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2.議案の最後のチェック

 総会は、管理組合という集団の意思決定手続きの最上位に位置しますが、すべての意思決定を総会で決することができるわけではなく、 議案によっては、規約で定めるという方法によってのみすることができ、集会の普通決議では決することができない事項があります。 また、管理組合の目的外の事項については、集会決議や規約で定めても無効となります。

管理組合法人の場合は、保存行為については集会決議の必要がなく、理事会決議で足りる場合もあります。(法人は理事会の業務執行の責任と権限が強化されている。)

 区分所有法第31条1項前段の規定により、規約の定めも集会の決議の一種にほかならないのですが、規約という方法でのみ定めることができる事項と、集会での決議で足りる事項は集団意思決定の手続きとしては法律上区分けされています。
この規定に違反した場合、手続違背として総会決議が無効になることがあります。

 また、区分所有法の強行規定に反する決議をすることはできません。上程する議案が法の強行規定に反していないか、又は、区分所有法上、規約の改定が必要な事項に該当していないか、下記の区分所有法の条文をチェックしてみてください。

「集会決議が無効とされた例 T」

 標準管理規約60条2項では組合員が管理費を滞納した場合につき「違約金としての弁護士費用並びに督促及び徴収の 諸費用を加算して、その組合員に対して請求することができる。」と規定しており、判例においても、「建物又はその敷地若しくは付属施設の管理に関する区分所有者相互間の事項(区分所有法30条1項)に該当すると解されるから、規約において 管理費を滞納した区分所有者に未払管理費の請求訴訟に係る弁護士費用を負担させる旨を定めることができると解される。」(東京地判平17.9.12)として弁護士費用の請求は認めていますが、このような規約の定めがなく、 滞納管理費の請求訴訟の訴えを授権する集会において規約と同様の内容で決議したとしても、裁判所は下記の理由により弁護士費用の請求は認めていません。

 「滞納管理費の取立訴訟を提起するために必要な弁護士費用の負担に関する事項は、共用部分の管理に要する事項(区分所有法18条1項)として集会決議事項に該当するが、 特定の組合員の意に反して一方的に義務なき負担を課し、あるいは他の組合員に比して不公正な負担を課すような決議は、集会が決議できる範囲を超えたものとして無効である。」「滞納者は当然には弁護士費用の支払義務を負わないことなどに鑑みると、 弁護士費用を負担させる旨の決議は無効というべきであり、当該滞納者の承諾若しくはこれに準ずべき特段の事情が存在しない限り、かかる集会決議によって弁護士費用の負担を課すことは許されない。」(東京高判平7.6.14 判タ895号139頁)

(解説) 規約で定めることと集会決議はどう違うのか?
 規約に定める要件に該当する場合には、すべての区分所有者が同様の義務を負うことになるのに対し、 集会決議では滞納者の個性等に起因して、恣意的(しいてき=その場の気分や雰囲気で)、 偏頗的(へんぱてき=かたよって一方的な、平等を害するような)な集会決議がされるおそれも否定できないなど、 区分所有者間の衡平の観点から特定事案に対する個別的な授権に関する集会決議の効力を限定した。

 もともと、金銭債務の不履行による損害賠償として約定分または法定年率による額を超える損害賠償を請求することはできないから、債権者は、債務者に対し弁護士費用を請求することはできない(最高裁第一小法廷判決昭和48.10.11裁判集民110号231頁) とされていた。

「集会決議が無効とされた例 U」

「すべての駐車場について、区分所有者の公平な利用を確保するため、特定の区分所有者の駐車場を専用使用する権利を廃止する旨を定める場合は、区分所有者の専用使用権に特別の影響を及ぼすため、その区分所有者の承諾がないままの消滅決議は無効である。」 (最高裁:平成10年11月20日判決)

(解説) 専用使用権を持つ区分所有者の承諾を得ずに専用使用権の消滅決議を行ったことが、区分所有法31条1項後段の「特別の影響」を及ぼす場合にあたり、同条規定に対する手続違背であるから、「右集会決議は、 建物の区分所有等に関する法律31条1項後段の規定の類推適用により、効力を有しない。」、即ち決議は無効とされた例です。最高裁第2小法廷:平成10年11月20日判決 平成8年(オ)第1362号 最高裁判所裁判集民事190号291頁)

1 その議案は、規約の改定が必要な事項に該当していないか?

