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第2章 共同住宅の法制(CONDOMINIUM LEGISLATION)

 はじめに

 ※免責事項
   このマンションNPOのHpでは国連発行文書(UNITED NATION PUBLICATION-ECE/HBP/198)の
   内容をご紹介しています。同文書の日本における公式の文書ではありません。
   また文中の翻訳表現は権威ある公式の翻訳ではない事をお断りしておきます。(マンションNPO)

 ※ 本文の章・項・号番号は便宜的に当Hp日本語訳でつけたもので、報告書原文には付いていません。

   第2章 共同住宅の法制・目次
   2.1  国内法制 
   2.1.1 国の共同住宅支援制度の枠組 
   2.1.2 共同住宅の所有権に関する国内法
     (1) 所有権の明確な定義
     (2) 所有権と管理に関する指針
     (3) 管理組合の管理運営と選挙
     (4) 区分所有者の義務
     (5) 管理業務の提供
     (6) 会計
     (7) 課税制度
     (8) 管理組合の創設と解散
   2.2  地方における共同住宅法制  (第2章 共同住宅の法制・終わり)/  (参考)日本語版の用語について

第2章 共同住宅の法制(CONDOMINIUM LEGISLATION)

共同住宅は、一般的に、国の法律の枠組みの中に組み込まれ、その制度の仕組みの中で効率的に実行されます。

国の枠組みの中から問題全体を把握し、 行政の住宅制度戦略と実施計画によって共同住宅所有者に実務的な訓練を実施することは、国が主導して行うべきことです。 然しながら、中央政府機関単独で、すべての問題に対して対策を確立し、実行することは出来ません。

国の機関、地方行政、民間団体は、共同住宅の分野の中でそれぞれ果たすべき特有の任務があります。

2.1 国内法制(National legislation)

住宅分野の責任は、しばしば地方自治体に委ねられますが、共同住宅において、国家レベルで決定すべき事の重要性が見落とされるべきではありません。

国の住宅制度の目標を反映し、法による統制、及び、地方自治体を支援し、 共同住宅の運営が管理組合の自治権に基づいて安全かつ成功裡に実施できるように促進することの重要性を国家は認識すべきです。

2.1.1 国の共同住宅支援制度の枠組
    (National institutional framework to support condominiums)

共同住宅のような民間が所有する住宅を組織として制度化し、効果的な運営が行えるような健全な組織の枠組み作りを行い、 その中で透明な責任の配分を行える、十分な制度上の組織を確立することは、国家責任の最も重要な要素の1つです。

共同住宅の管理組合は、個別の規則と手続きを規定した関係法が制定され、それが直接に適用された場合にのみ効力を持つことができます。

住宅分野の法律の枠組み作りは政府の責務です。
住宅制度は、通常の場合もそうですが共同住宅の場合は特に、住宅分野の法律の枠組み作りの責務は、 住宅関連分野に関係する議会の委員会と共に検討すべきです。

これによって住宅分野の政治的な優先順位が上がり、社会的経済的な改革の協議もスムーズに進行することになるでしょう。

住宅担当大臣に権限が分かれていたり、他の閣僚が住宅制度を特別に担当することになっていたとしても、 住宅制度に対する政府側の責務は、国の組織を挙げて集中されるべきです。
住宅制度に対する責任についての決定的な要素は、国家レベルの大規模な住宅問題に対して、 効果的な決定ができる十分な能力と度量を持つことです。

