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CAT判例、ニューサンス・騒音 (1) フローリング    (2022 ONCAT 110 )

○ 騒音問題に携わる専門家(技術者、法曹関係者)必見の判決です。

判決本文から
   [42] 騒音に対する個々の反応は主観的である。
     個人が騒音を迷惑だと思うかもしれないということは、必ずしも騒音が不合理であること、または
     管理組合がそれに対処するために介入しなければならないことを意味するわけではない。


では、共同住宅コミュニティの中で、静穏な生活を望む個人の権利はどうやって守るのか?
ニューサンスの判定基準、居住者の責任、管理組合のガバナンスについて、メアリー判事が下した判断は?

予備知識
(1) 選定当事者(民事訴訟法第30条)
  本裁判は、上階からの騒音被害に悩む原告が管理組合と上階老夫婦を被告として訴え、裁判所の
  係属事件となった後、同じ建物の別の住戸に住む被告夫婦の息子が、この部屋の実質的な当事者
  である事が判明した為、原告の請求を受けて裁判所がこの息子を当事者として選定した。

  この当事者をカナダ法では「"The Intervenor"(介入者)」と呼びますが、本文では、日本の民事訴訟
  法第30条の用語を使用して「選定当事者」としています。最初に被告として訴えられた元の当事者は
  民訴法では選定者といい、選定者は訴訟の当事者から当然に脱退するのは日本もカナダも同じです。

(2) 裁判のプロセス
  コンドミニアム裁判所の裁判プロセスは裁判所が訴訟を受理してから第1段階「和解協議」、第2段階「調停」
  第3段階「判決」と1ヶ月ごとに3つの過程を踏んで、3ケ月で結審するように組まれていて、意図的な遅延には
  ペナルティが課されます。(本事件の報告書提出の遅れはCOVIDが原因としてペナルティは課されなかった。)

目次
○ コンドミニアム裁判所 判決  (No. 2022 ONCAT 110)
○ 判決理由 (REASONS FOR DECISION) 
   A. 事案の概要 (INTRODUCTION)
   B. 事案の背景 (BACKGROUND)
   C. 争点と分析 (ISSUES & ANALYSIS)
○ D 判決 (ORDER)
○ あとがき

 

コンドミニアム裁判所 判決 No. 2022 ONCAT 110

CONDOMINIUM AUTHORITY TRIBUNAL

DATE: October 12, 2022
CASE: 2022-00238N
Citation: Friedlander v. York Condominium Corporation No. 427, 2022 ONCAT 110
Order under section 1.44 of the Condominium Act, 1998.
Member: Mary Ann Spencer, Member
The Applicant,
Olga Friedlander
  Represented by Victor Yee, Counsel
The Respondent, 
York Condominium Corporation No. 427
  Represented by Athina Ionita, Counsel
The Intervenor,
Paritosh Mehta
  Represented by Ava Naraghi, Counsel
Hearing: Written Online Hearing ? April 26, 2022 to September 9, 2022

コンドミニアム裁判所 判決

判決日:     2022年10月12日
事件番号:   2022-00238N
事件名:     フリードランダー 対 ヨークコンドミニアム管理組合(登記番号427), 2022 ONCAT 110
準拠法令:   共同住宅法1998 1.44
裁判官:    メアリー・アン・スペンサー(コンドミニアム裁判所判事)
原 告:    オルガ・フリードランダー/代理人弁護士 ビクター・イー
被 告:    ヨーク コンドミニアム管理組合(登記番号427)(”YCC427”と略)
         代理人弁護士  アッティナ・イオニータ 
選定当事者:パリトッシュ・メータ/代理人弁護士 アヴァ・ナラギ 
聴 聞:    文書並びにオンラインにて実施ー2022年4月26日 ー 2022年9月9日

判決理由 (REASONS FOR DECISION)

 A. 事案の概要(INTRODUCTION)

[3]  原告Ms.オルガ・フリードランダー氏は、ヨークコンドミニアムNo.427(「YCC 427」)の区分所有者
  である。原告は,彼女の上階の住戸が2020年に選定当事者パリトッシュ・メータ氏 によって改修
  された以降、彼女の上階の住戸からの不当な騒音を経験していると主張する。

  彼女はさらに、YCC 427管理組合は、交換用フローリングが特定の衝撃遮音係数IIC (Impact
  Insulation Class )および音響伝送基準STS(sound transmission standards)を満たすことを要
  求している2011年の改修規則を執行しなかったと主張する。

  原告は、YCC 427管理組合と選定当事者に対し、彼女が選定指名した音響専門家によって推奨
  されているように、選定当事者の住戸から発生している騒音に対処するための是正措置を講じる
  判決を下す事を請求している。
  彼女はまた、損害賠償として25,000ドルを被告から原告へ授与する判決を請求している。

[4]  YCC 427管理組合の立場は、原告が不合理な騒音を経験しているという証拠がないため、
  訴えを却下すべきであると主張する。YCC 427管理組合は、試験を実施する音響専門家を雇
  うことを含め、Ms.フリードランダー氏の苦情を調査するために合理的に行動し、原告と選定当
  事者の利益のバランスをとる義務を果たしてきたと陳述した。

  YCC 427管理組合はさらに、選定当事者の住戸に設置されたフローリングが、音響専門家との
  協議を経て2022年に改訂された現在のフローリング規則に定められた騒音伝達基準を満たして
  いること、及び、2022年の改訂規則が過去の状況にも遡及的に適用されることを陳述した。

[5] 選定当事者の立場はまた、原告Ms.フリードランダー氏の訴えは、選定当事者の住戸の居住者
  が不合理な騒音を発生させているという証拠がないことに基づいて却下されるべきであると主張
  した。選定当事者は、YCC 427管理組合の調査活動に全面的に協力し、自己負担で、
  Ms.フリードランダー氏の生活を妨げる可能性のある騒音源を軽減するためにあらゆる合理的な
  措置を講じたと陳述した。

[6] すべての当事者は、この問題に関する費用の賠償を請求した。

[7] 下記の理由により、裁判官は原告の訴えを却下し、この件に関する損害賠償は認めない事と
  する。

 B. 事案の背景(BACKGROUND)

.

[8] 本件は長い裁判となった事件である。原告Msフリードランダー氏は、2022年1月1日に裁判所に
  訴状を提出し、第3段階の判決のための審理手続きは、事件番号2022-00002Nで2022年3月17
  日に開始された。

  原告Msフリードランダー氏の請求内容は、YCC 427管理組合に、2011年の規則「フローリングと
  騒音の管理」(“Governing Flooring and Noise”)を執行することを判決として請求するものであ
  る。彼女は、彼女の上階の住戸の所有者が住戸を改修するときに、その規則に従わなかったと
  主張した。

  パリトッシュ・メータ氏はもともとこの問題の当事者として指名されておらず、原告は彼を被告とし
  て追加するよう申し立てた。

  2022年4月5日、裁判所はパリトッシュ・メータ氏を選定当事者として本件被告に追加する事を命
  じた。その結果、事件番号2022-00002Nは終結され、2022年4月26日に現在の事件として再開
  された。メータ氏はもともと本事件の当事者として指名されていなかったため、第2段階の調停に
  参加する機会がなかったことに留意すべきである。

[9] 原告Msフリードランダー氏は、2014年からYCC 427コンドミニアムの住戸に住んでいる。
  彼女の証言によると、2020年初頭に上階の部屋が改修され、配管やその他の騒音が聞こえ始
  めるまで、彼女の上階の住戸からの騒音障害はなかった。
  彼女は今、睡眠能力を妨げる騒音を聞いていると証言した。

