共同住宅法制改革・総目次 >【前頁】  付録1.推奨政策一覧表(1〜3) > 4.ガバナンス > 【次頁】 付録1.推奨政策一覧表(5.共同住宅の管理)

分析項目と推奨案 : 付録1.推奨政策一覧表
(DETAILED ANALYSIS AND RECOMMENDATIONS :APPENDIX 1: LIST OF RECOMMENDATIONS )

付録1.推奨政策一覧表 目次
1. 消費者保護  2. 財務管理  3. 紛争解決   4. ガバナンス  5. 共同住宅の管理

4. ガバナンス (GOVERNANCE)

記録文書の保存期間の設定 (SET REQUIREMENTS FOR RETENTION OF RECORDS)

66.

推奨案:  改正法では、管理組合が設定している記録文書の保存期間よりも長い期間を法定保存期間として設定すべきです。

67.

推奨案:  管理組合の記録文書の最低保存期間の詳細は次の表の通りとする。 この表における保存期間とは、その記録文書が容易に閲覧・入手できる期間とします。

68.

推奨案:  管理組合の記録文書は、可能な限り、電子化された様式に変換されることが望ましい。

 

管理組合文書の最低保存期間
 (1) 管理業務に関する文書 (Administrative)
 保存期間(年) 記録文書の種類 (※原注7)

設備点検及び管理報告書 (Inspection and administration reports)
保険約款 (Insurance policies)
査定評価書 (Apprasals)
雇用記録 (Employee records)
非居住部分の先取特権記録 (Non-unit liens)

15

修繕積立金計画書 (Reserve fund studies)
建物検査報告書 (Engineering reports)

永久保存

保証書 (Waranties)
監査報告書 (Audited financial statements)
各種契約書 (Contracts)
権利変換文書 (Turnover documents)
竣工図書 (Drawings)
議事録、登記事項証明書、管理規約、使用細則
組合員名簿(抵当権者) (Owners list (mortgagees))
 (2) 法律に関する文書
 保存期間(年) 記録文書の種類

民事訴訟記録 (Lawsuit)
人権に関する紛争記録 (Human rights complaints)
 (3) 財務に関する文書
 保存期間(年) 記録文書の種類

監査済の財務諸表 (Audited financial statements)
監査を要しない財務諸表 (Unaudited financial statements)
解決済の保険求償手続書類 (Resolved insurance claims)
出資証券 (Investments)
貸付金/借入金 (Loans)
抵当証券 (Mortgages)
納税書類 (Taxes)
期限満了又は解約の契約書 (Expired or cancelled contracts)
期限満了の保険証書 (Expireed warranties)
 (4) 区分所有者に関する文書
 保存期間(年) 記録文書の種類

組合員証明書(Status certificates)
住戸点検保守記録 (Maintenance records)
対応記録文書 (Correspondence)
賃貸届け/改修届け書類 (lease or renewal)
懸案事項 (Pending issues)
先取特権登記事項記録 (Unit liens)
その他の区分所有者の情報 (Owners information)

永久保存

共同住宅法第98条関係(共有部への変換文書)
(Section 98 changes to common elements)

 

69.

推奨案: 専門部会は、共同住宅法第98条関係(共有部への変換文書) が永久保管としている点については、漠然として意味不明であるので、同意できない。

70.

推奨案: 最良の実践は、記録文書の法定期限よりも長く保存することです

管理組合文書を容易に閲覧・入手できる方法を提供
  (PROVIDE EASY ACCESS TO CORPORATE RECORDS)

71.

推奨案: 
 (1) 改正法では、文書請求及びその請求に対する回答の手順を規定するものとする。
 (2) 文書請求を拒絶する場合、管理組合はその理由を文書で請求者に告知しなければ
    ならない。
 (3) 文書請求は個人の基本的権利の行使に関わる部分は無料とし、その他の文書は
    費用を請求できる。
 (4) 文書請求に関わる費用は、その文書の準備のための合理的な額とする。
 (5) 文書請求に関わる費用は、前もって提示しておかなければならない。
 (6) 改正法においては、罰金の額を1,000ドルから5,000ドルの範囲で罪の重さに応じて
    規定するものとする。
 (7) 改正法においては、文書の提供は電子化文書での提供を認めるものとし、その請求
    費用は無料若しくは低額に抑えた額としなければならない。

72.

推奨案: 費用の請求は文書の回復(電子化文書の紙への出力)、 編集(個人情報部分の抹消)費用も請求できるものとする。

73.

推奨案: 請求があった現在の文書は10日以内に、その他の文書は30日以内に請求者に提供するものとする。

個人情報保護と記録文書の適正使用
   (PROTECT PRIVACY AND ENSURE APPROPRIATE USE OF RECORDS)

74.

推奨案: 最上の方法は、管理組合と第三者の契約によって、いつ、 どのような方法で文書の閲覧・入手できるかについての明確な決まりを作るべきで、区分所有者、 購入者、抵当権者など、他のグループとの関係性を決定づける上で、特に重要です。

集会 (Meetings)

標準的な代理人規定を作る (STANDARDIZE PROXIES)

75.

