが確認できれば他の方法でも可) △ □ □ □ □

 3.収入

項  目法令・規約YesNoN/A監事チェック
1.組合員名簿が整備されており、管理費、修繕積立金、駐車料、駐輪料、専用庭使用料などの所有者別台帳(徴収簿)が整備されているか △ □ □ □ □
1.未集金明細表が整備されており、理事会に適正に報告されているか △ □ □ □ □
2.前期からの未収金累計額と当期未収金が期毎に区別されて整備されているか △ □ □ □ □
3.一般会計(管理費会計)、特別会計(修繕積立金会計)等の経理区分ごとに適切に区分整理されているか △ □ □ □ □

 4.支出

項  目法令・規約YesNoN/A監事チェック
1.支出は予算に基づいて執行されているか(予算準拠の原則) ◎ □ □ □ □
2.支出が予算を上回った場合は、規約に基づいた予算と支出の整合性を保つ手続きが適正に行われているか ◎ □ □ □ □
3.支払の根拠は明確になっているか、契約に基づかない管理委託費の支払いはないか、また、支払台帳等の記録が行われているか ◎ □ □ □ □
4.一般会計からの支出(管理費会計)、特別会計からの支出(修繕積立金会計)等の経理区分ごとに適切に区分整理されているか ◎ □ □ □ □
5.共通費の按分計算は適切に、毎年度同じ基準で行われているか ◎ □ □ □ □
6.支払の証拠書類は適切に整理保存されているか ◎ □ □ □ □

4.財務諸表・計算書類

この財務諸表は、.一般会計(管理費会計)、特別会計(修繕積立金会計、駐車場使用料会計等) の経理区分ごとにそれぞれ必ず作成されているものとします。

【管理組合の会計書類等の分類】

会 計 書 類 等備 考
会計書類 @ 収支計算書 
A 貸借対照表 
B 正味財産増減計算書 
C 財産目録 (注)注:管理組合法人の場合、作成は区分所有法48条2項で義務付けられており違反には罰則(過料)あり
D 附属書類(未収金明細書、借入金明細書、月次収支計算書、備品目録等) 
E 収支予算書 
会計帳簿 主要簿仕訳帳(伝票集計表)
総勘定元帳
 
補助簿現金出納帳
預金出納帳
管理費等台帳
備品台帳
その他の補助簿
原則として、複式簿記、発生主義で記帳する。

 1.貸借対照表

項  目法令・規約YesNoN/A監事チェック
1.「資産の部」「負債の部」「正味財産の部」に区分されているか(この3つの区分は金額が0でも必ず記載する) △ □ □ □ □
2.資産の部合計は、負債の部合計+正味財産の部合計と一致しているか(一致していなければ誤り) △ □ □ □ □
3.資産の部は、流動資産と固定資産に区分されているか △ □ □ □ □

 2.収支計算書

項  目法令・規約YesNoN/A監事チェック
1.「経常収支(資金収支)の部」「正味財産増減の部」に区分されているか(この3つの区分は金額が0でも必ず記載する) △ □ □ □ □
2.資産の部は、流動資産と固定資産に区分されているか △ □ □ □ □
3.収支計算書の繰越金合計額と貸借対照表の正味財産合計額及び正味財産増減計算書の期末正味財産合計額が一致しているいるか △ □ □ □ □
4.支出項目と金額は証憑との突合せで一致しているか △ □ □ □ □

 3.正味財産増減計算書

項  目法令・規約YesNoN/A監事チェック
1.正味財産増減計算書の前期繰越正味財産は、収支計算書の前期繰越金及び前事業年度末の貸借対照表上の正味財産の額と一致しているか △ □ □ □ □
2.収支計算書の差引収支差額と正味財産増減計算書の当期正味財産増減額が一致しているか。 △ □ □ □ □

 4.財産目録

項  目法令・規約YesNoN/A監事チェック
1.財産目録の資産合計、負債合計、正味財産の数字がすべて他の財務諸表3表の数字と一致して網羅されているか △ □ □ □ □
2.財産目録に記載されている各金融機関ごとの預金残高は通帳残高、及び残高証明書の金額と一致しているか △ □ □ □ □

