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特定共同住宅の消防法令

共同住宅の消防法令は、ほぼ10年に一度の間隔で時代にあった見直しが進められてきました。(図1参照)
それらが時代と共にどのように変遷を遂げてきたか、そして現在どのような体系になっているかを解説しています。

 共同住宅等は、常時多数の者が生活し就寝を伴う施設であり、 また日常的に火気を使用し、出火危険が高い防火対象物であることから、 消防法第17条第1項により、他の防火対象物と同様にその規模等に応じた消防用設備等の設置及び維持が義務付けられていますが、 一定の構造要件等を満たす共同住宅等にあっては、火災時の危険性が比較的低いことから、平成7年の220号通知基準に基き、 消防長又は消防署長は、令第32条の規定を適用し、共同住宅等に設置すべき消防用設備等の設置免除等の特例を認めてきました。

 220号通知基準制定当時の共同住宅は比較的小規模であったことから、共同住宅は個人住宅の集合体であり、 居住者が避難経路等を熟知していることが期待できること、延焼防止性能が高く、廊下、階段、 バルコニーを利用して安全に避難するルートが確保されている構造 (具体的には耐火構造の床・壁・バルコニー・常時外気に開放された開口部など)になっていれば、消防用設備に頼るだけでなく、 それらに重点を置いた防火安全手法をとる方が、総合的な防火安全性能はむしろ高くなると考えられてきたためです。

 しかし、その後、近年の社会的形態やライフスタイルの変化に伴い、従来の共同住宅が大規模化、 高層化、多様化、住戸の大型化、複合用途化し、共同住宅等の特例基準が想定しない新たな形態を有する共同住宅等が出現したこと、 行政の透明化、性能規定の導入など行政をとりまく社会制度の変化を踏まえ、 図1「特定共同住宅等の消防用設備等技術基準改正の流れ」に示すように、 従来の共住省令を構築しなおしたのが平成17年総務省令第40号です。

 平成17年総務省令第40号では、220号通知の基本的な枠組みは残しながら、性能規定の概念を導入し、 初期拡大拡制性能と避難安全支援性能の強化を図り、「住宅用消火器及び消火器具」、「共同住宅用スプリンクラー」、 「共同住宅用自動火災報知設備」、「共同住宅用非常警報設備」、「共同住宅用連結送水管」、 「共同住宅用非常コンセント設備」が新たに位置づけられています。

特定共同住宅等

 特定共同住宅等とは、令別表第1(5)項ロに掲げる防火対象物であって、火災の発生又は延焼のおそれが少ないものとして、 その位置、構造及び設備について消防庁長官が定める基準(位置・構造告示)に適合するものという従来の定義は新しい共住省令 「平成17年総務省令第40号」第2条にも引き継がれてきましたが、さらに平成22年2月5日改正で、 令別表第1(16)項イに掲げる防火対象物のうち独立した部屋の床面積が100u以下の複合型小規模福祉施設等まで 特定共同住宅の範囲が拡大されました。 (詳細は 「平成17年総務省令第40号」 を参照)

令別表第1(5)項ロに掲げる防火対象物は、集団居住のため又は居住性の宿泊のための施設であって、
(1)寄宿舎、(2)下宿、(3)共同住宅に細分されます。

分類 令別表第1(5)項ロに含まれるもの 令別表第1(5)項ロに含まれないもの
寄宿舎

寄宿舎とは、官公庁、会社、学校等が従業員、学生、生徒等を集団的に居住させるための施設で、有料無料を問わない。

学校教育法(昭和23年法律第26号)に定める盲学校、ろう学校及び養護学校の寄宿舎で自力避難困難者が入所している場合は、 令別表第1(6)項ハに該当する。(「社会福祉施設等に係る防火安全対策に関する消防法令の運用について」《昭和62年10月26日消防予第187号通知)

下宿

下宿とは、1月以上の期間を単位とする宿泊料を受けて、人を宿泊させる施設のうち、旅館業法(昭和23年法律第138号) 第2条第5項の下宿営業の用に供させるもの。

業として行われない、いわゆる素人下宿で、その実態が個人住宅と同様であると認められるものは含まれない。

共同住宅

共同住宅とは、居住として用いられる独立した1又は2以上の居室を単位として構成される集合住宅のうち、 居住者が出入口、廊下、階段室、エレベーター室、屋上等を共用するもの(構造上の共用部分を有するもの)をいい、 台所、便所、浴室等が各戸ごとに存在することは要件ではない。分譲、賃貸の別は問わない。

