「建物設備の知識」 > 「防火管理 目次」 > 【前頁】 14. 住宅用火災警報器 > 15. 消火器設置基準 > 【次頁】 15.7 消火器の緊急点検を

15. 消火器の規格改正と設置基準

目次

15.1 消火の原理
15.2 消火器の種類(蓄圧式と加圧式)

15.3 消火器の用途と種類
15.4 消火器の耐用年数

15.5 消火器設置基準
15.6 悪質な消火器点検業者の手口

老朽化した消火器の破裂事故などをふまえて消火器の規格改正が行われました。

平成22年総務省令第111号「消火器の技術上の規格を定める省令の一部を改正する省令」により、

@ 平成23年(2011年)4月1日より、製造から10年を経過した消火器に対する耐圧性能点検(水圧点検)が 義務付けられ、以後3年ごとの水圧点検が必要となりました。平成22年(2010年)12月22日消防庁告示第24号

A 平成24年(2012年)1月1日に旧型式の消火器は型式失効となり、新規に製造・販売・設置はできなくなりました。

※型式失効とは、規格・省令等の改正により、既に型式承認を受けた機器の形状等が規格に適合しなくなり、 型式承認の効力を失うことをいいます。失効した場合、消火器として認められません。

B 特例として、既に設置されている消火器は、平成33年(2021年)12月31日まで継続して設置可能です。 (同・総務省令第112号)平成23年1月1日から11年間に限り令第30条第1項及び危険物政令第22条第1項の特例

 業務用消火器の適応火災表示マークも改正されています。(下図)

 メーカーも老朽化消火器による破裂事故の発生、不用消火器の回収・リサイクルの促進に対応して、 従来、主力だった加圧式から、より安全性能の高い蓄圧式に生産をシフトしています。

 既に設置されていて型式失効となっている旧型の消火器は、点検サイクルにあわせて平成33年(2021年)12月31日までに 新型の消火器へ順次、切り替えていくことになります。

1. 消火の原理

 「燃焼の3要素=燃料・酸素・温度」の3つがそろって燃焼し、連鎖反応を継続します。
    消火とは、燃えるものを取り去る以外の、酸素を遮断する、温度を下げる、連鎖反応を遮断することから
    成り立っています。

1. 温度を下げる :可燃物の一般的な着火温度は150℃以上です。
    放水による消火で燃焼物を着火温度以下に冷却します。
    水が熱を吸収して蒸発するときの吸収熱により更に冷却します。
    (水1リットルが蒸発するときの吸収熱は約2,500ジュール)
    水が蒸発すると水蒸気の容積は1,600倍になるので、空気中の酸素濃度を薄め、
    酸素を遮断する効果もあります。

2. 酸素を遮断する :空気中の酸素濃度は通常21%ですが、これを16%以下にすると燃焼は止まり、
    鎮火に至ります。
    消火器は、酸素濃度を低下させる量の消火剤(二酸化炭素、ハロゲン化物、窒素など)を放出します。
    天ぷら油は350℃前後になると自然発火し火災を生じます。

    強化液消火薬剤は主成分の炭酸カリウムに対し燐酸一水素カリウム・燐酸二水素カリウム・
    炭化水素系界面活性剤・フッ素系界面活性剤などを配合するなどしてpHを低く押さえ、界面活性剤は、
    天ぷら油・灯油・ガソリン等の油火災の消火時に泡状の膜を形成し、酸素を遮断します。

3. 連鎖反応を遮断する :燃焼中に発生する水素イオンと水酸化イオンは燃焼の連鎖反応を
    拡大させていきます。
    消火器は、連鎖反応を遮断する消化剤(ハロゲン化物、粉末消化剤)などが使用されます。
    粉末消火薬剤は、原料として燐酸二水素アンモニウムを使用したものが一般的で、この他、
    炭酸ナトリウムなどを原料としたものが一部使用されています。

    燐酸二水素アンモニウムを原料とした粉末消火薬剤は、最近ではコスト削減を目的として、
    燐酸二水素アンモニウムの一部を硫酸アンモニウムに置き換えたものが製造されるのが一般的です。
    その他ホワイトカーボン、シリコン樹脂、染料などの添加剤が用いられます。