[10] メータ氏は、Msフリードランダー氏の上階の住戸の居住者である87歳の両親とその住戸を共
  同所有している。以前は同じフロアの別の住戸に12年間一緒に住んでいたが、他の住戸が約
  1年間空室だったので、そこを購入し、当時住んでい住戸を改装した同じ請負業者がその住戸
  を改装して、両親が当該住戸に移ったものである。

  メータ氏は、両親は過度の騒音を発生させておらず、前の住戸に住んでいたときは騒音について
  の苦情はなかったと証言する。

[11] 2020年2月18日、メータ氏はYCC 427管理組合に改修申請書を提出し、YCC 427コンドミニ
  アムの管理会社プリンシパル・プロパティ・マネジメントのアシスタント・コンドミニアムマネージャ
  ーであるMs.シーラ・フレッチャー(Sheila Fletcher)によって承認された。
  改修申請の内容は、彼がラミネート(積層合板)フローリングを設置し、キッチンと浴室を改装し、
  クローゼットにカスタムキャビネットを設置することを示していた。

[12] YCC 427管理組合の2011年の規則「床と騒音の管理」は、部分的に次のように述べている。

  4 理事会は、完成した裸床(bare floor)のフィールド衝撃遮音係数(field impact insulation
     coefficient (FIlC)及びフィールド音響透過クラス(field sound transmission class (FSTC))
     が65db以上であることを確認することを所有者自身の責任と見なしています。そのため、
     次のことを確認する必要があります。

  a) 完成した硬質表面フローリングは、弾力性のある材料で浮かせ、床下から分離する事。
    フローティングフロアとサブフロアの間でしっかりと接触しないようにすることが非常に重要。

  b) 弾力性のある下敷き(the resilient underlay)が非常に高い音響減衰特性(high sound
    attenuating properties)を備えた材料であることを規定の申請書様式にコピー添付して、
    理事会に証明する必要があります。
    下敷きメーカー(underlay manufacturers)のFIlCおよびFSTCの数値は、下敷きと管理
    された実験室条件下でテストされた追加の建築材料との合計値であることに注意して
    ください。これらの材料と条件は、住戸内の材料と条件を代表するものではない場合が
    あります。
    適切な下敷きを選択する際には、建築専門家のアドバイスを求めることを強くお勧めします。

  「IIC」と「STC」はどちらも防音の測定評価値である。オンタリオの法令番号Reg 332/12、
    建築基準法、(「OBC」)はSTCを「直接音の伝達経路のみを考慮した、隣接する2つの
    スペースを分離する建物構造部材の空中音減衰の単一の定格数値」と定義している。

  IICはOBCでは定義されていないが、床構造部材の防音の評価(rating of the soundproofing of
  a floor assembly)を指し、固体伝播騒音(structure-borne noise)を測定する。
  「FSTC」および「FIIC」は、実験室の評価とは対照的にフィールドまたはオンサイトの評価を指す。

[13] メータ氏は、改修の申請書に、住戸で使用するフローリングの下敷きの写真を含めて提出して
  いる。製品パッケージは、73 IICおよび72 STCの定格を示していた。
  部屋の改修は2020年2月26日に始まり、3月末までに実質的に完了した。

[14] 2020年6月、Msフリードランダー氏はMs.フレッチャー氏にフローリングの交換に必要な下敷き
  の種類について問い合わせ、これまで聞いたことのない配管音が聞こえていることを伝えた。
  Msフリードランダー氏は、自分の上階の住戸の改修が完了したと信じるまで、問い合わせを
  待ったと証言した。

  2022年7月22日、Msフリードランダー氏は管理会社のMs.フレッチャー氏に手紙を送り、
  以前の会話をフォローアップした。彼女はまだ配管の音が聞こえ、メータ氏の住戸にカーペットが
  敷かれていると言われたにもかかわらず、さまざまな衝撃音が聞こえていると述べた。
  彼女は問題を解決するために何ができるかを尋ねた。

[15] 2020年8月6日、管理会社のMsフレッチャー氏は建築監督を伴って、Msフリードランダー氏と
  メータ氏の両方の住戸を訪問し、フリードランダー氏の懸念を調査した。Msフリードランダー氏は、
  証言でMsフレッチャー氏が騒音は「悪くない(“not bad.”)」と彼女に言ったと述べた。
  Msフレッチャー氏がメータ氏に送った電子メールは、「過度の騒音に関してはあまり見つからな
  かったが、シャワーの下部パイプがノイズを発生させた唯一の調査部分でした。
  これはまだ過剰だと私たちが信じているものではありませんでした。」となっていた。

  Msフレッチャー氏は、メータ氏の改修に使用された下敷きの確認を要求し、メータ氏は2020年8月
  11日に、購入を確認できる請求書と、設置されたことを示す請負業者からの書面による説明の両
  方を送った。

[16] 2020年9月1日、Msフリードランダー氏はYCC 427コンドミニアムの管理者であるイアンニ・
  ヴァシラカコス氏(Yianni Vassilakakos)に電子メールを送信し、騒音問題が解決されていないこと
  への懸念を表明し、管理組合の理事会に注意を喚起するよう要請した。

  ヴァシラカコス氏の2020年9月3日の回答は、2011年のフローリング規則で義務付けられている
  下敷きが設置されたという確認を受けたYCC 427管理組合は、問題は終了したと考えたが、理
  事会に問題を提起すると述べた。

  Msフリードランダー氏の回答は、配管騒音も未解決のままであることを伝え、ヴァシラカコス氏は、
  さらなる調査を行いたいと答えた。

[17] 2020年9月29日、YCC 427管理組合の管理者ヴァシラカコス氏、管理会社のMsフレッチャー
  氏、及び建築監督は、メータ氏の住戸で調査を実施した。2020年10月3日、ヴァシラカコス氏は
  Ms.フリードランダー氏に手紙を書き、住戸内の歩行量の多いエリアにカーペットが敷かれている
  のを観察し、誰かが普通に上を歩いていると住戸内では「ほとんど、又は、まったく騒音」が聞こ
  えなかったが、重い足で歩いたりジャンプしたりするとその音が聞こえるとアドバイスした。

  この点に関し、メータ氏は、母親が移動に問題を抱えており、父親の移動が制限されていると証言
  した。ヴァシラカコス氏はまた、シャワー室の下部噴出口から流れる水がシャワーヘッドに迂回す
  る前に聞こえる可能性があり、住民は水を長時間流さないように求められていると伝えた。

[18] Ms.フリードランダー氏の懸念は満足のいくようには解決されず、2020年10月6日に彼女は再
  びヴァシラカコス氏に手紙を書いた。彼女は騒音が減ったことを認めたが、朝にメータ氏の住戸
  で擦れる音と、彼女の表現によるとトラックが滑るような音が聞こえたと述べた。彼女はまた、
  配管音が続いていると述べた。

  10月21日、Ms.フレッチャー氏はメータ氏に手紙を書き、騒音の苦情が続いていることを知らせ、
  管理組合が調査する必要があると伝え、住戸の住民に彼らの活動に注意するよう求めた。

[19] Ms.フリードランダー氏は2020年10月27日に再びヴァシラカコス氏に手紙を書いた。
  2020年11月6日、ヴァシラカコス氏は、この問題は2020年11月24日の理事会で注目されるだろう
  と答えた。2020年11月24日の会議の議事録には、「理事会は、騒音の懸念を調査し、規則を執
  行する義務があるが、騒音が許容可能か過剰かを判断する責任はない。フリードランダーさん
  の住戸と騒音問題の両方について、管理会社と理事会の義務が満たされていることが確認され
  た。」と記述されている。