推奨案: 
 (1) 代理人の申請が認められるのは、遅くても集会開催日の前日までとする。
 (2) 代理人届の不正や取扱いの誤りを防ぐために、代理人届には本人署名、指名する
    代理人氏名、議決事項及び候補者へのへの賛否を記入しなければならない。
    (訳注:日本の議決権行使書に相当する内容が代理人届にも同時適用される)
 (3) 代理人届の用紙に予め印刷されている名前への賛否投票に代わり、指名した者
    の名を記入することができる。
 (4)  代理人届と投票用紙は90日間保存しなければならない。
    この期間内に紛争が発生した場合は紛争が解決されるまで保存しておかなけれ
    ばならない。紛争なき場合は90日後に廃棄しても良い。
 (5) 代理人届は電子化又は自動化でも良い。

新しい定足数の基準値 (A NEW QUORUM THRESHOLD)

76.

推奨案:  定足数の規定を最初の集会から2回目までは25%とすることで、 区分所有者本人又は代理人のどちらかが参加して集会が成立することが可能となり、今よりは前進すると思われます。

標準的な代理人規定を作る (STANDARDIZE PROXIES)

集会 (MEETINGS)

77.

推奨案: 
(1) 理事会は、区分所有者から集会の召集を要求された場合は諾否の回答を10日以内に
   行うものとする。
(2) 理事会は、区分所有者による集会の召集を拒否する場合は正当な理由を必要とする。
(3) 理事会が区分所有者による集会の召集を拒絶した事を不服として告訴した原告は、
   要求した比較的短期間の欠陥に対して救済を求めることができる。
   理事会の回答の最終期限はこの期間内は停止される。
(4) 理事会は、正当な理由に基づく区分所有者による集会の召集を拒絶した場合、
   その活動は法により停止される。
(5) 法は、新しい集会の召集様式と上記の新しい制度を規定しなければならない。

管理規約の制定と改定 (MAKE BY-LAWS EASIER TO PASS)

78.

推奨案: 管理規約の制定と改定に関する採決基準は、 現行法の規定より下げることを推奨案とするが、適切な基準については、尚、検討を要する

集会で区分所有者と討議すべき事項 (COMMUNICATE WITH OWNERS ABOUT MEETINGS)

79.

推奨案:  改正法では下記の状況において、管理組合と区分所有者との対話を促進する
 ための具体策を、管理組合に対して要求すべきです。
 (1)管理組合は財務、修繕積立金、法的な紛争などに関する問題について、正確な情報を
   区分所有者に伝えること。
 (2)管理組合は修繕積立金の目的から逸脱するような場合、直ちにその情報を区分所有者
   に伝えること。

80.

推奨案: 
○管理組合のウエブサイトを製作し、透明性を高める。
○コミュニティの共同意識を育てるための下記の手段による広報 
 ・定期的にコミュニティイベントの開催を知らせる 
 ・広報
 ・Eメール
 ・掲示板
 ・チャット・ライン
 ・区分所有者集会
 ・ソーシアルメディア
 ・管理組合のウエブサイト
 ・区分所有者が相互に、或いは理事会に対してこれらのメディアを通じて交流する機会を提供
 ・理事会と区分所有者の学習の場を設けて最良の対話と実務を融合させる

集会の注意事項 (NOTICE OF MEETINGS)

81.

推奨案: 改正法では、理事会からの定期総会又は臨時特別総会の組合員への召集通知は 集会開催日の35日前までに提供されること、及び、 理事選挙における理事立候補者の募集を行うことを義務づける規定をおくことととすべきです。その後、 立候補者名を記して投票を行うための議案を添付した公式の集会召集通知は、集会開催日の15日前までに発送されることとします。
これら二つの通知は期日、場所、目的その他の項目に漏れがないか、チェックリストで確認されなければなりません。

82.

推奨案: 
理事会から組合員への召集通知には、集会目的の説明と共に、総会議案募集の通知を入れることとすべきです。 回答に対する処理過程のため、回答期日を明確に示すこととします。
改正法では、これらの回答手段として、電子化手段による回答を受け入れるべきもの、 推奨すべきものとして規定しなければなりません。

理事会のインターネット使用を促進
 (PROMOTE THE USE OF INTERNET TECHNOLOGY FOR BOARD MEETINGS)

83.

推奨案:  改正法では、理事会への参加には例えばSkypeのようなオンラインツールの使用を認めるべきです。

理事会と役員 (Directors and officers)

新人理事のトレーニング (TRAIN NEW BOARD MEMBERS

84.

推奨案: 
 新任理事に対する下記の最低限の理事トレーニング講座の受講を法で義務付けるべきです。
 (1) 基礎を重点に3時間程度の短時間で行うものとする。
 (2) 講座の履修課程(カリキュラム)と最終目標を消費者省が設定する。
 (3) 講座はオンラインと対面教室型の両方で利用できること。
 (4) 講座を自由に提供でき、講座修了者を認証する機関を政府外機関として外部に置くこと
 (5) 理事に選任された者は、就任後6ケ月以内に講座を修了しなければ、理事資格を剥奪する
   ことを可能とする制度とする。

85.

