建物診断〜大規模修繕の実績 > 事例1:2年点検で全面大改修 > 【次頁】 事例2:築10年 タイルの浮き改修

2年点検で問題が発見され、全面大改修をした例

1.信用できない分譲業者の診断

新築分譲マンションでは販売会社が、1年、2年点検という自主点検を設定するとともに、 アフターサービス基準書で個所別の無償補修期間を約束しています。 この場合の点検は、販売会社、施工会社、管理会社、そして管理組合が一緒に点検を行うのが普通です。
でも管理組合側が問題を指摘するのは無理があります。

1年点検の業者主導の診断では、建築上の大きな問題は出ませんでした。

2年点検のとき、このマンションでは、念のため、という軽い気持でマンションNPOに建物診断を依頼したところ、 竣工図とは異なる材料が使用されている、仕様が不統一などの不具合に加え、 本格的補修が必要だと指摘した建物診断報告書が出され、管理組合・住人は驚きました。

2.なぜ、第三者の監理者が必要か

その後、管理組合は、販売会社、施工会社との補修交渉に入りました。 業者側はマンションNPOの技術者が補修方法の検討や施工の工事監理に関わることを拒否してきましたが、 管理組合側の強い意向で、調査診断したマンションNPOの技術者が、 引き続き、管理組合側の技術面の代弁者として交渉に加わり、様々なランクの補修方法があるなかで、どの方法を選ぶのか、販売会社と厳しいやりとりが続きました。

交渉の中で、無意味な補修方法を許さない「専門家としての経験と指導力」は管理組合にとって、「素人ができることではない」と改めて思ったようです。 また、このNPOの技術者は、住んでいる皆さんの「なんとかして欲しい」という強い気持が実際に交渉にあたる私達の背中を押していること、また、技術面の詰めばかりでなく、住人のパワーを販売会社に強く感じさせることの大事さも伝えるなど、管理組合の利益の代弁者として住人との信頼協力関係を築いています。

結果として、足場をかけた全面大改修になりました。

このマンションでは、美観を損なうことなく、耐久性を向上させることが出来ましたが、 すべては管理組合の建物維持に関する高い意識からスタートしたと言えます。

3.監理者の選び方

監理方式には、官庁方式、ゼネコン方式、施工者紹介方式、CM方式(コンストラクションマネージメント方式)などがあり、施工者と監理者の関係が独立・第三者である点においては、官庁方式とCM方式は似ていますが、官庁方式の場合、監理者は会計検査院による検査の厳しさを知っているので、 材料の数値、出来高などには神経をとがらしますが、工事の仕上がりについては、手直ししやすいミスは指摘しても、 目に見えない部分は言わないことが多い、形式的な監理になりがちといった意見もあります。

ゼネコン方式、施工者紹介方式では、監理者は施工者寄りになり、住人との間のトラブルの火消し役、調停者といった立場に立つことが多く、あいまいな解決になりがちです。

CM方式は、アメリカのコンドミニアムに見られる例で、施主や消費者が、監理者にチェックの権限と責任を与え、施主や消費者自らの主導で診断や改修工事を行おうとするものです。 その代わり、監理者には従来のゼネコンが果たしてきた各業者間の調整、管理、マネージメント能力と、それに見合う総合的管理コストも要求されるため、厳密なCM方式は、日本では根付かなかったのも理由があります。

マンションの診断や改修工事の経験があり、充分な施工監理のできる技術力を持った、信頼できる独立した第三者機関が、残念ながら日本ではまだ少ないこと、改修事業者などの団体から、そこの登録事業者を紹介されるケースでは、消費者にとっての自主的な選択基準が確立されていないなど、最終的には管理組合の自己責任に基づく事業者との直接契約であるといった事情から、本当に大丈夫なんだろうかと悩むところです。

相談を受けた第三者機関がみずから診断と改修設計、工事監理ができること、かつ相当の実績があり、そこに依頼した他の管理組合などの意見も聞くことができることなどが、選定の条件でしょう。

4.監理者の業務

監理業務では、施主(=管理組合)の代弁者としての権限をもたなくては、責任を全うする契約本来の意味を持ちません。

1.契約書をチェックするには、多くの現場を経験したコスト感覚とノウハウが必要です。

2.調査診断に基づいて改修設計を行い、公開一般入札で、工事業者を選定していく過程で、仕様、資金、組合員の合意形成など、マンションの規模、立地条件、地域性など、多くの要素を調整していく根気と粘り強さが必要です。
多くの住人が生活しながら工事していくマンション特有の問題など、生活支障を出来るだけ少なくし、安全を確保するには、永年の現場経験が必要です。

3.支払条件をチェックする。
監理者に「支払査定権」「出来高査定権」「支払停止権」をもたせなければ、 施主が工事費を払ってしまえば、監理者が工事のダメを出しても、後はいうことを聞かなくなります。 工事担当者は次の現場に移動してしまい、営業が言い逃れをして逃げ切る例が多いようです。

4.工事後の保証条件をチェックする。
保証条件を明確にして、施主、施工者、監理者の三者がきちんと確認することが必要です。