  2020年12月9日、ヴァシラカコス氏は理事会を代表してMs.フリードランダー氏に手紙を書いた。
  そこにはメータ氏が適切なフローリング下敷きを使用している事を確認し居室全体にエリア
  カーペットを配置し、すべての椅子の脚の下に「クッション」を追加したことを伝えている。

  手紙には、YCC 427管理組合が「騒音の苦情を熱心に調査した結果、上記の住戸から過度の
  騒音が発生しているとは判断していない」と記載されている。

[20] Ms.フリードランダー氏からさらなる騒音の苦情を受けた後、ヴァシラカコス氏はメータ氏に手紙
  を書き、居室のカーペットの下に吸音カーペットパッドを敷くように依頼した。
  2021年1月28日、メータ氏はこれが行われたことを確認し、吸音カーペットパッドが取り付けられ
  たカーペットの写真をYCC 427管理組合に送信した。

[21] Ms.フリードランダー氏は、ヴァシラカコス氏からYCC 427管理組合がそれ以上の行動を起こさ
  ないことを通知した電子メールを受け取った後、2021年1月に弁護士を雇ったと証言した。
  2021年1月19日、Ms.フリードランダー氏の弁護士はYCC 427管理組合に手紙を書き、
  Ms.フリードランダー氏が報告していた騒音障害を調査して報告するために、専門の音響エンジ
  ニアを雇うよう管理組合に要請した。

[22] 2021年2月22日、YCC 427管理組合の配管請負業者である「コールドストリーム配管会社」
  は、メータ氏の住戸の配管を調査した。Msフリードランダー氏の証言によると、配管工は、
  彼女が聞いていたカチッという音や口笛の音はパイプからのものであるが、「箱に入っている」
  ため調査できないと彼女に伝えた。

  2021年2月26日にMs.フレッチャー氏に宛てた電子メールで、配管工は騒音は下部のシャワー
  吐出口の水量によるものであると述べ、次の3つの選択肢を示した。吐出口を水量制限付き
  (flow restrictor)器具に交換するか、または、壁の後ろに蓋をするか、壁を開いて給水管の防
  音工事をするの3つである。

  メータ氏は、2021年3月17日に、下部の吐出口に蓋がされたことを理事会に報告した。
  彼はまた、吸音パッド付きのカーペットがリビングとダイニングルームの面積の92%を覆って
  いると伝えた。

[23] コールドストリーム配管会社は配管の追跡調査を実施した。2021年4月19日にMs.フレッチャー
  氏に宛てた電子メールで、彼らはメータ氏の住戸の両方の浴室ですべての備品を個別におよび
  同時に実行し、異常な配管音は聞こえなかったと報告した。コールドストリーム配管会社は、
  トイレが流されたときにわずかな音が聞こえる可能性があることに気づいたが、これは
  「どのコンドミニアムの建物でも正常」であると述べた。

  Ms. フリードランダー氏はフォローアップ調査中に出席し、彼女の証言は、調査中に生成された
  音は彼女が定期的に聞いていたのと同じ騒音ではないことを配管工に伝えたということである。

[24] 2021年3月から5月にかけて、Ms.フリードランダー氏の弁護士と当時のYCC 427管理組合の
  弁護士であるデビッド・ティール(David Thiel,)との間でやり取りがあった。
  Ms.フリードランダー氏の弁護団は、音響の専門家を調査のために雇うことを再び要求した。

  専門家の費用を分割することで合意に達し、当事者が調査の委託条件に同意した後、音響
  コンサルタントのソーントン・トマセッティ(Thornton Tomasetti)は2021年8月12日に配管と
  床衝撃音の両方の調査を実施した。

[25] 裁判官はYCC 427管理組合またはMs.フリードランダー氏のいずれかによって契約された音響
  コンサルタントの誰もこの公聴会で証言しなかったことに注目する。従って裁判官は彼らの書面
  による報告に頼っている。

[26] 2021年8月31日付けのソーントン・トマセッティのレポートは、住戸間の床/天井構造部材の
  FIICを57デシベルで測定したことを示しており、これがOBCの推奨事項を超えていると述べてい
  る。報告書はまた、メータ氏の住戸から発せられる配管音は正常であると考えられていたと結論
  付けている。レポートではSTC評価は取り上げられていない。

[27] 2021年9月8日、Ms.フリードランダー氏の弁護士はYCC 427管理組合の元弁護士に手紙を書
  き、FIIC評価57は、交換用フローリングはFIIC評価65を満たさなければならないと述べている
  YCC427管理組合の2011年の改修規則に準拠していないと指摘し、YCC 427に規則を執行する
  よう要請した。

  Ms.フリードランダー氏の証言によると、YCC 427管理組合の弁護士の回答は、2011年のフロー
  リング規則はもはや管理組合の現況証明書(corporation’s status certificates.)の一部を形成し
  ていないというものであった。原告の弁護人は当事者に調停を要請したが、YCC 427管理組合
  の弁護人は「時期尚早」と却下した。

[28] 管理会社プリンシパル・プロパティ・マネジメントのシニア・マネージャーであるミロス・トシック
  (Milos Tosic,)は、YCC 427管理組合の理事会が2011年の規則の「実行可能性」を懸念し、
  「ヴァルカスティックス・カナダ社」(Valcoustics Canada Ltd.).にその規則のレビューを委託
  したと証言した。

  ヴァルカスティックス社は、2021年11月23日付けのレポートで、規則に定められた音響伝送基準
  は、OBCの推奨事項を超えているため、「非常に厳格」で「一般的に実行不可能」であると結論付
  けた。下敷き施工のIICおよびSTC評価は、製品の実験室試験を反映しているため、誤解を招く
  可能性があると指摘した。報告書は、「カーペットや敷物、アンダーパッドの形の床材は非常に
  効果的であり、衝撃音の問題を本質的に排除することができる(約IIC70を達成)」と述べている。

[29] Ms.フリードランダー氏は、音響コンサルティング会社の「ソフトdB社」(Soft dB)に依頼して、
  2021年8月31日のソーントン・トマセッティと2021年11月23日のヴァルカスティックスのレポート
  の両方を評価した。

  ソフトdB社の2022年3月23日のレポートの観察結果には、IIC 72で調査された適切に設置され
  た下敷き製品の実験室テストでは、ソーントン・トマセッティによって報告されたFIIC 57よりも
  優れたパフォーマンスが期待され、典型的な劣化は5ポイントの範囲にあると予想される。
  また、ソーントン・トマセッティの報告書には、音の伝達クラス(STC)の結果が含まれていないこと
  にも言及した。

[30] 2022年4月18日、YCC 427管理組合は、2022年5月19日に発効する「フローリングを管理する
  規則」の改正を所有者に通知した。この改正により、交換用の硬質表面フローリングに必要な
  基準が、「完成した裸の床のフイールド衝撃防音係数(FIlC)とフイールド音響透過クラス(FSTC)
  が65db以上であることを確認する」から「オンタリオ州建築基準法の推奨事項と要件を満たすか
  超える」に変更された。

    「硬い表面の床仕上げ(hard surface floor)が設置されている場合、所有者は、設置時の
    オンタリオ州建築基準法の推奨事項と要件を満たしていることを確認し、隣接する住戸
    の生活が音の伝達によって妨げられないように、仕上げ床の下に適切な防音バリアが
    設置されていることを確認する必要があります。」

  2022年5月31日、ヴァシラカコス氏による修正された規則のレビューに続いて、YCC 427管理組
  合は所有者にさらなる修正の通知をした。通知には、改訂された規則が2022年6月1日に発効
  すると記載されていることに注意を要する。
  この通知は、所有者が総会を要求しない限り、所有者に通知されてから30日後に規則が有効
  になるという1998年共同住宅法第58条の要件を参照していることを考えると、これは間違いで
  あり、2022年7月1日とする必要がある。この改訂では、以下の文言が4月の規則に追加された。

