国連「共同住宅管理指針」概要と目次 【前頁】 付録1 管理組合なき場合の法的規制 > 付録2 管理規約 > 【次頁】付録3 使用細則

付録2 管理規約 (ANNEX II Condominium agreement)

 はじめに

 ※免責事項
   このマンションNPOのHpでは国連発行文書(UNITED NATION PUBLICATION-ECE/HBP/198)の
   内容をご紹介しています。同文書の日本における公式の文書ではありません。
   また文中の翻訳表現は権威ある公式の翻訳ではない事をお断りしておきます。(マンションNPO)

見 本 (Specimen)

(管理組合名称)

.               .  管 理 規 約

1. 管理組合の構成員 (Members of the owners’association)

  公共事業機関(The local authority)      の建物      の区分所有者である下記の者は、
        管理組合を構成する組合員である。

  住戸番号        所有者氏名            共有部持分割合 .     /     .
  住戸所有者はフルネーム、住戸番号及び共有部持分割合を記載する。

  (訳注:公共事業機関とは「住宅公団」などを意味し、本項は公団が建てた公営住宅を居住者に分譲
       する例を想定しています。)

2. 管理組合の法的地位 (Legal status of the owners’association)

 1. 管理組合は、権利と義務を有する法人(legal entity 訳注;法的に実体のある独立した団体という
   意味で、登記法人であるかどうかは問わない)であって、訴訟において原告又は被告となることができる。
 2. 管理組合は、共用部に対する無限責任を有し、区分所有者の責任は、共有部持分割合内に制限される。
 3. 管理組合は、営利又は商業事業法人の所有者としてこれらを設立することはできない。

3. 専有部と共用部 (Individual property and common property)

 1. 専有部とは、自己の有する住戸及びそれに付随する部分を含む。これらの付随する部分には、
   部屋の内壁、ドア(フラット型住宅の住戸に出入りする玄関ドアを含む)、窓枠の内側部分、
   床板、壁内装、シーリング材、住戸内の専用装置器具、台所、作りつけのカップボード等の
   住戸内部の全てが含まれる。

 2. 共用部とは、(数あるなかで、これらが法的に共同住宅に含まれる限りにおいて)
   建物がある区画の土地、通路、庭とプレイグラウンド、基礎、外壁、外部ドアと窓、通路壁、建物の床、
   屋根、階段、居室以外の内部のドア、エレベータ、給排水・電気・ガス等の供給設備、TV共聴設備

   共用部には、ランドリー室、機械室、その他の屋根裏、地下室、集会室などの個人専有の居室以外
   の部屋を含む。
   管理費や修繕積立金は管理組合が管理するこれらの供給設備や共用部の管理費用に充てられる。

 

 3. 区分所有者は、これらの共用部の管理を共同で行う権利と義務を負う。
   この権利と義務を放棄することはできない。
   区分所有者は、各人の共用部に対する持分割合で権利と義務を有する。

4. 区分所有者の権利と義務 (Rights and duties of the unit owners)

 区分所有者の権利と義務は、共同住宅に関する法律「      法」の「権利と義務」に関する規定
 によるほか、他に規定がない場合は下記による。 

 1. 区分所有者は、法及び本規約に違反しない範囲において、専有部を排他的に使用する権利を有する。
   区分所有者は、その専有部に係る費用を自身で負担しなければならない。

 2. 区分所有者は、共用部を共同で使用する権利と、自己の共有部に対する持分比率に従って受ける
   共有サービスの利益を享受する権利を有する。区分所有者は、自己の共有部に対する持分比率に
   従って共有部に関する管理費用を負担する義務を負う。

 3. 特に、共有部に関する管理費用に関連する区分所有者の権利は、年次定期総会に参加し、総会の
   共有部に関するすべての決定に従うものとする。区分所有者は共同住宅及び他の区分所有者に
   対して管理権限を有する管理者に権限を委任することができる。

 4. 区分所有者は、自己の権利の行使にあたって、他の区分所有者の有する権利を尊重し、自己の責務
   に留意しなければならない。区分所有者は、使用細則の規定を遵守しなければならない。

