「コンドミニアムを巡る世界の司法と行政」 目次  >  コンドミニアム裁判所・実務規則  > 【次頁】 判例1. 代理人委任状の監査請求

コンドミニアム裁判所・実務規則  ( 2018年7月1日施行 )

序 文
A. 通則 B. 訴訟手続き  10.証人の召喚  15.紙文書で提出 G. 第一段階 和解
 1.目的  6.参加  11.人権コード D. 公開手続 H. 第二段階 仲裁
 2.規則の適用  7.連絡先の告知  12.仏語の使用 E. 三段階の手順 I. 第三段階 裁定
 3.用語の定義  8.併合審理 C. 文書の公開  18.裁判棄却  29.証人
 4.裁判所の権限  9.代理人  14.電子化文書 F.裁判の申請 J. 費用

訳 注 (あとがき)

まえがき(要約)
次章の「序文」以下で、オンタリオ州コンドミニアム裁判所実務規則をそのまま示しています。
@私的・公的紛争処理制度のすべてを総合的にセットにしたシステムになっています。
A「対審原則」ないし「口頭弁論(中心)主義」をとらずに、 メール等の電子書面主義によるオンライン手続きで、3ケ月で結審させます。 しかも、裁判官は最後の1ケ月しか関与しません。
詳しい解説は本文最後の「訳注(あとがき)」で示しています。

序文

この実務規則はオンタリオ州コンドミニアム裁判所(the Condominium Authority Tribunal 以下CAT又は裁判所と略) がどのように活動しているか、あなたが知っておくべきこと、 又は紛争に巻き込まれてCATに来たあなたがすべきことについての要点を示しています。

CATはオンタリオ州コンドミニアム庁の一部です。
CATは便利なオンラインシステムを通じて、コンドミニアムに関する紛争解決のための協議の場を設け、 和解調停もしくは誰もが従わなければならない法的強制力のある判決を下します。
CATの法的権限はコンドミニアム法(1988)に規定されています。

CATは下記の指針にそって運営されています。
   ・ 当事者を主体に考え
   ・公平で適正な紛争解決方法であって、
   ・ コンドミニアムの健全なコミュニティを促進すること

CATに訴えを提起できる人は下記の方です。(本規則では原告と呼ぶ)
   ・ コンドミニアムの部屋の所有者
   ・ コンドミニアムの部屋に抵当権を持つ方(抵当権者)
   ・ コンドミニアムの部屋を購入する方(購入者)
   ・ コンドミニアムの管理組合

裁判は原告が紛争に関わる相手方や管理組合に対する訴えをオンライン申請で提起することから始まります。 規則では原告の訴えの相手方を被告と呼びます。

CATのオンライン紛争解決システム(CAT’s online dispute resolution system)(CAT-ODR)は、 CATのウェブサイトからアクセスできます。原告と被告を事案の当事者と呼びます。

CAT-ODRシステムは、事案の解決に向けて誰でも互いに意見を交換することを可能にします。

CATの紛争解決手順は3段階で構成されています。
   ・第一段階 和解:紛争当事者同士が紛争の解決に向けて協議します。
   ・第二段階 仲裁:CATの仲裁人が紛争の解決に向けて関係者の協議を導き、助言します。
   ・第三段階 裁定:CATの裁判官が証拠と当事者の主張に基づいて紛争解決の最終判決を
    下します。

法律とCATの処理手順についてもっと知りたい方はウエブサイトのガイドから情報を得てください。

A. 通則

1. 目的

1.1 この規則はCATの運用及び紛争当事者が知っておくべきこと、紛争に巻き込まれた
  当事者がCATでなすべきことについて概説しています。

2. 規則の適用指針

2.1 この規則は下記の方法で用いなければならない。
 (a)公平で正当かつ能率的に事案の解決を促進すること。
 (b)法律上の説明ができない当事者への対応を含め、手続きを明確かつ簡単にするために
    当事者が本当に望んでいる事をしっかりと認識すること。
 (c)聴聞なしで最終的に紛争を解決できるように当事者を支援すること。
 (d)事案の複雑さに応じて柔軟に対応し、当事者主体で多くの成果を能率的にあげられる
    よう、当事者及び関係者を公平に支援すること。さらに
 (d)聴聞を行う場合、聴聞が独立した、かつ、予断を持たない者によって行われるよう
    合理的な機会を当事者は保証されなければならない。

