典型的な共同住宅の各住戸は、区分所有者が占有権を持っています。
しかしながら、その専有形態には次の事例があります。
・ 断続的に、或いは継続して空き室となっている。
バケーション又はセカンドホーム(vacation homes or second homes)
・ 基本的には賃貸だが、短期・長期がある。
年間賃貸契約、又は民泊(shared economy as AirBnB)
・ 空き室のまま、所有者は義務と責任を放棄している。
・ 所有者以外の第三者が不法占拠している。
これに対して、問題解決への努力がなされてきました。
・ 所有者への接触が容易でなく、信頼できない相手への管理者又は理事会の説得の努力
・ 階下への水漏れなど隣接住居やその所有者に影響を及ぼす、適正な手入れがされていない
空き室住居の保全対策
・ 短期・長期両方の賃貸・民泊による安全に間係する迷惑行為、妨害行為への対策
・ 管理費の有効な徴収ができない所有者への対策
多くの共同住宅法と所有者を厚遇する財産法では、所有権に代わる適切な対策がとれず、
解決の努力に十分な指針を提供することもまたできていません。
法的な枠組みによる実例では、所有権に関わらない他の形式での直接的な処理は出来ていません。
管理組合の管理規約なら、それを可能にする事ができるかも知れません。
もしも既存の管理規約の修正が許可されるのなら、新しい企画による管理規約を通して、
そのことを成し遂げることができます。
最近の管理組合の公式の集会においては、確かな多数票で投票が成立しているのが殆どでしょう。
とはいえ、有力な制定法に違反する、或いは、管理規約を否定する、或いは矛盾する同意や協約はできません。
現在の管理規約を修正する道を捜し求めている管理組合は、規約変更案を提出する前に、
有能な弁護士に助言を求めるべきです。
共同住宅の所有権に代わる代案によって事態の改善を目指すための解決策は、
国や置かれた環境によって異なるでしょう。
あるケースでは、法に則って、管理規約にこの解決策を具体化する条件や条項を含めることが可能となるかも知れません。
その例を次に示します。
(1) 空き室と不在区分所有者 (UNOCCUPIED UNITS AND ABSENTEE OWNERS)
幾つかの住戸は永い間、空き室となったままです。
とりわけ共同住宅の共用部の共有持分に高い割合をもつ住戸を含めて、
セカンドホームやバケーションホームとして使われています。
とはいえ、同様の状況は仕事で広く旅行して回っている所有者の場合にも起こり得ます。
時機を得てその所有者と話し合って状況を改善するために、
理事会はその所有者に確かなEメールアドレスを管理組合に届出するよう
(そして変更の都度、届出するよう)要求してもよいでしょう。
管理規約において、緊急の修繕が必要な事態が発生した住居の不在所有者のために、
管理者または理事会に、住戸に入る権限を与えて入室を保証することもまた重要です。
そのような修繕にかかる費用を負担するのは区分所有者の義務です。
区分所有者の不在が運営上の問題を発生させ、又は、他の住戸の所有者に物的損害を与えた場合、
そのような不在区分所有者の議決権を制限しても差し支えないでしょう。
不在区分所有者は大規模修繕や資金の支出などの決定には参加できません。
同様に、区分所有者が個人として集会に出席して、重要な議案に対して議決権を行使する
(反対投票のために代理人を立てる、或いは不在者投票を行う)ことを要求することも検討できます。
(2) 賃貸 (RENTED UNITS)
レンタル契約に制裁金を課す、又は、共同住宅の住戸のレンタル使用を禁止することは、
不在区分所有者が関係するトラブルを減らすのを促進することができます。
もし共同住宅の管理規約で住戸の賃貸を禁止した場合、違反した場合の罰金、或いは、
規約違反を理由とした制裁金を課すことができます。
しかしながら、そのような制限は区分所有者にとっては受け入れがたいものです。
特に、賃貸収入を得ている共用部に高い持分をもつセカンドホームやバケーションホームの区分所有者
にとってはなおさらです。このようなケースの場合、
理事会は様々な軽減措置を考慮することもできます。
そして、民泊に対する採択のための定期総会を召集することができますし、
次のような判断を求める議案を含めることもできます。
・ 賃貸用途の所有者に負担金を課す。(通常の管理費に付け加えて賦課する)
