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改定作業の概要 (EXECUTIVE SUMMARY )

目次
  1.改定作業の概要
  2.改定の過程
  3.共通テーマ
    (1) 共同社会の育成   (2) 情報
    (3) 理事会の透明性と説明責任
    (4) 理事会と区分所有者間の不公平な権限の格差
    (5) 管理規約の役割   (6) 社会契約
  4.鍵となる推奨案
    (1) 共同住宅庁   (2) 消費者保護   (3) 財務管理  
    (4) 紛争解決
    (5) ガバナンス    (6) 管理者の免許制度
  5.次期の作業

 

1. 改定作業の概要 (EXECUTIVE SUMMARY)

この報告書は12年前のオンタリオ共同住宅法の改定という遠大な計画における第U期の記録です。

今や州における新築住宅の約半数が共同住宅を構成していると共に、所有者に、より良い情報と、紛争を解決する新しい手段を提供し、 共同住宅をめぐる社会を統制する規則を徹底的に見直すことの緊急の必要性に迫られています。

2. 改定の過程 (THE REVIEW PROCESS)

法制改革プロジェクトの第T期は、既存の法におけるおびただしい数の欠点と短所を見つけて、2013年の初めに完了しました。 共同住宅を横断する層から選ばれた参加者は、管理規約の範囲の強調部分と改善部分、及び、意見が相違する点についての選択肢を提出しました。

第U期では、私達は、相互に関心のある広い分野からそれらを代表する5つの作業部会を設けました。これらの作業部会は最も幅広い可能性のある管理規約と実行すべき推奨案をまとめることを成し遂げるための考えを纏めたものです。

作業部会は5つの分野に分けて焦点をあてています。
○ 消費者保護(Consumer protection)
○ 財務管理(Financial management)
○ 紛争解決(Dispute resolution)
○ 共同体のガバナンス(Governance)
○ 共同住宅の管理(Condominium management)

加えて、12名の専門家からなる専門部会を[冷静で客観的な補佐役](注:下記)として設けました。
[原文:”sober second thought”、(直訳)”酒を飲んでいないしらふ(sober)の補佐人(second)の思索(thought)”]

専門部会の委員は、鍵となる主要な分野の消費者保護団体、技術者集団、共同住宅分譲業界団体、 財務および共同住宅管理業界などの各界から専門技術を持った人を選出し、 各分野を横断して釣り合いの取れた見方を提供できることを条件に選定しました。 専門部会の委員は少なくとも1つの作業部会に所属しています。

専門部会はすべての作業部会の提案事項を四つの視点から精査します。
○ 提示された推奨案は公正かつ多様な立場の利益との調和がとれているか?
○ 5つの分野全体で筋が通って矛盾のないものになっているか?
○ 実施に際して実行不可能な障害はないか?
○ 提示された推奨案は問題に対して効果的な解決策となりうるか?

作業部会から出た提案が専門部会から明確に必要なしとの判断が出ることがあります。
提案の幾つかは反対意見、推論や懸念の表明などにより修正されます。

言い換えれば、作業部会は新しい規則または実践の必要性を、時間に無関係に展開して取り上げ、 制限のない自由な推奨勧告案を提案しています。

この場合、報告書では作業部会における議論の正確な進行過程の記述よりも、 むしろ議論の本質に狙いをつけて捉えています。

私達は法の改定作業を進める中で、部会の協調を促進し、部会全体で共有すべき
関心事を見出し、それをさらに深く建設的に検討する試みを捜し求めていました。

 
この成果は、作業部会の報告書に対する弱点でもないし、ましてや批判でもありません。
共同住宅法改定に関する第U期報告書は法律の草案を提供するためのものですが、 この問題がなぜ第T期の問題摘出報告書において取り上げられたのかについての明確な根拠背景を得て、 政策専門家は、最適な解決策を見出すことができます。作業部会と専門部会は、これらに敬意を払い、見事に結果を成功に導きました。