2.2 これらの規則は他の訴訟手続法及びコンドミニアム法と共に理解、解釈されなければ
   ならない。

3. 用語の定義

(訳注:括弧の中は原文では仏語ですが、本文では英語で表記しています)(※3) 参照

3.1 この規則の中で使用される用語は下記のとおりです。

 (a)”事案”(Application)とはコンドミニアム法1998の1.36「紛争解決」の規定
    若しくは1.47「和解調停が受け入れられなかったとき」の規定の元で
    CATが実施する事案のことをいう。

 (b)”原告”(Applicant)とはCATに訴えを提起した当事者のことをいう。区分所有者、
    抵当権保持者、建物の一室の購入者、管理組合が原告となることができる。

 (c)”営業日”(Business day)とは事務所が開かれて営業している日のことで土曜日、
    日曜日、法定祝祭日は含まない。

 (d)”訴訟手続き”(Case)とは、コンドミニアム法1998の1.36「紛争解決」の規定、
    若しくは1.47「和解調停が受け入れられなかったとき」の規定における
    CATの訴訟手続きのことをいう。訴訟手続きは判決もしくは紛争の最終解決
    の手続きに入るものすべてが対象となる。

 (e)“同意命令”(Consent Order)とはCATが命じた当事者の同意をいう。

 (f)“文書”(Document)とは印刷された文書、画像、音声及びその他の記録
    又は保管情報をいう。

 (g)“聴聞”(Hearing)とは当事者が自己の立場と主張を述べ証拠を提出する
    過程において、CATの裁判官が法的な決定を下すために原告・被告
    双方からそれぞれ事情を聞くことをいう。
    聴聞期間中に原告、被告それぞれ異なる日に聴取を行う。
    聴聞はオンライン、電話、テレビ会議その他の方法を通じて行う。

 (h)“仲裁人“(Mediator)とは聴聞手続きに入らずに当事者の意見を聞いて
    訴訟事件の解決方法を探るためにCATにより任命された人をいう。

 (i)“裁判官“(Member)とは仲裁及び裁定においてCATが指名した人をいう。

 (j) “命令“(Order)とはすべての当事者が従わなければならないCATが下す
    指示決定の一部をいう。

 (k) “代理人“(Representative)とは訴訟手続きにおいて当事者のために活動
    する人のことをいう。

 (l)“被告“(Respondent)とは裁判の当事者であって原告が提訴した裁判に
    おいて反論する権利を有する人若しくは管理組合のことをいう。

 (m)“和解調書“(Settlement Agreement)とは裁判事件の一部又は全部に
    ついて、当事者同士がお互いに同意した内容を記した文書をいう。

 (o)“当事者“(User)とはコンドミニアム法及び本規則における原告、
    被告、関係人及び管理組合で訴訟手続きに参加する権利を有する
    者をいう。

4. 裁判所の権限

4.1 CATは訴訟手続きにおいて公平かつ当事者の立場で効率的な指示決定を下す
   ことができる。

4.2 それぞれの訴訟手続きにおいてCATは規則の適用除外または期限の変更または
   規則に基づいて他の必要な事項についての決定を下すことができる。

4.3 CATは当事者からの要望に応じて、又はそれらと無関係に当事者に対し
   指示を与え、又は命令を下すことができる。

 

