各国の管理制度
各国の管理人の呼び方
日本で言うマンションの管理人は米国ではジァニタ(janitor)、 英国ではケァティカー(caretaker)、ドイツではハォスマイスター(Hausmeister)、 フランスではコンシェルジュ(concierge)、又は警備員兼管理人(英・ガーディアン guardian(注1))のグァルディアン(guardian)、 スペインではコンセルフェ(conserje)、イタリアではビデッロ(bidello)、 又は警備員兼管理人(英・ガーディアン guardian)がクスターデ(custode:ここから米国で公共施設の管理人を ビルディング・カストーディアン(building custodian )と呼ぶ言い方もある(注2)、 中国の管理人は服務員(フーウーユエン)。
(注1)日本で警備員を意味するガードマンは和製英語。英語ではガーディアン(guardian)
(注2)米の大学では、各学部の資産管理者をプロパティ・カストーディアン(Property Custodian)、
全学の総括管理者をプロパティ・マネージャー(Property Manager)という。
寄付金・州政府補助金・不動産から什器・銃器(ハンドガンやライフル)等すべての資産管理を行う会計責任者。
アメリカとイギリスの管理人
1 janitor アメリカの管理人
1 (米) (アパート・事務所などの)用務員;管理人(英・caretaker)
2 門番, 守衛
・ 劇場の管理人 the manager of a theaterは劇場支配人です。
・ 別荘の管理人 the caretaker of a summer cottage
・ 美術館・図書館など公共施設の管理人 custodian
2 caretaker イギリスの管理人
1 (米) 世話人(親・教師・看護師など)
2 (建物・地所などの)管理人;職務の一時代行人[者, 機関]
代理の, 暫定の a caretaker Cabinet[government]暫定内閣[政府]
3 (英)(学校など公共施設の)用務員, 門衛, 門番
(注)学校では昔「小使い(こづかい)さん」と呼ばれていたのが、その後「用務員」になり、これも差別用語として現在では「校務員」です。 耳から聞くと「公務員」と間違えそう
(注)caretakerは「お世話をする人」というニュアンスが含まれていて、一般的には「用務員」と訳す例が多いようです。 最近流行しているのがanimal caretaker 「=動物のお世話をする専門職」ですが、適切な訳語がありません。
3 管理人の仕事
メイド(Maids)は個人住宅で、ジァニタ(管理人:Janitors)とクリーナー(清掃人:cleaners)は
ホテル、レストラン、病院、療養所で主に清掃を担当する職種です。
クリーナー(清掃人)は窓拭きとか床のワックスなど、機動力と洗剤、剥離剤などに対する化学的専門知識と技能を持つ専門職を指す例が一般的です。
ジァニタは清掃のほか、蛇口の修理、冷暖房システムの調節、昆虫やねずみなどの駆除、芝生の草刈、イベントの際の部屋のセッテイングなど多くの仕事が含まれます。
ジァニタはビルディング・カストーディアン(building
custodians).とも呼ばれます。
建物に修理が必要な場合はビルディングマネージャー(building managers)に報告します。
コンドミニアムでは建物管理と住民サービスは分かれていて、住民顧客サービスはプロパティマネージャー(資産管理者:Property Manager)が行います。
コンドミニアムのジァニタはプロパティマネージャーとビルディングマネージャーの監督指揮下に置かれるのが一般的ですが、自主管理(self management)
の管理組合では直接雇用になる事もあります。
不動産の証券化が進んでいる米国では、高度に専門化された分業化の中で、 証券化商品(エクイティ、シニアデット、メザニンなど)のスキームを組立てる人をアレンジャーといい、物件の供給者をオリジネーターといいます。