2. 消火器の種類(蓄圧式と加圧式)

普及型の最も一般的な消火器の例

 旧型の加圧式です。(クリックすると拡大します)
消火器の型と方式
ABC消火器で、3kg〜3.5kgの薬剤重量を持つ消火器を「消火器10型」と呼びます。
他に薬剤重量で3型(1kg)、4型(1.2kg)、5型(1.2kg)、6型(2kg)、20型(6kg)があります。
ABC粉末消火器10型の消火能力は通常、A3、B7、Cの能力を持っています。(右欄 参照)
ABC粉末消火器には、ガス加圧式と蓄圧式があります。(詳細下記参照)

消火器には火災種別によって下記の3種類があります。
A(普通)火災
B(油)火災
C(電気)火災

(参考省令)
「消火器の技術上の規格を定める省令」
「消火器用消火薬剤の技術上の規格を定める省令」
日本消防検定協会「消火器用消火薬剤の検定細則」

消火器の消火能力

消火器の消火能力はどの大きさの「火災模型」を消火できたかで決まります。

A火災
A火災模型(オイルパンの上に8u(およそ4畳半)に長さ73cmの乾燥した杉の角材90本を井桁に組んだもの)の下のオイルパンにガソリンを入れ点火してから3分後から消火を開始し、 消火薬剤の放射終了後2分以内に再燃しない場合、それらの模型は完全に消火されたものとして能力単位A1が与えられます。A3はA1の3倍の能力を示します。

B火災
B火災模型(燃焼面積2,000cu、一辺の長さ44.7cmのオイルバン)に水12cm、ガソリン6リットルを3cmの深さになるように入れて点火し、1分間の予燃焼後から消火を開始し、 消火薬剤の放射終了後1分以内に再燃しない場合、完全に消火したものとして能力単位B1が与えられます。B7はB1の7倍の能力を示します。

C火災
電気設備などに設置する場合、感電する恐れがあるか否かの区分であって、能力の単位はありません。配電盤、コンセントなどの火災でも感電しないで使用できるものにはCの表示が記載されています。

(こんな悪質点検業者の手口に注意)

項目蓄圧式消火器 加圧式消火器
構造常時0.98MPa 以下のガスで充圧 放出時加圧用ガス容器で加圧
日常点検指示圧力計で状況を把握容器等の外観腐食等で判断
容器腐食時の安全性腐食箇所から圧力漏洩により放射必要圧の低下。容器腐食の場合、設置状態では不明。使用時の閉塞圧により破裂の恐れもあります。
圧力源窒素(N2)ガスを蓄圧二酸化炭素(CO2)・窒素(N2)ガスで加圧
放出時均一に0.7〜0.98MPa の圧力瞬間的に1.2MPa まで加圧
放出状態均一の圧力で放出加圧直後が最高圧力
使用性レバー操作(レバーを握る力)に小さな力で操作可能 (40N、4.0 sf)レバー操作(レバーを握る力)にある程度の力が必要 (78N、8.0 sf)
一時放射ストップ機能全機種有り最も一般的な開放式には無い・一部の開閉バルブ式にはある
その他

  レバーを上げると噴射され、下げると噴射が止まります。消火器内部に高圧の空気、窒素ガスや炭酸ガス、ヘリウムガスを充填したもの。薬剤は常時加圧されていて、レバー操作により圧力を利用して放射します。 内部圧力を示す指示圧力計(ゲージ)の取付が義務付けられています。現在国内では水消火器、強化液消火器、機械泡消火器、粉末消火器の一部がこの方式を採用し、 73℃になると自動的に安全栓が外れ自動的に放射される粉末ABC消火器も発売されています。 二酸化炭素消火器など消火薬剤そのものが圧力を持つ場合もあり、こちらは「自圧式」とも呼ばれます。(右図は圧力ゲージの例)
ガス加圧式より価格は高くなりますが、消防庁では、使用する人の安全の為にも、早期に加圧式消火器を畜圧式消火器への交換を勧めています。(平成22年12月22日消防予第556号)
新規格消火器の販売は、平成23年2月10日より販売開始しています。
畜圧式消火器に関しては、製造年より5年間は外観点検のみとし、機能・内部点検は5年を超えたものが対象となります
   (※加圧式は従来通り3年を超えたものが対象となります) 