B. 訴訟手続き

5. 訴訟手続き

5.1 CATが他の手段を許可した場合を除き、すべての当事者の文書や意見の提出は
   CATのオンラインシステム(CAT-ODR system)によらねばならない。

5.2 訴訟手続きは原告がCATに紛争解決を求めて事案を提起したときに開始され、
   CATはその有する法的な権限を行使し聴聞を行い、決定を下すものとする。

6. 参加

6.1 CATの目的は紛争解決のために当事者を支援することです。
   当事者は協議に参加し解決のための真摯な努力をはらうことが必要です。

6.2 全ての当事者と代理人の義務は下記のとおりです。

 (a) CATの指示に従ってそれぞれが自分自身のために適当と思われる方法で参加
    しなければならない。通信手段としてEメールや電話やテレビ会議及び
   他の方法を含むオンライン手段によって意思を伝えること。

 (b) どのような争点でも解決と合意に至るための説得力をもち、参加が効果的で
    あるように、十分な情報開示と説明をしなければならない。

 (c) CATの訴訟手続き及びCAT-ODRシステムの訴訟手続きを不正に利用せず、
    公正・正直に行動しなければならない。

 (d) 誰でもCAT-ODRシステムにおいて自分が当事者であると偽称してはならない。

 (e) 意思を伝えるときは迅速に正直に誰に対しても尊敬の念をもって対応しな
    ければならない。

 (f) 仲裁人または裁判官の指示には従わなければならない。

7. 連絡先の告知

7.1 当事者または被告のいずれにおいても自分の連絡先情報をCATと他のすべての
   当事者又は代理人に伝えておかなければならない。
   もしも連絡先に変更があった場合はその情報を裁判所のCAT-ODRシステムを
   用いてできるだけ速やかに更新しなければならない。

   連絡先情報とは
   (a)Eメールアドレス
   (b)郵送先の住所

7.2 CAT及び当事者と代理人は裁判所のCAT-ODRシステム、またはCATの指示による他の
   方法により相互に連絡することができる。

7.3 すべての当事者及び代理人は裁判所のCAT-ODRシステムに接続し、毎営業日ごとに、
   通信ができることをチェックしなければならない。

8. 併合審理

8.1 2名以上の複数の原告又は被告に対する訴訟は併合して審理することができる。

8.2 CATは2件以上の複数の訴訟事件に対して、そのほうが公平であるとCATが
   認めた場合、当事者の同意を得ることなく、聴聞を同時に、又は、分離して
   行うことができる。

8.3 聴聞を同時に行う場合、証拠の開示についてはCATが直接に異なる証拠であると
   認めたもの以外はその証拠は各原告共通の証拠として扱われるものとする。

9. 代理人

9.1 訴訟当事者の代理人については下記のとおりとする。

 (a)オンタリオ州法律協会の免許を得ている弁護士またはパラリーガルの資格者で
   なければならない。   (※2)参照

 (b)法律協会から免許を免除された人で依頼人からの報酬なしで当事者を支援する
   ための裁判所登録会員またはコンドミニアム管理者の資格者を含む。

9.2 代理人はいかなる場合であってもこの規則には従わなければならない。
   また代理人は裁判所の指示または依頼人の意向には従わなければならない。

9.3 代理人は依頼人の代理を開始または終了を含む代理人の異動に関しては、
   代理人または依頼人当事者はCAT-ODRシステムを用いて速やかにCATと他の
   当事者及び代理人に対し告知をしなければならない。

9.4 代理人を変更するとき、CATは審理の公平を確保し、審理の進行の不要な遅延を
   守るための命令を下し、又は変更を命じることができる。

10. 証人の召喚

10.1 CATは当事者の、又は本人自身の自発的な意思による求めに応じて関係人を
   証人として召喚することができる。

10.2 当事者が証人の召喚を要求するときは、紛争に関係して経験した証人の情報
   について端的に説明しなければならない。

10.3 証人として依頼された者は、上級裁判所の民法証人報酬規定に則った報酬金と
   共に証人に関する説明書の写しを受取り、その内容に従わなければならない。

11. 人権コード遵守義務

11.1 人権コードの遵守又は人権侵害の除去を求める全ての当事者、代理人、証人
   はCATに対して同等の権利を有する。そのような者はCATに対して可能な限り
   速やかにCATに通知しなければならない。