独立家屋の単なる集団である団地はもちろん、いわゆるテラスハウス(庭付き住宅)などの長屋式の家屋は、 それぞれが平面的に連結し、主として壁体のみを共用するものであると、立体的に重畳し、 主として床及び壁のみを共用する形式の重畳家屋であるとを問わず、出入口、廊下、階段等を共用しないものである限り、 共同住宅には該当しない。

共同住宅において、 (1)高齢者が主として入居する共同住宅、 (2)住戸を短期間の賃貸に供する共同住宅、 (3)観光地等に存し住戸の多くが通年居住されず宿泊の用に供される共同住宅等の特殊な形態の共同住宅は火災の発生の危険度が高く、 また火災が発生した場合の消火、延焼防止、避難が困難で、人命や物的な損害をもたらすおそれが大きいことから、 「共同住宅における防火管理に関する運用について」 (平成6年10月19日消防予第271号通知 以下「運用通知」と略称)において、下記のように運用を定めています。

令別表第1(5)項ロに掲げる防火対象物以外のものとして取り扱われた場合は、共住省令は適用できません。
即ち、一般的な共同住宅については、187号通知により運用し、下記の(1)〜(3)の共同住宅については、 271号通知によって運用を行うことになります。    詳細は 「187号通知と271号通知」 を参照

(1)高齢者が主として入居する共同住宅(シルバーマンション等)
 一般に老人福祉関係の法律の適用を受けず、入居の条件として居住者の全部または一部について最低年令の制限を設ける等、 主として高齢者の入居を目的としたもののうち、入居形態が一般の共同住宅と変わらないものにあっては、 令別表第1(5)項ロとして取り扱われる。ただし、主として高齢者が入居する共同住宅のうち、 介護サービスを提供し、自力避難が困難な者が入居するものにあっては、サービス提供の形態、居住者の自立の程度等を総合的に勘案し、 令別表第1(6)項ロとして取り扱われる場合がある。

 上記の平成6年10月19日付け消防予第271号通知別添1(1)における但し書きの部分を明確化する目的で 平成21年3月31日付け消防予第131号通知1(3)において、 「いわゆる高齢者専用賃貸住宅等のうち、当該施設を設置・運営している事業者又はその委託を受けた外部事業者により、 共用スペースにおける入浴や食事の提供等福祉サービスの提供が行われているものについては、 消防法施行令(昭和36年政令第37号。以下「令」という。)別表第1(6)項ロ又はハに該当するものであること」とされた。

  平成22年2月5日公布の7号省令・8号省令・2号告示で、令別表第1(16)項イに該当する福祉施設を共同住宅内に開設する場合の要件が緩和された。 詳細は 「複合型居住施設の省令改正」 参照

(2)住戸を短期間の賃貸に供する共同住宅(ウィークリーマンション等)
 一般に旅館業法の適用を受けず、共同住宅の住戸単位で比較的短期間の契約により賃貸を行うものは令別表第1(5)項ロとして取り扱われる。 ただし、リネンの提供等、明らかにホテル等と同様の宿泊形態をとるものにあっては令別表第1(5)項イとして扱うべき場合もある。

(3)観光地等に存し住戸の多くが通年居住されず宿泊の用に供される共同住宅(リゾートマンション等)
 所有者又は占有者の大半が当該防火対象物に居住せず、一の住戸について複数の所有者又は占有者が存在するもののうち、 住戸ごとに限定された者により、比較的短期間の宿泊に利用されるものにあっては、 令別表第1(5)項ロとして取り扱われる。ただし、研修所等として利用されるもの又は他の者が所有する住戸に宿泊ができるもの、 あるいは自己の所有する住戸を第三者に貸し出しするもの等、 一の住戸に不特定の者が宿泊する形態をとるものにあっては、令別表第1(5)項イとして扱う場合がある。

