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建築基準法の定期報告制度の実態 (共同住宅関係)

1. 定期報告制度の歴史
 昭和25年(1950年)建築基準法制定時には入っていなかった定期報告制度は、昭和34年(1959年)改正で設けられたものです。 当初、建築物は建築士が、昇降機と建築設備は行政職員が定期に検査することから始まって、 昭和45年(1970年)建築基準法12条改正により、現在の民間の有資格者による定期検査制度となりましたが、 既存建築物への遡及条項を巡り国会審議が成立せず、空白期間10年を経て実際に東京都で始まったのが1980年でした。
この間の経緯は、各自治体における定期報告制度の実態で詳しく説明しています。

2. 定期報告制度の目的
 「定期検査制度は不特定多数への危険の拡散を防ぐこと、具体的には、致命的な外部不経済(※)の発生頻度を一定値 (accessible risk)以下に保つことが目的の社会的規制」です。従って、個人住宅の換気量不足は検査対照にならない。
(※)英国の経済学者 Alfred Marshall が示した負の外部性(Negative Externality=外部不経済)

3. 共同住宅における最近の大きな改正点
 平成20年(2008年)4月1日以降の定期報告では、新築、もしくは外壁改修等から10年を経たタイル張りの建物は、
全面打診等により調査し、報告書を特定行政庁(調査・検査機関の組織と手続き 参照)に提出することになっています。

「定期報告制度」 〜 「特定建築物等の定期報告制度が厳格化されました。」 参照

 この規則が適用される共同住宅は、北海道、東京都、福岡では5階建以上、埼玉、神奈川では6階建以上, 大阪府では3階建以上で床面積の合計が1000u以上のもの 、または5階建以上で500u以上のものというように、 各自治体ごとに異なります。そもそもサービス付き高齢者向け住宅を除く一般共同住宅は昇降機検査を除いて定期報告の対象外としている自治体もあります。

本頁では、建築基準法の定期報告制度の各自治体における実態をご紹介しています。

目 次
 1. 定期報告制度の概要 〜共同住宅の定期健康診断とは?
 2. 各自治体における定期報告制度の実態
   (1.1) 調査・検査機関の組織と手続き
   (1.2) 定期調査・検査報告関係団体一覧
   (2)  調査・検査の範囲と内容
   (3)  定期報告制度の注意点
   (4)  なぜ各自治体で検査報告対象範囲が異なるのか
 3.  (表1): 特定行政庁と事務委任機関
 4. 定期報告を要する特定建築物、建築設備、防火設備の範囲
    (表2):定期報告に関する東京都施行規則
    (表3):定期報告に関する各自治体の施行規則の例
 5. (表4):昇降機の定期検査
 6. 定期報告の根拠法令(建築基準法の報告・検査関係)
 7. 調査・検査を開始するまでの準備
 8. 共同住宅の定期報告における指摘事項
 9. 東京都の令和3年度の定期報告結果の分析
10. マンションストックの47都道府県別比率
11. 国交省各地方整備局と各都道府県別窓口一覧

1. 定期報告制度の概要 〜共同住宅の定期健康診断とは?

(1) 管理組合は建築物の敷地、構造及び設備を常時適法な状態に維持する義務を負う ( 建築基準法第8条 )

 建築物の所有者・管理者は、建築物の敷地、構造及び設備を常時適法な状態に維持するため、 必要に応じ、その建築物の維持保全に関する計画を作成し、適切な措置を講じなければならない。

(2) 管理組合は調査・検査結果を特定行政庁に報告する義務を負う ( 建築基準法第12条 )

 建築基準法第12条に基づく定期報告制度は、不特定多数の人が利用する建築物で一定規模以上の特定建築物等や、 エレベーター等について、構造の老朽化、避難設備の不備、建築設備の操作不完全によって大きな災害が発生する恐れがないよう、 定期的に専門の技術者に点検してもらい、その結果を定期的に特定行政庁に報告することになっています。 定期報告をしなかったり、虚偽の報告を行った場合は、百万円以下の罰金が課せられます。(建築基準法第101条)

 

国土交通省・建築物防災推進協議会(事務局:一般財団法人日本建築防災協会)が主催して毎年開催している 「建築物防災週間」のパンフレット に定期報告制度の要点が簡潔にわかりやすくまとめられています。
管理組合内で定期報告制度を説明するときには、ぜひご活用ください。
    (http://www.kenchiku-bosai.or.jp/assoc/suishinkyo/)
「建築物防災週間」のパンフレットの内容
[1] 定期報告制度について
   (1).建築の計画から使用、維持保全まで
   (2).建築基準法に基づく定期報告制度の概要 
   (3).日頃から注意、点検を (@ 特定建築物、A 防火設備、
                     B 建築設備、 C 昇降機)
[2] 建築物の安全性 (1).浸水対策 (2).アスベスト対策
[3] 地震に備えて (1).耐震改修の促進  (2).お役立ち情報
             (3).こんな制度も利用して (4)その他の地震対策

2. 各自治体における定期報告制度の実態


都市政策としての建物管理制度は建築基準法以外にも消防法や都市計画法その他、 電気、ガス、上下水道、通信などのインフラ事業法や環境規制法などの多くの法律が関係しています。
これらの法律が地方自治法の別表第三に「都道府県知事が管理し、及び執行しなければならない事務」として記載され、 その具体的な監督執行権限は地方自治体に委ねられています。

本頁では定期報告制度が各自治体の建築基準法施行細則でどのように規定され、 どのような組織がそれを担っているかを、共同住宅関係に焦点を絞って、ご紹介しています。

(1.1) 調査・検査機関の組織と手続き

@「特定行政庁」とは、建築主事を置く市町村又は特別区の区域については当該市町村又は特別区の長をいい、 その他の市町村又は特別区の区域については都道府県知事をいいます。(建築基準法第2条第35号)
建築行政における確認申請や定期報告書の提出先ですが、小さな市町村では建築主事を置いていませんので、都道府県が特定行政庁になります。

「特定行政庁」というのは、建築基準法だけの用語です。建築基準法以外では存在しません。
国交省は、概ね人口15万人以上の都市を特定行政庁として指定し、残りの市町村は都道府県が特定行政庁です。