12. 英語と仏語の使用

12.1 訴訟手続きの説明はCATの仏語サービス方針に従い英語又は仏語でなければ
   ならない。

C. 文書の公開

13. 文書及び説明の詳細な公開

13.1 訴訟の争点を理解する上で必要な場合、CATは当事者に対し更に詳細な説明を
   命じることができる。これを”開示要求”(disclosure)という。

14. 電子化文書での提出

14.1 CATが許可したEメール及び他の手段以外、文書はCAT-ODRシステムを用いた
   電子化文書と送達手段によらなければならない。

14.2 CATは期日までに規定の様式及び内容でファイルの容量及び数量を制限した
   文書を提出することを要求することができる。

14.3 CATは規定された様式及び内容、ファイルの容量及び数量制限を超えた文書で
   受取ったときは、CATは規定に従った文書の再提出を要求することができる。

15. 紙文書での提出

15.1 CATに対し紙文書を提出する規則がある場合、又は提出すべき現物がある場合は
   下記による。
   (a)個人が直接窓口に提出する
   (b)通常の郵便送達による
   (C)当事者の同意に基づいてCATが指示した場合など他の手段による

15.2 CATに対し紙文書を提出する場合、又は現物を提出する場合の提出日は下記として扱う
   (a)郵便による場合、封筒の消印日から5日後
   (b)個人が窓口に提出する場合、直接窓口で職員に受け渡した日

15.3 郵便による文書又は現物の差出人は、それがCATの要求に適ったものを提出した
   ことを自ら証明しなければならない。

D. 裁判記録に関する公開手続き

16. 公開手続き

16.1 CATはこの規則及びCATの指示命令に加えて、オンタリオ・コンドミニアム庁の
   アクセス方法及びプライバシーポリシーに従うものとする。

16.2 第一段階の和解及び第二段階の仲裁に関するすべての交渉記録は、秘密事項
   として扱われる。同意書に向けて準備段階での、又は第三段階における
   判決前の和解事項及び文書は当事者の同意もしくはCATの許可がなければ
   公開してはならない。

16.3 CAT-ODRシステム上の文書と裁判記録を含む第三段階における判決は公益
   のために合理的に公開されるものとする。ただし公衆からのアクセスは
   裁判が結審した後に遅れて公開されるものとする。

16.4 当事者は CATに対し裁判の記録又は文書の全部または一部を非公開と
   することを求めることができる。

16.5 CATは訴訟事件の各段階における秘密事項を公開から守る必要がある場合は、
   その都度、必要な指示又は命令を下すことができる。その場合、氏名に
   関してはイニシャルを用いるなど匿名化のための処置を施すものとし、
   その実施は当事者からの要求があった後又はCATが主導して実施する。

E. 三段階の手順

17. 三段階

17.1 CAT-ODRシステムは次の三段階で構成されている。 (※1)参照
第一段階 和解:紛争を解決するための当事者による協議を支援
 最初の段階においては当事者同士が紛争解決のための文書と主張を相互に交換
 する。この段階ではCATのスタッフと裁判官は関わらない。
 もし当事者が最終的な紛争終結に同意する場合はCAT-ODRシステムによる和解
 同意書を作成する。最終的な紛争終結の同意に至らなかった場合は原告は
 訴訟費用を払って第二段階に進むことを選択できる。

第二段階 仲裁:CATの仲裁人が関係者と協議・助言、仲裁する。
 この段階では、CATは紛争解決の道を当事者と共に探るための仲裁人を割り当て、 CAT-ODR システムで同意書または承諾命令を発行する。 当事者がこの決定に不服のときは原告は訴訟費用を払って第三段階に進むことを選択できる。

第三段階 裁定:裁判官が証拠と当事者の主張に基いて最終の紛争解決の判決を下す。
 この段階では、CATは紛争解決策を考慮し判決を下す裁判官を割り当てる。 裁判官はCAT-ODRシステムを使用し双方の当事者と個別に協議し審理の日程調整を行う。