    「硬い表面の床仕上げ(hard surface floor)が設置されている場合、所有者は、設置時のオン
    タリオ州建築基準法の推奨事項と要件を満たしていることを確認し、隣接する住戸の生活が
    音の伝達によって妨げられないように、YCC 427管理組合のフローリング規則に従って、
    仕上げ床の下に適切な防音バリアが設置されていることを確認する必要があります。」

  フローリング規則も所有者に送信された。その規定の1つは、完成したフローリング部材が55デシ
  ベルのIIC / FIIC基準を満たす必要があることである。「C.実施方針」のパラグラフ5は次のように
  述べている。

    「弾力性のある下敷きは、完成した床システムの残りの部分とともに、組み合わされた床層
    で構成されている。
    床下若しくはベッドを設定する等のコンクリートスラブは、実験室で決定された最小IIC定格、
    または現場で決定された最小FIIC定格55を満足する必要があります。」

[31] 原告が本件に関する証人証言書を提出した後、被告が証人陳述書を作成している間に、原告
  は後記文書を提出する申立てを行った。
  2022年6月17日、裁判官は2022年6月2日付けのソフトdB社からのさらなる報告書の提出を許可
  する決定を下した。その後、裁判官は、被告がその報告を検討し対応できるように、被告の延期
  の申請を認めた。その結果、証人の証言と反対尋問は2022年8月18日まで完了しなかった。

[32] ソフトdB社の2022年6月2日付けの報告書は, Ms.フリードランダー氏の寝室で24時間の騒音
  測定を行った結果の評価で、3つのガイドラインと標準に二つの点で適合していないことを述べて
  いた。この報告書で「みかけ上は、発生している音の多くは上階からのように推定される。」とし、
  改善のための推奨案を作るために、Ms.フリードランダー氏と上階のメータ氏の住戸の両方を
  同時測定することを推奨している。

[33] 被告管理組合は2022年6月18日付けのソーントン・トマセッティ氏によるソフトdB社報告の評
   価書を提出した。この評価書では、ソフトdB社報告は記録された音の発生源を特定していない。
   また、ガイドラインと標準に適合していないとする件に関しては、ソフトdB社の用いた指標は
   不正確な適用によるものであると指摘していた。

 C. 争点と分析 (ISSUES & ANALYSIS)

[34] 本訴訟で対処すべき課題は、調停人が作成した2022年3月16日の第2段階の調停概要で示
  されている。それは下記の事項を争点として特定している。
   (1) YCC 427管理組合の2011年の「床と騒音に関する規則」の改正が適切に制定されたか
     どうか、
   (2) 2011年の規則が有効かつ執行可能であったか、
   (3) YCC 427管理組合がコンプライアンスを強制する義務を果たしたかどうか

  これらの争点は、ソーントン・トマセッティの2021年8月31日の報告書に記載されているように、
  改修後にメータ氏の住戸に設置されたフローリング構造部材のFIIC定格が57デシベルであり、
  2011年の規則で定められた65デシベルのFIICレベルを下回っているという事実に関連していた。

  YCC 427管理組合はまた、ヴァシラカコス氏の2021年11月23日の報告書を受け取り、2011年の
  規則は「一般的に実行可能ではない」という意見を提供した。

[35] この事件の争点は、調停以来進展してきた。メータ氏が当事者として追加され、意見陳述
  が進行中に、YCC 427管理組合は2011年のフローリング規則を修正し、その結果、新しい
  硬質表面フローリングが設置された場合、フローリング構造部材は55 IIC / FIICの基準を
  満たす必要がある。

  メータ氏のフローリング構造部材がこの現在の基準を満たしていることが調査結果で示された。
  原告弁護人が提起し、認めたように、本件訴訟が進行中に規則を変更するYCC 427管理組合
  の行為が被害救済にあたるかどうかは、当裁判所の管轄外であることに留意すべきである。

[36] この場合の根底にある仮定は、YCC 427の2011年のフローリング規則に定められた65 FIIC
  の規定値の執行がMs.フリードランダー氏の懸念を解決することであるように思われる。
  メータ氏の住戸で調査されたフローリング構造部材のFIICレベルが、設置時に有効だった2011
  年の規則に準拠していないことの証拠として、裁判官は調査結果を認める。

  ただし、この問題の根本的な問題はMs.フリードランダー氏の上の住戸のフローリング構造部材
  がIIC評価基準を満たしているかどうかではなく、彼女が不合理な騒音を経験しているかどうか
  である。

[37] 当裁判所は、共同住宅法第117条(2)に関連する紛争を管轄する。

  何人も、専有部住戸、共用部、その他管理組合が管理する施設内で、次の結果をもたらす
  行動を起こす事、または、その行動を継続すること、及びそれらを許可したりしてはならない。
  (a) 専有部住戸内、共用部、または管理組合が管理する施設内において不合理な騒音、
    迷惑行為、不快を与える行為、秩序を破壊する行為。

  したがって、本事件で最初に取り組むべき争点は、Ms.フリードランダー氏が聞いている騒音が
  不合理であり、迷惑行為を構成するかどうかである。

[38] オンタリオ州コンドミニアム裁判所規則179/17の第1章(1)(d)(iii.1)は、共同住宅法の117条(2)
  に関するサブセクションに関連して、管理組合内部の取り決めで禁止、制限、またはその他の
  方法で管理する事項を定めている管理組合の統治文書(宣言書、管理規約、使用細則)の規
  定に関連する紛争に対するコンドミニアム裁判所の事物管轄権を規定している。

  したがって、対処すべき2番目の争点は、この場合にYCC 427管理組合の2011年または2022年
  の規則のどれが適用されるか、および適用される規則に違反しているかどうかである。

[39] 不合理な騒音がある、及び/又は、YCC 427管理組合の規則に違反していることが判明した
  場合、対処すべき問題は、コンドミニアム裁判所が命じるべき救済策と、YCC 427管理組合又は
  選定当事者が命じられた救済策の実施に責任があるかどうかである。

  対処すべき最後の争点は、損害賠償および/または費用の裁定を命じるべきかどうかである。

  Ms.フリードランダー氏は、不合理な騒音,即ち、不快を与え、秩序を破壊する、
  迷惑行為(ニューサンス)の被害者と言えるのであろうか?

[40] Ms.フリードランダー氏は、メータ氏の住戸から発せられていると彼女が信じている配管と他の
  音の両方を聞いていると証言した。彼女は証拠として日記を提出し、その中で彼女は、とりわけ、
  水が流れる音、配管の口笛音(pipes whistling)、ドンドン叩く音(banging)、軽く叩く音(tapping)、
  こする音(scraping)、ゴツンと叩く音(thumping)、引き出しとドアがカチッと閉まる音として録音し
  て説明した。

  日記は彼女が聞いたことの部分的な記録にすぎず、彼女は早朝と深夜の音に焦点を合わせて
  いることを示している。日記は、2020年11月から2022年5月までの断続的な日付にまたがって
  いる。2022年5月2日の記録を例として示す。


