「管理組合の運営」 目次 > 「東京都マンション管理適正化条例」 > 老朽化対策と法改正 >  

老朽化対策と法改正  〜令和2年改正の概要〜

(マンションNPO解説)

老朽マンションの放置を防ぐことを狙いとして、マンション管理に係る二つの法律改正案が 2020年(令和2年)2月28日内閣より提出され(閣法・提出番号30)、 第201回国会にて令和2年6月16日、衆議院本会議で可決、成立し、6月24日公布されました。

令和2年6月24日法律第62号
   マンションの管理の適正化の推進に関する法律 及び
   マンションの建替え等の円滑化に関する法律  の 一部を改正する法律

改正後の法令全文 は 下記をクリックしてください。改正部分が分かるようになっています。  
     ○    マンション管理適正化法(R02改正)
     ○    マンション建替え円滑化法(R02改正)

次の現実を知った上で、今回の改正内容を判断してください。
     ○    廃墟マンションの行政代執行


建物の「適正な維持管理」は、本来、建築基準法の所管

 上の「廃墟マンションの行政代執行」の中の「建築基準法に基づく勧告とは」で説明しているように、 特定行政庁(県、政令指定都市及び特定の市)は、建物の所有者に対し、定期的に建物や設備等の状況を報告させて、 法令違反や保安上著しく危険な建築物であることが判明した場合、 建築物を安全な状態にするよう改善指導を行うこととされています。(建築基準法第12条)
定期報告を行わず、または虚偽の報告を行った場合には、罰則(100万円以下の罰金)の対象となります(建築基準法第101条)。

 建築基準法第8条に定める「所有者(または管理者)の、建築物を常時適法な状態に維持する義務」を基礎として、 実定法全体の階層的な構造の中において、民法(相続法)、区分所有法、消防法その他の法令との間に強調を保ち、 全体として統一整序された実効性のある法体系を実現することが必要なのに、 なぜ、「適正化法」という、本来、管理業者を規制する法律の軒先を借りて、 管理組合に対し、上から目線で「適正化基本方針」を訓示するだけの実体のない法律を作るのか。

老朽マンションが放置される背景には、社会制度のもつさまざまな歪(ひずみ)が存在する。

 「 東京都マンション管理適正化条例」ー 「所有者不明住戸の増加」

現実に目の前で起きている問題を、外側から設定された倫理的な単一の価値感や一般的な建前論で捉えても、 単なる自己満足や言葉の遊び、観念論に過ぎず、何の解決にもならない。

老朽マンションの放置を防ぐことを立法目的としている法律には、定期報告制度の「建築基準法」、行政代執行の「空家対策特措法」、 そして今回、第二号法定受託事務を指定した二つの法改正が出たが、国全体として統一整序された実効性のある法体系とはいえず、 地方自治体の現場の混乱と負担が増すだけです。

今回の改正からは、実際の問題解決には程遠い、建前だけの空疎な教条主義が見えてきます。

今回の改正は、政府の「令和元年・成長戦略フォローアップ」の方針を法制度として具体化したものですが (under the Abe regime) 、教条主義・教育勅語と訓導(小学校教員の旧称)で老朽マンションの放置は防げない。

「東京都マンション管理適正化条例」(平成31年3月29日東京都条例第30号)も同じ流れの中にあります。
     ○    (1) 東京都マンション管理適正化条例


1.「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」改正概要

政府(内閣府)が令和元年6月21日閣議決定した「成長戦略フォローアップ」の中で、
「6.(2))D都市の競争力の向上」として「マンションストックやその敷地の有効活用のため、 管理組合による適正な維持管理を促す仕組みや建替え・売却による更新を円滑化する仕組み等を検討し、 方向性を2019年中にとりまとめ、所要の制度的措置を講ずる。」との政策方針が発表された。

政府の「令和元年・成長戦略フォローアップ」の要点
(1) 国の役割:
   国土交通大臣は、マンションの管理の適正化の推進を図るための基本的な方針を策定

(2) 地方自治体の役割: 地方公共団体は以下の措置を講じる。
  ○マンション管理適正化推進計画制度
   基本方針に基づき、管理の適正化の推進を図るための施策に関する事項等を
   定める計画を策定
  ○管理適正化のための指導・助言等
   管理の適正化のために、必要に応じて、管理組合に対して指導・助言等
  ○管理計画認定制度
   適切な管理計画を有するマンションを認定