損耗(wear)、露滴(tear)、損傷(damages)、処理のための特別要員(必要だった場合)
等の費用に対する責任をカバーする追加保証金。
その他の費用は行為結果責任者と当該区分所有者の負担とする。
・ 賃貸用途の所有者に理事会に対する届出を義務付ける。賃貸開始日、関係する賃借人の情報を含む。
その住戸に出入りする非所有者の届出情報が正確であることを保証すること。
・ 賃借人に対し、静穏にすること、到着時間、管理者又は他のスタッフによるチェックインを義務付ける、
ペット、喫煙の制限などの義務を合法的に課す。
・ 使用細則に違反した賃貸用途の区分所有者に罰金を課す。
すべてのケースについて、管理者及び理事会はホスピタリティ法(訳注:宿舎や食事を提供する店に適用される法律)
の改正について注意し、それが共同住宅の賃貸用途に与える影響についても適宜に助言しなければなりません。
(3) 放棄された住戸 (ABANDONED UNITS)
放棄された区分所有の住戸の取扱いに関して、
管理者と理事会が対応するときは、管理規約に含まれる他の規定と同様に、
関係法に対する助言を受けるべきです。
多くの例では、住戸の放棄が発生していることを法的に立証することが必要とされています。
住戸の所有者又は相続人との間の紛争又は将来のトラブルを避けるためには、
このことは特に重要です。
住戸の放棄が成立した状態とは、
住戸が継続して空き室となっている状態が永く続いていて、
区分所有者が税金、共益費、管理費等の支払を滞納していて、
しかも区分所有者と連絡が取れない状態をもって、住戸の放棄が成立した状態とみてよいでしょう。
住戸の放棄が成立した場合、
放棄住戸の保全を継続する義務から外れた管理組合又は理事会と管理者は、
法に基づいて立ち退き通告の手続きをすることになります。
幾つかの国では、住戸の所有権と責任を市町村当局に移転してもよいことになっています。
この場合、市町村当局は、維持管理の責任と共同住宅の管理規約に定められた管理費等の支払義務を負うことになります。
(4) 不法占拠と社会的弱者 (INFORMAL OCCUPATION AND VULNERABLE GROUPS)
共同住宅の住戸で不法占拠が発生する理由はいくつかあります。
たとえば、民泊の借家人(テナント)が住戸を立ち退くことを拒否した場合、
国の法律では、民泊は借家人の権利が認められないので、この場合、不法占拠が発生します。
他の例では、所有者が知らないうちに空き室に勝手に入り込んで居住することもあります。
状況によって、立ち退きの初期費用と責任は本来、所有者が負担することになりますが、
理事会と管理者に負担が回ってくることもあります。
理事会と管理者はこの問題を終結させるために、この分野専門の有能な弁護士に依頼しなくてはなりません。
社会的弱者の保護と不法(或いは非公式の)占拠者の取扱には幾つもの要因が輻輳し集中します。
そのような例のひとつですが、年金生活者となった人、又は、銀行担保として取り上げられて所有権は喪失したが、
代わりの住居を持たない人の例があります。
そのような状況へのアプローチとして丁重に建設的な方法で、
他の区分所有者の権利の要求を認識して、限りない努力義務を理事会と管理者の双方に課すことになります。
そのような状況に直面したときは、理事会と管理者は市町村当局と社会的弱者の保護を目的とする機関との間で、
解決策を捜さなければなりません。
経済的に困窮して共同住宅の区分所有権を喪失した低収入の人に公的機関を紹介し、
その機関が住居を世話して入居を保証することができるかも知れません。
政府が低収入の人から共同住宅を取り上げ、
賃借人として居住する権利を保証する民営化(“de-privatization" )政策の結果かも知れません。
理事会と管理者による解決策を捜し求めることは、
先導的な情報文書に概説されている解決策に従って行わなければなりません。
その文書とは、国連が発行した2030,SDGs アジェンダと新都市アジェンダです。
(The SDGs of the 2030 Agenda for Sustainable Development, the Geneva
UN Charter on Sustainable Housing, and the New Urban Agenda)
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