(A) 規約で特に定める旨を規定している事項の議案の上程は、規約を改訂する手続が必要になります。

(4条2項)「第一条に規定する建物の部分及び付属の建物は、規約により共用部分とすることができる。 この場合には、その旨の登記をしなければ、これをもって第三者に対抗することが出来ない。

(5条1項)「区分所有者が建物及び建物が所在する土地と一体として管理又は使用をする庭、通路その他の 土地は、規約により建物の敷地とすることができる。」

(27条1項)「管理者は、規約に特別の定めがあるときは、共用部分を所有することができる。]


 (B) 法律で一定の原則を定めたうえ規約で別段の定めをすることができるとしている事項についても、 同様に規約を改訂する手続が必要になります。

(11条)   「共用部分は、区分所有者全員の共有に属する。
       ただし、一部共用部分は、これを共用すべき区分所有者の共有に属する。」

(11条2項)「前項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。 ただし、第27条第1項の場合を除いて、区分所有者以外の者を共用部分の所有者と定めることはできない。」

(14条)  「各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による。」

(14条2項)「前項の場合において、一部共用部分(附属の建物であるものを除く。)で床面積を有するものがあるときは、 その一部共用部分の床面積は、これを共用すべき各区分所有者の専有部分の床面積の割合により配分して、それぞれその区分所有者の専有部分の床面積に算入するものとする。」

(14条3項)「前2項の床面積は、壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投射面積による。」

(14条4項)「前3項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。」

(19条)  「各共有者は、規約に別段の定めがない限りその持分に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を収取する。」

(34条)  「集会は、管理者が招集する。]

(34条3項)「区分所有者の5分の1以上で議決権の5分の1以上を有するものは、管理者に対し、会議の目的たる事項を示して、集会の招集を請求することができる。 ただし、この定数は、規約で減ずることができる。」

(34条5項)「管理者がないときは、区分所有者の5分の1以上で、議決権の5分の1以上を有するものは、集会を招集することができる。ただし、この定数は、規約で滅ずることができる。]

(35条1項)「集会の招集の通知は、会日より少なくとも1週間前に、会議の目的たる事項を示して、各区分所有者に発しなければならない。ただし、この期間は、規約で伸縮することができる。]

(35条4項)「建物内に住所を有する区分所有者又は前項の通知を受けるべき場所を通知しない区分所有者に対する第1項の通知は、規約に特別の定めがあるときは、建物内の見やすい場所に掲示して することができる。この場合には、同項の通知は、その掲示をした時に到達したものとみなす。]

(38条)  「集会の議事は、この法律又は規約に別段の定めがない限り、区分所有者及び議決権の各過半数で決する。]

(61条)  「建物の価格の2分の1以下に相当する部分が滅失したときは、各区分所有者は、滅失した共用部分及び自己の専有部分を復旧することができる。ただし、共用部分については、復旧の工事に着 手するまでに第3項、次条第1項又は第70条第1項の決議があつたときは、この限りでない。

(61条3項)「第1項本文に規定する場合には、集会において、滅失した共用部分を復旧する旨の決議をすることができる。」

(61条4項)「前3項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。」

2 「管理」と「使用」に関する事項

  (30条1項)「建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、 この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる。」において、「管理」に関する事項は、 共用部分と共有に属する敷地及び付属施設に関する限り、規約を待つまでもなく、当然に集会の決議で決することができます。

  もとより、規約で定めれば、それが優先します。これに対して、専有部分や共有に属しない敷地(例えば分有の敷地)又は付属施設の管理は、 規約でその管理をも管理組合で行うと定めることによって初めて管理組合の管理の対象となります。

この場合の具体的な管理事項の決定は、規約自体で定めることも出来ますが、規約で集会の決議で決するものと定めることができると解されます。

この場合に、重要な事項は特別多数決議で、それ以外の事項は普通決議で決するものと定めるのが適当です。(以上は法務省民事局参事官室見解)。

次に「使用」に関する事項のうち、共用部分や共有に属する敷地又は付属施設の使用方法は、多くは「管理に関する事項」に含まれているので、 必ずしも規約で定める必要はなく、集会の決議で決することが出来ます。