政府は、国、地方、及び地方の傘下組織を挙げて、管理組合の創設と運営を支援する責務があることを受け入れなければなりません。

特に政府は、共同住宅の所有者は勿論のこと、彼らの共同資産を管理していく立場の専門的管理者に対しても、 管理組合の組織化を支援する教育と訓練の活動を行うべきです。

不動産の所有権と、その安全な所有を保証するために、法に規定されるべき必須前提条件
  ・ 共同住宅の所有権を規定する法において、所有者の権利を法的に定義すること、並びに、
     所有者が負うべき義務を明確にすること。
  ・ 不動産登記法における、所有権と所有権を維持することの定義
  ・ 所有権の変換(transfer of property)に対して、法的に有効(administrative)かつ,徹底的(sound)な、
     法的手続(procedures)の規定
  ・ 管理費等を支払わない区分所有者の資産の差押さえ等の係争事件の取り扱いに関して、略式で
     立ち退き命令を下す事の問題の是非を含めて、効果的で透明な法的手続きの規定
  ・ 住宅分野におけると借り手(borrower)と貸し手(lender)間の権利を明確に区分(distribution)すること。

上記の条件を実現化するための立法上の判断は国家レベルで国の政策責任の核(core)となるべきです。

土地管理と不動産所有権登記の問題は、国連欧州経済委員会(UNECE)が発行した文書「不動産の区分所有と区分指針」 (Guidelines on Real Property Units and Identifiers)」及び「欧州経済委員会(UNECE)が管轄する地域における土地管理の 開発動向と基本原則」(Land Administration in the UNECE Region: Development trends and main principles)」で示しています。

2.1.2 住宅の所有権に関する国内法
     (National laws on condominium ownership of housing)

欧州の西側と北米とでは共同住宅の所有権に関する国内法は仕組みも内容も異なります。
一般的に、簡単な法はその下に追加される規則の規定と指針を必要としますが、 明確に規定された法では細部にわたる補足の規定を必要としません。

国の法制の枠組みは、逼迫した経済対策を重視した関連法、即ち、民法、建築法、政府特別助成金貸付法、或いは、建物の熱源近代化法、民営化法等々、経済に関連したものになっています。本指針は法及びそれを支える規則に対しての細かな差異に対する選択肢は準備していません。

各国は、それぞれが抱える特有の状況に応じて合理的な決定をすべきです。同様に、各国は管理組合に法律上の権利を与えるための国内法の具体的な内容については、それを尊重しながら、それぞれ異なった視点で取り上げても構いません。

法で定める責任を国と地方条例のどちらにおくかという特別な選択肢に対して重要なことは、お互いに、他の立場を否定する必要はないということです。

この件に関して二つの文書が入手できます。
http://www.unece.org/fileadmin/DAM/hlm/documents/Publications/guidelines.real.property.e.pdf
http://www.unece.org/fileadmin/DAM/hlm/documents/Publications/landadmin.devt.trends.e.pdf,

国は共同住宅の管理規約と法の範囲との調和を確立すべきです。

国の住宅政策において、国は住宅制度関係法令における共同住宅に関する規則もまた考慮すべきです。 例えば、低所得者でも手頃に入手できる価格帯の住居への誘導政策は、新しく建設される建物の認可に関係する法律を通して、ある種の不公平な基準で処理されます。 (国連SDGs2030アジェンダ)

これらの法は人口に対し一定の割合で存在する低所得者などの社会的弱者に対して、通常価格よりも低額で購入できる新築共同住宅を提供するための住宅建設を包括した住宅制度を支援することができます。この方法で、社会的弱者に対する福祉政策としての国家目標を開発、所有権及び共同住宅の管理の中に組み込むことができます。

同様に、建設の推進、奨励政策は、持続可能な環境政策や住宅における省エネルギー政策、 その他の既存設備の改造と新築共同住宅の開発の両方を含めて、これらの支援のための完全な開発計画の一部として用いることができます。

例えばエアビーアンドビー(AirBnB)社に代表される私有財産を賃貸事業に利用する「民泊事業」に適用される賃貸法などの目的にあった適切な規則などはその一例です。このような問題を地方レベルでソーニング(用途規制)法による開発・許認可制度と住宅政策を通じて、地方行政の担当とすることも可能ですし、同時に国家レベルの法的枠組みの中で広くとらえて処理することができます。