  一旦レバーを上げると全量噴射される開放式が一般的です。内部に加圧用のガスが封入された容器があり、使用時にレバーを操作するとカッターにより内容器の封板が破れガスが噴出、容器に充てんされた薬剤が攪拌された後、放射されます。
レバーにバルブ機構を備え、手を離すと噴出が止まる「開閉バルブ式」、一旦レバーを握ると全量が放出される「開放式」の2種類がありますが、外観から使用済みかどうか判断するのが困難なため、 薬剤量が3.5Kg以上の粉末消火器には作動によって識別できるよう、 使用済み表示装置の装着が義務付けられています。 左図の10型ガス加圧式(薬剤量が3.5Kg以下)には、ゲージはなく、一旦レバーを握ると全量が放出される「開放式」です。 炭酸ガス加圧式と窒素ガス加圧式がありますが、現在は窒素ガス加圧式が多くなっています。

設置消火器が加圧式の場合は、破裂しないバーストレス消火器への早期の取替えをお願いいたします。(平成22年12月22日消防予第556号)

消火器の交換

(注) この単価は、平成21年2月現在の加圧式のものです。
平成23年以降、市場の主流は蓄圧式に替わり、価格も高くなっています。
(加圧式ABC粉末10型で4,000円前後だったものが、蓄圧式の同型で26年3月現在、6,000円前後くらいになっています。)

3. 消火器の用途と種類




着火物 粉末系消火器 水系消火器
ABC粉末 BC粉末 強化液
(霧状)
水(浸潤剤等入)(棒状) 機械泡 化学泡 二酸化炭素



木製品 × ×
紙・繊維製品等 × ×
ふとん類 × ×
ゴム・
セルロイド類
× ×
合成 樹脂類




引火性
油類等
(ガソリン等)
×
動物性油類
(天ぷら油等)
× ×
礦物油類
(灯油等)



電線被類
(通電中)
× × ×

◎:非常によく消火できるもの
○:消火できるもの
△:完全に消火できないが、火災を抑制できるもの
×:消火できないもの

噴射された粉末によって周囲が汚染されるのを避けたい場所では、強化液消火器が使用されます。
写真は電車の車内に設置されている強化液消火器の例です。(平成21年撮影当時の旧型式です。現在は切り替わっています。)

(注)車両や舟車(船舶)に設置する消火設備の適用基準は消防法ではなく、消防法施行規則第10条(車両に係る消火器具に関する基準)で、鉄道営業法、軌道法若しくは道路運送車両法またはこれらに基く命令の定めるところによるとしています。

技術の進歩に則して、防災機器も、より優れた性能のものを供給する必要がある為、新しい規格に合わないとき、総務大臣により「型式失効」となる場合があります。 消火器は必ず「国家検定合格品」(検定合格表示)であること、「型式失効」になっていないことを確認してください。

種類
      性能
粉末消火器 強化液消火器
薬剤量 1.5kg以上 3.0以上
放射時間 約10秒から14秒 約16〜40秒 
放射距離 3〜8m 4〜10m 
重    量  3〜5kg 6〜7kg
特    長

  粉末による窒息効果で一瞬のうちに炎を抑え消火できるが、 浸透性がなく、冷却効果がないため、燃えているものによっては再燃することがあるので、 これを防止するためには更に水をかける必要がある。薬剤の放射時間と放射距離が強化液消火器と比べて短い。
 
 狭い部屋などで使用すると薬剤が部屋いっぱいに広がり、視界が非常に悪くなり、避難経路がわからなくなる可能性がある。 粉末により汚染されるため、洗浄して復旧するのに時間と費用がかかる。汚染を避ける場所では、中性強化液消火器を使用する。
ABC粉末薬剤は熱により分解し、僅かではあるがアンモニアガスを発生させる。