私達は法の改定作業を進める中で、意見の相違を見つけて競争的に点数を下げあうのではなく、むしろ、部会の協調を促進し、 部会全体で共有すべき関心事を見出し、それをさらに深く建設的に検討する試みを捜し求めていました。

実際の事例においては、複数の作業部会または専門部会において、多数意見と異なる強い意見が幾つかありました。 報告書では注記として、少数意見の真意を理解できるように、その理由の文脈のすべてを記載しています。

報告書はまた、合意に至らなかった幾つかの問題を提示しています。これらの事例は、政府が どのように前進させるかを決定するでしょう。 終わりに当たって、本報告書の全推奨案の最終決定は、政府の手に委ねたいと思います。

私達が提示した推奨案を、政府が実際の法改定で実現してくれるであろうとの強い期待は、 参加した委員全員の共通の思いです。

3. 共通テーマ (COMMON THEMES):

幾つかの共通テーマはこの改定作業の第U期の初期から期間を通じて提示されてきました。 これらのテーマは、5つの作業部会の各テーマの範囲にまたがって切り取ったように、 仮に全部ではないにしても多数の異なる話題の中から突然持ち上がったものです。 これらは重要です。なぜなら、お互いに関連のない考えの寄せ集めよりも、 これらはそれぞれ異なる推奨案にお互いに関係し、これら全体を結びつけるものだからです。 この共通テーマには下記のものがあります。

(1) 共同社会の育成:

共同住宅法の見直し作業での中心課題は、区分所有者に対して、 自主統治コミュニティの構成員として住戸や隣人関係を見ること、 共同体である管理組合というものを理解し、その責任を受け入れること、 などへの奨励策を見出すことでした。 共同社会の育成は制度改革の中心課題です。

(2) 情報:

もしも区分所有者や他の関係者が自分たちの共同体を上手に運営しようとした場合、彼らが必要とするのは信頼のおける、 時機を得てタイムリーに提供される関係情報です。この情報はまた、二つのカテゴリーに分けられます。 一つ目は、例えば理事会と積立金の問題のような、この共同体の活動の鍵となるものをどう扱うかということ、 二つ目は積立金の財務報告書のような具体的な問題です。 この理由は、このような書類は、公式の集会(例えば理事会のような)における議題や、或いは修繕工事における情報の改定に必要になります。

(3) 理事会の透明性と説明責任:

共同住宅法の見直し作業では、 多くの共同住宅では区分所有者が理事会と管理者に対して自分達とは分離していると感じていることの十分な証拠が提供されました。 住民からは、理事会の決定の理由や、またどのように実行していくのかが明らかにされず、 理事会の透明性と説明責任についての改善要望の声が出されています。

(4) 理事会と区分所有者間の不公平な権限の格差:

既存の共同住宅法における紛争解決の基本的な道具は調停、仲裁、裁判による判決です。 
これらの手段による場合、通常では長い期間と裁判費用がすぐに必要です。
この現実は理事会の不当な扱いに対する不満を持っている区分所有者をイライラさせます。
理事会は顧問契約している弁護士に迅速な事件解決を依頼できますが、
余裕のない区分所有者は法的な助言を得ることができません。

加えて、理事会は、区分所有者から出される重要な文書の開示と情報の請求を制限することができます。
その結果、両者は非常に不公平な関係にあり、区分所有者にとっては理事会に対する深刻で不利な挑戦
を強いられることになります。区分所有者、理事会が同様に望んでいるのは、両者間の紛争を公正に迅速に
解決するために、法の強制力によってこの力の不公平を解消することです。

この報告書では共同住宅における、迅速、効果的で費用をかけずに公正な紛争解決を可能とする新しい組織
を提案しています。

区分所有者、理事会が同様に望んでいるのは、両者間の紛争を公正に迅速に解決するために、
法の強制力によってこの力の不公平を解消することです。

(5) 管理規約の役割:

作業部会では、一度特別な問題に対する紛争を清算してきたことがあります。
それは彼らがたびたび第2の問題に移行してきたものです。その第2の問題とは、紛争の解決は法と
管理規約に従って、或いは、最良の実践的な方法としての単純な励ましで行うべきか?という疑問です。