共同住宅の管理指針に対応する法令が存在するということは重要なことです。

より幅広い法令において共同住宅をとらえる必要性とは別に、共同住宅の所有権行使(管理組合の運営)の成功を決定付ける法律の特別な領域が存在します。 共同住宅の所有権行使にとって法律上きわめて重要な3つの主要な領域を下記に示します。
1) 共同住宅の区分所有権に関する国内法令
2) 土地(不動産)登記に関する国内法令
3) 課税に関する国内法令

国内の成文法と管理規約によって管理組合は共同住宅を管理していきます。
管理組合に法的な枠組みを与える事は国の責任です。

一般的に、次に掲げる成文法と管理規約は共同住宅と管理組合にとって事実上必要となる要素です。、
・管理規約と使用細則
・区分所有権の宣言規定(賃貸用集合住宅を共同住宅に変換するときに必要)
・管理契約

共同住宅の所有権と管理に関する法律を制定する場合、次の要素を一体化させる事が推奨されます。

PARTT:法令の範囲
      共同住宅の管理に関する法令の制定
      主要な定義
      集合住宅の管理原則

PARTU:国家と地方行政組織の権力の範囲
      私的所有権・財産権に国家と地方行政が関与することの基本的原則
      区分所有者の権利と義務
      区分所有建物への用途変更
      連帯共同所有建物への用途変更

PARTV:管理組合
      役割、目的と権能
      情報の伝達、集会、団体としての意思決定、選挙
      理事会と管理運営 (自主管理、個人管理)(self-management, private management)
       (訳注:個人管理には、家主が管理している例や管理者を選任する例があります)
      予算、会計帳簿、資産、会計
      積立金
      管理費 - 支払義務
      共有資産の維持保全と管理
      不在専有部への入室権、法律上有効な所有権はあるが使用していない住戸への立入を含む
      所有者に対する第三者の責任・義務

共同住宅法に規定すべき事項
共同住宅の法律には、下記事項を組み入れておかなければなりません。

(1) 所有権の明確な定義(CLEARLY DEFINED PROPERTY RIGHTS)

個々の所有権と共有部の所有権、及び、区分所有者の権利と管理組合の権利、 それぞれの境界を明確に定義して法に秩序を与えることは、必須の条件です。

管理組合若しくは地方自治体が管理する共用部の資産に対して、使用する権利、貸し出す権利、 処分する権利、又は、共有部に含まれる区域を借用する権利なども同様に、 誰に権利を与え、誰がそれを管理するかを明確に法制化して規定しておかなくてはなりません。

管理組合の中に含まれる専有部をどのように法の中に規定していくかも、重要です。

建物の入口が戸別にあるか、又は、幾つかの国で見られるように、個々に独立した通路を有している、 或いは共通の入口と通路と設備を有している、又は他の配置によるものであるなどを含めても構いません。

管理組合における組合員資格(MEMBERSHIP IN THE OWNERS' ASSOCIATION)
管理組合は共同住宅の法的所有権を与える国内法に則って、 区分所有者に強制的に義務として組合員資格を与えなければなりません。

この法の要請は、国連欧州経済委員会(UNECE)の民主主義の確立を実現する理念に一致しています。

全所有者で共用部の設備資産(屋根、階段、外壁、配管、配線、等)を管理する本来の管理体制を提供することが可能でなければ、 管理組合はその代表となる事は出来ません。

(2) 共同住宅の所有権と管理に関する指針
 (Guidelines on the Management and Ownership of Condominium Housing)

現在の法制度で、区分所有者に強制的に組合員資格を与える事ができない国にあっては、 それに代わって、共有資産の共同管理を保証する方法を導入しなければなりません。

この事は、区分所有者による自主管理か、或いは、外部の管理会社との契約により管理を委託するか、又は、 補足の法律によって管理義務を位置づけるなど、これらによって将来の準備を行うことも含まれます。