各当事者は証拠と各人の主張を裁判官に申述する。
裁判官は法律のもとですべての当事者が従わなければならない最終判決を下すものとする。

18. 裁判前の棄却

18.1 下記のケースでは、CATは裁判の段階に進む前に原告の訴えを棄却することができる。
   (a)それほど重要な争点でもないのにCATへの提訴をもって被告に原告の要求を
     受け入れさせようとする不正な提訴事案

   (b) CATに聴聞又は決定する法的権力が及ばない事案

   (c) 原告が不正な目的でCATを利用しようとする事案

   (d) 原告の虚偽による、又は情報の誤った解釈であることを知っているか、
     または当然に知っていると推定される事案

   (e) 原告が時間がかかる裁判を望まず、または実際に事案に長い時間がかけられずに、
     裁判を断念するとCATが判断した事案

F. 裁判の申請

19. CATへの裁判申請

19.1 CATへの裁判申請はCATが他の方法によることを許可した以外は、CAT-ODRシステムを通じて行う。

19.2 申請内容に問題があるときはCATは原告に対し申請内容の再検討と修正を要求することができる。 これらは下記の場合も含まれる。
   (a) 申請内容が不完全
   (b) 申請が遅延 
   (c) CATが聴聞や判決を下すことの法的権力が及ばない紛争の場合

 

19.3 修正されずに問題を抱えている事案については、 CATは原告に対し、理由を述べて事案は継続されない旨を書類で通知する。

原告にはそれらの事案が継続されることを許可されるべきである理由を文書で提出する機会が与えられる。 それによって、CATは事案を継続するか、却下するかを決定する。

19.4 事案の継続が許可されたとき、CATは原告に提訴事案告知書をその説明と共に文書で通知する。 この告知書には訴訟事件に関係するCAT-ODRシステムへの接続方法についての説明が記載されている。

20. 提訴事案への回答

20.1 提訴事案告知書で指定された被告はCATから他の方法が許可された場合を除き、 CAT-ODRシステムを用いて提訴事案に対する回答をしなければならない。

21. 被告が回答しない場合における裁判所の命令

21.1 被告に届けられた提訴事案告知書、又は原告から被告に届けるようにとCATが指示した詳細な追加の告知書 に対し被告が回答しなかった場合、原告は裁判所に対し、被告からの事情聴取をすることなく裁判所命令を発するよう、 請求することができる。

21.2 下記の経過を経て被告は回答しないと判断される。
   (a) 規則15.1で規定されている送達方法としての事案告知書の紙文書による写しを
     送達した上で、
   (b) 被告が事案告知書の指定期日までに事案告知書の請求事項に対して完全な対応が
     できない場合。

G. 第一段階 - 和解

22. 和解

22.1 この段階では、当事者はCAT-ODRシステムを用いて お互いに文書の提出と各人の主張の交換協議及び和解の申込の交渉を行うことになる。
この段階では、不正な行為若しくはCATの指示に従わない当事者がいて、 相手方当事者からCATに対し、その当事者に注意を促す要請があった場合を除き、 CATのスタッフは関与しない。

23. 第一段階の終了

23.1 裁判所が第一段階で結審とする事例には下記が想定されている。
   (a) CAT-ODRシステム上で当事者同士が紛争のすべての争点について和解が成立したとき
   (b) 原告から裁判を取り下げる旨の確実な告知があったとき、又は当事者間で裁判を
     取り下げる旨の協議が成立したとき
   (c) CAT-ODRシステムを用いた当事者からの協議の申込が30日を超えて原告以外の当事者
     の誰からも為されなかったとき。