不動産投資証券の中で元本割れのリスクがある出資型のエクイティ(Equity=株式)に対しデット(Debt=債務)は元本が安全な融資型証券、デットの中でも資金返済の優先度順に、 優先債(シニア債)、メザニン債、劣後債(ジュニア債)がある。 メザニン(Mezzanine)は中2階、即ち、融資(シニアローン)と出資(エクイティ)の中間のリスクという意味。
実際の不動産の運営・管理を行うのはAM(アセットマネージャー:Asset Manager)とPM(プロパティマネージヤー:Property Manager)です。
AMは証券化の実行前ではファンド運営方針の立案、投資対象となる不動産の選定、PMの選任、投資家の募集などを行います。
証券化後はキャッシュフロー管理(元利金の返済、投資家への分配など)の他、物件の売却、バリューアップなど、ポートフォリオ全体をコントロールしていきます。
投資家に対する資料作成や説明などもAMの仕事です。
不動産のバリューアップには、ポートフォリオの生み出すキャッシュフローを最大限にするための大規模修繕を行うタイミングや予算管理も含まれます。
PMはAMやビルオーナーの指示に従い、建物の運営管理、資産価値保全やリーシング(テナント付)を行い、個別不動産のキャッシュフローの最大化につなげる業務を行います。
建物の運営管理業務とは建物の警備や清掃等のスケジュールを考え、清掃や警備の専門会社に委託することです。
資産価値保全とは、建物を長期に維持するために、修繕や改修のプランを立て、工事会社に工事を委託する業務です。
5 管理
日本語の「管理」には下記のように多くの意味が含まれています。
〔経営・管理・統御〕management; 〔管理・運営・統治・施政〕administration; 〔統制〕control;
〔監督〕supervision ( 管理組合の「管理」は英語では managementを用います。)
管理組合の財産保全に関しては、組合規模に応じた細かな規定があります。
「組合の規模に応じて三段階の監査義務規定がある米国の事例」
6 高層住宅
高層住宅は建物の分類で Highrises (ハイライズ)といいます。
このrise(ライズ)は高さを表す言葉で、3 floors位のエレベータのないアパートはWalkups(ウオークアップス)、6-7 floorsの中層アパートはMidrises (ミッドライズ)、
そして13-30 floorsの高層アパートがHighrises(ハイライズ)です。
ちなみに、Low-rise jeans(ロウライズジーンズ)は股上が浅い(セクシーな)ジーンズです。
日本語の「高級マンション」は Luxury Apartments(ラグジュアリ―アパートメント)
ドイツの管理人
管理人はHausmeister(ハォスマイスター)ですが、管理者はVerwalter(フェアヴァルター)と云います。
財産、業務などの「管理」=Verwalten(フェァヴァルテン)からきていて、管理者の仕事は管理費の徴収、年間維持管理予算を作成し議長となって総会を開催し、
各戸への広報からハォスマイスター(管理人)の雇用と管理及び日常管理の一切及び工事入札を行い業者に発注するなどの分譲アパート管理のすべてを実行します。
管理者(フェアヴァルター)は建築、財務、法律に詳しい弁護士、銀行員、公証人、会社役員、管理会社でも経験のある中堅クラスの人などが実際に担当しています。
独には管理者の資格制度がない
フェアヴァルターとしての独立した資格制度はありません。
資格はこのような多岐にわたる分野の総合的な業務遂行能力と資質の証明にはなりえない事と、
日本のように国家資格制度を官僚の天下り機関のビジネスと収益に利用するという仕組みも存在しないからです。
仏の資格制度の目的:委任に伴う義務の履行と賠償責任を補償すること
フランスには管理者(サンディク)の国家資格がありますが、委任に伴う義務の履行と法律上の賠償責任をはっきりさせるのが目的です。 サンディクには法定資格の他に財政的な担保保証が求められます。
日本では、住民が高齢で自分達で管理できないから、代わって管理してあげる専門家を 国が創設するという管理者管理制度の必要性を国交省が数年来、機会あるごとに審議会を使って啓蒙していますが、 法律上の賠償責任については他の国交省資格と同様、契約者の自己責任に委ねられています。 法務省の後見人制度でさえ、裁判所が任命した弁護士などの後見人による詐欺・横領などの犯罪が発生していますが、 裁判所は被害者に補償しません。被害者は泣き寝入りです。