外部業者による委託管理を行う場合、法はその提供される業務の基準の定義と類型を規定し、 この業務の遂行が怠慢で不履行になった場合の解決に備えて、免許制についても規定しなければなりません。
この管理業者を監督するための組織についても、同様に定義しなければなりません。

本指針の付録Tの管理者の設置を義務付ける法的枠組みについての実例見本を参照してください。
付録1 管理組合なき場合の法的規制 参照

(3) 管理組合の管理運営と選挙(GOVERNANCE AND VOTING)

管理組合の管理運営に及ぼす影響を考える上で重要な投票による区分所有者の権利の行使は 法制化の指針にその範囲が規定されています。もしも、個別に独立した数戸の、或いは 法的に1戸以上の所有権が与えられている所有者は、その数だけ議決権をもつことで 選挙結果に影響を与えることができます。

この場合、法制化は慎重に検討した上で注意深く行わなければなりません。このような方法は、 多数の不動産を保有する限定された個人或いは法人に独占的に議決権が集中し、選挙結果に影響を及ぼすことになります。

一般的には、1つの住戸を共同所有する場合も、ひとつの議決権が割り当てられます。

区分所有者の議決権は、専有部の大きさについても同様な決定をしなければなりません。

例えば、大きな専有面積を持つ区分所有者は、多くの月額管理費を負担していることで、 実質上、管理組合に貢献しており、理事会の決定よりも正面から強い影響力を行使できることになります。

しかしながら、これらの専有面積をそのまま追加的な議決権に反映させる事の是非の議論が存在します。

国家は各専有部面積の大きさにかかわらず、議決権を一戸一票と定めるか、 専有部の全体に占める面積比によって議決権を割り当てるかどうかを決定しなけれなりません。

各国は、これらの問題に対して、共同住宅法にこの問題の適正な解決法を規定するか、若しくは、 他の指標となる法令とその文化的背景を示さなければなりません。

投票の課程において、区分所有者が参加するかどうかにかかわらず、法で定められた定足数を満たしていれば、 投票結果は適法であり法的強制力をもつことを、国家の法のもとで明確に規定しなければなりません。

区分所有者の権利に重大な影響を与える可能性のある決議(特別決議)は、基本的な管理に伴う決議(普通決議)よりも、 投票による賛成票が反対票を大きく上回る比率で確定されるべきです。評決に関する法制化は、 議案の重要性の区分によって明確に規定されなければなりません。

立法上の影響はまた、(a)出席者数が少ないが故に、少数の区分所有者が多数派に妥協するか、 又は、(b)多数派による票が高すぎる故に基本的な管理上の意思決定をも妨害するなど、 二者のどちらのシナリオも避けるために、議決に要する定足数を適正に定義しておかなければなりません。

(4) 区分所有者の義務(UNIT OWNER OBLIGATIONS)

管理に関する法制化では、全区分所有者に対して、通常の場合、管理費の支払い義務に応じることで、 自分達の住戸と共用部の維持保全と修繕費の費用を負担する義務を果たさなければならないということを命じるものでなけれななりません。

特別な事情のある少数の区分所有者に、それに要した費用の算定に関する特別な規定を共同住宅の所有権に関する国内法 若しくは法の委任を受けた規則に含めて規定することもできます。

共同住宅の建物全体の性能・品質を新築時と同等の状態に維持することは重要なことであり、そのために、 自分が所有する専有部を維持保全すること、管理規約を遵守すること、 それらを管理し、保全し、修繕するための基金として必要な管理費の支払に応じる事を区分所有者に厳正に要求しなければなりません。

それゆえに、専有部の修繕を怠り、管理費の請求に応じない区分所有者に国内法でそれらを規定し、 その執行を支援する規定を設けなければなりません。

区分所有者に課す罰則について、考慮すべき法定事項には下記があります。

  a: 破損して荒れたままの状態の占有部について、その改善を命じること。
  b: 専有部所有者に修繕を命じ、請求できる特権を管理組合に付与すること。
  c: 義務の不履行、又は支払遅延に対する請求権の行使。
  d: 管理組合が区分所有者に対して、当該住居の売却、又は変換が完了するまでの間、
     その住居に先取り特権を課すことの承諾権の付与
  e: 月額管理費等の徴収に収納代行会社を使うこと
  f: 民泊を禁止する(もしも、当てはまる住居があるなら)
  g: 区分所有者への住居の競売と立ち退きの請求
  h: 他裁判所の既判による解決