23.2 原告は第二段階の裁判費用の支払いをもって第一段階から第二段階に進むことができる。

H. 第二段階 - 仲裁

24. 仲裁

24.1 CATは、第二段階の審理を統括する裁判官を任命するか、または仲裁人となるべき何人かを任命する。

24.2 仲裁人は当事者が十分な説明を受けて争点を理解し適切な合意にいたること、 すなわち仲裁が適切に導かれるよう支援するための指示を与えることができる。

24.3 仲裁人は時には一方の当事者とのみ協議することができる。仲裁人がこれを行うとき、 仲裁人は相手方当事者に対し、本件に関しては議論することなく、1対1の協議を実施することを告知する。(※4)参照

25. 第二段階の終了

25.1 仲裁人が当事者間における和解は成立しないと判断したとき、 第三段階の判決に進む準備ができているかどうかについて仲裁人は当事者と協議をする。 協議には次の事例を含む。
   (a) お互いが同意するにはどのような条件が必要か
   (b) どのような証人の証言若しくは証拠が必要か
   (c) どのようにすれば争点を単純化できるか(争点を絞るにはどうすればよいか)
   (d) 公平、効率的に第三段階の判決まで進めるには他に何が必要か

25.2 仲裁人は当事者が礼儀を欠く行動をしたとき、又はCATの指示に従わないと判断したとき、 第二段階を終了させることができる。

25.3 仲裁人が第三段階に進むことを決定した後、原告は第三段階の裁判費用の支払いをもって第二段階から第三段階に進むことができる。

25.4 CATは次の場合に第二段階を終了とする。
   (a) 紛争解決システムCAT-ODRにおいて当事者が和解調停を成立させたとき
   (b) CATが下した事案の終結に関する「同意命令」を当事者が受諾したとき
   (c) 原告から裁判を取り下げる旨の確実な告知があったとき、
     又は当事者間で裁判を取り下げる旨の協議が成立したとき、
   (d) 30日以上にわたって当事者間の協議がなく、原告に事案の継続を断念
     する意思が見られると仲裁人が判断したとき、または、原告による
     第三段階に進むための費用の納付が第二段階の終了後30日を越えて
     支払われないとき

26. 第二段階の要約と裁判所命令

26.1 原告による第三段階に進むための費用が納付されたとき、 仲裁人は第二段階の要約と裁判所命令を作成し、 この文書はすべての当事者に提供され、裁判官が行う聴聞及び第三段階に進むための決定に使用される。 この文書については下記に示す。
   (a) 第二段階におけるすべての協議の中で当事者の機密情報を尊重するやりかたで事案の
     経過を要約した文書
   (b) 第三段階の審理が公平で能率的、かつ、最終的に決着させるために当事者が
     従わなければならない命令を含む当事者間の協議事項の文書

I. 第三段階 - 裁定

27. 裁判官の任命

27.1 CATの議長又は議長団の代表は第三段階の聴聞及び判決の任に充てる裁判官を任命する。

27.2 第三段階の聴聞と裁決において2名以上の裁判官を任命したとき、 そのうちの1名を統括裁判官とし、第三段階の訴訟指揮の責任者として裁判を統括する任にあたる。

27.3 第三段階の聴聞と裁決において3名の裁判官を任命したとき、CATとしての裁決は裁判官の多数決によって決するものとし、 もしも2名が裁決案に同意し1名が同意しないときは統括裁判官の裁決をもってCATとしての裁決とする。

28. 文書、情報、証拠の公開

28.1 第三段階開始後、すべての当事者はCAT-ODRシステム上で次の文書と証拠を相手方当事者に提示しなければならない。
   (a) 第三段階において証拠として新たに提出するすべての文書
   (b) 第三段階において新たな証人を申請するときは、各証人ごとに求める証言内容の
     短い要約をつけた証人のリスト

28.2 当事者が文書、情報、証拠を提出するときには、いつ、何を、どのようにするかについてCATの指示に従わなければならない。

28.3 当事者が文書、情報、証拠の開示についてのこれらの規則及びCATの指示に従わないときは、 裁判所が許可した場合を除き、それらの文書、情報の使用及び証人申請は無効とする。