 5. 建物の住戸内での商業的利用にあたっては、最初に管理組合の同意を得ることを必要とする。
   管理組合の同意は総会において過半数の賛成を持って決する単純多数決によるものとする。
   管理組合は、管理者にその同意権限を委任することができる。
   同意の決定はその住戸における商業行為が、好ましからざる結果を引き起こすおそれがある場合、
   共用部の若しくは建物の使用目的の制限範囲に抵触、不動産価値を損なうおそれがある
   などの正当な理由がある場合にのみ、その決定を保留することができる。

 6. 区分所有者は、自己所有に係る部分の使用は自由である。しかしながら、区分所有者の自由は
   管理組合に対する義務からの自由ではない。専有部を賃貸する区分所有者は、部屋番号と
   賃借人の氏名を管理者に告知しなければならない。

 7. 区分所有者は、改修の必要がある場合、作業に係る第三者の入室を許可しなければならない。
   区分所有者は、その入室にかかわる賠償を請求することはできない。

 8. 区分所有者は、自己所有に係る部分の売買は自由である。区分所有者は購入者に対して、
   区分所有者の有する義務のすべてを継承しなければならない。購入者は売主のもつすべての
   義務、特に管理規約に規定する義務の継承を受諾するものとする。
   区分所有者と購入者は、連帯してその責務と費用の負担に応じなければならない。
   売買にあたっては、組合資金(common funds)に留意するものとする。(2. 共用部とは 参照)

 9. 売主は購入者に下記のすべての文書を引き渡なければならない。
   ・ 関係するすべての規約
   ・ 現在の支払管理費等
   ・ 管理組合によって決定された重要事項
   ・ 住戸の売買後に生じる権利と義務に影響を与える、及び他に関係するすべての情報

5. 区分所有者の専有部の強制的売却(競売) (Forced sale of individual property)

 1. 区分所有者がその責任を持続的、かつ重大に無視(persistently and gravely disregards his obligations)
   している場合には、管理組合はそれらの区分所有者に対して、その住戸を強制的に売却することが
   できる権利を有する。特に区分所有者が、下記のいずれかに該当したときに適用する。
   ・ 通常の費用支払義務の履行を3ケ月遅延したとき
   ・ 使用細則の規定に持続的、かつ重大に違反したとき
   ・ 他の区分所有者の利益を損なう有害(detrimental)な行為をしたとき

 2. 区分所有者にその処分を下すべき提訴を行うときは、総会において過半数の賛成を持って決する
   単純多数決をもって決定する。

 3. 専有部をすでに売却した区分所有者は、その住戸に関する代理人になることはできない。

6. 保全・修繕・改良工事 (Maintenance, repairs and modernization)

 1. 共用部の保全は管理者の責任として定期総会において承認された保全予算を基に実行
   されなけれなばらない。

 2. 大規模修繕、改良工事、共用部の拡張工事は、総会において4分の3以上の賛成を持って
   決することを要する。これらの費用は、修繕積立金その他の分別会計による。

 3. 修繕積立金は、区分所有者の毎月の支払費用の一部であり、管理費会計とは分別して
   管理される。毎月の支払費用は、定期総会において決定承認される。

7. 管理費 (Costs of common property)

 1. 各区分所有者は、その共用部持分割合に応じて共用部の管理費用を負担する義務を負う。
   毎月の支払費用は、定期総会において決定承認される。

 2. この管理費には次の費用が含まれる。
   ・ 管理費用
   ・ 運転費用
   ・ 保全費
   ・ 修繕積立金

 3. 事業年度内に支出を予定している費用は予算に計上され、定期総会において承認決定
   されるものとする。

 4. 区分所有者が支払う毎月の管理費は管理者からの請求書、若しくは、口座からの定額
   引落しによる。支払期限を毎月10日とし、指定の管理費口座に振り込むものとする。
   入金された管理費口座から所定の額を管理者が修繕積立金口座に振替えるものとする。

 5. 管理費会計は総会に予算書として提出された財務諸表の収支計算書に計上されるものとする。

 6. 予算外費用の支出が発生した場合、管理者は、1カ月あたり予算額の10%を超えない範囲で、
   会計年度の年間予算額の15%を上限として、承認決済できるものとする。
   会計年度の年間予算額の15%を超える場合は、総会において過半数の賛成を持って承認
   されなければならない。

 7. 各区分所有者の使用する電気、給水、熱供給、ガスの費用は各供給者からの請求書によって、
   各区分所有者が支払うものとする。(もしも、そのような戸別契約が供給者と区分所有者
   間で締結できない事情にあるときは、各区分所有者は共有部の持分割合によって支払を
   行うものとする。)