この都道府県を含めて全国の特定行政庁の数は2021年4月時点で451、そのうち、定期調査・検査を扱う特定行政庁は307, さらに特定建築物・建築設備の定期検査を指定しているのは227(全国の特定行政庁の50%)。
更にその中でも、共同住宅は定期検査報告の対象外としている特定行政庁が大半を占める。 (下表3参照)

ちなみに、1950年の建築基準法制定時の特定行政庁は、46都道府県だけでした。(当時は、沖縄はまだ占領下)、
翌年から政令指定都市の7都市が加わり、1975年には170に増えた。

特定行政庁は、1950年の建築基準法制定時点から第12条第2項に明記されていました。1959年改正で、この12条の見出し(報告、臨検、検査及び試験)から、 「臨検」の文字が消えます。臨検とは「行政機関の司法警察員が法規の遵守事項や不審点の確認のために出向いて立入検査すること」を言いますが、 実は、技術基準が整備されていなくて臨検などは行われていなかったことから、1970年の改正で調査・検査を民間資格者に開放したものの、 既存建築物への遡及条項を巡り国会審議が成立せず、空白期間10年を経て実際に東京都で始まったのが1980年代に入ってからです。

「建築主事」とは、建築確認を行うために置かれる公務員のことです。
 平成11年(1999年)の改正建築基準法施行により、建築確認業務は、建築基準適合判定の資格をもつ民間検査機構でも行えるようになりました。 1970年にそれまで実質機能していなかった行政の臨検制度をやめて調査・検査を民間開放し、実質的に動き出したのが1980年代ですが、 以降も約20年間、行政は、建築確認権限を手放しませんでした。

A事務委託機関:特定行政庁との委託契約に基づいて、案内通知から受付、結果通知にいたる事務手続き業務を行います。 昇降機の場合は、委託機関が記載内容の調査確認及び是正、指導を行い「定期検査報告済証」、 「完了検査済ワッペン」の交付まで行った上で、各行政庁への報告を行い、行政監督実務を代行しています。

検査会社が報告書を作成して特定行政庁に提出する手続きには下記()〜()の方式があります。
():検査会社が C業界団体 を経由して A事務委託機関 に提出する
():検査会社が A事務委託機関 に提出する
():検査会社が特定行政庁の委託を受けている B業界団体 に提出する(沖縄県など)
():特定行政庁の検査済証の交付は上記の委託機関を通す場合と、
     特定行政庁が直接、申請者(所有者・管理者)に送付する場合があります。

(1.2) 定期調査・検査報告関係団体一覧

建築基準法12条に基づく定期報告制度の推進を目的とする全国の関係団体を示します。
これらの中には @ 特定建築物の定期報告業務 以外に、A 建築確認検査業務、B 住宅性能評価業務
C 住宅性能保証業務 等を行っている団体もあります。(これは一部です。全国を網羅している訳ではありません。)

(主務官庁)   国土交通省住宅局建築指導課 ・ 建築物防災対策室 ・ 昇降機等事故調査室
(中央法人)                 : (一財)建築行政情報センター
(特定建築物関係の中央法人)     : (一財)日本建築防災協会
(建築設備及び昇降機等の中央法人) : (一財)日本建築設備・昇降機センター
(ブロック法人と地域法人)
(一財)北海道建築指導センター(一社)東北ブロック昇降機検査協議会
(一財)岩手県建築住宅センター(一財)宮城県建築住宅センター
(一財)にいがた住宅センター
(一財)埼玉県建築安全協会(一社)北関東ブロック昇降機等検査協議会
(一財)千葉県昇降機等検査協議会(公財)東京都防災・建築まちづくりセンター
(一財)日本建築設備・昇降機センター(定期報告部)(一社)東京都昇降機安全協議会
(一財)神奈川県建築安全協会(一財)長野県建築住宅センター
(一財)石川県建築住宅センター(一財)静岡県建築住宅まちづくりセンター
(NPO法人)静岡県建築物安全確保支援協会
(一財)愛知県建築住宅センター(一社)中部ブロック昇降機等検査協議会
(一社)近畿ブロック昇降機等検査協議会(一財)和歌山県建築住宅防災センター
(一財)大阪建築防災センター(公財)兵庫県住宅建築総合センター
(一財)島根県建築住宅センター(一社)中国四国ブロック昇降機検査協議会
(※)九州ブロック昇降機等検査協議会の平成6年6月解散に伴い、以後は県単位の地域法人が実施
(一社)福岡県建築住宅センター(公社)大分県建築士会昇降機センター
(公財)佐賀県建設技術支援機構(一財)長崎県住宅・建築総合センター
(一財)宮崎県建築住宅センター(一財)熊本県建築住宅センター
(公財)鹿児島県住宅・建築総合センター(一社)沖縄県電気管工事業協会

 (一財):一般財団法人 ・ (一社):一般社団法人 ・ (公財):公益財団法人 ・ (公社):公益社団法人

 (2) 調査・検査の範囲と内容

特定行政庁への報告は大項目で下記の4種類がありますが、適用の細目については各自治体で定めています。

(1) 特定建築物(点検:130項目)報告期間は
  各自治体で2年若しくは3年ごととしています。
平成20年3月10日国土交通省告示第282号

(2) 建築設備(点検:200項目) (毎年)
平成20年3月10日国土交通省告示第285号
    一 換気設備 別表第一
    二 排煙設備 別表第二
    三 非常用の照明装置 別表第三
    四 給水設備及び排水設備 別表第四

(※)給水設備及び排水設備の点検は
東日本大震災において給湯器の転倒被害が多数発生したことを受けて改正された平成12年建設省告示第1388号への対応

(3) 防火設備 (毎年)
防火扉、防火シャッターその他これらに類するものに限る。 建築基準法施行令第112条第14項第二号に規定する特定防火設備又は常閉防火設備に限る。

(4) 昇降機(エレベーター) (毎年)
平成20年3月10日国土交通省告示第283号
(昇降機の定期検査報告制度は上記告示以前の昭和45年(1970年)から始まっています。)


名古屋市の報告済マークの例
(特定建築物)   (建築設備)   (防火設備)

昇降機を除き上記の3種は共同住宅は適用外(全愛知県) 。従って共同住宅にこのマークは付かない。

 

