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コロナによる審理延期を認めた事例 (カナダの対応事例)

まえがき
オンライン紛争解決システム(CAT-ODR)の第3段階(The Stage 3)では、 審理開始後概ね1ヶ月以内に裁判官が判決を下すという決まりがあり、 通常は当事者の都合による延期申請は認められません。

しかし、2020年は新型コロナウイルス(COVID-19 pandemic)に関連して、 裁判所が審理延期を認めた事例が2020年4月から10月にかけて4件あります。

本頁ではCOVID-19が管理組合紛争にどのような影響を与えたかを判決要旨で見ていきます。

○1. 目次
 1.ONCAT 11 判決 2020.04.29
 2.ONCAT 22 判決 2020.06.24
 3.ONCAT 25 判決 2020.07.15
 4.ONCAT 40 判決 2020.10.20

1:ONCAT 11 判決 2020.4.29

法の適用条項 コンドミニアム法(1998)1.44
裁判官: メアリー・アン・スペンサー(Mary Ann Spencer)
原告: サィード・ラジ・ハイダー・ナキビ(Syed Razi Haider Naqvi) 
被告: ピール・コンドミニアム管理組合 代理人弁護士 アッザ・ネフザウィ(Azza Nefzaui)
    (Peel Condominium Corporation)
聴聞: 2020年2月11日から2020年3月16日及び2020年4月6日から2020年4月21日 電子文書による聴聞
判決: 2020年4月29日

請求事項:原告が管理組合に組合員名簿の複写提供を申請し、拒否された事に対する損害賠償請求

管理組合が名簿複写提供を拒否した理由:原告はかって個人情報をソーシャルメディアに流したことがあり、 個人情報保護を考慮して組合員名簿の提供を拒否した。

審理過程:2020年2月11日から双方からの聴聞を開始し、 裁判官は原告と被告代理人女性弁護士に2020年3月16日双方に宣誓証書つきの陳述書の提出を命じた。 2020年3月16日、被告代理人弁護士事務所がCOVID-19に基づく州の緊急事態宣言で閉鎖されたことに伴い、 同代理人より提出期限を2020年4月6日とするよう延期申請があった。 裁判官はこれを認めたうえで、 事務所の機器にアクセスせずにインターネットその他の代理人がとり得る連絡可能な方法で聴聞を再開するように 勧告・助言した。

被告代理人女性弁護士は2020年4月6日には聴聞を再開できなかった。 郵便で送達することや裁判所スタッフに電話で伝言することなど複数の次善の方法があったがいずれもなされなかったため、 裁判官の指示で被告代理人女性弁護士の父親、ナキビ氏に連絡をとったところ、父親は娘に 延期期間中は被告事務所にいるように助言した。

2020年4月17日、被告代理人女性弁護士抜きで聴聞を再開した。その結果、当事者双方の争点の整理はできなかった。 従って、本法廷では当事者の宣誓証書なしで行うこととし、 被告代理人との連絡を女性弁護士の父親、ナキビ氏を介して行うこととした。

2:ONCAT 22 判決 2020. 6.24

[4] The Respondent’s Representative had COVID-19-related office closures. They did not let such delay the hearing much. When it seemed the Applicant would not make a deadline, the Respondent’s Representative suggested an extension was appropriate. This is how parties before this Tribunal should treat one another, respectfully.

被告代理人事務所がCOVID-19に関連して閉鎖したため、聴聞を少し遅らせようとしたができなかった。 原告が期限の延長に同意しそうもないと見られた時、被告代理人の延期提案は適切であった。 それは当裁判所が双方の審理に入る前に謹んで提案されたものである。

[5] The material facts of this case are not in dispute. The Respondent’s witness corroborated the Applicant’s evidence surrounding the timeline, nature and content of email communications between the parties.

本事件における重要な事実は争うことではない。 被告の証人は原告の周囲の環境、時間の経過、自然、被告と原告間のEメールでのやりとりの証拠を確かめた。

[6] I find the Applicant is entitled to the three records requested. No fee is payable for the Owners’ List. The Respondent may require the Applicant to pay the $120 cost estimate for redaction before providing the Proxies and the AGM Attendance List to the Applicant. If the Respondent’s actual redaction costs exceed $120, it may charge the Applicant an extra fee of up to $12 after providing the Applicant the records. The Applicant is awarded costs of $200 and a penalty of $750 for the Respondent’s refusal to provide the Applicant the Owners’ List and the AGM Attendance List

裁判官は、原告には要求した組合員名簿を無償で受け取る権利があることを認める。 被告には、原告が要求する年次総会(AGM)記録と代理人を含む出席者名簿の準備費用として原告に120ドル請求することを認める。 その費用が120ドルを超えている場合、12ドルを限度として原告に記録を提供後に特別徴収することを認める。 組合員名簿と年次総会記録の提供を拒否した被告に対し、200ドルの費用の補償と750ドルの罰金を原告に支払うことを命ずる。

3:ONCAT 25 判決 2020. 7.15

4:ONCAT 40 判決 2020.10.20