推奨案: 自主管理を行っている理事会の理事は、 提案されている3時間の受講課程のトレーニングの強制は、管理業務としての理事の追加的な責務として捉えるべきです。

理事の任期 (TERM LIMITS)

86.

推奨案: 理事の任期は各管理組合が管理規約で個別に決定すべき事項の中に残すべきです。

区分所有者に与えられている選挙権 (THE OWNER-OCCUPIED ELECTED POSITION)

87.

推奨案: 現行法における理事会選挙における区分所有者の選挙権規定は廃止されるべきです。

理事の倫理コードを創る (CREATE A CODE OF ETHICS FOR DIRECTORS)

88.

推奨案: 下記を強調した倫理コードを創るべきです。
 (1) あいまいな言葉ではなく、単純で、率直に、明快な言葉で記述すること。
 (2) 業界の一切の関与がなく、厳然たる法のもとに置くこと。
 (3) 理事と役員に要求される標準的善管注意義務に加えて、
    倫理コード自体の独立規定や義務、資格剥奪の背景となる責任に関する規定を置くこと。
 (4) 倫理コードは管理規約でも改定することが出来ないものとする。

理事の資格認証と資格剥奪
   (DIRECTOR QUALIFICATIONS AND DISQUALIFICATION)

89.

推奨案: 作業部会は下記の理事会理事の資格認証と資格剥奪を推奨致します。
 (1) 法定理事トレーニング講座の完全履修
 (2) 1住戸からは1名の理事しか選出できない
 (3) 理事候補者の犯罪履歴調査を管理規約に規定することを認める
 (4) 理事候補者が管理組合に対する訴訟当事者である場合はこれを公開する。

説明責任の強化目的に罰金制度を用いること
  (USE OF FINES TO ENHANCE ACCOUNTABILITY)

90.

推奨案: 政府は、管理組合役員が科料を科すことのできる懲戒権限を持ち、 区分所有者と賃借者から科料を徴収するようなことがあってはならず、 これを禁止するよう検討すべきです。(例えば、迅速裁定庁を通すなどの方法を考えるべきです。)

合法的なチャージバックを認めること
  (RECOGNIZE CHARGE-BACKS AS LEGITIMATE)

91.

推奨案: 改正法では、「例外的なサービス」の定義を明確にした上で、 チャージバックを認めるべきです。

区分所有者と理事の「権利と義務」
  (OWNERS’AND DIRECTORS’RIGHTS AND RESPONSIBILITIES)

92.

推奨案: 区分所有者と理事の権利と義務に関する基本的な文書が作成されるべきです。
 この権利と義務に関する宣言書(又は憲章)は、共同住宅コミュニティにおける区分所有者と
 理事の役割についての理解を深めるための教育文書として提供されるのが望ましいでしょう。
 この宣言書の中身は改正法のさまざまな条項のなかで共有されるべきものです。

93.

推奨案: 権利と義務に関する宣言書は共同住宅法及び同規則に矛盾するものであってはならない。

言い換えれば、権利と義務に関する宣言書は現行の権利と義務を前提としたものであるべきですが、 新しい分野、或いは特別に追加される権利と義務を阻むものではないということです。

94.

推奨案: 提案される権利と義務に関する宣言書は、下記の状態に適合するものでなければなりません。

 (1) 区分所有者の権利と義務は「管理組合との契約」という概念に基づいて、1頁の文書内に
   制限された内容で定義されるものとする。

 (2) 特別な参照文なしに区分所有者の権利と義務の原則の上にアーチを架けた明確なステート
   メントを含むものであるべきです。

 (3) 文書は法と管理組合文書を参考文献としても良いが、これらの文書が関係する、例えば、
   建物の保守と修繕のような区分所有者の権利と義務に関係する特有の事項を、探求し
   勇気付ける方法とします。

 (4) 権利と義務に関する宣言書の趣旨は、単なる推奨すべき事例というよりも、むしろ実践
   すべき最良の事例として、改正法の中に組み込まれなければなりません。

 (5) 管理組合は、権利と義務に関する宣言書をさまざまな方法で広めるべきです。例えば
  (5.1) コピーを共同住宅のロビーに置く。(Posting a copy in condo foyers)
  (5.2) 配布する現況報告書に綴じこむ(Including it in status certificates)
  (5.3) 定期総会議案書パッケージの中に綴じこむ(Including it in the annual
                     general meeting package)
  (5.4) 管理組合のウエブサイトに掲載する(Posting it on the corporation website)
  (5.5) 消費者省のウエブサイトに掲載する(Posting in on the ministry website)

 (6) 消費者省は宣言書を公式文書とすることを検討すべきです。

(2021年8月28日初版掲載・随時更新)
(Initial Publication - 28 August 2021/ Revised Publication -time to time)