  6.1  財務諸表の体系

4.2.7 監査のアウトソーシング

監査は専門性の高い分野だけに、監査理論及び監査実務経験のない人が行うには努力と困難が伴います。

管理組合にふさわしい「監査」の形態として、専門知識を生かし、公正な意見を述べることができる外部の会計専門家に監査を依頼するのもひとつの方法です。

税理士、会計士には、業務上知り得た機密事項は漏洩してはならないという守秘義務があり、内部統制制度の整備を中心に、下記の内容を監査し報告します。

1 入金状況の把握・支払の手続きが適正であるか
2 預金が適切な手続きで保全され、リスク回避されているか
3 滞納督促業務が適切に行われているか
4 予算管理が適切に行われているかどうか
5 管理会社の業務内容に対する支払額が適正妥当か
6 長期修繕計画に基づいた修繕積立金の設定がなされているか
などですが、詳細は規模や管理体制によっても異なります。

4.2.8 監査は信用をコンパイルする

 組合の規模に応じて三段階の監査義務規定がある米国の事例

米国フロリダ州法では、分譲マンション(condominium)、コープ住宅(cooperative)、戸建の団地組合(homeowners' associations) に下記のように組合の規模に応じて監査についての規定があります。

(注:コープ住宅(cooperative)とは、入居希望者が集まり組合を結成し、その組合が事業主となって、土地取得から設計者や建設業者の手配まで、建設行為の全てを行う集合住宅のこと。)

フロリダ州法 718.111章 - 分譲マンション法 ( Condominium Act )
フロリダ州法 719.104章 - コープ住宅法 ( Cooperatives Act )
フロリダ州法 720.303章 - 住宅所有者組合法 ( Homeowners’ Association Act )

必要な財務報告書のレベルは、管理組合の歳入(年間収入)で決まります。
@40万ドル(約4千万円)以上の収入の場合、
 公認会計士の監査報告書( the Independent Auditor's Report for Condominium Associations )が必要。
A20万ドル(約2千万円)から40万ドル(約4千万円)の場合、
 公認会計士がレビュー( review = 検閲)しなければならない。
B10万ドル(約1千万円)から20万ドル(約2千万円)の場合、
 公認会計士がコンピレーション( compilation = 編集:作成に関与の意)しなければならない。
C10万ドル(約1千万円)未満の場合 、
 現金収入と費用の報告書を作成しなければならない。
D50戸未満または50区画の管理組合は年間収入に関係なく現金収入と費用の報告書を作成しなければならない。

米国の公認会計士による外部監査(つまり保証業務)には公認会計士に払う費用が低い方から高い順に並べると、「コンピレーション( compilation )」、「レビュー( review )」、「監査( audit )」の3段階の監査契約があります。

正確にいうとコンピレーションは監査ではありません。したがって、何の保証もしません。
コンピレーションとは、財務諸表の作成業務を公認会計士が行うことですが、監査とは異なり会社から提供された資料を そのまま使用し、資料の正確性については検証しません。資料の元となる証憑類と突合を行うことなどもしません。 公認会計士は、監査などの保証業務と異なり、財務諸表の適正性等について何の保証もしませんが、会計の専門家によって 財務諸表が作成されているので、相応の信頼性を保つことが出来ます。
報告書には、Accountant’s Compilation Report と 会計士が経営者とは独立している場合の Independent Accountant’s Compilation Report があります。

 監査は財務報告書に「信用」をコンパイルする業務

余談ですが、コンピュータープログラマーが作成するプログラムはソースコード(短い命令語を規則に従って並べた条文)ですが、それをコンピュータが理解できる機械語のバイナリー(2進法)コードに変換することをコンパイルするといい、 変換するツールソフトのことをコンパイラーと言います。コンパイラーはソースコードに文法エラーがあるとエラーメッセージを出してマシン語への変換はしません。このコンパイル(compile)する作業がコンピレーション( compilation )です。 プログラムはコンパイラーで変換して初めて動きます。同様に会計では財務報告書は「信用」があって初めて成立します。 監査は財務報告書に「信用」をコンパイルする業務といえます。

(余談の蛇足) 筆者が昔、コンピュータープログラマーだった頃の法則を思い出しました。
○「コンパイラーのエラーメッセージがでるうちはまだプログラムではない。 エラーメッセージが出なくなったら、いよいよ虫(bug バグ)のある本物のプログラムになったといえる。」 ・・自戒!
○「トラブル対策の責任を持つ人は、虫を修正する技術をもたない。虫を修正する技術を持っている人は、トラブル対策の責任を持たない。」 (・・理事長さんと会計の立場??)