  ・午前6時12分 硬い物音-2つの物が木材に当たっている?
            (hard object sound - 2 objects wood hitting?)
  ・午前6時14分 配管の振動-ベッドから聞こえる柔らかい振動
            (humming pipes - soft humming hear from bed)
  ・午前6時16分 鋭いもので削り取る音(scrape sound)
  ・午前6時48分 配管のうなりと引っかく音、但し浴室内でのみ聞こえる
            (humming pipes and click but only hear in bathroom)
  ・午前7時00分 きしみ音/動く音(creak/movement)
  ・午前7時10分 配管の静かな唸り-静かだがベッドから聞こえるほど充分に大きい
            (quiet humming of pipes - quiet but loud enough to hear from bed)
  ・午前7時20分 柔らかくドンドン叩く音(soft bang)
  ・午前7時38分 硬い物が落下して衝突した音(hard object drops and bumping)
  ・午前7時45分 食器棚のカチッと閉まる音(cupboard clicks shut)
  ・午前7時45分 ゴツンという音・浴室付近(thump near bathroom)
  ・午前7時47分 ドタン・バタン(thud)
  ・午前7時57分 強く叩く音が2回(2 hard knocks)
  ・午前8時01分 硬い物で叩く音(hard objects knock)
  ・午前8時50分 ぶつかる音のよう(bumping about)

  Ms.フリードランダー氏は、30年以上コンドミニアムに住みながら「そのような環境で聞こえると予
  想される合理的な騒音を認識している」と証言したが、現在の彼女が受けている騒音は過剰であ
  り、彼女の住戸の静かな楽しみを妨げており、特に彼女の睡眠能力を妨げていると述べた。
  彼女はさらに、騒音に過度に敏感になるような病状はないと証言した。

[41] 法律もYCC427管理組合の規則も「ニューサンス(迷惑行為)」を定義していない。
  カールトンコンドミニアム管理組合(法人番号132) 対 エバンス、事件番号2022 ONCAT 97
  (Carleton Condominium Corporation No.132 v. Evans, 2022 ONCAT 97 (CanLII),)の最近の
  判決で、アントリム トラック センター株式会社 対 オンタリオ州(輸送局)、事件番号2013
  (Antrim Truck Centre Ltd. V. Ontario (Transportation) 2013 SSC 13 (CanLII)を要約して、
  判決のパラグラフ20で次のように書いている。

    ニューサンス(迷惑行為)の法に関する確立された法学上の定義を考慮することは有益であ
    る。ニューサンスの主張を裏付けるには、干渉、すなわち不法な妨害行為が重大かつ不合理
    でなければならない。実質的な不法妨害の要件には、騒音の頻度と持続時間の成分を組み
    込むことができる。「些細な」不法妨害行為は、ニューサンスの主張を裏付けるのに十分では
    ない。

  Ms.フリードランダー氏が騒音日記に記録した音の頻度は、それらが迷惑行為を構成する可能性
  があることを示唆しているが、ソフトdB社は2022年6月2日の報告書で、騒音が迷惑であると認識
  されるかどうかは複数の要因に依存すると書いている。

    騒音を迷惑と感じる事は、騒音の種類(バックグラウンドノイズに対するレベルとスペクトル
    含有量)だけでなく、居住者の感度(気分を含む)、健康プロファイル(年齢、難聴を含む)、
    状況(過去の経験と期待を含む)および騒音の知覚(たとえば、隣人が時間帯に対して不合理
    であるか)、および騒音に対する制御のレベル(例:応答性の高い隣人)に依存する主観的な
    反応です。

[42] ソフトdB社が指摘するように、騒音に対する個々の反応は主観的である。
  個人が騒音を迷惑だと思うかもしれないということは、必ずしも騒音が不合理であること、または
  管理組合がそれに対処するために介入しなければならないことを意味するわけではない。

  人権法に基づく個人の宿泊施設の必要性が文書化されている場合(訳注)を除き、複数のコンド
  ミニアムは、しばしば矛盾する可能性のある個人所有者の好みに対処することは期待できない。
  むしろ、共同住宅法第58条(1)(b)が述べているように、管理組合は「住戸専有部、共用部、または
  管理組合の資産(存在する場合)の使用と享受に対する不当な干渉を防ぐため」の規則を作成する。

  YCC 427管理組合の場合、2011年と2022年の規則は、フローリングが特定の音響伝送レベル
  を満たすという要件とともに、騒音の伝達と不快感の可能性に対処するように明確に規定され
  ている。どちらの規則にも、不当に破壊的な騒音に対処するための規定も含まれている。

[43] 不合理な騒音の証拠が明らかな場合がある。例えば、トロント・スタンダード管理組合(2370)
  対チョン・エ・アル事件l, 2021 ONCAT(CanLII)では、特定の犬の長時間の吠え声について、
  異なるフロアに住む複数の居住者から48件の騒音苦情が記録されていた。その場合、苦情
  の範囲と一貫性は、犬の飼育禁止を命じるように法廷を説得するのに十分であった。
  この場合、複数の矛盾する主観的評価が存在した。

  Ms.フリードランダー氏は、YCC 427共同住宅の他の住民と話をしたが、住民達は彼女が聞いた
  と報告している種類の音は聞こえないと彼女に言ったと証言した。彼女は一人暮らしで、住戸内
  で音を聞いたと証言する証人は他に呼ばれなかった。メータ氏は、両親が過度の騒ぎをしないと
  証言した。しかし,毎日訪問しているという証言にもかかわらず,彼はその住戸に住んでいない。
  また、YCC 427コンドミニアムの元管理者が調査を行ったとき、彼らは下のシャワーの吐出口
  から流れる水の音以外に過度の騒音がないと判断した。

[44] 自分の聞いている音が過剰であるというMs.フリードランダー氏の信念を実証するために、彼女
  は音響コンサルタントのソフトdB社に彼女の住戸内の音を測定するように依頼した。ソフトdB社
  は、2022年6月2日の報告書で、調査の目的を「コンドミニアム内の音が騒音の迷惑を表すか、
  どうかを測定によって確立し、影響を受けるコンドミニアムへの伝達経路を確定すること」である
  と説明している。

[45] ソフトdB社は、2022年5月6日の午後11:00から2022年5月7日の午後11:00までの24時間に、
  Ms.フリードランダー氏の寝室で1時間11分間に135のサウンドイベント(音響発生事象)を記録し
  た。報告書には、「1時間間隔にわたる総騒音レベルは31dBAと45dBCと高かった」と記載され
  ており、dBAは人間の聴覚反応にほぼ対応するように重み付けされたデシベルレベルであり、
  dBCは低周波音の影響を測定するために重み付けされている。

[46] ソフトdB社の報告書は、録音された音を3つの基準に照らして評価している。
  (1) 世界保健機関(「WHO」)の1999年のコミュニティ騒音ガイドラインに含まれる住居の睡眠障
    害を防ぐための上限として推奨される値、
  (2) カナダ住宅ローン住宅公社(「CMHC」)に定められた集合住宅の共有機械および電気機器の
    操作によって生成される騒音の推奨レベル、その技術書「集合住宅によって提供される音響
    快適性の程度の認定フェーズII 技術書 03-116, (2003)」, 及び
  (3) 米国冷暖房空調学会(American Society for Heating, Refrigerating & Air-Conditioning
     (ASHRAE) ハンドブック3の騒音基準の推奨事項。

[47] ソフトdB社は、「ある人には聞こえない、または取るに足らないように見える低周波音は、年配
  の居住者には鮮明で目立つ可能性がある」と述べている。「低周波ノイズの存在により、コンド
  ミニアム内の全体的なノイズは、睡眠保護に必要なWHO推奨の騒音レベルを超えています。
  騒音レベルは、より保守的なCMHCの推奨事項も超えています。ただし、結果はASHRAEが
  空調システムに推奨する制限を下回っています。」
  ソフトdB社は、その報告書で、低周波ノイズに対してWHOが推奨するサウンドレベル基準はない
  と述べていることに注目すべきである。