この報告書には、管理規約に変換して使える重要で意義深い多くの推奨案を入れています。
なぜなら、既存の規約を修正したり、新しい管理規約を通すのは、しばしば困難なことがあるからです。
専門部会では、管理規約における投票の必要条件を緩める原則について合意をしています。

(6) 社会契約:

多くの共同住宅コミュニティの構成員、特に区分所有者は、理事会や管理者、分譲業者が行う決定と実行に
対して何の力もないと感じています。その結果として、この報告書では、区分所有者の関与と契約に関して
もっと有意義な関係を築くことに照準を合わせて多くの制度改革を提案しています。

推奨案は徹底的ではありませんが、しかし、幾つかの問題に対しては、予想を超えて、実用的で有意義なもの
に発展させることができるものです。

有用性と実用性から見て、重視すべき基本的な価値観:
法の改定計画の第1段階における助言の求めに応じて、及び、共同住宅の居住者の呼びかけに従って、
専門部会では見直しの過程を7つの価値観を基本とすることを強く主張しました。

 (1) 全体の福祉を目指すこと(Well-being)
 (2) 公正・公平を旨とすること(Fairness)
 (3) 専門的な詳しい情報を構成員と利害関係者に告知すること(Informed community members and stakeholders)
 (4) 責任をもって応えること(Responsiveness)
 (5) 共同体の強い絆の育成と維持(Strong communities)
 (6) 財政的継続性があること(Financial sustainability)
 (7) 効果的で有効なコミュニケーションが取れていること(Effective communication)

4. 鍵となる推奨案 (KEY RECOMMENDATIONS):

5つの作業部会と専門部会は200以上の推奨案を纏めました。付録1にその全てのリストを掲載しています。
他の推奨案は作業部会での議論の要約に示しています。幾つかの遠大な推奨案を下記に示します。

(1) 共同住宅庁(Condo Office):


共同住宅庁として知られる新しい傘下組織(umbrella organization)は次の4つの主要な部門から成り立っています。
 ・ 共同社会の育成と管理意識を育てる部門(education and awareness)、
 ・ 紛争解決の拠点となるセンター(dispute settlement)、
 ・ 職業管理者の免許管理部門(licensing condo managers),
 ・ 共同住宅の権利を守る登記部門( maintaining a condo registry)

共同住宅庁は、政治国家組織や行政から手を伸ばせば届くところで(arm’s length from government)運営することになります。 しかしながら、政府を代表する権限を持っているわけではありません。

この組織の運営費用は、利用者からの手数料とすべての共同住宅の所有者からの控えめの低額な費用の徴収(月額1〜3ドル程度を予定しています)でまかなうことになります。

(2) 消費者保護(Consumer Protection):

・ 幾つかの制度改革には、賢明な情報開示を確実にするための提案があります。
   (賢明な[“smarter disclosure”](過剰な情報開示の反対語として)[as opposed to just more disclosure])

これらの提案の中には、共同住宅での住み方の要点について書かれた、読みやすいガイドブックの発行があります。 このガイドブックには、複雑なものを切り分けて、当面の問題にとっての情報と重要なものを容易に見出すための評価基準が含まれます。

 ・ 共同住宅に付属していて通常共用部とみなされている部分を、売買や投資用賃貸
   (リーシング・バック・アセット)の対象にすることを禁止。
   これらの共用部を対象住戸に含ませる事で価格を吊り上げることができます。
   但し、居住者の利益を目的としたエネルギー効率化装置など、明確に規定されたものは、
   例外とすることができます。

 ・ 保守費用の繰り延べの禁止。初年度予算から除外する場合を除いて、エレベーター保守費
   のような管理に要する費用を、月々の支払がある程度のレベルになるよう、実際に上げる予定
   が組まれていて、幾らか残るように錯覚をさせる印象を与えること