法はまた、管理費等の未納者に対して罰則として議決権の停止を検討することができます。
国家は債務不履行者に罰則を課す前に、現実的な特別の期間(猶予期間)を設ける事を決定すべきです。

(5) 管理業務の提供 (MANAGEMENT PROVISIONS)

法制化に当たっては、理事会と管理組織(management body)の役割を明確に確立すべきです。
管理組合に求められていることと、実行すべき業務を明快に理解しておくことは、決定的に重要なことです。
共同住宅の国内法においては、管理の機能と責務の定義と管理者、理事会、そして管理組合の責任を見極めなければなりません。
更に進んで、管理組合もしくは理事会が合法的かつ有能な業務委託契約を締結できる権限を付与されることを法に規定すべきです。
法はまた、管理の主体の組織化が失敗に終わりそうなすべての起こりうる周囲の状況についても規定すべきです。

このようなケースでは、区分所有者は管理組合を組織化するための全員集会を開く権限を持っていません。
また、どのような管理組織を選択できるのか、或いは、彼らの要請を受け入れてくれる国家機関を選択できる手段は持っていません。

(6) 会計(ACCOUNTING)

殆どの国には会計制度に関する法があります。そのような法は通常、営利及び非営利の経営に関するもので、 それぞれの会計方式が個別選択的に準備されています。しかしながら、このことは、 彼らが望む会計方式を維持する権利を与えられていることを意味しません。

法は通常、適正な会計上の義務と公正な会計報告書の透明な公開を規定しています。

共同住宅関係法は、会計規則を準備すべきです。
管理組合が国内法の枠組みにおける会計制度に従って、 会計専門家による会計処理を行なっていたとしても、管理組合に適用される厳格な会計規則を定めなければなりません。

(7) 課税制度 (TAXATION)

課税に関して、非営利の居住者団体である管理組合を商業法人と同一にみなすべきではありません。
税法においても、共同住宅法と協調して透明かつ適正な会計基準を規定しなければなりません。
税に関する規則及び会計帳簿はそのような会計基準に適合しなければなりません。
一般的に、共同住宅資産の効率的な管理と運営は、公共の利益とみなされ、 その功労に報いるという意味で課税における優遇策があります。

高度に発達した課税政策においては、共同住宅の維持に対する報償を与えることができます。
政府機関は法律上も例えば、古い建物のエネルギー効率化と改善策などに対して、 資産課税の優遇策を確立しなければなりません。

区分所有者からの管理費及び他の徴収金収入には課税すべきではありません。
区分所有者が所有している住戸への固定資産税は、管理者を通して管理組合が支払うべき共有部分に対する資産課税と同時に、 それを所有している区分所有者が政府の課税当局に直接支払わなければなりません。

共用部への資産課税に対しては、税制の課税目的たる専有部への、 資産の評価基準による査定ベースで調整した課税評価額で査定した課税とは分割して個別化すべきです。

税制政策を検討する過程では、政府は既存の国際標準を参考にすることができます。
詳しくはIAAO(International Association of Assessing Officers)
https://www.iaao.org/wcm/Resources_Content/Pubs/Technical_Standards.aspx を参照ください。

商業用或いは賃貸用の住戸を含む共同住宅の場合、共同住宅を管轄している市町村の法的枠組みに基づいて適切に 分類・評価されなければなりません。管理組合によって徴収される幾つかの商業収入については、 国内法に基づく税制に従うことになります。

(8) 管理組合の創設と解散(CREATION AND DISSOLUTION)