[48] 2022年7月18日、YCC 427管理組合が委託した回答報告書で、ソーントン・トマセッティは、
  ソフトdB社の報告書は135の録音されたサウンドイベントの発生源を特定していないことを観察
  し、オーディオ録音からサウンド伝送の発生源を特定することはできないという意見を表明して
  いる。報告書は、記録した騒音レベルがWHOのガイドラインを超えているというソフトdB社の結論
  に異議を唱え、ガイドラインは夜間の8時間に適用されるべきであり、ソフトdB社の結果は1時間
  ごとに提示されると指摘している。さらに、この報告書は、個々のノイズイベントの最大レベルに
  関するWHOのガイドライン(45 dB)を参照しておらず、記録された135のイベントのうち3つだけが
  その制限を超えていることを指摘している。

  また、業界標準を大幅に超え、「都市部ではほとんどの場合達成できない」と述べているCMHC
  標準の使用にも異議を唱えている。報告書は、オンタリオ州環境省(「MOE」)の文書NPC-300:
  環境騒音ガイドライン-固定および輸送源-承認と計画のセクション「C3.2.3屋内騒音レベル制限」
  に含まれるそれほど厳しくない基準がより適切であることを示唆している。

[49] 裁判官には、ソフトdB社の報告書のデータが、Ms.フリードランダー氏が不合理な騒音を経験し
  ていることを示しているとは認められない。WHO、CMHC、ASHRAE、およびMOEによって推奨さ
  れているdBAまたはdBA相当のレベルはそれぞれ30、25、35、および40である。これらの基準は
  いずれもYCC 427の管理文書のいずれにも参照されていないが、特に騒音が過剰であると証言
  する唯一の証人が原告である場合、不合理な騒音を決定するための測定可能な代理を提供す
  る。

  ソーントン・トマセッティは、睡眠障害に関するMs.フリードランダー氏の懸念に最も関連するWHO
  ガイドラインの使用に疑問を呈しているのではなく、その適用方法に疑問を呈している。
  ソフトdB社が作成した時間単位での結果を示すグラフは、記録されたレベルがWHOの夜間推奨
  である30を超えたのは一度だけであり、それは午後半ばであったことを示している。

  単一イベントの発生に関するWHOの45dBガイドラインを超える3つの発生は、午前8時、午後3
  時、午後4時に発生した。裁判官は、ソーントン・トマセッティの「騒音レベルは、WHOの夜間
  換算平均騒音限度である30dBAに実質的に準拠しているというのが私たちの意見です」という
  結論を受け入れる。

[50] パラグラフ41で上記述べたように、実質的な干渉の要件は、干渉の頻度と持続時間の要素を
  組み込むことができる。 ソフトdB社によって録音された合計1時間11分の135のサウンドイベント
  は高いように見える。

  ただし、ソフトdB社の報告書には、この数値が集合住宅の住戸にとって非典型的であるかどうか
  を評価する根拠は明らかにされていない。ソフトdB社によって午前6時15分頃から始まる「サンプ
  アンドタップ(“thump and tap”)(訳注:棒などで叩くゴツンという音と、軽く叩くポンという音)」と
  して説明されているこれらのイベントの1つは、ほぼ30分間続くと記録されており、任意の持続
  時間で記録された「タップアンドサンプ」として説明されている他の唯一のイベント(事象)を考え
  ると、異常であるか、おそらくエラーである可能性があり、それが6秒間続く。さらに、秒ではなく
  分で表される期間を持つ他の記録されたイベントは「配管ノイズ」として説明され、そのうち最長
  の時間は午前10時に約10分である。

{51] 配管に関しては、ソーントン・トマセッティの2021年8月31日の報告書では、メータ氏の住戸の
  2つの浴室からの配管音を測定し、米国冷暖房空調学会(ASHRAE NC)基準を満たしていると
  述べている。

  報告書は、トイレとシャワーが床スラブに直接接触しているため、騒音レベルは正常と見なされた
  と述べている。Ms.フリードランダー氏の証言は、調査で発生した騒音は彼女が不平を言ってい
  たものではないということであるが、しかし、ソーントン・トマセッティがMs.フリードランダー氏に関
  係する騒音を再現できなかったという事実は、その改修がその直接の原因であるという彼女の
  主張に反して、騒音がメータ氏の住戸で発生していない可能性があることを示唆している。

  さらに、メータ氏の証言は、コールドストリーム配管会社が検査中に規定に準拠していないと特定
  したとき、1つの浴室の洗面化粧台の下を除いて配管は変更されなかったということである。

{52] また、ソフトdB社によって録音された他の音が、Ms.フリードランダー氏が主張するように、実際
  にはメータ氏の住戸から発せられていると結論付けることもできない。ソフトdB社の報告書は、
  録音された音の音源を明確に述べていない。

  :「測定が行われた寝室は建物の隅にあるため、同じフロアの隣接する居室からの音の伝達の可
  能性は最小限に抑えられている。侵入音はすべて一時的な特徴があり、大部分は上記の住戸
  の活動に由来すると見られる。
  報告書はまた、「会話ノイズ、または歩行などの無関係な音は、その後のサウンドレベル分析か
  ら除外された」と述べているが、ソフトdB社は、「大部分」または「見られる」という文言の選択を
  説明していない。

{53] 前の4つのパラグラフで述べた理由により、Ms.フリードランダー氏が経験している騒音が不合
  理であるという主張を証拠が裏付けていないことを裁判官は認める。

YCC 427管理組合の規則に違反しているか?

{54] Ms.フリードランダー氏が不合理な騒音を経験していないことはわかったが、それはYCC 427の
  規則の要件に違反している可能性を排除するものではない。この決定を下す前に、メータ氏が
  フローリングを交換したときに実施された2011年の「フローリングと騒音を管理する規則」、または
  この場合に適用される現在の2022年の「フローリングを管理する規則」を決定する必要がある。

{55] YCC 427管理組合の弁護士は、2011年の規則は、共同住宅法のS58(2)で、「規則は合理的
  かつ、この共同住宅法、宣言書、および管理規約と一致しなければならない」と規定しているが、
  YCC 427管理組合規則は、合理的ではないため、有効ではなく、かつ執行可能ではないと主張
  する。

  弁護士の主張は、ヴァシラカコス氏の2021年11月23日の報告書に依存しており、要約すると、
  規則に定められたSTCおよびFIICの評価は「実際には実行可能または現実的ではない。
  それらはあまりにも厳しすぎて通常は達成されない。」と述べている。

  彼女はまた、2022年の規則は「床に対処する以前の規則を置き換えたものであり、従って遡及
  適用されると主張し、紛争が発生した場合は慣例が優先される」と述べている。

{56] 裁判官は、この事例では2011年の規則が適用されることを認める。
  裁判官はYCC427管理組合の主張を採用しない。

  ヴァシラカコス報告書は、規則に含まれる評価を達成できないことを明確に述べていない。また、
  現在の規則が以前の規則を置き換えたという事実は、それが遡及的に適用されることを意味す
  るものではない。間違いなく、遡及的に適用された規則自体が不合理であることが判明するで
  あろう。

  2011年の規則は、2020年にメータ氏が住戸を改修したときに実施された規則であり、YCC 427
  管理組合を担当した管理会社のスタッフが、メータ氏の改修で使用されたアンダーパッドが規則
  で指定された要件を満たしているという証拠を要求するなど、さまざまな調査を実施し、2020年
  11月24日のYCC 427管理組合理事会では、Ms.フリードランダー氏の騒音苦情に関する義務を
  果たしたと判断した。

{57] YCC 427管理組合の2011年の「フローリングと騒音を管理する規則」は、その名前が示すよう
  に、フローリングと騒音の両方に対応している。使用しなければならない防音バリアの種類や
  フローリングが取得しなければならないFIIC定格など、交換用フローリングの設置方法に関する
  特定の要件を定めた規定がある。