29. 証人

29.1 証言を求めて証人申請をする当事者は、CATがその他の方法を認めた以外は、 証人はその証言を文書で提示しなければならない。CATは下記の指示を与える。
   (a) 証人の証言方法と時期
   (b) 他の当事者による証人への反対尋問の方法と時期
   (c) 当事者又はCATが証人に質問し、回答を得る方法と時期

29.2 当事者は、その証人からどのようにして証言を得たいのかを述べねばならない。 例えば、CAT-ODRシステムを用いたEメール、電話、デレビ会議、その他の手段による。 当事者はまた、その証人が経験した証拠となる情報の短い要約を提出しなければならない。

29.3 裁判所は他の当事者及びCATによる証人への反対尋問および質問を許可する。

29.4 証人が紙文書、又はビデオや音声録音で証言内容を提出することを裁判所が許可した場合において、 他の当事者が明確にその証言内容を否定しないときは、裁判所はその証人の証言内容が真実であるとみなす。

30. 指示命令の修正と明確化

30.1 CATはいつでもその指示及び決定事項に関して印刷間違い、計算間違いその他同様の間違いについての訂正をすることができる。

30.2 CATはいつでもその指示及び決定事項に関して不明若しくは不正確と思われる言葉使いをより明確にするために部分的な修正をすることができる。

30.3 当事者はCATから受領した文書中に、部分的な修正またはより明確化するために修正を申し出るには、 文書到着後30日以内にその旨を他の当事者及びCATに提出しなければならない。

31. 当事者が参加する義務や責任を怠った後の再開手続き

31.1 CATは当事者に対する決定を下した後で、下記の事情により、その最終決定の一部又は全部の見直しをすることがある。
   (a) 審議への出席、参加に関する不正があったとき
   (b) CATからの質問に対して不正な回答があったとき

31.2 当事者はCATからの決定を受けて20日以内にCAT-ODRシステムを用いて他の当事者及びCATに下記の詳細な事項の説明を添えて決定の見直しを要求することができる。
   (a) なぜ出席または参加を怠ったのか、その原因
   (b) 審議が再開されない場合、その当事者にとって不公平となる理由

31.3 CATは当事者からの聴き取りなしで、その理由を示すことなく、見直しの要求に応じることができる。

J. 費用

32. 費用の回収と支払

32.1 CATは当事者に対し、他の当事者がCATの利用に関して支払った次の合理的な費用の
   支払を命じることができる。
   (a) 相手方当事者が支払った裁判所費用
   (b) 裁判に参加するために相手方当事者が支払った裁判に関する支払経費及び費用
   (c) 裁判の審議過程において一方の当事者の不合理、不適当、又は不合理な遅延を
     原因として他の当事者が被った支払経費及び費用

33. "弁護士費用は一般的に回収不可能"
33.1 CATは、特別の理由がない限り、一方の当事者に対し他方の弁護士やパラリーガルの
   報酬などの裁判にかかかった諸費用の支払を命じることはない。 (※5)参照

[訳注] (あとがき)  <マンションNPO解説>

このCAT実務規則は2017,11,1施行の後、2018.7.1改正施行されています。 係争実務に即して権利義務と手続きがより明確化され、内容も追加されています。 Webで検索すると新旧両方出てきますから注意してください。

念のため本稿の元となった2018.7.1改正施行版原文を提示しておきました。
ダウンロード    [CAT Rules.pdf]  (PDF 176kb)

(※1) CAT(Condominium Authority Tribunal)のオンライン紛争解決システム(CAT-ODR)= (CAT’s online dispute resolution system)は全体で6段階の紛争解決プロセスが用意されています。  この実務規則ではCATの処理手順を3段階で説明していますが、 それは土俵に上がって戦う時の「和解」から始まる3段階の手順(訴訟手続き)で、実際には土俵に上がる前の2段階(非訴手続き)と土俵を下りた後も1段階あります。