調査・検査資格者
資格特定建築物 建築設備昇降機防火設備
1・2級建築士(※)
特定建築物調査員×××
建築設備検査員×××
昇降機等検査員×××
防火設備検査員×××

※ 建築士が報酬を得て調査・検査を行う場合は、建築士事務所の登録が必要(建築士法第23条)です。
  その他、当該資格法定講習修了者で国土交通大臣から資格者証の交付を受けた者です。

 (3) 定期報告制度の注意点

 

上記の各法定点検の一覧表が公正取引委員会発行  「マンションの管理・保守をめぐる競争の実態に関する調査について」(PDF 40頁 874KB) の15ページ 「図表 2-4 設備に係る法定点検・検査等」にあります。 発行が平成15年10月24日と多少古くなっていますが、その後の変更点は、本頁で補足していますので、参考にしてください。

 建築基準法及び関係告示の規定による定期調査報告制度は、検査対象区分から手続きに至るまで、
 各自治体ごとに定める建築基準法施行細則で規定されています。また、内容も変わることがありますので、
 お住まいの自治体で最新の建築基準法施行細則でご確認されますよう、お願い致します。

  1. 都道府県で手続きが異なる − (表1) 参照
  2. 都道府県で検査対象区分が異なる − (表2) ・ (表3) 参照
  3. 昇降機だけは他と独立した実施機関がある。 −  (表4) 参照
  4. 防火設備定期検査は消防法(総務省消防庁)と建築基準法(国交省)で別々に実施されます。

   (例) 非常用照明器具は建築基準法、誘導灯は消防法 (現実には兼用器具が使用されている)
          ・ 非常用照明器具の型式認定適合マークは「一般社団法人日本照明工業会(JLMA) 」
          ・ 誘導灯の総務大臣登録認定機関認定マークは「一般社団法人日本電気協会」
        中央管理室は建築基準法、防災センターは消防法 (現実には兼用集中運用されている)

なぜ、建築基準法と消防法で、同じ検査を二重に行うのでしょうか?
それは、建築基準法を業界の要望に合わせて規制緩和するとき、身代わりとして避難安全対策の
強化が盛り込まれてきたからです。令和4年(2022年)の最近の事例をご紹介しましょう。

3階建ての戸建住宅をホテル、旅館や福祉施設、グループホーム等の就寝系の用途に転用する場合、
平成30年以前の建築基準法では主要構造部を耐火構造にしなければ用途変更は不可能でした。
実質的に建替えとなります。

 そこで、建築基準法を改正し、「3階建て200u未満の建築物について、警報設備を設置すれば、
耐火構造は不要」としました。同時に定期調査告示(平成20年3月10日国土交通省告示第282号)
を改正し、警報設備の動作試験の項目を追加しました。(注1)
この項目は消防法検査においても重要な点検項目の一つですが、建築基準法においても
建築物の避難安全性能の確保は重要な要素のひとつです。

年々、国交省所管の建築基準法と総務省・消防庁所管の消防法、そして経済産業省の電気事業法で
重なる部分が多くなってきます。

(1)消防法の点検記録
  消防法(昭和23年法律第186号)に基づく点検※の記録を活用できる項目があります。
  (排煙設備については、建築基準法と消防法で設置基準が異なります)

※消防法に基づく点検とは、平成16年消防庁告示第9号(点検を行う消防用設備等
  又は特殊消防設備等の種類)及び昭和50年消防庁告示第14号(点検の内容及び点
  検の方法)に基づく点検で、消防設備士又は消防設備点検資格者が実施するものを
  いいます。

(2)電気事業法の点検記録
  電気事業法(昭和39年法律第170号)に基づく点検※の記録を活用できる項目があります。
  ・排煙設備・非常用の照明装置など

※電気事業法に基づく点検とは、同法第42条に基づく保安規程の標準モデル(参考:
  自家用発電設備保全マニュアル(一般社団法人日本内燃力発電設備協会))に基づ
  く点検で、電気主任技術者の監督のもとに実施するものをいいます。

注記:以上の解説は平成20年国土交通省告示第285号(最終改正平成30年10月29日国土交通省告示第1214号: ー平成31年1月29日から施行)に基づいています。

(注1)令和3年(2021年)2月26日発表の国交省告示第126号により平成20年国交省告示第282号「建築物の定期調査報告」が改正され、 定期調査報告書の調査結果表に警報設備の調査項目が追加されました。令和4年(2022年)1月1日から施行です。 但し、国の基準ではサービス付き高齢者住宅以外の共同住宅には適用されません。

5 本頁でとりあげた「共同住宅」には「サービス付き高齢者向け住宅」は含めていません。

   平成20年告示第282号で定期報告の対象と定められた要件のなかで「共同住宅」に含まれるものの中に
   「高齢者・障がい者等の就寝の用に供するもの」という分類がありますが、これは平成23年10月から登録
   が始まった「サービス付き高齢者向け住宅」(通称「サ高住」)のことです。

   その用途から定期報告制度(特に防火設備検査)の対象になっていますが、国の指定では建築設備・
   防火設備の対象は、共同住宅はサービス付き高齢者住宅に限るとしていることから、一般共同住宅
   まで独自の追加指定をしている一部自治体を除き、報告対象外としている自治体が殆どです。
   詳しくは、次章の 「(4) なぜ各自治体で検査対象区分が異なるのか?」 で説明しています。

6 平成30年の建築基準法改正により、床面積の合計が100uを超え200u以下の建築物は
   政令で指定される定期報告の対象から除外されました(令和元年6月施行)。

   このうち、階数3以上で床面積の合計が100uを超え200u以下の建築物については、定期報告の対象建築
   物として特定行政庁で指定することができることとされました。自治体によっては県(市)の建築基準法施行細
   則を改正し、これらの建築物について、定期報告の対象として指定している場合もありますのでご注意ください。

 (4) なぜ各自治体で検査報告対象範囲が異なるのか?