  ただし、当法廷の管轄権は、騒音に関する紛争に関してのみである。その管轄権はフローリング
  に関する紛争には及ばない。騒音に対処する規則の規定は次のとおりとなっている。

    4)d) フローリングの設置後、隣接する居室の居住者が騒音や足音の伝達を訴えた場合、
       コンドミニアム管理組合は、より大きな音の減衰を提供するために、追加の吸音カバー
       を床に設置することを求める。

    5)  管理会社のプロパティマネージャーまたは理事会が、騒音が硬い表面の床のある住戸
       から迷惑または破壊的であると合理的に判断した場合、騒音を発生する住戸の所有者
       は、費用の自己負担で、プロパティマネージャーまたは理事会の指示に従って騒音を
       軽減するための措置を講じるものとする。このような手順には、次のものが含まれる。

      a) 面積の少なくとも60%が、防音パッド付きの造作物でまだカバーされていない場合
      b) 歩行量の多いエリア(廊下など)および家具の間を頻繁に移動するエリア(椅子の
        下など)十分にカバーされていることを確認し、
      c) 住戸の硬い表面の床仕上げの下にさらに音響減衰材を設置する。

{58] この判決の「B. 事案の背景」に詳細に記載されている証拠は、Ms.フリードランダー氏の懸念
  に応えて、YCC 427管理組合がメータ氏の住戸から発せられる不合理な騒音があったかどうか
  を判断するための措置を講じたということである。

  YCC 427管理組合のスタッフがメータ氏にカーペットを敷くようにアドバイスしたのか、それとも
  自分たちで行ったのかは不明であるが、Ms.フリードランダー氏が2020年7月22日に手紙を書い
  て、問題を解決するために何をすべきかを尋ねたときに、彼らがその場にいたという証拠がある。

  2020年8月6日と2020年9月29日にYCCコンドミニアム管理会社のスタッフによって調査を実施、
  しMs.フリードランダー氏の住戸に伝達されている騒音のレベルを評価した。明らかにMs.フリード
  ランダー氏の弁護士の要求に応えたが、YCC 427管理組合はコールドストリーム配管会社と
  ソーントン・トマセッティにさらなる調査を実施するよう依頼した。

  Ms.フリードランダー氏がソーントン・トマセッティの調査費用の50%を支払ったことは認めるが、
  2011年の規則では、YCC 427管理組合が外部コンサルタントを雇うことは要求されていない。
  2021年8月31日のソーントン・トマセッティ報告書では、メータ氏の住戸の配管音は正常であり、
  フローリング構造部材のFIIC定格または音響伝送レベルはOBCで推奨されているものを超え
  ていることが判明した。

{59] YCC 427管理組合はまた、メータ氏と協力して、彼の住戸の潜在的な騒音源に対処した。
  コールドストリーム配管会社は、メータ氏の住戸の下部シャワー吐出口がそれらの発生源の
  1つであることを確認した。彼らの推奨に応えて、メータ氏は配管工を雇い、吐出口に蓋をした。

  証拠はまた、YCC 427管理組合がメータ氏に彼のカーペットの下に吸音性のアンダーパッドを
  設置するように依頼したことである。メータ氏は、住戸の床の92%がアンダーパッド付きの
  カーペットで覆われていると証言した。彼はまた、家具の足の下に吸音パッドを置いた。

{60] 2011年の規則では、管理組合は、破壊的または迷惑な騒音があるかどうかを「合理的に」
  判断し、その決定を下す場合は、所有者に騒音を軽減するための措置を講じることを要求する
  必要がある。規則に定められた手順は、YCC 427管理組合が所有者に「指示する」手順として
  リストされていることに注目すべきである。

  YCC 427管理組合の騒音レベルの最初の決定は、スタッフの経験のみに基づいており、おそらく
  メータ氏への最初の推奨事項のいくつかはやや不十分であった。(たとえば、下部の吐出口から
  長時間、水を流さないという要求や、彼らの活動に「注意する」という一般的な要求)。

   ソーントン・トマセッティの調査結果への依存(調査を信頼して従うこと)は合理的だと判断する。
  同様に、YCC管理組合はメータ氏と協力して、潜在的な騒音源を軽減した。したがって、
  2011年規則の騒音規定に違反していないことが立証された。

{61] 裁判官は、Ms.フリードランダー氏が経験している騒音が不合理であるという見方を証拠として
  示していないことを認める。また、それらが、管理組合の2011年の「床と騒音を管理する規則」
  “Rules Governing Flooring and Noise”の規定に違反してもたらされたものではないことも認める。
  したがって、裁判官は救済策の問題やその救済策の実施に対する責任を考慮する必要はない。

損害賠償および/または費用の裁定を評価する必要性があるか?

{62] Ms.フリードランダー氏は、25,000ドルの損害賠償と、弁護士費用と音響コンサルタントの雇用
  費用を含む、この問題に関する彼女の費用を請求している。
  YCC 427管理組合とメータ氏はどちらも費用を請求した。

{63] 命令を下す裁判所の権限は、共同住宅法の1.44に定められている。
  法の1.44(2)は、費用の命令は「裁判所の規則に従って、決定されなければならない。」と定めて
  いる。本件に関連するコンドミニアム裁判所実務規則の費用関連規則は次のとおりである。

   48.1  和解契約または調停同意命令によって事案が解決されず、コンドミニアム裁判所の判事
    が最終決定を下した場合、コンドミニアム裁判所判事が別段の決定をしない限り、敗訴した
    当事者は勝訴した当事者のコンドミニアム裁判所の料金を支払うものとする。

   48.2  コンドミニアム裁判所は通常、一方の当事者に対し、手続の過程で発生した弁護士費用
    または支払い(「費用」)を他方の当事者に払い戻すよう命じないものとする。ただし、
    コンドミニアム裁判所が適切と判断した場合、コンドミニアム裁判所は、当事者に対し、不合理
    であった、不適切な目的で行われた、または遅延または追加費用を引き起こした当事者の行
    動に直接関連する費用を含む費用の全部または一部を他の当事者に支払うよう命じることが
    できる。

{64] 2022年1月1日に発行されたトリビュナル裁判所実務規則では、当事者の費用を弁償する件に
  関するガイダンスを提供している。考慮すべき要素の中には、当事者または代理人の行為が
  不合理であったか、不適切な目的であったか、または遅延または費用を引き起こしたかの判断
  要素が含まれる。

  事件が悪意を持って提起されたか、不適切な目的で提起されたか、すべての当事者及び代理人
  が行動した費用の内訳が当事者に与える潜在的な影響、また、コンドミニアム裁判所に訴訟が
  提起される前に各当事者が係争中の問題をどう解決しようとしたかを判断することになる。

{65] Ms.フリードランダー氏は本事件の勝訴者ではないので、費用の弁償及び損害賠償は認めら
  れない。裁判官は、以下の理由により、YCC427管理組合及びメータ氏にこの件に関して費用
  の弁償を受ける権利を授与しない。

{66] 本件訴えの申請は、Ms.フリードランダー氏が誠意を持って提出したものであり、当事者または
  その代理人による不合理な行為があったと認めることはできない。

{67] YCC 427管理組合は、Ms.フリードランダー氏が音響コンサルタントからの報告書を遅れて
  提出したことにより、手続きを「不必要に延長」させたとして、本件に関する全額を請求した。

  YCC 427管理組合は、回答報告書を取得するために支払われた弁護士費用およびコンサル
  ティング費用を含む、報告書の提出によって引き起こされた遅延に直接関連する費用を請求
  した。