レビュー( review )とは、会計士が財務諸表の調査を限られた手続き(分析手続と質問が中心)で行う証明業務(Limited assurance)です。
レビューのための資料(証拠)は主に分析手続きと質問で入手され、その累積が、財務諸表に重大な修正をしなければならないような重大なミスが見つからなかったという消極的な証明の基礎となります。
レビューの結果、Independent Accountant’s Review Report が作成されます。

監査済み財務諸表は、保証業務の最高レベルの産物です。監査では、公認会計士は検証と実証手順を実行します。
一般に公正妥当と認められる監査の基準や会計及び審査サービスのための基準についての記述に従って、審査の方針に従った財務書類の監査を行います。 監査の目的は、全体としての財務諸表についての意見表明のための合理的な基礎を提供することです。

レビューはそのような意見表明のための基礎を提供していません。検査で証拠事項の裏付けを得ることにより、会計記録や問い合わせへの対応を観察または確認することは通常の監査中に行われます。 レビューは、会計士が監査に開示されるすべての重要な事項に気付いたという保証を提供しません。そこが監査との違いです。

4.2.9 日本の証券会社でも保証を提供しない外部監査制度がある

わが国でも、顧客から資金を預かって有価証券等の管理業務を行っている証券会社では、監査法人などが責任をもって信頼性を付与する「分別管理の法令遵守に関する検証業務」以外に、「合意された手続き業務」(Agreed-Upon Procedures)と呼ばれる「監査に保証を提供しない外部監査制度」とが並存しています

「合意された手続」における業務実施者(公認会計士等)の報告は、実施結果の事実のみの報告であり、結論の報告や保証の提供などは行いません。
この点で、財務諸表監査など、公認会計士等が自ら入手した証拠に基づき、規準に照らして判断した結果を結論として報告する「保証業務」とは異なります。

投資家から見れば、「責任を持たない監査などは、幾ら理屈をこねまわしても詭弁にすぎない」として、すべて監査に責任を持たせろという意見もあります。

倫理と正義を主張するまともな意見ですが、監査の現場からみると「外部監査費用と時間の裏づけを考えずに正義を主張するのは、現実を見ない無責任な精神論にすぎない」という見方も存在します。

すぐれた品質管理を行った企業に与えられるデミング賞は、間違いなく本物の栄誉(award)です。
しかし、品質管理のISO9001や環境管理のISO14001などのISO認証取得には、多額のコストがかかりますが、たとえこれらのISO認証を得たとしても、ISO認証は決してアワード(栄誉)ではないといわれます。

「栄誉ではなく義務であり、その証明のために、外部認証機関をどのように使うかの関与の度合いは、その事業組織の自主性に委ねられている」という意味では、監査も同じです。

信用は商取引の基礎であり、そのために信用格付機関(credit rating agency)が存在しています。

(参考)

監査をめぐって二つの制度が存在することについての日本公認会計士協会と証券会社の主張
「顧客資産の分別管理に関する外部監査等のあり方検討ワーキング・グループ」平成26年7月29日(火)(第1回)議事要旨(抜粋)


日本公認会計士協会の説明


● 分別管理監査には、分別管理の法令遵守に関する検証業務と合意された手続業務の2通りがあり、両業務の一番の違いは、保証業務であるか否かである。

● 検証業務では、「会社が法令を遵守して顧客資産を分別管理していた」という主題に対して、監査法人等が経営者の主張の適正性に関する結論の報告を行うことにより、監査法人等の責任において主題に対する信頼性が付与される。

一方、合意された手続業務はそもそも主題がなく、あくまでも分別管理の内部統制の有効性及び分別管理の法令遵守について、又は、そのいずれかについて、監査法人等が、証券会社、日証協(日本証券業協会)及び監査法人等の三者間で合意された手続に基づいて、その範囲内でのみ発見事項を報告するものであり、監査法人等の責任により「法令を遵守して顧客資産を分別管理していた」旨の信頼性が付与されることはない。

● 検証業務においては、監査法人等が、責任ある意見を表明する立場から、必要な手続き、証拠の入手及び評価をどこまでやらなければいけないのかを、主体的に判断して、手続きが進められるが、合意された手続業務は、監査法人等による保証業務ではないため、契約であらかじめ決められた手続きに従って進められ、監査法人等は、当該手続きの結果を報告するのみである。そもそも「合意された手続きが十分かどうか」の責任は、証券会社及び日証協(日本証券業協会)にある。