図1・特定共同住宅等の消防用設備等技術基準改正の流れ

<解説>

 220号通知には法的拘束力がなく、消防機関ごとに独自の運用がなされることによる統一性のなさが浮き彫りになったこと、 行政の透明化・自治事務化の流れにより、予防課長通知などによる通達行政が制限されたことから、 総務省消防庁では、220号通知の基本的な枠組みを維持しつつ、これらの問題を解決するため、 共住省令として規定し直し、全国で統一的な運用を図るとともに、共同住宅用スプリンクラー設備、 共同住宅用自動火災報知設備等を必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等として位置付け、 技術基準の一部に性能規定を導入して、共同住宅等の状況に即して、 より合理的かつ効果的な設計が導入できる制度として下記が法制化されました。

(下表の「法令」項目の該当法令番号をクリックすると、当該法令が別ウインドウで開きます。)

法令 公布日 法令名称 概要
消防
安第43号
H16.3.26

「新築の工事中の建築物等に係る防火管理及び防火管理者の業務の外部委託等に係る運用について」
略称「43号通知」

管理会社の従業員を防火管理者として選任することができる。 同一人を複数の共同住宅の防火管理者として選任することができる他、管理組合理事長、管理会社の責任を定めた。

総務省令
第40号
H17.3.25

「特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令」
略称「共住省令」

「用語の意義」と「共同住宅用スプリンクラー設備」、「共同住宅用自動火災報知設備」、 「住戸用自動火災報知設備及び共同住宅用非常警報設備」等の設備概要と技術基準の一部を示し、 それらを設置した場合に免除される「通常用いられる消防用設備等」を構造や階数により定めた。

(関連)
計算PRG

 

「特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令」 (平成17年総務省令第40号)等の運用に係る計算プログラム

1 住戸等への延焼防止措置「住戸等で発生した火災により、 当該住戸等から当該住戸等及びそれに接する他の住戸等の外壁に面する開口部を介して他の住戸等へ延焼しないよう措置されたものであること」 を確認する計算プログラム。
2 特定光庭の基準等「避難光庭に面する廊下及び階段室等を経由して避難する者が受ける熱量」を確認する計算プログラム。
3 煙の降下状況を確認する方法「煙が床面からの高さ1.8メートルまで降下しないこと」を確認する計算プログラム。

消防庁告示
第2号
H17.3.25

「特定共同住宅等の位置、構造及び設備」
略称「位置・構造告示」

新基準が適用できる共同住宅等の構造、内装制限及び防火区画を定めた。

消防庁告示
第3号
H17.3.25

「特定共同住宅等の構造類型」
略称「構造類型告示」

省令第40号で定められた「二方向避難型特定共同住宅」、 「開放型特定共同住宅」及び「二方向避難・開放型特定共同住宅」の詳細構造を定めた。

消防庁告示
第4号
H17.3.25

「特定共同住宅等の住戸等の床又は壁並びに当該住戸等の床又は壁を貫通する配管等及びそれらの貫通部が一体として有すべき耐火性能」
略称「区画貫通告示」

床又は壁を貫通する配管及び貫通部の耐火性能を確認するための試験基準を定めた。

消防予
第66号
H17.3.25

「特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令等の公布について」

省令第40号及び告示第2号〜第4号までの解説通知。

消防予
第188号
H17.8.12

「特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令等の運用について」

省令第40号及び告示第2号〜第4号までの運用通知。光庭関係の建築構造についての判断基準となります。

消防予
第211号
H18.5.30

「特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する告示の公布について」

消防庁告示17〜20号までの公布の通知。

消防予
第212号
H18.5.30

「特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する告示の公布及び特殊消防用設備等の総務大臣認定に伴う関係告示の一部改正について」

工事又は整備を行う者が消防設備士であることが必要な特殊消防用設備等について整理し,試験基準・点検基準が定められた。

消防庁告示
第17号
H18.5.30

「共同住宅用スプリンクラー設備の設置及び維持に関する技術基準」

総務省令40号に追加した技術基準。従って、総務省令40号と消防庁告示第17号の2つの条文に基づく。

消防庁告示
第18号
H18.5.30

「共同住宅用自動火災報知設備の設置及び維持に関する技術基準」

総務省令40号に追加した技術基準。従って、総務省令40号と消防庁告示第18号の2つの条文に基づく。

消防庁告示
第19号
H18.5.30

「住戸用自動火災報知設備及び共同住宅用非常警報設備の設置及び維持に関する技術基準」

総務省令40号に追加した技術基準。 従って、総務省令40号と消防庁告示第19号の2つの条文に基づく。

消防庁告示
第20号
H18.5.30

「戸外表示器の基準」

総務省令40号に追加した技術基準。従って、総務省令40号と消防庁告示第20号の2つの条文に基づく。

消防庁告示
第21号
H18.5.30

「消防設備士免状の交付を受けている者又は総務大臣が認める資格を有する者が点検を行うことができる消防用設備等又は特殊消防用設備等の種類を定める件の一部を改正する件」