  裁判官は、Ms.フリードランダー氏が遅れて報告書を提出したという事実により、YCC427管理
  組合に追加費用が発生したことを認める。しかし、Ms.フリードランダー氏の説明は、ソフトdB社
  のオンサイト測定の報告書は、COVIDのためにその提出が遅れたということであって、確かに
  本件には遅れが生じたが、これらの状況を考えると、彼女の行動を不合理とは判断できない。
  従って、被告YCC427管理組合が請求する費用を賠償として原告に課す事は認められない。

{68] 本裁判で被告の立場に立つ選定当事者メータ氏は、このプロセスを通じて合理的に行動し、
  本事件の調停に参加する機会がなく、住戸内の騒音源を軽減するためにすでに多額の費用
  を負担していることに基づいて、訴訟費用の全額または一部の払い戻しを請求している。

  裁判官は、原告が調停完了後にメータ氏を本件当事者として追加するよう申立てを行った事
  は認識しており、本件に関する第2段階の調停については承知していないが、第3段階の
  判決手続では、原告と選定当事者の立場が大きく乖離していないことが明らかになった。

  彼が合理的に行動した、またはYCC 427管理組合の規則を遵守するために費用を負担した
  ことは、訴訟費用を賠償として受け取る権利を授与する理由にはならない。

D. 判決 (ORDER)

{69] 当裁判所は次のように命じる。

    1. 本件を費用なしで却下する。

裁判官:メアリー・アン・スペンサー(Mary Ann Spencer)
      コンドミニアム裁判所 判事
公開日:2022年10月12日

(以上 マンションNPO 訳)       (2022年11月7日掲載)


あとがき

(参考1) カナダ住宅法制改革第U期報告書・騒音規制に関する討議 「(6) 騒音(専門部会による追加事項)

(参考2)
本文中の音響データ、衝撃遮音係数(IIC)と音響透過クラス(STC)について

日本では、主に床衝撃音JIS規格のL等級が用いられ、その値は、発生源を100とした場合の観測点における値、
即ち、数値の低さが遮音性能の良さを示していますが、英米では、発生源と観測点の差、つまり、減衰値が遮音
性能を表わしているので、数値の高さがそのまま遮音性能の良さを示しています。逆なので注意が必要です。

(1) 衝撃遮音係数:"Impact Insulation coefficient" (IIC)

床/天井構造(床を含む)の衝撃遮音特性は、通常、標準的な「ハンマーマシン」が上の床を叩いている間に、下の
部屋で送信された音を測定することによってテストされます。IICの値は、床材のない軽量住宅建設の25から、
カーペット付きの商業建設の65を超えるまでの範囲です。より一般的な値は 35 から 55 の間です。集合住宅の場合、
一部の規格では、実験室でテストする場合は50以上(または現場でテストする場合は45以上)のIICが必要です。
発泡層を含む弾力性のあるフローリングは、それを含まないものよりも高い(より良い)IIC評価をもたらします。

衝撃音の伝達床材の選択は、上の部屋から下の部屋に伝達される衝撃音の量に大きな影響を与えます。
床表面材料は、衝撃を緩和するのに役立ち、したがって、下の部屋だけでなく、構造床を介して同じフロアの
隣接する部屋に伝達される音への影響を低減します。

※ 日本の床衝撃音のL等級(L-40〜L80)は、標準的な施工が行われた梁区画面積10〜15uのRC版
 (厚み150mm)を想定したJIS規定で、値が小さい程性能が良く、(IIC)は逆に値が大きい程性能が良い。

(2) フィールド音響透過クラス”field sound transmission class” (FSTC)の数値の評価レベル

弾力性のあるフローリングを設置すると、部屋に吸音効果はほとんどありません。
十分な吸音は、他の部屋の仕上げ(壁や天井)や家具(カーテン、家具など)によってのみ供給できます。
ノイズリダクション係数(NRC)は、材料によって反射されるのではなく、吸収される材料に当たる音の定格です。
NRCの範囲は0.00(吸収なし)から1.00(100%吸収)です。弾力性のあるフローリングのNRCは約0.03〜0.05です。
カーペット(1/8インチ≒3mm厚のパイル)は0.10〜0.15です。商用音響天井のNRCは通常0.50をはるかに超えています。

STC (Lab)FSTC (Field)Subjective description of effectiveness
26-3020-22ほとんどの会話がはっきり聞こえる
30-3525-27無理なく幾つかの語句が理解できる
35-4030-32単語が理解できる。時々語句がはっきり理解できる
42-4535-37中位の音量の会話がはっきり聞こえる。時々単語が理解できる
47-5040-42大声の会話と音楽は容易に聞こえる
52-5545-47大声の会話なら耳を澄ませば聞こえる。通常の音楽なら聞こえる
57-6050-52実際上は大声でも聞こえない。音楽はかすかに聞こえる
62-6555-60音楽の低音はドンと聞こえる。木質系を強く叩く音は聞こえる
7060音楽の音を大きくすればかすかに聞こえる
75+ 65+ 騒音源の空中伝播音は事実上殆ど遮音される

 訳注:人権法に基づく個人の宿泊施設

パラグラフ[42] 「人権法に基づく個人の宿泊施設の必要性が文書化されている場合」とは?

過度の騒音被害を受けた時には緊急避難の宿泊場所(accommodation)が必要になる事があります。
その時、宿泊場所が必要な理由を管理組合に文書で要請し、管理組合が宿泊場所を紹介・提供する
か、又は、管理組合が人権法務支援センター([HRLSC]:Human Rights Legal Support Centre)に連絡
して宿泊場所の紹介・提供の要請を行います。個人が直接HRLSCのウェブサイトで申し込んでも構い
ませんが、HRLSCは当該管理組合に事情を確認し、管理組合と連携をとりながら問題を解決します。

HRLSCは人種[男女]差別(racial [sexual] discrimination)などの人権侵害に無償で法的支援を提供
する人権保護団体で、非営利の州の機関です。管理組合が宿泊施設の提供を拒否している場合、
HRLSCはオンタリオ州人権裁判所([ HRTO ] :Human Rights Tribunal of Ontario)への申請書提出
を支援します。人権には「人が安全な場所に住む権利」も含みます。

コンドミニアム庁([CAO]: Condominium Aurhority of Ontario)のウェブ「騒音問題へのガイダンス」
(Solutions for Owners / Noise)にも上記の手順とHRLSCへ の連絡先が記載されています。
管理組合の責務として、上記人権問題への対応が、管理規約に規定されている場合があります。


  わが国におけるフローリング騒音対策の現状

 ここで、私達(NPO)がやってきた騒音問題解決のための活動の、ひとつの実例をご紹介します。

 NPOが上階からの騒音被害者の相談を受けて、NPOの建築士が現地調査をし、被害者が自分で
 弁護士を探して代理人を依頼、この弁護士にフローリングをスラブから浮かして施工する浮床工事
 の実際を職務上の顕著な事実の真実性を理解してもらう為、フローリング専門施工技術者が遮音
 工事の重要点をレクチャーし、裁判に入って、裁判所が指定した音響工学専門の大学教授が鑑定
 報告書を出した。長い裁判になったが、判決には至らず、裁判は僅かな賠償金の和解で決着した。
 賠償金は弁護士への支払報酬にすべて消えて、その後、被害者は居室を売却し、転居した。

 後年、私達NPOが多くの騒音問題の解決に取り組んできた事を聞いて、NHKの番組「ご近所の底力」
 の担当ディレクターが騒音問題をテーマとした次回放映取材を申込んで来ましたが、NPOの建築士は
 取材を断りました。 「私達の扱った騒音問題でハッピーに終わったものは、ひとつもない。」・・・と。

(注) 現在、私達(NPO)は、騒音被害者支援活動は行っていません。ご期待に沿えず申し訳ありません。


(2022年11月7日初版掲載・随時更新)
(Initial Publication - 7 Novenber 2022/ Revised Publication -time to time)