強化液は中性のものと強アルカリ性のものがある。使用温度が20〜40℃のものもあるので注意要。  浸透性があり、冷却効果があるため、木材などの火災には有効。瞬間的に炎を消すことはできないが、冷却効果を持ち、粉末消火器と比べ、放射時間、放射距離は長い。 
 水系薬剤であるため、水と作用して発熱する危険物には使用できない。
 また、強アルカリ性のものは下記、注意

 粉末(ABC)消火器と強化液(強アルカリ性)消火器を併用使用した場合、刺激臭のあるアンモニアガスが発生し、 また、アンモニアガスだけでなく火災により生ずる燃焼生成物の人体への影響も考慮する必要があることから、消火を確認した上で換気を行ったり、 長時間その場所に留まらないように留意する必要がある。密閉性の高い小空間での併用使用は注意を要する。

4. 消火器の耐用年数

 従来の消火器は、製造物責任法(PL法)のもとで、集積されたデータなどによって 安全係数を算出、実際に起こった人身事故例の製造経過年数なども加味し、日本消防設備安全センターによる6万本以上にわたる追跡調査や、 具体的な不良データなどを加えて、「耐用年数」を8年と設定していましたが、規格改正に伴い、業務用消火器は「設計標準使用期限」としておおむね10年、住宅用消火器 の使用期限(期間)は、おおむね5年としています。

「設計標準使用期限」とは、標準的な使用条件の下で使用した場合に安全上支障がなく使用することができる標準的な期間又は期限として設計上設定される期間又は期限のことを言います。

 各消火器メーカーではこの「設計標準使用期限」をそれぞれ定めていますので、その期限を超えている場合は新しい消火器に更新します。 法定点検の義務がある事業所の場合、製造年から10年を経過した消火器は耐圧性能点検を行い、以降3年ごとに耐圧点検を行う必要があります。

 但し、「設計標準使用期限」や「耐用年数」は保証期間を意味するものではありません。サビや腐食、変形や機能に異常が見つかった場合は「耐用年数」以内でも速やかに 新しい消火器とお取替え下さい。消火器は、消火薬剤の放射に必要な高圧力に耐えられるよう、国の定める規格により製造されています。
しかし、使用期限が過ぎた古いものや、期限内でも腐食したり、キズ、変形があるなどの“疲労した”消火器は、その強い圧力に耐えきれず破裂することがあります。 消防訓練にこのような疲労した消火器を使ったために、本体が内部の「加圧ガス容器」の圧力に耐えきれずに破裂し、人身事故に至ったケースも報告されています。 耐用年数を経過した消火器は、たとえ消火訓練でも決して使わないでください。また自分で分解したりすることもおやめください。

設置環境の悪い場所、例えば高温多湿の場所や潮風の当たるところなどでは「耐用年数」に耐えられないことがありますので、 塩害のある場所や開放廊下などの雨水がかかるような場所では、格納箱に設置するなどの保護が必要です。定期的な点検や維持管理にも十分ご注意下さい。

5. 消火器設置基準

どんな消火器を設置しなければならないか

(消防法施行令別表第二)
 共同住宅の場合、「建築物その他の工作物」として、水、泡消火器のほか、「りん酸塩類等を使用する消火粉末を放射する消火器」(ABC粉末消火器)が適応対象消火器になっています。「炭酸水素塩類等を使用する消火粉末を放射する消火器」及びハロゲン化物を放射する消火器 は、電気設備や危険物の一部の用途に適用するもので、「建築物その他の工作物」としては適用になっていません。
また、二酸化炭素又はハロゲン化物を放射する消火器は地階、無窓階その他の場所に設置できません。
   (消防法施行令第10条1項)

消火器の設置条件

(1)「面積による計算式」・・・(延べ面積を消火能力で割った本数を、歩行距離20m以下おきに配置します。)
   (消防法施行規則第6条6項)
  F => S/FS
  F・・・・・消火器具の能力単位の数値の合計表
(能力単位は消火器本体に表示されています。「消火器10型」でA3とある場合、3です。)
  S・・・・・消火器具を設置する防火対象物又はその部分の階ごとの延べ面積又は床面積(u)
  FS・・・・共同住宅の場合は100u、但し耐火構造は200u、その他のものは、消防法施行規則第6条参照