その範囲を超える「使用」に関する事項、例えば、共用部分又は敷地の1部につき、特定の区分所有者に専用使用権を与える場合などは、規約によってのみすることができると解すべきでしょう。

他方、専有部分や共有に属しない敷地等の使用方法の規制は、規約によってのみすることができる考えるべきです。 ただ、規約で基本的な事項を定め、その範囲内での細則の決定を集会の決議に委任することは、相当な範囲において許されるというのが法務省民事局参事官室の見解です。

管理組合法人の場合は原則としてすべて集会の決議に基きます。(区分所有法52条)
「原則として」から外れる例外とは、議案が法の強行規定に反していないこと、及び法律上規約で定めることとされている事項 (上記(1)の(A)のすべての事項のうち、すでに規約で定めている事項)です。

また、普通決議事項の範囲内であること及び第57条第2項(共同の利益に反する行為の停止等の請求訴訟を提起する集会決議)以外の事項は、(集会決議をするまでもなく) 理事会で決すると規約に定めることも可能です。

更に保存行為については規約で別段の定めがない限り、集会の決議によらずに理事会で決することが出来ます。

ただし、理事会決議については、規約で別段の定めがないこと、及び意思決定の過程・内容に不合理はなく、理事会の裁量の範囲を逸脱するものでなく、理事の善管注意義務等に違背するものではないことを確認してください。

(区分所有法52条) 管理組合法人の事務は、この法律に定めるもののほか、すべて集会の決議によつて行う。
ただし、この法律に集会の決議につき特別の定数が定められている事項及び第57条第2項に規定する事項を除いて、 規約で、理事その他の役員が決するものとすることができる。
 2 前項の規定にかかわらず、保存行為は、理事が決することができる。

(注)管理組合を法人化することは、個人商店を株式会社化するようなもので、 共有資産を管理組合名義で取得できるといった権限の拡大にとどまらず、 規約、集会、理事会の役割・責任と権限も強化されており、 会計処理の内容も義務の不履行に対する罰則付きで厳しくなっています。 管理組合を法人化した後、非法人の管理組合に戻すには、任意清算は出来ず、 裁判所の監督のもとに法定清算手続きが必要となります。(裁判所が検査役を選任・区分所有法第56条の7・平成23年5月改正) (会計処理の例は「滞納債権の圧縮と放棄」を参照してください。)

3 管理組合の目的外の事項は、集会決議や規約で定めても 無効

「マンション管理組合は、区分所有の対象となる建物並びにその敷地及び付属施設の管理を行うために設置されるのであるから、 同組合における多数決による決議は、その目的内の事項に限って、その効力を認めることができるものと解すべきである。 しかし、町内会費の徴収は、共有財産の管理に関する事項ではなく、区分所有法第三条の目的外の事項であるから、 マンション管理組合において多数決で決定したり、規約等で定めても、その拘束力はないものと解すべきである。 本件では、原告の規約や議事録によると、管理組合費は月額500円とっており、親和会当時からの経緯によると、 そのうちの100円は実質的に町内会費相当分としての徴収の趣旨であり、 この町内会費相当分の徴収をマンション管理組合の規約等で定めてもその拘束力はないものと解される。」

(東京簡裁・平成19年8月7日判決)

(注) 
 この判決は、自治会費と管理費の区別を求めたもので、 管理組合がコミュニティ活動を行うことを違法としてはいません。 管理組合のコミュニティ活動の必要性を指摘した他の判決(東京高裁平19.9.20他)もあります。

 ところが、上記の判決を根拠として、国土交通省「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」で、 平成28年度に標準管理規約を改正し、「コミュニティ条項」を標準管理規約の本文から削除する一方で、 適正化指針で「コミュニティ形成の積極的な取り組み」を新たに明記しました。

管理組合団体は、判例に基づかない誇張された一方的解釈で「コミュニティ条項」を削除したのは不適切であり、 また、管理規約と指針の整合性がないとして反発を強めています。

詳しくは 本Hpの「マンションの管理の適正化に関する指針」の中の、
「平成28年度改正に対する管理組合団体の意見」 を参照してください。