平成28年5月までは地域の実情に応じて特定行政庁が検査報告対象の範囲を定めていましたが、
建築基準法の 一部を改正する法律(平成26年法律第54号)の平成28年6月1日施行によって、
避難上の安全確保の観点から次の3点を国が政令で一律に報告の対象としました。

[1] 不特定多数の者が利用する建築物及びこれらの建築物に設けられた防火設備
[2] 高齢者等の自力避難困難者が就寝用途で利用する施設及びこれらの施設に設けられた防火設備
[3] エレベーター、エスカレーター、小荷物専用昇降機

国の政令では、共同住宅は昇降機を除いて、就寝用途施設を除く一般共同住宅は検査対象外です。
後述する各自治体別の (表3) で、(一般共同住宅は対象外)とある自治体は、国の政令基準の
ままの適用です。それ以外は地域の実情に合わせて特定行政庁が独自に定めています。

1.国の政令基準 (共同住宅関係のみを示します)
 建築基準法施行令第16条、平成28年国交告240号、および国住指第3812号(H29.1.22)
用 途 規 模 等
※避難階のみを当該用途に供するものを除く

病院、診療所(患者の収容施設のあるものに限る)、旅館、ホテル、就寝用児童福祉施設、 共同住宅(サービス付き高齢者向け住宅に限る)、 寄宿舎(サービス付き高齢者向け住宅、認知症高齢者グループホーム、障害者グループホームに限る)

・当該用途(100u超の部分)が3階以上の階にあるもの・2階にある当該用途の床面積が300u以上のもの (病院、有床診療所については、2階の部分に患者の収容施設があるものに限る)・当該用途(100u超の部分)が地階にあるもの


※令和元年6月25日施行の法改正により、国指定の建築物は上記用途に供する部分の床面積の合計が200uを超えるもの、 または階数が3以上で上記用途に供する部分の床面積の合計が100uを超えるものに限られています。

3. 特定行政庁と事務委任機関

注記:下表のうち、A 事務委任機関については、
    かっては特定行政庁から委任を受けていたが現在は行っていないものも含まれます。ご注意ください。

(表1) (※)一部の自治体の例を掲載しています。全国を網羅している訳ではありません。
自治体(※) @ 特定行政庁 A 事務委任機関
北海道 北海道、札幌市、函館市、小樽市、釧路市、苫小牧市、室蘭市、 旭川市、帯広市、北見市、江別市 (一財)北海道建築指導センター
岩手県 岩手県、盛岡市 (一財)岩手県建築住宅センター
新潟県 新潟県、新潟市、新発田市、三条市、長岡市、柏崎市、上越市 (一財)にいがた住宅センター
宮城県 宮城県、仙台市、塩竃市、石巻市、大崎市 (一財)宮城県建築住宅センター
(※)宮城県・大崎市を除く仙台市、塩竃市、石巻市の3市から委託
秋田県秋田県、秋田市、横手市 (一財)秋田県建築住宅センター
茨城県 茨城県、水戸市、日立市、土浦市、古河市、高萩市、北茨城市、取手市、つくば市、ひたちなか市 昇降機以外は特定行政庁が自ら受け付ける。
埼玉県 埼玉県、川口市、さいたま市、川越市、所沢市、越谷市、上尾市、 草加市、春日部市、狭山市、新座市、熊谷市、久喜市 (一財)埼玉県建築安全協会
東京都
(34特定行政庁 / 23特別区+10市+東京都)

23特別区(千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、台東区、 荒川区、北区、品川区、目黒区、大田区、世田谷区、渋谷区、中野区、杉並区、豊島区、 板橋区、練馬区、墨田区、江東区、足立区、葛飾区、江戸川区)と、八王子市、町田市、 府中市、調布市、三鷹市、武蔵野市、日野市、立川市、国分寺市、西東京市

その他の市町村の特定行政庁は東京都ですが、その中で、 多摩地区は「東京都多摩建築指導事務所」、 島嶼(とうしょ)地区は「東京都都市整備局市街地建築部」が特定行政庁です。

(1)特定建築物,(3)防火設備 関係
 (公財)東京都防災・建築まちづくり
      センター
(2)建築設備
 (一財)日本建築設備・昇降機センター
(4)昇降機
 (一社)東京都昇降機安全協議会

神奈川県 神奈川県、横浜市、川崎市、鎌倉市、横須賀市、藤沢市、茅ヶ崎市、 平塚市、小田原市、秦野市、厚木市、相模原市、大和市 (一財)神奈川県建築安全協会
(※)横浜市、川崎市、藤沢市、茅ヶ崎市を除く9市から委託
静岡県 静岡県、静岡市、浜松市、沼津市、冨士市、富士宮市、焼津市 (一財)静岡県建築住宅まちづくりセンターは定期報告業務の委託は受けていないが平成30年3月22日、県との連携協定を締結
定期報告業務は、NPO法人静岡県建築物安全確保支援協会(約200名の調査・検査資格者が会員となっている組織)が行う。
和歌山県和歌山県、和歌山市 (一財)和歌山県建築住宅防災センター
大阪府

大阪府、大阪市、豊中市、堺市、東大阪市、吹田市、高槻市、守口市、 枚方市、八尾市、寝屋川市、茨木市、岸和田市、箕面市、門真市、池田市、和泉市、羽曳野市


(一財)大阪建築防災センター
(※)昇降機を除く3種類の委託を受けている

奈良県奈良県、奈良市、橿原市、生駒市 (一財)なら建築住宅センター
兵庫県兵庫県、神戸市、尼崎市、西宮市、姫路市、伊丹市、明石市、 加古川市、宝塚市、川西市、三田市、芦屋市、高砂市 (公財)兵庫県住宅建築総合センター
愛知県愛知県、名古屋市、豊橋市、豊田市、岡崎市、一宮市、春日井市 (一財)愛知県建築住宅センター
(※)名古屋市を除く6特定行政庁から委託
福岡県福岡県、北九州市、福岡市、久留米市、大牟田市 (一財)福岡県建築住宅センター
長崎県長崎県、長崎市、佐世保市 (一財)長崎県住宅・建築総合センター
大分県大分県、大分市、別府市、中津市、宇佐市、日田市、佐伯市 (公社)大分県建築士会昇降機センター
佐賀県佐賀県、佐賀市 (公財)佐賀県建設技術支援機構
熊本県熊本県、熊本市、八代市、天草市 (一財)熊本県建築住宅センター
鹿児島県鹿児島県、鹿児島市 (公財)鹿児島県住宅・建築総合センター
沖縄県沖縄県、那覇市、浦添市、宜野湾市、沖縄市、うるま市 (一社)沖縄県電気管工事業協会