点検基準の資格要件が、平成16年消防庁告示第10号から一部改正された。

消防庁告示
第22号
H18.5.30

「消防法施行令36条の2第1項第2項に掲げる消防用設備等に類するものを定めた平成16年消防庁告示第14号の一部を改正する件」

1.必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等を規定
2.特殊消防用設備等を規定

消防庁告示
第23号
H18.5.30

「消防設備士が行うことができる必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等の工事又は整備の種類を定める件の一部を改正する件」

消防設備士(甲種・乙種)について工事または整備の種類を定める件、平成16年消防庁告示第15号が一部改正された。

消防庁告示
第25号
H18.5.30

「消防用設備等試験結果報告書の様式を定める件」

平成元年消防庁告示第4号を一部改正した。

消防庁告示
第26号
H18.5.30

「消防設備等の点検の基準及び消防用設備等点検結果報告書に添付する点検票の様式を定める件」

昭和50年消防庁告示第14号を一部改正した。

消防庁告示
第32号
H18.7.3

「消防法施行規則の規定に基づき、消防用設備等又は特殊消防用設備等の種類及び点検内容に応じて行う点検の期間、 点検の方法並びに点検の結果についての報告書の様式を定める件の一部を改正する件」

点検の期間と報告書の様式について、告示で定められた消防設備について追加された。

消防予
第500号
H18.11.30

「消防用設備等に係る執務資料の送付について」

220号法制化関連基準全ての68項目の質疑回答。

消防予第131号 H21.3.31

「消防法施行令の一部を改正する政令等の運用について」

認知症高齢者グループホーム等の小規模な社会福祉施設の防火安全対策

消防庁予防課 事務連絡 H21.3.31

「共同住宅の一部をグループホーム等として用いる場合の取扱いについて」

認知症高齢者グループホーム等の小規模な社会福祉施設の防火安全対策に係る消防予第131号の運用

消防予
第59号
H22.2.5

「複合型居住施設における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令等の公布について」

7号省令・8号省令・2号告示(消防法施行令別表第一(16)項イに該当する福祉施設を共同住宅内に開設する場合の要件緩和措置)

(1)仕様規定

  仕様規定とは、技術基準が要求する性能を具体的に明示せずに、「仕様書」のように、材料、寸法、構造などを具体的に記述する規定の仕方をいい、 この方法で規定された基準を仕様基準といいます。基準への適否の判定が容易である一面、技術革新に追いつかず、陳腐化、硬直化する側面があります。 消防法令における仕様基準(ルートA)は令第2章第3節第2款から第6款までに掲げる技術基準が仕様基準です。

(2)性能規定

  性能規定とは、その規制が目的とする性能を明確に記述する規定の仕方をいい、この方法で規定された基準を性能基準と言います。

平成15年に消防法17条に第3項を新設し、消防設備に関する技術基準に性能規定の導入を図りました。

規制対象の有する性能が、その規制の要求する性能を有しているかどうかについて客観的に評価できる検証法(ルートB)が必要であり、 さらに、適切な検証法が整備されていない分野でその規制が要求する性能を有する新たに開発された機器、 技術的工夫などをできるだけ速やかに受け入れる仕組み(ルートC)が必要です。放送設備のスピーカーの設置(規則第25条の2第2項第3同ハ)、 誘導灯の視認距離(規則第28条の3第2項第2号)などで性能基準が導入されています。ルートBでは令第29条の4の規定に基づく検証法、ルートCでは、 法第17条第3項の規定に基づき総務大臣が認定した特殊消防用設備等があります。

警戒区域の設定

1 床面積による設定
    一定の床面積が600u以下の場合は各階ごとに、600uを超える場合には600u以下ごとに警戒区域を設定します。

2 一辺の長さによる設定
    一辺の長さが50m以上の場合には、50m以下ごとに警戒区域を設定します。


3 二つの階にわたる設定
    警戒区域の面積が500u以下の場合、警戒区域は二つの階にわたることができます。

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