日本の資格制度は許認可制度を通じた国家による統制(国家の威信を利権に利用すること)を目的としたもので、 委任に伴う義務の履行と被害者への損害は補償しない。 契約自由の原則に基づく契約当事者の問題(しっかりしないほうが悪い)。 国家資格に対する国家責任の裏づけは日本には存在しない。
独の管理組合
区分所有者の共同体=ゲマインシャフト(Gemeinschaft)はありますが、理事会も理事長も理事もありません。 ゲマインシャフトには「総会」とフェアヴァルター(管理者)だけがあって、総会の決定を管理者が執行していきます。
フランスの管理人
フランスにおける共同住宅の区分所有という概念は「階層所有」という形で、 「共同所有(Copropriete)」を法的に認めた民法典第644条を1804年に制定します。 以後、1938年、1965年、1971年と改定され、規約,総会,管理者(syndic,サンディク) に関する規定があります。
全区分所有者で構成される区分所有者組合(Syndicat,サンディカ=(英)Union)は、 各組合員が決定権を持ち、総会において管理に関する様々な意思決定を行います。 この総会の決定に従って事務を担うのがサンディクで,サンディクの監督、補佐をするのは 組合評議会(Conseil syndical,コンセイユ・サンディカル=(英)union Council )です。
区分所有者組合は、法定資格と専門知識を持つサンディクを組合外部から選出することができます。 プロのサンディクは区分所有組合に報酬を請求する有償の契約です。 共同住宅の規模が小さい等の理由で,区分所有者組合に有償のサンディクを置く経済力がない場合には、 区分所有者の中から無報酬のノンプロサンディクを選出する場合もあります。
プロのサンディクは法定資格の他に財政的な担保保証が求められるのに対し、 ノンプロのサンディクは区分所有者であることが担保としてみなされ、法定資格は不要です。 報酬をもらう権利があるプロのサンディクはノンプロのサンディクよりも法律上の賠償責任が重く設定されています。
管理業務及び掃除やゴミの処理といった労務については、 総会で管理をプロのサンディクに委託するか、管理会社に委託するか、或いは自主管理にするか、 及び、使用人(コンシェルジュ、グァルディアン、ネットワィエ)を雇用するか、或いは居住者が共同して実施するか、などが決められます。
フランスの都市部では区分所有住宅の賃貸化率が高く、平均して、ほぼ50%近くに達します。
フランスの管理人は伝統的にコンシェルジュでしたが、
賃貸化が進む住棟では治安が悪化しているために、積極的に守衛・警備員の役割を兼ねるグァルディアンを選任します。
とは言ってもグァルディアンの中心的な仕事はゴミ出し、建物内の見回りから管理費の徴収などで、
歴史的な意味合いからコンシェルジュの名称がグァルディアンに変わっていっただけで、現在では同義語として捉えられているようです。
コンシェルジュか ごみ収集人か ( concierge ou nettoyeur ? )
2008.01.30の仏の国営放送アンテンドゥ(=アンテナ2の意、日本流に言えば2チャンネル)は、共同住宅の管理人( コンシェルジュ concierge)を解雇し、
清掃人(ネットワィエ nettoyeur)のみにして管理費を低減した事例での論争を紹介していました。
管理人常駐サービスによる安心感か、コスト削減して生活防衛かの論争です。
清掃人(ネットワィエ nettoyeur(仏語)は, garbage collector (米・ガーべイジ コレクター) , dustman; (英・ダストマン) に相当する、ごみ収集人の意味、料理用語では洗うの意味も)
どのようなサービスを望むかは、お金を払う人の選択の問題ですが、 ごみ収集人は、「住居管理」を超えて、「居住地管理」という、地域に関する責任を果たす上で最低限必要なもので、 選択の余地はありません。日本でも「ワンルームマンション規制条例」で、管理人を必ず置くことを義務付けた地方条例が各区で作られたのも、 ごみや自転車の放置で地域住民からの苦情が増加したからです。