  【目標・効果】
  管理組合による適正な維持管理の促進や建替え・売却による更新の円滑化により、
  マンションストックやその敷地の有効活用を図る。
  ○25年以上の長期修繕計画に基づく修繕積立金額を設定している分譲マンションの
   管理組合の割合を平成30年度約54%→令和7年度70%とする。
  ○マンションの建替え等の件数
   平成30年度における昭和50年度からの累計)325件→令和7年度約500件とする。

基本方針を国が定め、その基本方針に従った具体的な活動は 「第二号法定受託事務」として地方自治体に任せる仕組みとした。(注1)

管理が適切なマンションを地方自治体が評価・認定する制度を2022年までに作るほか、 自治体には管理組合を指導・勧告できる仕組みを設ける。

(注1):法定受託事務とは
地方自治法第二条に定める法定受託事務のうち、 第一号法定受託事務は[本来、国が果たすべき役割に係る事務]を国から地方自治体が受託するもの。
第二号法定受託事務は[本来、都道府県が果たすべき役割に係る事務]を地方自治体が受託するものです。 今回の改正によって、「マンション管理適正化推進行政事務」が新たに町村の第二号法定受託事務として新設されました。(適正化法第百四条の二)

2.「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」改正概要

団地の共有に属する建物の敷地又はその借地権を分割、売却できる敷地分割事業制度を新設。

建替円滑化法による組合は下記の3種類となった。
@ マンション建替組合(マンション建替事業)
A マンション敷地売却組合(マンション敷地売却事業)
B マンション敷地分割組合(マンション敷地分割事業)(新設)

「第三章 除却する必要のあるマンションに係る特別の措置」を拡大

改正前規定では、建物を除却する必要のある認定基準を耐震不良に限定し、 法の規定も「耐震診断が行われたマンションの管理者は、特定行政庁に対し、 当該マンションを除却する必要がある旨の認定を申請することができる。」旨の規定しか置いていなかった。

外壁が剥がれ落ちる恐れのある建物(特定要除却認定建物)等については、 認定基準(第百二条)を定め、区分所有者の8割以上の賛成で敷地を売却できる制度も作った。 (第百八条(マンション敷地売却決議)・第百十五条の四(敷地分割決議))

(除却の必要性に係る認定基準)(第百二条 新設)
一 地震に対する安全性が基準に適合していない。
二 火災に対する安全性が基準に適合していない。
三 外壁、外装材その他これらに類する建物の部分が剥離し、周辺に危害を生ずるおそれがある。
四 給水、排水その他の配管設備の損傷、腐食その他の劣化で衛生上有害となるおそれがある。
五 バリアフリー性能が確保されていない(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律に適合していない。)

要除却認定マンションの管理者等からの委託に基づき、 建替え、敷地売却又は敷地分割を行うために必要な調査、 調整及び技術の提供は独立行政法人都市再生機構が行う。(第百五条の二 新設)    独立行政法人都市再生機構法の改正

3.本改正に伴って改正された他の法律

地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)(附則第六条関係)
別表第二 第二号法定受託事務(第二条関係)に下記が追記された。
(事務)マンションの建替え等の円滑化法第九条第七項(第三十四条第二項、 第十一条第一項(第三十四条第二項において準用する場合を含む。)、 第二十五条第一項、第三十八条第五項、第四十九九条第三項(第五十条第二項において準用する場合を含む。)、 第五十一条第四項及び第六項、第九十七条第一項 (第百八十三条第二項において準用する場合を含む。)の規定により町村が処理することとさ れている事務

 

日本勤労者住宅協会法(昭和四十一年法律第百三十三号)(附則第七条関係)
(宅地建物取引業法等の適用除外)
第四十条 宅地建物取引業法(昭和二十七年法律第百七十六号)、不動産特定共同事業法(平成六年法律第七十七号) 及びマンションの管理の適正化の推進に関する法律(平成十二年法律第百四十ンの管理の適正化の推進に関する法律(平成十二年法律第百四十 九号)第五章の規定は、協会には、適用しない。

 

独立行政法人都市再生機構法(平成十五年法律第百号)(附則第八条関係)において、
2 機構は、前項の業務のほか、次に掲げる業務を行う
三 マンションの建替え等の円滑化に関する法律第七十八号)第百五条の二に規定する業務を行うこと。

(2020年8月26日掲載)