消火器設置計算方法

共同住宅(耐火構造)
住居部分床面積445u/9階 ・ 屋上電気室50u
床面積445u×9=4005u
4005u÷200=20(単位)・・・・・A火災用20単位以上必要
粉末(ABC)消火器10型設置の場合は(A-3・B-7・C)でA能力が3単位ですので、20(単位)÷3 = < 7 本以上ですが、階ごとに歩行距離20m以下となるように設置すると
(基準階で歩行距離20mの設置基準で必要な本数=2本)×9階=18本が必要本数です。
(注):共同住宅・耐火構造の基準面積は200u
屋上電気室50u÷100=0.5 < 1 (単位)・・・・・電気火災用消火器1本以上必要 (注):電気室の基準面積は100u

(2)「歩行距離 その他 設置のしかた」
  (1) 消火器具は、防火対象物の階ごとに、防火対象物の各部分から、それぞれ一定の消火器具に至る歩行距離が20m
    消火能力が10以上の大型消火器にあっては30m以下となるように配置
します。
    * (防火対象物の各部分から、消火器まで実際に人が歩いたときの動線で測った距離)
    (消防法施行規則第6条6項・大型消火器は同第7条1項)
  (2) 消火器具は、通行又は避難に支障がなく、使用に際して容易に持ち出すことができる位置に設けます。
    (消防法施行令第10条2項)
  (3) 消火器具は、床面からの高さが1.5m以下の箇所に設けます。
    (消火器具の下端ではなく、全体が当該高さ以下の意)(消防法施行規則第9条1項)
  (4) 消火器具は、水その他消化剤が凍結し、変質し、又は噴出するおそれが少ない箇所に設けること。
    但し、保護のための有効な措置を講じたときは、この限りではありません。(消防法施行規則第9条2項)
  (5) 消火器具は、本体容器又はその他の部品の腐食が著しく促進されるような場所(化学工場、メッキ工場、温泉地など)、
    著しく湿気の多い場所(厨房など)、たえず潮風又は雨雪にさらされる箇所などに設置する場合は、適当な防護措置をします。
    (『消防用設備等の点検要領の全部改正について(平成14年6月11日 消防予第172号)』
  (6) 消火器には、地震による振動等による転倒を防止するための措置をします。
    ただし、粉末消火器その他転倒しても消化剤が漏出するおそれのない消火器にあっては、この限りではありません。
    (消防法施行規則第9条3項)
  (7) 屋外に設置する場合は、格納箱に収納するなどの防護措置をします。
  (8) 消火器具を設置した箇所には、次の通り表示した標識を見やすい位置に設けます。
    (赤地に白文字、24cm×8cm以上)(消防法施行規則第9条4項)
    (1) 消火器にあっては「消火器」
    (2) 水バケツにあっては「消火バケツ」
    (3) 水槽にあっては「消火水槽」
    (4) 乾燥砂にあっては「消火砂」
    (5) 膨張ひる石又は膨張真珠岩にあっては「消火ひる石」


消防法における建築面積、床面積の計算

(1)建築面積
   建築面積は、建築物(地階で地盤面上1m以下にある部分を除きます。)の外壁又はこれに代わる柱の中心線(軒、ひさし、 はね出し線その他これらに類するものでその中心線から水平距離1m以上突き出たものがある場合、その端から水平距離1m後退した線)で囲まれた部分の水平投影面積とします。 
(2)床面積
   建築物の各階又はその一部で壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積とします。壁を有しない建築物でも、その用途、設備及び利用状況等から見て建築物の屋内部分 (居住、執務、作業、集会、娯楽、物品の陳列、保管または格納その他屋内的用途に供する場合)とみなされる部分は床面積に算入し、ポーチ、ピロティ、バルコニー、吹きさらしの片廊下などは床面積に算入しないとされています。
(3)延べ床面積
   建築物の各階の床面積の合計とします。但し、建基令第52条第1項、第2項、第4項、第59条第1項(建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合の最高限度にかかる部分に限る。) 、第59条の2第1項並びに第60条第1項の場合は自動車車庫その他の専ら自動車の停留又は駐車のための施設(誘導車路、操車場所及び乗降場を含む。)の用途に供する部分の床面積は算入しません。この 但し書きの規定は、駐車場の面積については、その敷地内の建築物の各階の床面積の合計の1/5を限度として適用するものとします。