 (一財):一般財団法人 ・ (一社):一般社団法人 ・ (公財):公益財団法人 ・ (公社):公益社団法人

4. 定期報告を要する特定建築物、建築設備、防火設備の範囲 (共同住宅関係)

(1) 特定建築物の定期検査
国交省の告示第282号が基本になりますが、地方条例(東京都建築安全条例等)の内容も含まれますので、
現地調査・報告書作成時には注意が必要です。
東京都建築安全条例には「直通階段からの避難経路の区画の状況」や、「自動回転ドアの状況」などがあります。

(2) 建築設備の定期検査
国交省の告示第285号で対象となる建築設備は「換気設備」「排煙設備」「非常用の照明装置」「給水設備及び排水設備」の4種類が規定されていますが、 建築設備の定期検査の報告内容は特定行政庁に任されていますので、建築設備の報告自体がない特定行政庁もあるほか、 「換気設備」「排煙設備」「非常用の照明装置」の災害避難時に重要な3種類に絞り、「給水設備及び排水設備」の検査を省略しているところも多くあります。 (東京都では省略せずに4種類すべての検査が必要であり、更に国交省の告示の内容に東京都建築安全条例の内容も含めています。)

また、この告示第285号で対象となる建築設備のなかで排煙設備に含まれる「その他の設備等」に、「非常用エレベーターにおける排煙設備」、 及び「非常用エレベーターの作動の状況」が含まれています。ご注意ください。

(3)  防火設備の定期検査

防火扉、防火シャッターその他これらに類するものに限る。 令第112条第14項第二号に規定する特定防火設備又は常閉防火設備に限る。

平成28年6月施行の法改正で新設された「防火設備」定期検査報告には3年間の経過措置期間がありました。


   (表2) 定期報告に関する東京都施行規則

定期報告が必要な特定建築物・防火設備・建築設備・昇降機等及び報告時期に関する東京都の施行規則中、
共同住宅に関する部分のみ抜粋し、注記を本文中に記載するなど一部編集しています。

東京都の定期検査制度は1980年から始まっていますが、 1983年当時の共同住宅の対象は「3階以上の階の当該部分の床面積が100uを超えるもので、床面積の合計が300uを超えるもの」 となっていました。

(※) この表は、東京都の共同住宅関係 (サービス付き高齢者住宅を除く) のみを示しています。(2022年現在)
用途 規模又は階(いずれかに該当するもの) 報告時期
(1) 特定建築物
下宿、共同住宅又は寄宿舎
(サービス付き高齢者向け住宅を除く)
F≧5階かつA> 1000u
(5階以上の階で、その用途に供する部分の床面積の合計が1000uを超えるもの)
5月1日から10月31日まで(3年ごとの報告)(令和元年、令和4年...)
(2) 建築設備

・換気設備(自然換気設備を除く。)
  (報告対象の換気設備は、火気使用室、無窓居室又は集会場等の居室に設けられた機械換気設備に限ります。)
・排煙設備(排煙機又は送風機を有するもの)
・非常用の照明装置
・給水設備及び排水設備 ( 給水タンク等を設けるもの)

上記の特定建築物に該当する建築物に設けられるもの 毎 年 報 告
前年の報告日の翌日から起算して1年を経過する日まで
(3) 防火設備
随時閉鎖又は作動をできるもの
(防火ダンパーを除く。)
上記の特定建築物に該当する建築物に設けられるもの 前年の報告日の翌日から起算して、6 か月から1年の間隔を空けて、(共同住宅の場合)毎年4月から11月の期間に報告
(4) 昇降機等

エレベーター( 労働安全衛生法施行令第12条第1項第六号に規定) するエレベーター (労働安全衛生法の性能検査を受けているもの)を除く。

ただし、かごが住戸内のみを昇降するもの(一戸建て、長屋又は共同住宅の住戸内に設けられた昇降機)を除く。 同上

 (表3) 定期報告に関する各自治体の施行規則の例

※ 下記(1)〜(3)の他に(4)昇降機 がありますが、昇降機の検査のみを実施する機関は(表4)に示しています。
   なお昇降機の検査は、建築基準法施行規則により毎年行い、報告書様式は告示第283号で規定されています。

共同住宅(高齢者、障害者等の就寝の用に供するものを除く)の住戸内は定期調査・検査の報告対象から除かれます。
避難階とは、直接地上へ通じる出入り口のある階をいいます。

いずれの自治体においても、定期報告の適用枠を拡大中で、本表に示した内容は既に変更になっている可能性も
ありますので、お住まいの自治体の最新の情報をご確認いただきますよう、お願い致します。

共同住宅関係 (サービス付き高齢者住宅を除く) のみ抜粋
自治体
(報告時期)
(1)特定建築物
(和歌山県は2年ごと、他は3年ごと)
(2)建築設備
  (毎年)
(3)防火設備
   (毎年)
北海道 7項:共同住宅(5階以上のもので、かつ、床面積の合計が1,000 u以上であるもの) 対象は特定建築物の要件で(※1)に該当するもの
給排水設備は対象外
(一般共同住宅は対象外)
岩手県 下宿、共同住宅又は寄宿舎(3階以上の階又は地階で2階の部分が500u以上のもの) 換気設備(法28条2項ただし書き又は3項の規定によるもの) 排煙設備・非常用照明装置
(法35条の規定によるもの)
新潟県 (一般共同住宅は対象外) (※2)建築設備に該当するもの
給排水設備は対象外
(※2)防火設備に該当するもの
宮城県 共同住宅等:A≧1,000u(3階以上に当該用途を有するものに限る。) 対象は特定建築物の要件で(※3)建築設備に該当するもの
給排水設備は対象外
対象は特定建築物の要件で(※3)防火設備に該当するもの
秋田県 (一般共同住宅は対象外)
茨城県 (一般共同住宅は対象外)
埼玉県 共同住宅 6階以上の階にあるもの 対象は特定建築物の要件で(※4)建築設備に該当するもの 対象は特定建築物の要件で(※4)防火設備に該当するもの
神奈川県 共同住宅 6階以上の階にあるもの 対象は特定建築物の要件と同じ
給排水設備は対象外
(一般共同住宅は対象外)
静岡県 (一般共同住宅は対象外)
愛知県 (一般共同住宅は対象外)
奈良県 下宿、共同住宅、寄宿舎(延べ面積1,000u以上)
3階以上の階でA>100uのもの
(一般共同住宅は対象外) (一般共同住宅は対象外)
和歌山県 共同住宅・寄宿舎:500uを超え、かつ階数が3以上のもの
(報告時期は2年ごと)
対象は特定建築物に同じ 対象は特定建築物に同じ
滋賀県 (一般共同住宅は対象外)
大阪府 共同住宅
@3階以上に対象用途があり、1000u以上のもの
A5階以上に対象用途があり、500u以上のもの(※5)
(報告時期:令和3年6年9年・・)
非常用エレベータが設置されているもの
       (堺市・池田市は報告対象外)
「給排水設備」は、大阪府では検査対象外
提出期限:例年、4月1日〜12月25日まで
兵庫県 下宿、共同住宅又は寄宿舎
F≧6かつA>100u(Aは6F以上))
(報告時期:令和3年6年9年・・)
(一般共同住宅は対象外) 対象は特定建築物に同じ
岡山県 (一般共同住宅は対象外)
広島県 (一般共同住宅は対象外)
福岡県 共同住宅:5階以上に当該用途
(福岡市のみ5階以上のいずれかの階のA>100u)
対象は特定建築物に同じ 対象は特定建築物に同じ
長崎県 (一般共同住宅は対象外)
大分県 (一般共同住宅は対象外)
佐賀県 (一般共同住宅は対象外)
熊本県 (一般共同住宅は対象外)
沖縄県 (一般共同住宅は対象外)