オンライン紛争解決システム(CAT-ODR)の6段階の紛争解決プロセス
1. Filing a case(提訴前本人相談)⇒2. Joining a case(提訴前当事者協議)⇒3. Negotiation(和解) ⇒4. Mediation(仲裁)⇒5. Tribunal Decision(判決)⇒6. After your case(結審後相談)

非訴手続き
1. Filing a case(提訴前本人相談):
提訴しようと考えている人は事前にCATに相談できます。 相談はそれ自体完結した紛争処理制度ではなく、紛争の予防(紛争として具体化する前に和解できる可能性を探る)、ないし、 紛争処理の準備のためのものです。
日本における私的紛争処理の「和解(示談)」(日本の民法695条)に相当します。

2. Joining a case(提訴前当事者協議):
相手をいきなり裁判という土俵に乗せる前にまずは相手の言い分を聞いて、 できるならCATに持ち込む前に解決できないかを探ります。 これは相談を受けた機関が法令上の根拠を有する公的機関であり、 紛争の相手方や公的機関との交渉においても影響力の行使が期待されるところで、 日本での司法機関が関与する「起訴前和解(即決和解)」(日本の民事訴訟法275条)に相当します。

6. After your case(結審後相談)は、 判決で示された解決法と異なる他の選択肢を考える当事者にCATが規則と方針について説明する制度です。

調停前置主義
合意による紛争処理手続きを促進するために、審判や訴えを提起できる場合にも、 まず調停を申立てしなければならないとする「調停前置主義」は、日本の家裁の身分関係事件制度にもあります。 (日本の家事審判法第19条〜)。 CATはこの調停前置主義をとっています。

(※2) 弁護士の国別の呼び方

 一般的に弁護士全般を指すのは世界共通に ローヤー(Lawyer) ですが、
 専門別に法廷弁護士と事務弁護士にわかれていて国ごとに呼び名も変わります。

弁護士(Lawyer)の国別の呼び方
国別法廷弁護士事務弁護士
英国バリスタ(Barrister)ソリスタ(Solicitor)
米国カウンセラ(Counselor)アターニ(Attorney)
カナダローヤー(Lawyer)パラリーガル(Paralegal)

事務弁護士は法律相談や法律書類の作成・管理を行い、 法廷弁護士の訴訟・事務連絡などの手伝いをする。上級裁判所法廷での弁護はできない。
・ アターニ(Attorney)は英国では法律手続きの代理人を指す。
・ パラリーガル(Paralegal)は米国では弁護士見習い(助手)を指す。
・ ザ・バー(the Bar)は、英国とカナダでは法廷弁護士、米国では法曹界、法律関係者を指す。 アメリカ法曹協会(American Bar Association 略称ABA)
・ 英国及びカナダでは法廷弁護士は職業名としてはバリスタ(Barrister)/or/ローヤー(Lawyer)ですが、 法廷で活動中はカウンセル(counsel)と称し、 判決文(ORDER)の中ではcounsel for the Respondent(被告側弁護士)のように表示される。

(※3) カナダは1969年に英仏両語を公用語と定めたたバイリンガル国家です。
英国系入植者の多いオンタリオ州では英語、 スランス系入植者の多いケベック州では仏語が第一原語となっています。 1982年憲法で追加された「権利と自由の憲章」に言語選択の権利が盛り込まれた。

(※4) 24.3項は、民事訴訟手続きの原則のひとつである立会権(当事者は自己の利益を守るため、 審理のあらゆる機会に立会う権利)の否定と取られかねないものですが、元々、当事者双方対席の上、 平等に主張、立証の機会を保証する「対審原則」ないし「口頭弁論(中心)主義」の原則を前提とした立会権は、 電子書面主義のオンライン紛争解決システム上では、実務上、そのままの形では適用できない。 日本の家事事件にも当事者尋問等の公開停止(人事訴訟法22条)があるが、 これは個人のプライバシー保護からきている。

(※5) 弁護士費用は原則として相手に請求できないというのは日本でも同じです。
     詳細は    14. 弁護士費用を請求できるか を参照ください。

2018.11.25 掲載