共同住宅の法律上の主体は、共同住宅が新築されたときに、 正規の政府機関が認証した合法的かつ適正な共同住宅管理規約の成立によって確立されます。 共同住宅の建築許可申請時、規定の期間内に、この書類を連結して提出してもよいことになっています。

国家は、既存の共同住宅関係が解消されたとき、及び、そのような状態になったとき、或いは、 その理由に至ったときは、その決定をしなければなりません。

国家はまた、賃貸用集合住宅若しくは公営住宅を共同住宅に変換するために法を改定する必要 があるかも知れません。そのときは共同住宅管理組合の結成方法を定義するべきです。 共同住宅への変換と同時にその建物内の全所有者が一致して同意した場合のように自動的に結成されるか、 或いは、一定の割合の所有者が段階的に区分所有に変換していくかで決まります。

一定の期間内に管理組合が創設され登記された場合、法の詳細な規定により管理組合は成立されるべきです。 幾つかのケースでは、法律の制定のみで管理組合の構成に権限を与えるのは十分ではなく、 関係する理事会及び管理の主体も必要になってきます。

管理組合が存在していない場合でも、 区分所有者が集まって管理組合の結成を促進することに対する経済上の優遇策を講じることができます。

2.2 地方における共同住宅法制(Municipal legislation)

地方都市のレベルにおける業務とは、国の住宅政策に従って結果を出すための実際の行動に変換することです。政策の効率的実施を考えれば、行政上の主体としての地方レベルとは、現実の住宅問題に対して実際的な解決策を実行していくことが重要になります。

国の想定したレベルに収まりきれない多くの深刻な問題を地方都市レベルで扱わなければなりません。それらには、賃貸集合住宅の共同住宅への変換、ゾーニング(用途規制)規則、共同住宅の開発承認申請、環境問題、そして社会住宅プログラム(貧困住宅対策)などが含まれます。

住宅問題における政治的な責任は、献身的な住宅委員会、又は、副委員会、その他の地方評議会の下にある公的な組織が担わなければなりません。

この委員会は下記の範囲に責任を負わなければなりません。
1)地方の住宅政策と計画の全体
2)民間住宅部門と管理組合を含む地元の住宅部門の利害関係団体との協力関係
3)社会的住宅(低所得者向けの住宅)政策
4)持続可能な開発(住宅ストックの品質と価値の改善、環境とエネルギー効率化の目標実現)
5)共同住宅と管理組合の効率的な運用の支援
6)管理ができていない建物で管理会社を選択する時の組織的な支援

共同住宅をめぐる問題において、地方自治体と共同住宅の管理組合の間で協力関係を築いていく中では、相互の混乱を避けるために、各組織における責任を明確に定義することが基本になります。

地方自治体には住宅政策の大きな協議事項(housing agenda)の文脈の中に表現されている共同住宅のコミュニティを保護育成(facilitate)する行政上の監督責任があります。

また、共同住宅の区分所有者と管理組合は、自分達の資産価値を維持していくための無制限かつ十分な責任を持たねばなりません。

更に進んで、費用の負担面では、地方自治体は管理組合に対して、資産価値が下落するのを防ぐための建物設備の修繕、修理、エネルギー効率化のための効果的なアップグレードを提案すべきです。

資金面、制度面の両面から共同住宅を支援する役割を担う地方政府、地方自治体、及び支援センターは、しばしば、既存の賃貸用資産を共同住宅に変換する管理主体の創立に対する支援の相談を受けることがあります。

一般的にはたとえば、地方自治体の協議会は共同住宅を管理運営する管理組合の創立、再編成などを助言することができます。 居住者は、理事会又は管理者に関する特別の義務に基づく集会の開催に失敗することがあります。 このような場合、地方の協議会は、まず第一に、新しい理事会を選挙で選んで組織化するための全員集会の開催を助言することになります。

住宅メンテナンス公営企業(Municipal maintenance companies)