8. 管理 (Management)

 1. 管理組合は、区分所有者の間から選挙によって理事を選出し、管理組合を設立することが
   できる。理事会は総会と次の総会の間の事業年度において、その責務を果たさなければ
   ならない。

 2. 共同住宅の主要な責任主体は管理組合である。
   管理組合は、管理者に日々の管理業務を遂行する権限を与えるものとする。

9. 管理組合の責任 (Responsibilities of the owners’association)

 管理組合は次の項目に対して責任を有する。
 (a) 総支払額と予算を含む年間事業計画の承認
 (b) 事業期間内の管理者の業務と予算の承認
 (c) 管理契約の締結と管理者の報酬(remuneration)の決定
 (d) 必要に応じて管理者に管理組合の代理人としての権限を付与する
 (e) 共同住宅に大規模な変更を加える決定、例えば、共用部の売買、使用目的の変更
 (f) 大規模修繕の決定
 (g) 住戸の分割若しくは結合に承諾を与える
 (h) 専有部の強制的売買(競売)の法的手続きの決定
 (i) 管理規約の改訂
 (j) 使用細則の制定
 (k) 理事会の理事の選出

10. 総会 (Meetings of the owners’association)

 1. 管理組合の事業実施権限は組合員の集会による決定に基づく。

 2. 年次総会(annual meeting)又は定期総会(the general meeting)は、
   事業年度の第1四半期中に開催しなければならない。(訳注;事業年度開始3ケ月以内)

 3. 臨時総会(Additional meetings, owners’meetings)は管理者、理事会の決議又は
   全区分所有者の10分の1以上の区分所有者の要求により召集することができる。

 4. 総会の収集通知は、総会開催日の14日前に、開催場所、開始日時、決議を求める
   議案の要領を文書で通知しなければならない。

 5. 管理規約の変更(15条)、共同住宅の大幅な変更(9条(e)項)、又は、大規模修繕、
   改良工事及び新設工事(9条(f)項)等の4分の3以上の賛成票による特別決議を除き、
   普通決議は代理人を含む全出席者の過半数の賛成票によって決定する。

 6. 総会における代理人は、区分所有者の日付と署名による申請書を提出しなければならない。

 7. 投票における議決権は専有部1戸につき1票とする。総会における投票は、全出席者の
   10%以上の要求があれば、記名投票とすることができる。

 8. 区分所有者は、共同住宅の全住戸数の30%を超える専有部の所有、及び、議決権総数の30%を
   超える専有部を所有することはできない。

 9. 区分所有者は、管理規約に対して、不法な(unlawfulness)、或いは矛盾した(inconsistency)
   決定であることを理由として法廷で主張する権利を有している。
   決定に対する異議申し立ては、決定事項が区分所有者に対して文書で告知された後の、
   或いは集会で決定が承認を得た後の6週間以内に、管理組合を相手として訴訟(lawsuit)を提起できる。
   法廷がその審理を進めている間の執行の一時停止命令を出さない限り、その決定は効力を有する。

11. 定期総会の召集 (Convening the general meeting)

 1. 定期総会は管理者が事業年度の第1四半期中に開催に招集する。

 2. 管理者が責務を果たさず、総会の召集を行わないときは、理事会又は区分所有者の一人が
   総会を招集することができる。

 3. 定期総会の招集は、開催日の14日前に文書で開催場所、開始時間、及び議案を通知する。

 4. 通知議案に記載のない事項は、決議することができない。

 5. 定期総会で選出された議長及び2名の投票集計人は、総会議事録に署名する。(訳注)参照

 6. 定期総会の議事を記録する書記を区分所有者の中から選出し、書記は総会議事録を作成する。
   総会議事録は全区分所有者に配布される。

 7. 定期総会は全区分所有者の過半数の参加で成立する。

12. 管理者の任命と解任 (Appointment and dismissal of the management)

 1. 管理組合は、多数決により、任期3年を限度として、管理者を指名することができる。
   管理者は、個人、法人を問わない。専有部を1戸以上所有する区分所有者は
   管理者として指名を受けることができる。