点検・報告の概要

@点検及び報告の義務(消防法第17条の3の3)
 防火対象物の関係者は、その防火対象物に設置されている消火器具について、総務省令で定めるところによ り、定期的に、防火対象物のうち政令で定めるもの(施行令第36条)にあっては乙種第6類の消防設備士又は第1種 消防設備点検資格者に点検させ、その他のものにあっては自ら点検し、その結果を消防長又は消防署長に報告 しなければならない。

A点検の内容と期間(平成16年消防庁告示第9号)
 消防法第17条の3の3の規定による消火器の点検は、機器点検により、6か月に1回以上行うものとする。
 機器点検の項目内容: ●設置状況 ●外形の点検 ●内部及び機能の点検

B防火対象物の点検の範囲(施行令第36条第2項)
 法定資格者が点検をしなければならない防火対象物は下表に掲げる防火対象物とする。(詳細は令第36条第2項参照)

C点検結果の記録及び報告期間(施行規則第31条の6)
 防火対象物の関係者は、点検を行った結果を維持台帳に記録するとともに、下表の区分に従い、期間ごとに消 防長又は消防署長に報告しなければならない。(詳細は施行規則第31条の6参照)

D罰則(消防法第44条)
 消防法第8条の2の2第1項又は第17条の3の3の規定による点検報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、 30万円以下の罰金又は拘留に処する。


6. 「悪質な消火器点検業者」の手口

(紹介事例は平成9年12月1日付 消防庁予防課長発・消防予第186号記載事例です)
 防火対象物に設置されている消火器について下記のような手口の点検を行う業者により、不適切な点検の実施、消火器の未設置状態、不当に高い点検手数料の請求などのトラブルが発生しています。充分 注意してください。

消火器の不適正な点検等を行う業者の手口について

1 狙われる防火対象物
 消火器を相当数設置している防火対象物を狙う。
 特に
 1. 支店、出張所等出先が多い事業所
 2. スーパー・百貨店等店舗数の多い事業所
 3. 私立の学校、幼稚園その他の施設
 など、施設管理の間隙を狙われることが多い。

2 出入りの点検業者を装う
  「〇〇日、消火器の点検に伺います。」
  「消火器の点検にきました。」
  「いま、〇〇店にいますが、〇時頃、そちらの点検に行きます」
 などと、出入りの点検業者を巧妙に装い、関係者を信頼させる。

3 集める・調べる
 1. 点検の承諾を得ると、施設内の消火器を素早く集める。
 2. どこの業者がいつ点検しているかを把握して、点検の理由づけをして契約書を作成する。

4 契約書に署名を求める
 1. 窓口で「消防用設備点検等契約書」(B5判の半分の大きさ)に署名又は押印を求める。この場合、出入りの点検業者と勘違いしているため、契約書の内容を確認せず署名、押印してしまう。
 2. 出入りの点検業者と関係ないことや、点検等の理由づけがいつの間にか 記入され、一見、合法的な契約書になっている。

5 代金を請求する
 1. 点検用車両に消火器を積載して持ち帰り(近くにステーションを設けている。)、頃合いをみて請求書を提出し支払いを求める。
  ・ 製造年月3年以内の消火器(法令上、原則として機能点検を要しないこととされている。)を全数機能点検の代金を請求する。
  ・ 出入りの点検業者が点検した直後であっても、全数機能点検で代金を請求する。
 2. 金額が著しく高額である(ここで初めて悪質業者の被害にあったことに気づく)。
 3. 勘違いにより点検を依頼した旨を告げると「契約書」を示し、合法的な契約であることを主張する。

6 脅迫する
 1. 支払いしないのであれば、裁判にする。
 2. 会社の営業ができないようにしてやる。
 3. 家族に災難がかかるかも知れない。
 などと、脅迫的な言動で支払いを要求する(多くの、被害者は、ここで泣き寝入りして、会社または、押印した個人が支払いするケースが多い。)