(※1)(北海道)「機械換気設備」とは@中央管理方式の空調設備、A居室で1/20以上の開口部が無いものに設けた
    換気設備、B劇場・映画館・演芸場・観覧場・公会堂・集会場等の居室の機械換気設備、C火気使用室に
    設けた換気設備のことをいいます。

(※2)(新潟県・建築設備):(1)換気設備:第1種機械換気設備または中央管理方式による空気調和設備が該当
       (2)排煙設備:排煙機を設けた設備が該当 (3)非常用の照明設備:電池別置型、発電機型等が該当
    (新潟県・防火設備):随時閉鎖式の防火設備(防火扉・防火シャッター・耐火クロススクリーン・ドレンチャーその他)
    (注)常時閉鎖式防火設備、防火ダンパー、外壁開口部の防火設備は除く。

(※3)(宮城県・建築設備)・換気設備(中央管理方式の空調設備に限る。) ・排煙設備(排煙機を有する排煙
     設備に限る。)・非常用の照明装置(蓄電池別置形,自家発電機形,両者併用型に限る。)
    (宮城県・防火設備)・防火設備(随時閉鎖式又は作動をできるものに限る。常時閉鎖式の防火設備
    (普段は閉鎖された状態となっており,開放してもドアクローザーなどで自動的に閉鎖状態に戻る方式のもの),
    防火ダンパー,外壁開口部の防火設備は検査対象外。

(※4)(埼玉県・建築設備)換気設備(自然換気設備及び共同住宅の住戸に設けるものを除く)・排煙設備(排煙機
    を有するもの)非常用の照明設備・給水設備及び排水設備(共同住宅の住戸に設けるものを除く)
    (埼玉県・防火設備)火災時に煙や熱を感知して閉鎖又は作動する次の防火設備(防火ダンパーを除く)
    ・防火扉・防火シャッター・耐火クロススクリーン・ドレンチャーその他の水幕を形成する防火設備

(※5)(大阪市北区)で2021年12月17日事務所ビル放火事件で、容疑者以外で26人が亡くなったが、
     この建物は700uで事務所ビルの定期検査報告建物(5階以上で1000u以上)に該当しなかった。
     避難階段が一つしかない実質既存不適格の建物について、ニ方向避難確保に向け政令改正検討中

5. 昇降機の定期検査

  昭和45年(1970年)の建築基準法12条改正により昇降機・遊戯施設の定期検査報告制度が始まって、
  令和4年(2022年)現在で52年になります。報告率も全国平均で97%以上の高い水準を維持しています。

(表4)

特定行政庁 委任機関

東北ブロック6県(全20)
  青森県、青森市、弘前市、八戸市
  岩手県、盛岡市
  宮城県、仙台市、塩竃市、石巻市、大崎市
  秋田県、秋田市、横手市
  山形県、山形市
  福島県、福島市、郡山市、いわき市

(一社)東北ブロック昇降機検査協議会

(一財)岩手県建築住宅センター
(一財)宮城県建築住宅センター
 (仙台市、塩竃市、石巻市の分は点検
 業者から東北ブロック昇降機検査協議会
 が受付けて宮城県建築住宅センターに
 送付し、そこから特定行政庁に提出)

北関東ブロック4県(茨城県・群馬県・栃木県・山梨県)(全29)
  茨城県、水戸市、日立市、土浦市、北茨城市、取手市
        ひたちなか市、つくば市、高萩市、古河市
  群馬県、前橋市、高崎市、桐生市、伊勢崎市、大田市、館林市
  栃木県、宇都宮市、小山市、足利市、栃木市、鹿沼市
        佐野市、那須塩原市、日光市、大田原市
  山梨県、甲府市

(一社)北関東ブロック昇降機等検査協議会

千葉県(全14)
  千葉県、千葉市、市川市、船橋市、松戸市、柏市、市原市
        佐倉市、八千代市、我孫子市、浦安市、木更津市、
        習志野市、流山市

(一社)千葉県昇降機等検査協議会

中部ブロック7県(愛知県・愛知県・岐阜県・三重県・石川県
           富山県・福井県)(全35)
  愛知県、名古屋市、豊橋市、豊田市、岡崎市、一宮市、春日井市
  静岡県、静岡市、浜松市、沼津市、冨士市、富士宮市、焼津市
  岐阜県、岐阜市、大垣市、各務原市
  三重県、四日市市、津市、鈴鹿市、松坂市、桑名市
  石川県、金沢市、七尾市、小松市、白山市、野々市市、
  富山県、富山市、高岡市
  福井県、福井市

(一社)中部ブロック昇降機等検査協議会
(地域法人)
(一財)愛知県建築住宅センター
(一財)石川県建築住宅センター

 (愛知県、石川県の分は点検業者から
 中部ブロック昇降機等検査協議会
 が受付けてそれぞれの地域法人に
 送付し、そこから特定行政庁に提出)