 2. 管理者は、管理組合との間で管理委託契約を締結しなければならない。
   契約には管理者としての業務範囲と報酬額が規定されているものとする。

 3. 管理者は任期終了後、管理組合の決定により再任することができる。

 4. 管理組合は、破産、契約違反、職務怠慢、総会決定事項の不履行などにより
    結果として管理組合との信頼関係を失わせしめた事を理由として、管理者を解任し、
    管理委託契約を終了することができる。

 5. もしも管理者が指名されず、または、指名された管理者が責任上の重大な過失を犯した
   場合、区分所有者は新しい管理者の選任について裁判所に申し出る権利を有する。

 6. 管理者と区分所有者の過半数との間で意見の相違がある場合は、管理者はその問題を
   裁判所の判断に委ねるために提訴する権利を有する。

13. 管理者の責務 (Responsibilities of the manager)

 1. 管理組合を代表する管理者の責務は対外的、内部的に管理委託契約の規定を通して
   下記の職務から生じる管理組合の代理人としての職務権限である。 
 (a) 管理組合で決定した事項の履行(implementation)
 (b) 共用部の管理と保全業務の遂行(execution)、管理組合が雇用した従業員、
    委託契約の外部契約事業者の監督を含む
 (c) 共用部における緊急時の損害を最小限に食い止めるための業務
 (d) 共用部の管理に係る毎月の支払の資金管理、修繕積立金管理、
    必要あれば強制的な資金の回収のための法的処理
 (e) 管理費会計の管理、修繕積立金の分別管理
 (f) 経費統制と管理組合に来る請求書の支払業務
 (g) 簿記会計業務と銀行口座管理
 (h) 定期総会に提出する事業報告と財務諸表の準備
 (i) 理事会に提出する四半期の財務状態報告書の準備
 (j) 定期総会に提出する年間事業計画、予算書の準備
 (k) 管理規約に則った定期総会の招集
 (l) 年間事業計画、年間予算書、月額収支予定表の調査・作成
 (m) 実際のケースに使用細則を適用して管理する
 (n) 必要あれば所有者の相談に応じての助言 

14. 理事会 (The board)

 1. 管理組合は、管理者に助言する機関として、区分所有者の中から理事会を選出するものとする。

 2. 理事会は任期を1年として、議長及び2〜4名の理事を選出する。理事は再選できるものとする。

 3. 理事会は総会決定に代わる特別な権限は有しない。

 4. 管理者が理事会に助言を求める項目は、定期総会に提示する年間事業計画、年次予算報告、及び
   四半期ごとに理事会に提出される監査報告の承認である。不正行為があった場合、理事会は管理者に
   報告するか、又は特殊なケースとして、管理組合総会にその問題を提出する。

 5. 理事会の議長は、管理組合のために代表して管理契約書に署名するものとする。

 6. 管理者が管理契約事項に違反したり、管理組合総会決議事項の業務遂行に失敗した場合
   理事会は総会を召集する権限と責務を有する。

 7. 理事会は議長又は2名以上の理事が召集する。

15. その他の事項 (Final provisions)

 1. 本規約に規定していない事項については、共同住宅に関する法律「      法」の
   規定に従うものとする。

 2. 本規約の改定は管理組合定期総会又は総会において、4分の3以上の多数をもってのみ
   決することができるものとする。

 日付       署名       日付       署名       日付       署名      .

 日付       署名       日付       署名       日付       署名      .

 日付       署名       日付       署名       日付       署名      .

 


(訳注): 
 第11条第5項「定期総会で選出された議長及び2名の投票集計人は、総会議事録に署名する。」
(原文)(5. The general meeting elects its chairman and two unit owners as tellers and
       they sign the minutes together with the chairman.)
にある投票集計人(tellers)は議事録署名人(secretary to sign the minutes) の誤りでは? と思いましたが、小規模組合ではありえるかも、と原文に忠実に翻訳しました。 投票集計人は投票立会人とも呼ばれる、選挙の公正を証明する証人です。議事録署名人を兼ねる理由もなくはない。

ちなみに、付録7 定期総会議事録(見本)では、2名の投票集計人(tellers)、 1名の書記(secretary to take the minutes)、2名の議事録署名人(secretary to sign the minutes)を それぞれ選出しています。
原文の幾つかの明白な誤りは翻訳では訂正していますが、確信もてないときはそのまま訳しています。

(2021年5月20日初版掲載・随時更新)