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1.5 XBRLの概要

  財務報告書は一般に、記録と慣習と判断の総合的表現と言われているように、 作成する管理組合自身の、或は委託している管理会社の会計実務に、 会計慣行と会計判断が複合されて作成されています。 従って、財務報告書には管理者の主観的な判断がある程度反映するのは避けられません。

各管理組合の決算報告書は、さまざまな様式で表現されており、 比較するときにはかなりの困難を伴います。 しかしながら、商法、税法、証券取引法などで財務報告書が細かく規制されている企業会計の分野でさえ、 勘定科目の種類や名称、体系がまったく同じ会社など、同一業種でも存在していません。

会計は、各社がその方針をある程度政策的かつ柔軟に決定できることになっており、 それが望ましい面もあります。 その現実を肯定した上で、どのようにして比較可能性を実現するのかについて、一つの解決方法が提示されてきました。 それがXBRLです。

いずれ管理組合の決算報告書もこのXBRLを採用した動きになるかも知れませんので、 ここでXBRLの概要について触れておきたいと思います。

1.5.1  比較可能性を実現するXBRL言語


チャールズ・ホフマン(Charles Hoffman)はXBRLの父と呼ばれています。
公認会計士協会(AICPA)が2009年に発行した「私たちの新しい言語の物語」「The story of our new language」にはチャーリーがXBRLを考えついて行動を起こしたとき、AICPAのメンバーが関わって大きなプロジェクトへと展開していったストーリーが(著者自身の表現によると”exciting journey”として)書かれています。

1.5.2 XBRLの誕生<Charles Hoffman Father of XBRL>

1998年当時チャーリーは公認会計士協会(AICPA)のメンバーでした。

ワシントン州タコマ市(Washington, Tacoma)の会計事務所で会計士として中小企業のコンサルタントをしていたとき、チャーリーを悩ませた問題は、コンピュータアプリケーションがお互いの間で情報交換ができなかったということでした。1980年代までには、特定のビジネス機能、即ち、総勘定元帳、給料支払名簿または税金など、:そのすべてが個別の業務アプリケーションの増殖を生んでいました。その後、 表計算ソフトの出現はビジネスの上でコンピュータ革命をもたらしましたが、個別の業務アプリケーション間のデータ互換がやりやすくなったとはいえ、依然、手作業での加工が必要でした。

1994年以降、SEC(Security and Exchange Commission、証券取引委員会)は企業が提出する財務諸表は、一部の例外を除き、ホームページの記述言語であるHTML、若しくはテキストファイル形式で財務データを電子化してSECのサーバー上のEDGARデータベースへ送信することを義務付けました。

  (ちなみに日本の東京証券取引所でシステムを開始して電子化を義務付けたのが、4年後の1998年(平成10年)4月です。)

財務諸表のHTM化は手間がかかりすぎること、EDGARデータベースにあるデータを利用しようとしても二次加工がしにくいことが問題でした。そこで、チャーリーは当時、すでに広く応用されていたXML言語に注目します。

XMLは、1986年に国際規格ISOで規格化されたSGMLという言語をインターネット上で活用できるようにした規格で、XMLデータを視覚的に手作業で確認しながら表計算ソフトに取り込めること、入力や加工が可能などの利点から、すでに企業間の電子商取引や関係会社間のデータ交換に使われていました。

但し、XMLは言語仕様にすぎず、XMLを使うためのアプリケーションが必要です。

1998年4月、チャーリーはXMLを応用した財務報告書作成のためのHTML言語の応用としてタグ付言語の試作に着手し、公認会計士協会(AICPA)の新技術調査チーム(New Technology Task Force)の委員長であったウェイン・ハーディング(Wayne Harding)にその構想を説明します。
ハーディングは、好奇心をそそられ、7月に彼らがともに出席していたシカゴでの会議でチャーリーに会いました。
そしてアリゾナ州のセドナ(Sedona, Arizona)での今度のAICPAの新技術調査チーム特別委員会の会合で、チャーリーの考えをプレゼンテーションするように依頼します。
2ヶ月後の1998年9月、チャーリーはオンラインでグレートプレインズソフトウエア会計システムからリアルタイムで在庫データを取り出すプレゼンテーションを成功させます。
合衆国の小さな町の独身の会計士(CPA)が、世界を変える大きな仕事を成し遂げた一瞬でした。

特別委員会の動きは素早いものでした。

特別委員会チームメンバーのカレン・ウォーラー(Karen Waller)はXML原型を築き上げるための開発資金の提案をします。

1999年1月、試作品が完成し、これをビジネスに展開するためのプロジェクトXFRML(XML-based Financial Reporting Markup Language)が発足します。

その後、この長いコードネームは2000年4月に現在の「XBRL」に改称されます。(XpL:eXtensible Business Reporting Language:拡張可能な事業報告書用言語)

2006年,チャーリー(チャールズ・ホフマン)はAICPAから特別賞(Special Recognition Award)を受賞しています。

1.5.3 XBRLの定義

「財務情報の作成・流通・利用が可能となるように、XML(eXtensible Markup Language)を用いて標準化された財務報告・事業報告用のコンピュータ言語である」

XBRLの仕様については、この頁では詳細に説明しません。
詳しくは、XBRL Japanのホームページ から 「XBRL Fact Book」をダウンロードしていただくことをお勧めします。

XBRLでは財務情報を記述するために、タクソノミー(Taxonomies)とインスタンス(instances)文書という2種類の文書を用います。

XBRL仕様書は、「どのような雛形を作るか」という基本ルールをまとめたものです。
これは世界共通です。

この仕様書に基いて作成される電子的な雛形を「タクソノミー」と呼びます。
タクソノミーとは分類学という意味です。

タクソノミーは、各国のXBRL組織によって開発が進められており、制度別や業種別など様々なタクソノミーが用意されています。

この雛形を基にして数字を埋め込んで作成された財務諸表のことをインスタンス文書と呼びます。

コンピュータ言語の世界で属性が実際の値をもち、参照構造を実体化したものをインスタンス(instance)と呼びます。
これは、オブジェクト指向言語のオブジェクトに近い概念を表しています。

情報の利用者が経営分析を行ったり、企業間でやりとりされたりする財務データの実体は、このインスタンス文書です。
これにより、財務データはすべてXBRLという共通の標準で作成することになるため、比較可能性や検証性が大幅に高まることが期待されており、情報の適時性、正確性、透明性が高まることが期待されています。

1.5.4 日本におけるXBRLの導入

東京証券取引所おける適時開示情報伝達システム(TDnet:Timely Disclosure network)でのXBRL対応は2008年7月より適時開示制度における決算情報(決算短信等)について、XBRLを本格導入しています。
 詳細は、東京証券取引所のホームページを参照下さい。