近畿ブロック2府4県(大阪府・滋賀県・京都府・兵庫県・奈良県
              和歌山県)(全48)
  大阪府、大阪市、堺市、東大阪市、豊中市、吹田市、高槻市
        守口市、枚方市、八尾市、寝屋川市、茨木市
        岸和田市、箕面市、門真市、池田市、和泉市
        羽曳野市
  滋賀県、大津市、草津市、彦根市、近江八幡市、守山市、長浜市
        東近江市
  京都府、京都市、宇治市
  兵庫県、神戸市、尼崎市、西宮市、姫路市、伊丹市、明石市、
        加古川市、宝塚市、川西市、三田市、芦屋市、高砂市
  奈良県、奈良市、橿原市、生駒市
  和歌山県、和歌山市

(一社)近畿ブロック昇降機等検査協議会

中国四国ブロック9県(鳥取県・島根県・岡山県・広島県・山口県
              徳島県・香川県・愛媛県・高知県)(全42)
  広島県、広島市、福山市、呉市、東広島市、廿日市市、三原市
        尾道市
  岡山県、岡山市、倉敷市、津山市、玉野市、総社市、新見市
        笠岡市
  山口県、下関市、山口市、宇部市、周南市、防府市、萩市
        岩国市
  鳥取県、鳥取市、米子市、倉吉市
  島根県、松江市、出雲市
  香川県、高松市
  愛媛県、高松市、松山市、今治市、新居浜市、西条市
  高知県、高知市
  徳島県、徳島市

(一社)中国四国ブロック昇降機検査協議会
  九州ブロック昇降機等検査協議会は平成6年6月解散し、 以後は県単位の地域法人が実施しています。
福岡県
  福岡県、北九州市、福岡市、久留米市、大牟田市
(一財)福岡県建築住宅センター
長崎県
  長崎県、長崎市、佐世保市
(一財)長崎県住宅・建築総合センター
大分県
  大分県、大分市、別府市、中津市、宇佐市、日田市、佐伯市
(公社)大分県建築士会昇降機センター
佐賀県
  佐賀県、佐賀市
(公財)佐賀県建設技術支援機構
熊本県
  熊本県、熊本県、熊本市、八代市、天草市
(一財)熊本県建築住宅センター
鹿児島県
  鹿児島県、鹿児島市
(公財)鹿児島県住宅・建築総合センター
沖縄県
  沖縄県、那覇市、浦添市、宜野湾市、沖縄市、うるま市
(一社)沖縄県電気管工事業教会

 (一財):一般財団法人 ・ (一社):一般社団法人 ・ (公財):公益財団法人 ・ (公社):公益社団法人

6. 定期報告の根拠法令(建築基準法の報告・検査関係)

定期報告の根拠法令は下記の通りです。内容の要約を示しています。
実際の条文は、次頁 建築基準法の報告・検査関係条文(抄) を参照ください。

 1. 建築基準法 (第12条1〜4)
    特定行政庁が指定する建物の所有者・管理者は、当該建築物の敷地、構造及び建築設備について、
    定期に、一級建築士等の検査資格者に検査をさせてその結果を特定行政庁に報告しなければならない。
    昇降機及び昇降機以外の建築設備についても損傷、腐食その他の劣化の状況の点検をさせなければならない。

 2. 建築基準法施行規則(第5条〜第6条)
    建築物の定期報告の時期はおおむね六月から三年までの間隔をおいて特定行政庁が定める時期とする。
    当該調査の項目、方法及び結果の判定基準は国土交通大臣の定めるところによるものとする。
    報告書及び定期調査報告概要書、調査結果表の様式は国土交通大臣又は特定行政庁が規則により定める。
    昇降機及び建築設備等の定期報告はおおむね六月から一年までとする。

 3. 平成20年3月10日国土交通省告示第282号
    建築物の定期調査報告における調査及び定期点検における点検の項目、方法並びに結果の判定基準
    並びに調査結果表を定める。
    この告示の別表(全9頁)に詳細な調査・点検項目の具体的な規定があります。

 4. 平成20年3月10日国土交通省告示第283号
    昇降機の定期検査報告における検査及び定期点検における点検の項目、事項、方法
    並びに結果の判定基準並びに検査結果表を定める。

 5. 平成20年3月10日国土交通省告示第285号
    建築設備等(昇降機及び遊戯施設を除く)の定期検査報告における検査及び定期点検における
    点検の項目、事項、方法並びに結果の判定基準並びに検査結果表を定める。
    一 換気設備 別表第一
    二 排煙設備 別表第二
    三 非常用の照明装置 別表第三
    四 給水設備及び排水設備 別表第四

 6. 資格者関係規則 その他の告示
    特殊建築物等調査資格者、昇降機検査資格者及び建築設備検査資格者
    昇降機以外の建築設備を点検する場合の資格者

7. 調査・検査を開始するまでの準備

定期調査・検査を実施する資格者は、何の準備もなしにいきなり調査・検査に入れるわけではありません。

調査・検査に先立って事前に、管理組合が保管している膨大な竣工図書の中から、調査・検査に必要な
図面を見極めます。建物関係を調査する特定建築物の調査項目だけでも敷地、地盤から建築物の外部、
屋上及び屋根、建築物の躯体、内部、防火区画、防火設備、照明設備など130項目にわたっています。

図面以外にも建具表、機器表、電気・空調・防火・給排水の系統・設備図書など多岐にわたります。
これらを管理組合で紙ベースの図書ではなくCD−ROM等でPDFデータ化して置く事が必要です。
マンションが続く限り、これらの図書は、何度も、何十年にもわたって多くの人が手に取って扱うことになります。

建築確認申請済証の写しが必要になることもあります。図面資料が全く存在しない、もしくは著しく不鮮明な
スキャンデータの場合、定期報告書に添付する為の作図費用が別途発生します。

複合用途の共同住宅では、テナントさんとの検査工程の事前の打ち合わせが必要になることがあります。
一般の居室だけの共同住宅と異なり、テナントの店舗、事務所のレイアウト変更が発生していないか等の
事前確認と、検査項目によっては事務所や店舗等への検査立入日程の調整も必要になります。