7 消火器の返還を拒否する
  (著しく高額であるため)代金を支払わない場合、
 1. 「支払いするまで消火器を保管する」と言って消火器を持ってこない。
 2. 「消火器の保管料を請求する」と言う。
 3. 支払いを拒否したところ、消火器が返還されない。
 などと、持ち去った消火器の返還を拒否する。

8 不誠実な点検を行う
 1. 薬剤の詰替えをしないで、詰替えをしたように見せかけて「詰替料」を請求する。
 2. 詰替えをした場合であっても、「古い薬剤」の詰替えであった。
 3. 消火器のキャップ・ボンベ等の締めつけ不良等があり、危険性が増大する。
 4. 点検、詰替中において、施設内の消火器未設置の状態が発生する。
 5. 点検後、消火器の適正配置をせず、特定の箇所にまとめて設置する(元のところへ配置しない)。

「不適切な点検」に係る相談事例
事例 1
 作業着を着た3人が運送会社の窓口に現れ、「消火器の点検にきました」と言うので、いつも出入りしている点検業者と思い、管理者が点検をお願いした。契約書のサインも、内容をよく見ず行った。
 部下の社員から、いつもの点検業者と違うのではないかと言われ、驚いて中止を求めたが、もう点検しているからと、点検料金を請求された。
 請求金額 消火器30本 機能点検 315,000円
1. いつも出入りしている点検業者と思って間違ってお願いしたこと、3月前に点検して点検済でありその旨が表示されていること、全数機能点検の必要がないこと等から支払い義務のないことを説明したが、点検業者は契約書にサインしていること等から契約は有効であることを主張し、紛争した。
2. 脅迫的な言動もあり、会社の信用を考え、課長が2ヶ月後に支払うと約束した。

事例 2
 休日、学校(私立高校)に電話があり、当直事務所員が受けたところ「いまから消火器の点検に行きます」と言うので、いつもの点検業者だと思い承諾した。数分後に3人が事務所窓口に来たので事務職員がサインした。
 2時間後に集金に来るというので内容を確かめたところ、高額であることに驚き、警察や弁護士にも相談した。騙されたのだから支払い義務はないとの見解だったが、点検業者から、裁判所に訴えるとか、その他脅迫的な言動もあり、あとあと面倒と思い支払うこととした。
 請求金額 消火器 65本 詰替 1,477,000円

事例 3
 専門学校の事務室に「消火器の点検に来ました」と突然に訪問を受けた。事務長が点検をお願いしたのだろうと思って、職員が契約書にサインした。 点検後、請求書の内容をみて驚いた。翌日集金に来るというので、いろいろ交渉したが、怖いので支払いした。
 請求金額 消火器薬剤詰替 7本 
        新品消火器   5本 合計 255,000円

事例 4
 薬品会社に「消火器の点検に来ました」と言って窓口の女性事務員に契約書にサインを求め、消火器32本を集めて持ち帰った。数時間後、消火器を持参、薬剤詰替代金の支払いを求められたが、不当に高額であったため社内で責任問題となり紛糾した。
 会社の信用問題もあるので、不当な請求を承知の上で支払いした。
 請求金額 消火器詰替 32本 516,000円

事例 5
 電力会社支店から離れた場所にある倉庫において、「消火器の点検に来た」ということで消火器を集めて持ち帰った。その際、契約書にサインを求められたが、預書と思いサインした。数時間後、不当に高額な代金の支払いを求められ、この時点で初めて騙されたことに気づき、支店の課長補佐に連絡した。出入りの点検業者と誤認して承諾したものであるため、警察、弁護士と相談のうえ、「支払いしない」と当該点検者に伝えた。
 請求金額 消火器詰替 9本 223,000円
 (注)消火器は、当該点検業者が持ち去ったままになっている。
   (事例発生から3ヶ月後現在)

事例 6
スーパー 店長に 「〇日に消火器の点検に来る」と電話があった。不審な点もあるので出入りの点検業者に確かめたところ、違う点検業者であることがわかった。悪質点検業者が来る予定日の前に消火器の全数点検を行い、待ち構えていたが、遂に現れなかった。


消火器の破裂で小4男児が重体に

 (次頁へ) 「15,7 消火器の緊急点検を