経済的過渡期にある幾つかの国では、今まで公営住宅を独占的に供給し管理してきた公営の住宅開発局が、 ストックとなっている公営住宅を共同住宅を含めてメンテナンスする公営企業を傘下に持っている場合があります。

一般的に、この方法は効率的ではなく変更すべきです。とはいえ、 このようなメンテナンス公営企業は共同住宅を相手とする修繕サービス分野に参加することは可能です。

(参考)日本語版の用語について

 (1)共同住宅
    指針原文では主に分譲住宅を意味する共同住宅(condominium)と賃貸住宅を意味する集合住宅
    (multi-unit residential buildings )、更に、両方を含む総合的な意味で集合・共同住宅(multi-unit
    condominium)という表現を使い分けています。
    「原文に忠実に」を心がけていますが、紛らわしいときは括弧書きで原文を表記しています。

    また、原文の"unit owner/the privately-owned unit"は、日本の区分所有法の用語をあてて、
    それぞれ区分所有者/専有部とし、 "the jointly owned parts"(直訳で連帯的所有部分)を
    区分所有法の用語で共用部とし、"unit"は住戸としています。

 (2)共同住宅の法制(Condominium Legislation)と法体系
    同じく、法形式の名称に関して原文では、Law - Natioinal Law - Regulation - ruleを使用しています。
    国連の法体系として国連憲章(Charter) - 条約(Treaty) - 国内法(Natuinal Law) -施行令(Regulation) -
    施行規則(Rule)となっていますが、法(Law)及び規則(regulation)は、これらの一般的総称として使用して
    いる場合があります。また、Law and Regulationsはまとめて「法令」としました。

    一方、わが国の国内法(Natioinal Law)では国内秩序関係の公法(Public Law)(憲法・行政法)と
    政令(内閣の命令)、個人の権利と利益に関わる私法(Private Law)(民法・他)等があり、
    施行令(Regulation)に相当する法には、(内閣)府令、省令、(地方)条例等があり、
    施行規則(Rule)に相当する法には、施行令に付属する各種の規則があります。
    本頁の翻訳用語は必ずしもわが国の法体系と等価で置き換えているわけではありません。

    尚、原文でこれらの用語に(In/of) condominiumがつく場合は、agreement(協定書)を「管理規約」、
    Rule(規則)を「使用細則」としています。

 (3)わが国では会計用語と法律用語で異なることがあります。
    非営利事業の"Income statement" は会計用語では「収支報告書」、法律用語では「収支決算書」
    といいます。「マンション管理適正化法」第十四条、「マンション建替え円滑化法」第二十四条、
    「個人情報の保護に関する法律施行令」第十八条では「収支決算書」が使われています。

    本文では、会計用語の「収支報告書」で統一しています。なお、営利事業では「損益計算書」になります。
    困るのは管理会社で、A社は「収支報告書」、B社は「収支決算書」を使っています。

    一方で会計学では、プライベートセクター(Private Sector)=民間の非営利事業の報告書体系で、
    営利事業の「損益計算」=「損益計算書」に対し非営利事業は「収支計算」=「収支計算書」といいます。

    "Income statement" は損益計算書、収支報告書、収支決算書、収支計算書の4つが存在します。

<蛇足> 少しマニアックになりますが・・・
"Maintenance"は、日本では建築業界で「保全」、会計業界で「保守(料)」と云う方が多いので、 本文では両方使い分けしています。実はこの国連指針でも同じ事がいえて、その制度の言語使用域に合わせて、 英語/米語を使い分けしています。例えば、whilst(英) /while(米) 管理人=caretaker(英) /janitor(米) などがそれぞれ出てきます。但しエレベータは英語の"lift"だけで、米語の"elevator"は使っていません。
原文では注釈や解説なしに、さりげなく英語/米語を使い分けています。
欧州のエスプリ・デコー(esprit de corps) : 団結心が見えてきます。even if Brexit.

(2021年5月12日初版掲載・随時更新)