● 日証協が当初、顧客資産の分別保管に関する外部チェックの制度を作った時に、全ての証券会社が参加できるよう、コスト面等をいろいろと考えて、合意された手続業務を導入されたことは、素晴らしい工夫だと思っている。ただし、平成19年に、金商法において分別管理監査が「監査」として規定された以上、日本公認会計士協会としては、世間の人が「合意された手続業務を行っている会社にも監査法人が保証している」という誤解を与えることのないよう、検証業務に一本化した方が良いのではないかということを、一度提案させていただいたことがある。その時は、時期尚早とされたが、日本公認会計士協会としては、監査という言葉が使われているからには、保証業務であることが原則だと考えている。


日本証券業協会 会員の意見


□ 信頼性向上の観点で言えば、投資者の信頼が実際に失われていることが前提にあるべきだが、今般の議論の発端となった事案については、そもそも投資者はあまり知らないのではないか。証券業界でも知らなかった人が多い。 一方、インサイダー取引の問題など、近年において投資者の信頼を失うような問題は、むしろ財務諸表監査を受けることが義務付けられている大きな会社で生じた問題が多い。

中小証券会社は、コンプライアンスにコストをかけるのがもったいなくて言っているのではない。逆に言えば、顧客からの信頼性を向上させるために、極力、必要のないコストはかけずに健全性を保ちたいということである。そういう意味でも、代替案を検討していくうえで、何らかの工夫をしていただくような案を考えていただきたい。


(以 上)

「権威をカン違いした男たちの物語」

「外国人記者が伝えたこと」

英経済紙「フィナンシャルタイムズ」の元東京支局長ディビット・ピリング(David Pilling)著の 「日本 喪失と再起の物語 〜黒船、敗戦、そして3.11〜」(仲 達志訳 早川書房 2014年10月25日初版 ISBN978-4-15-209494-0(上巻)ISBN978-4-15-209495-7(下巻) (原題「BENDING ADVERSITY JAPAN AND THE ART OF SURVIVAL」) は、ニューヨークタイムズ紙、エコノミスト誌、ガーディアン紙など多くの海外メディアから絶賛を浴びた本ですが、 その下巻の219頁に2011年3月11日に起きた東北大震災後の当時の事が下記のように紹介されています。

「政治家達の言動を見るにつけ、本当に同じ惑星の人間なのか疑問に思えることさえあった。 管内閣が設置した「東日本大震災復興対策担当大臣」に就任した松本龍は、 そのポストにたった九日間しかとどまることができなかった。 震災で壊滅的打撃を受けた県の知事を暴言じみた言葉で叱責している映像がニュースなどで流され、辞任に追い込まれたのである。

松本は、津波で数千人もの被災者を出した県の行政トップに指を突きつけ、自分より数分遅れて応接室に入ってきたのは許しがたいマナー違反であると責め立てた。 この想像を絶する無神経さは、日本の支配層がいかに現実との接点を失っているかを多くの国民に強く印象づけた。 そこには彼らが抱える問題点が、すべて凝縮されているように見えたのである。 巨大津波が東北の太平洋沿岸に押し寄せてから六ヵ月で、管政権もその圧力に押しつぶされるかのように崩壊した。」

この本では触れていないが、松本龍(民主党)は「助けて欲しければ知恵を出せ。知恵を出さないやつは助けない」と語ったことも批判を浴びた。 自民党政権になってからも復興行政はトラブルが続き、2015年復興対策担当大臣・高木毅(自民党)は選挙区内での香典支出・女性下着窃盗事件問題で野党の追求を受け、 2016年9月 内閣府政務官兼復興政務官・無台俊介(自民党)は台風被害を受けた岩手県の視察で、長靴を持たず、 職員に背負われて被災現場の水溜りを渡ったことで批判を浴び謝罪した後、 2017年3月、自らこの事件を茶化して「長靴業界はだいぶもうかったんじゃないか」と発言、事実上、更迭された。

2017年4月4日 復興対策担当大臣・今村雅弘(自民党)は、 東電福島第一原発事故に伴う自主避難者の帰還について「自己責任」と述べて批判を受け、 更に4月25日 震災に関し「これはまだ東北で、あっちのほうだったから良かった」と発言、更迭された。

「この想像を絶する無神経さは、日本の支配層がいかに現実との接点を失っているかを多くの国民に強く印象づけた。 そこには彼らが抱える問題点が、すべて凝縮されているように見えたのである。」(David Pilling)