他法令による最新の検査資料も必要です。
6ケ月以内に実施した「消防用設備等点検結果報告書」があれば防火設備検査で流用できるものがあるかも知れません。

調査によって判明した問題箇所は、速やかに是正・対策をする必要があります。指摘事項によっては、 特定行政庁から是正完了の報告提出を求められる場合もあります。

8. 共同住宅の定期報告における指摘事項

東京都の33特定行政庁における平成27年(2015年)度の建築設備定期検査報告データを
(一財)日本建築防災協会と(一財)日本建築設備・昇降機センターが共同で分析を行った結果

約2万8千件の共同住宅報告件数中、
@「タイル、石貼り等、モルタル等の劣化及び損傷の状況」(7,339件)
  共同住宅の『全面打診等未実施』の指摘件数が多い。
  特に大規模修繕周期(約12年)前後での指摘率が高い

A「非常用照明装置の作動の状況」(6,185件)
  『バッテリー不良による不点灯』:約6割
  『器具不良による不点灯』:約3割

B「鉄筋コンクリート造及び鉄骨鉄筋コンクリート造の外壁躯体の劣化及び損傷の状況」(721件)
  『ひび割れ・亀裂・白華・浮き』:約5割 『爆裂・鉄筋露出』:約3割
  指摘内容には、「ひび割れ」などの軽微なものから、「爆裂・鉄筋露出」など深刻な状況のものまで含みます。

※ 東京都の報告件数ではトップの2万8千件の共同住宅に次いで2位が7千件の事務所ビル、 3位が3千5百件(いずれも概算値)の飲食店・物販店で、共同住宅以外では「排煙口の維持保全の状況」の指摘が多い。
尚、上記のAとBの指摘件数の数値には、事務所ビルや飲食店・物販店、その他の用途の建物も含まれています。

築11〜13年を過ぎた頃から居室内設備の故障も目立って増加してきます。
 築10年を過ぎると、居室内の設備・器具も使用寿命が来て交換の時期を迎えます。

居室内のエアコン、ガス給湯器、浴室のコントロール基板やファン、インターフォン、IHヒータなどの器具の故障、 浴室、洗濯機バン、キッチン周り、トイレの水漏れ事故等が目立って増加し、結露による壁のクロス剥がれなども多くなります。

最近の設備器具は殆どがマイコン搭載の電子機器となっており、 2021年は世界的な半導体不足で交換部品の入手が数ケ月後という事態も発生しました。 浴室のコントロール基板故障でお湯も出ない。交換部品が数ケ月後といわれたら大変です。

浴室やキッチンシンクなど簡単には交換できない据付け設備や、 管理組合が管理している緊急警報設備の子機となっている居室内の感知器や警報器、インターホン機器などは特に注意して日頃のメンテと 故障の際の緊急対応を日頃から準備しておいてください。

9. 東京都の令和3年度の定期報告結果の分析

東京都の定期報告件数では、全用途集計で53,871件のうち、
共同住宅は34,146件で全体の63%を占めています。
共同住宅における要是正率は40.0%、
その内訳は、非常用照明装置の要是正数13,258件だけで、全体の90%を占めています。
耐用年数により約10年毎にバッテリー若しくは器具の交換が必要となるからです。

 

10. マンションストックの47都道府県別比率

全国のマンション戸数は、現時点での最新の国交省発表では令和3年(2021年)末時点で約685.9万戸です。
残念ながら、47都道府県別のデータは公表されていませんので、古いデータから引用します。

下記のグラフは、平成30年(2018年)4月1日時点の、管理業者に委託している戸数の合計596.6万戸
の内訳を示したもので、平成30年(2018年)末時点の総戸数654万戸の91%にあたります。

 

 
東京都、神奈川県、大阪府の3都府県で全体の52.4%
これに兵庫県、埼玉県、千葉県、愛知県、福岡県、北海道、
京都府の7道府県を加えた10都道府県で87%と9割近く
を占める。15位の滋賀県まで含めて92%

マンションが大都市圏に集中し、同時に高経年マンションが
増加するとして国交省は危機感をあおるが、危機の本質は違う。
地方の経済衰退地域から崩壊は進行している。
「廃墟マンションの行政代執行」の舞台となった野洲市がある
滋賀県のランキングは15位、ストック戸数比率は0.6%
滋賀県の共同住宅は、建築基準法の定期報告制度の対象外

滋賀県の名誉のために知っておいて欲しいことがある。(量ではなく質の問題)
コロナウィルスの変異が問題になった2021年1月半ば頃まで、 その判定は、全国の地方衛生研究所(地衛研)が陽性者から1割程度の検体 を集めて国立感染症研究所(感染研)に送り、そこでゲノム(全遺伝情報)を解析していた。 これには、2週間かかる。そこで感染研は、各地の地衛研でPCR検査とゲノム解析を組み合わせて 数日で判定できる体制を2021年1月25日まででに41都道府県まで広げた。(全国拡大は3月)、
2021年1月25日時点の実施検査数は、東京都1742件、静岡県387件、滋賀県374件だった。
東京都は本家の感染研だからTopは当然としても、静岡と滋賀がそれに続いた。

住宅数は地域経済力の量的な指標のひとつにすぎず、 住民の健康と安全を守る行政執行力の評価は別にある。

後始末の経済学
今は過疎地となった地域の大型レジャー施設、温泉街の大型ホテルに続いて、 商業ビルや共同住宅もバブル経済の後始末を迫られている。 健康診断は健康な人のための予防保全制度であって、その後の医療は健康保険制度、 所得のない人には生活保護制度があるが、建物には公的な受け皿の制度はない。 所有者の自己責任、結果、放棄される。

11. 国交省各地方整備局と各都道府県別窓口一覧

不動産業関係部局に関する 「各地方整備局」と「各都道府県別」 窓口一覧    ダウンロード(PDF:157kB)

なお、設備に係る法定点検・検査等に関して、公正な競争を阻害する不正取引の防止に目を光らせているのが、公正取引委員会です。 詳しくは、  「独禁法と公取委」 〜 今、マンション改修業界で何が起きているのか 〜 を参照下さい。

(2022年3月27日初版掲載・随時更新)
(Initial Publication - 27 March 2022/ Revised Publication -time to time)