 ・ バルコニーは、各住戸の占用使用部分ですが、実際には共同住宅の共用部です。
   このような部分の保守と修理を行う責任を全体の中で確実に共有しておくこと。

(3) 財務管理(Financial Management):

 ・ 理事会は将来のために二つの予算書を準備しなければなりません。
   一般会計・管理費の予算書と、特別会計・修繕積立金の予算書です。
   修繕積立金予算は調査内容が有する偏差に対する評価を考慮して正確に範囲を限定したものにすべきです。
   管理費または修繕積立金で重要な予算外の出費が発生した場合は、理事会は区分所有者に対し
   通知することになるでしょう。

 ・ 理事会が共用部の改修を行うときに、区分所有者に通知するきっかけとなる基準は、
   月額の修繕積立金徴収総額予算の1%(又は1,000$)、または、年間予算額の3%(又は30,000$)です。

 ・ 管理組合予算の中で、財務報告書のよりよき理解を深めるための新しいオンラインツールを使った広報や
   情報告知の改善に使われる費用に使われるでしょう。

 ・ 修繕積立金は、例えば、環境のためのグリーンエネルギー改善のような、法に基づく改善または改修にも
   使われる、大きな柔軟性が求められます。

(4) 紛争解決(Dispute Resolution):

 ・ 共同住宅庁の紛争解決部門は、区分所有者、理事、管理者が、共同住宅法及び管理規約並びに
   共同住宅に関連する重要な問題を、迅速に、確実に、偏見なく公明正大で、信頼できる形で、安価に、
   若しくは無料で、解決できるよう支援するものです。

 ・ 共同住宅庁はまた、住宅に関する意見の不一致、即ち、議事録、割戻し金、委任状、文書による要求、
   そして議決権の付与などを解決して即決し、すばやい政策決定(Quick Decision Maker)を与える権限
   を有しています。

 ・ 更に複合的な紛争の解決は、新しい紛争解決機関、または、傘下の部門に委ねることになるでしょう。
   そこでは専門家が法的な権限で迅速に、中立的な立場で、低費用で、それぞれの事件について判断を下します。

(5) ガバナンス(Governance):

 ・ 最小期間内に管理組合記録の保有・維持・保持の規範を作ることを推奨します。

 ・ 管理組合記録の入手を保証する明確な要件を規定することを推奨します。

 ・ 管理組合集会参加申請にあたって委任状を用いるときの規定を明確にするよう見直しすることを推奨します。

 ・ 管理組合集会の定足数は下記に適合することを推奨します。
   2回までの集会においては通常25%を定足数の下限とします。もしも2回の集会で、これ以下の場合は、
   法律上はこれに合わせた3回目の集会の開催を規定すべきでしょう。

理事会の資格付与にあたって下記を掲げることを推奨します。
    (1) 初めての理事に対し法定トレーニング受講を義務付ける。
    (2) 理事になれるのは1住戸1名に限る。
    (3) 理事選任条件として刑事事件の前歴調査を規約に規定することを妨げない、
    (4) 個人と管理組合間の訴訟事件の進行状況を公開するものとする。

(6) 管理者の免許制度(Condo Management):

 ・ 地域をまたがる管理組合の管理者には資格審査との資産管理経験2段階の免許制度を設けなければならない。
   第一段階では専門資格の基礎となる基本的な能力審査、第2段階では実務における先進的な知識と経験と
   処理能力の審査です。

 ・ 共同住宅管理者の国際資格認証機関となるであろう政府機関としての新しい免許管理局は、共同住宅庁
   の下部機関となります。

5. 次期の作業  (NEXT STEPS):

我々は第V期の最終段階に向けてこの共同住宅法制改革案を2013年秋に送り出しました。
 ・ 常設部門では第U期改定案の見直しを進めます。
 ・ 政府機関は改定法案の実行原案作りを進めます。
 ・ 共同住宅の居住者と他の利害関係者部会メンバーは改定法案の実行原案に対する見直しの機会を持ちます。

(2021年8月28日初版掲載・随時更新)
(Initial Publication - 28 August 2021/ Revised Publication -time to time)